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霊感ケータイ  作者: リッキー
対策
317/450

43.逃走


 

鉄橋の下に隠れている二人・・

何とか、取材から逃げてこられたが、アパートにも店にも戻れない・・


「ど・・どうなるんだよ・・オレ・・」


「知らないわよ!!

 あなたのせいで、私の一生はメチャメチャよ!!」



「それは・・


 オレだって・・

 そうだよ。


 オレには・・


 もう・・

 未来なんて・・

 無いんだ・・」


少年院に送られ、更に、法廷で争われる・・

マスコミに取りだたされ、社会に出ようにも活路は断たれてしまうだろう・・


全ては、自分の身から出たサビなのだが・・・

あの少女の言葉を思い出した。



 ・・一生・・呪ってやる・・・



その通りになっている・・

頭を抱えて、途方に暮れる少年・・






その時・・




「大丈夫だよ・・

 お兄ちゃん・・・」



あの少女の声が聞こえた。





ハッと見上げると、川の流れる水面に、あの少女が立っていた・・・

隣を見ても、母は気づいていない。自分にしか見えないらしい・・



「あなたは、

 私との約束を果たしたわ・・


 呪うことはない・・


 安心して・・」


微笑む弥生ちゃん。




「でも・・


 オレは・・

 どうすれば・・」


途方に暮れている少年・・・


「私の、お父さんが、何とかしてくれるわ・・

 あなたが、真心で接していれば・・」


「オレの・・真心?」


「そうよ・・

 隠し事も、何も無い・・

 心の底から、思う事を、言葉にするのよ・・・


 お父さんなら、聞いてくれるわ・・

 あなたの、本当の気持ちを・・」


「でも、アパートにも店にも戻れないんだ!!

 君の家にだって、取材は来てるよ!!

 どこに行けば良いんだ!!」



「私に・・

 付いて来て・・・」


そう言って、こちらへと水面をスーッと移動してくる弥生ちゃん・・


そして、川の流れる方向へと進みだす。

お母さんを連れて、その方向へと向かう少年・・


「母さん・・行くよ!」


「ど・・どこへ行くのさ・・」


その言葉には答えず、歩いて行く少年・・
















「ここは・・」


少年が気づく。


弥生ちゃんに導かれ、博士の家の前へと連れられてきた。

でも、家の玄関先には、取材陣が待ち構えている。

どうやって、中に入ろうと言うのだろうか・・・



その時・・


 ビューーーーーーー!!!!!!



一陣の風が吹きすさぶ・・


その風にあおられて、カメラの三脚が倒れだす。

将棋倒しに、次々に倒れていくカメラ。

そして、風に巻き上げられた砂埃が、辺りを覆う・・


女性キャスターのスカートがまくれあがる。


「きゃーーーーー!!!!」


その姿に釘付けになる男性カメラマン達・・



「今よ!」


弥生ちゃんの声と共に、博士の家の玄関へと走り出す二人・・



  バンバンバン!!!


玄関の戸を叩く少年。


「博士!!開けてください!!!」


少年の声に気づいて、急いで玄関のドアを開ける博士・・


奇跡的に、報道陣に気づかれずに博士の家へ逃げ込めた。











居間に通される二人・・


「良く、ここまで来れたね!!」


博士が、お茶を出して、二人を迎える。

ハアハアと息が荒い少年と、母親・・


「あ、ありがとうございます・・

 アパートも、母の行ってる店にも、取材が来てるんです。」


「そうか・・

 新聞に記事が載ったから、

 マスコミが騒ぎ出したみたいだ・・」


その言葉に、母親が激しく抗議する。


「あなたのせいで、私達は・・・

 将来も何もなくなってしまった!

 職も追われてしまうのよ!!

 よくも、騙してくれたわね!!」



「それは、お互い様でしょう?

 あなたも、私を騙したのですから・・」


その言葉に、閉口してしまう母・・


「博士・・

 法廷で争うって・・本当ですか?」


少年が恐る恐る訊ねる。


「いや・・私は、その気は無いよ・・

 でも、全国組織の遺族の会は、

 これを機に、少年法を改正する動きに世論を導きたいようだ・・」



「そのために・・

 オレ達が利用されるんですか?」



「そんな事はさせない!

 弥生だって、静かに眠らせてやりたいんだ。

 君の将来だって、守らねばならん!」











「オレの・・将来?

 もう、オレには、希望も何もない・・


 少年院へ入って・・

 それから・・」



「さっきも言ったはずだが・・

 『少年法』は、罪を犯した子供にチャンスを与える法律なんだ。

 子供の、未来を・・

 将来の夢を叶えるためにある。


 私は、法律なんか無くても、

 君には、

 チャンスを与える!」



「オレに・・チャンスを?」


「君が望めば、私は、君を許そうと思っている・・

 娘が悔しい思いをするかも知れないが・・」


その言葉に、母親が反応した。


「あんた、何言ってるのさ!!

 他人の息子なんだよ!!

 気は確かなのかい?


 あんたの、娘を・・

 可愛い一人娘の命を奪った・・

 この子に・・!!!」




「お母さん・・

 あなたも、人の親なら・・

 自分の子供の望むことは、叶えてあげたいと、思いませんか?」



「タダシの・・望むこと?」



「そう・・君の望みは・・何なんだ?

 希望や夢は・・

 お母さんにも言ってみなさい!!」



「お・・

 オレ・・・」


声に出そうと思っても、出なかった・・

それは、土台、叶わぬ夢だと思っていたから・・・



その時


床の間のほうから、あの少女が、現れた・・



「あなたの・・

 隠し事も、何も無い・・

 心の底から、思う事を、言葉にするのよ・・・」


少年に話しかける弥生ちゃん・・・先程の言葉だ・・









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