47.答え合わせ
ポウ・・
ポウ・・
ポウ・・
暗い空間を上方へ上がる無数の光の玉・・
1秒も経たない間に、次の玉が浮かんでくる。
玉の色は千差万別・・赤や青、緑・・紫・・色とりどりの光の玉。
それを、宙空に浮かんで見ている一人の少女・・
一つの青い玉が、よろよろと蠢いている。
近づいて、手を差し伸べる少女。
その光の玉が、青色から緑い色に変わって、少し明るくなった。
よろよろと方向が定まらなかったが、少しずつ上を目指して昇り始める。
その様子を、目を細めて見守っている少女・・
無数の光の玉が少女の周りを取り囲む。
「翔妙院・・・」
どこからともなく、声がする・・
「はい・・
オン・ロケイジバラキリ・ソワカ・・」
少女が呪文らしき言葉を唱えると、スーっと上方へと吸い寄せられるように登って行った・・
先ほどの暗い空間から、急に明るい開けた世界となった・・
眩いばかりの光に包まれた、十一面観世音菩薩が浮かんでいる。
その前に、先程の少女が向かい合っている・・
翔妙院・・すなわち、十一面観世音菩薩から翔子ちゃんに、つけられた修行の名前・・
十一面観音が、口も開けずに声を発する。
「翔妙院よ・・
最近の地上界の様子はどうじゃ?」
「はい・・
少し前よりも、魂の数が多くなっていますが、昇天率が落ちております・・」
「さようか・・・」
ふと・・、眉をしかめた表情になっている十一面観音。
先ほどの報告に付け足す少女。
「この間は、大量の魂が迷っておりました・・
天災があったように思われます・・」
「ふむ・・
大規模な天災が起こる度に、迷える魂が多く発生するものじゃ・・
天災だけでなく、戦もそうではあるが・・」
顎に指を添えて考え込む十一面観音。
「自ら命を断つ者も多くなったような気がします・・」
「我らの使命は、さ迷う魂に道を示す事・・
心してかかるように・・
我も、手伝うとするかのう・・・」
「十一面観世音菩薩様が、自ら出られれば、私めも心強い事です。」
ニッコリと微笑んだ翔妙院・・
「ふふ・・
しかし、人間界と言うのも、不憫な世界よのう・・」
「『生』と『死』があるという事ですか?」
「そうじゃ・・
あの世界は二重の構造となっておる・・
我らの様に無限の命を授かっておるわけではない・・」
「『生』と『死』を繰り返す命だそうですが・・
その中で、幸いを見いだせるのでしょうか・・?」
「『幸い』か・・
翔妙院・・そなたの幸いとは、何であろう・・?」
「はい・・
十一面観世音菩薩様の元で、修行ができる幸せで満たされております故・・
これ以上の事はありませぬ・・
久世の道を示す喜びもあります・・
思えば沢山の幸せに囲まれております・・」
「そうじゃな・・
我らは、多くの幸せに囲まれておる・・
それが沸々と湧きあがり、それを喜びとする幸せ・・
これが慈悲の心に溢れる源じゃ・・
人間界では、こういった域に達するまで
何度も『生』と『死』を繰り返さねばならぬ・・
あの世界は言わば、修行の場・・」
「幸せと喜びを悟るまで、幾度も・・
それは、悲しい世界ですね・・」
「そう・・
自らの煩悩を捨て去るまで、永遠に続く・・
中には、
その『生』『死』ある命だからこそ、
限りある命を愛することが出来ると・・
慈悲に似た境地に達する者もいるが・・
それも、実は煩悩に過ぎぬ・・
慈悲の心とは、
その世界をも超えた境地だという事・・
そうじゃのう・・
人間界でよく、評価される手法を使えば・・
100点満点中・・60点という所か・・」
玄海さん・・60点だって・・厳しいね~。
「まだまだ、修行が続くのですね・・
それにしても、
永遠に修行が続くというのは、
私としても、羨ましい限りではありまするが・・」
「ふふ・・
そなたも、変わっておるのう・・
いつまでも、修行ばかりでは・・
いかんのじゃが・・」
翔子ちゃんの修行が続く・・




