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霊感ケータイ  作者: リッキー
対策
320/450

46.時代の狭間



廊下をパジャマ姿で歩いているユミちゃん・・

洗面所から自分に用意された部屋へ入る途中だった。


教頭先生が声をかける。


「ユミさん・・」


「あ、教頭先生!」


「今日は、ありがとう・・

 あなたの御蔭で、父も考えが変わったみたい・・」



「私も、だいぶ、失礼な事を言ったみたいですよね・・

 でも、お父さんも、博士の話を聞いて、考えが変わったんだと思いますよ。」



「そうね・・

 でも、あなたが来てくれたからだって、

 感謝してるわ。」



「喜んで頂いて、光栄です!

 では、おやすみなさい!」

ペコリと頭を下げるユミちゃん。



「おやすみなさい。」


挨拶して、自分の部屋へと戻る教頭先生。

なんだか、肩の荷が少し降りたような感じがした・・・

 


その姿を見送るユミちゃん・・

振り向いて、自分の部屋の方向へと向かう・・


だが・・

行き先は少し違っていた・・











 コン コン


博士の部屋のドアがノックされる。


「はい・・」

それに答える博士・・


ベットの脇に用意されている机に向かって、何かを書いていた博士・・


「ユミです・・」


ドアを開けて、入ってくるパジャマ姿のユミちゃん・・


 カチャ・・

ドアを閉めて、鍵をかける・・


「どうしたのかね?」



「ちょっと、

 眠れなくて・・

 弥生さんの話を聞いて・・」



「夕食の時の話か・・

 また、弥生の事を想い出してしまったよ・・」



「まだ、あの少年の事は、

 恨んでいるんですか?」



俯く博士・・

少し黙って、握っているペン先を見つめていたが・・


「残念じゃが・・

 まだ、恨んでおるよ・・


 世の中で立派に働いているが・・

 弥生の命を奪った事には

 変わりはないのだからな・・」









「負のエネルギー・・」


ポツリとユミちゃんが口にした・・

それに、振り向く博士・・


ベットに腰を下ろし、悲しそうな目になっているユミちゃん・・



「そうだな・・

 ワシは、

 自ら、負のエネルギーを作り出す原因となっていたのだな・・」


ユミちゃんの隣に座る博士。


「私・・

 弥生さんの代わりに

 なれないんですか?」


その言葉に、ユミちゃんの頭に手を添える博士・・


「ありがとう・・


 君の言葉は

 いつも、

 私を癒してくれるよ・・


 本当に・

 弥生が、

 ここに居るようだと

 思えてくる・・


 だが・・

 もう、

 ワシには

 家族は居ないのだ・・」



「博士・・


 私が

 ついていますよ」


そう言って、博士に寄り添うユミちゃん・・








 ・

 ・

 ・



 ドオドドドオドドドオドドドドドオドドド


山奥の滝・・怒涛の水の塊が滝つぼに打ち付けられている。


「大丈夫ですか?玄海様!」


「ウズメ・・

 ここは・・?」


「精神統一中に、滝つぼに落ちてしまったんです!

 驚きましたよ!!」


「そうか・・」


見渡すと、滝つぼの脇の岸辺に居た玄海・・

ウズメが飛び込んで気を失った玄海を運んだようだった。

水面から上がっても、フラフラとしている玄海・・


「体温が低いです・・

 早く温めないと・・」


「すまん・・」


岩場の日の当たる場所で、着物を脱いで、布に包まる二人・・

ウズメが火を起こす準備を始めた。



「夢を見ていたのだ・・」

ポツリと言った玄海。


「夢?」

玄海の言葉に振り向くウズメ。



「うむ・・

 遥か遠い未来なのだろうか・・

 全く異国の風景だが、この国の様だった・・


 そこで、私は『霊』についての研究をしているのだ・・」



「『霊』・・に、ござりまするか・・

 私達の、よく感じる、精霊や霊魂、神々の事でしょうか・・」



「そうだ。

 未来では、機械や『電気』、物理学なる『目に見える』物に頼っているようだ。


 我々の『感覚』は、その時代は、退化していた・・。

 我々が当たり前に感じているモノが感じられないのだ。」








 

「でも、

 面白いものですね・・


 今、玄海様は『不老不死』という、私達にとって未知の事を研究している・・

 その時代でも、やはり、その時代で未知のモノを研究しているのですね・・」


「ふむ・・

 遠い時を経ても、私は、何かを探究する性分なのかも知れぬな・・」



「玄海様は、そういう御方なのですよ。

 私達に、希望と未来を与えて下さるのです。」



「希望・・か・・

 その時代は、希望も何も無いようだった・・


 全ての事は・・家事や仕事は自動で動くようになって、暮らしは便利だというのに・・

 人間自体の目は死んでいるのだ・・

 活き活きとした、目を持った者が・・少ない・・」



「そうですか・・

 便利になるというのは、

 必ずしも、人間にとって幸せをもたらすばかりでは、無いという事なのでしょうか・・」



「そうだな・・

 人の命よりも、『金』の価値の方が重いようだったしな・・」


宙空を見つめ続ける玄海・・












「『生』と『死』の二重構造・・」


玄海が呟く・・


「二重構造?

 何ですか?」

ウズメが訊ねる。


「その時代を見て気づいたのだが・・

 果たして、永遠の生を得て、人間は幸せになるのかどうか・・・」


「不老不死は、人間の夢ではないのですか?」



「そう思っていたのだ・・


 だが、

 遠い未来・・医療も発達して、寿命も長くなっても、

 それほど幸せになっていないような気がした・・」


「命の使い方・・なのではないでしょうか?」



「うむ・・

 そうなのかも知れん・・


 私は・・

 人間は本来・・

 『生』と『死』がある故に、

 命を大切にするのでは、ないかと・・思い始めてきた。」


「『生』と『死』・・ですか・・・」



「この世には「生」と「死」の状態が同時にある・・

 言わば、二重構造になっている・・


 生きている・・実体を持った人間・・

 姿形を持たない、精霊や霊魂・・


 その狭間で揺れ動いている命・・

 

 「生きている」から「死」があり、

 「死」があるから「生」がある・・」



「死があるから・・生がある・・・」


「ふふ・・

 まだまだ、道を極めなければ、ならんがな・・・」


 









「あの・・私めは・・どうなっておったのでしょうか・・」


「ふふ・・そなたは、私と、かなり歳が離れておった・・」


「でも、一緒に居たのですね・・

 私は、例え、結ばれなくても、こうして御側にいるだけで、

 幸せです・・・。」



「ウズメ・・」

目を細める玄海・・








玄海とウズメ・・


そして、


博士とユミちゃん・・


お互いの魂は時代が変わっても、時を経ても、同じような境遇にあるようだった・・





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