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霊感ケータイ  作者: リッキー
屍操術
304/450

30.ウズメ


「ははは!

 無駄だ玄海。


 今のウズメには、

 貴様への憎悪の念しかないのだ。」


伯麗があざ笑う。

ウズメに近づいて、昔の事を思い出させようとしても、無駄な事に気づいた玄海。



「ウズメ・・」


間合いを取って、構える二人・・


その時、何か異常な事に気付いた玄海。

ウズメが何かを呟いている。



「私を・・

 殺して・・!」



その真意を察した玄海・・


「ウズメ・・


 せめて、私の手で!!!」


 ババッバ!!!!


玄海の放つ気がウズメを襲う。



「く!」


その攻撃から身を交わすウズメ。

後ろに下がって、次の玄海の撃ち込みに備えて構え直す。


が・・


玄海が素早く廻り込んでいた。


「南無観世音菩薩!!!」


 ズバーーーー!!!



ウズメの胴体を切り裂く玄海の剣・・


「キャーーーー!!!」


悲鳴を上げて、ウズメの体が宙を舞う・・





バッタリと倒れるウズメ・・

そのまま動かなくなる。



「ウズメ・・許せ・・!」


呟いて、一筋の涙をこぼす玄海・・

キッと目をこらし、伯麗に剣を向ける。


「次は、そなたの番だ!

 覚悟するがいい!!」









「昔、愛した女子おなご

 容赦なく斬り刻むとは・・


 何と・・非情な!!!」


叫ぶ伯麗。


「今の私には、

 私情など入る隙はない!


 帝のまつりごとを汚す者は、

 たとえ、門下の者でも、

 愛し合った者でも、

 排除せねばならぬ!!」



「ふふ・・

 国の為ならば、

 一人の命など・・

 犠牲になっても良いというのか・・


 変わったな・・

 玄海・・


 それは、

 そなたが、

 一番嫌っていた事だ・・」



「く!


 ・・・


 国の政あっての、民・・


 民あっての、国だ!

 良き国を作るために、良き政をする者が采配を取らねばならぬ!」




「それは、政をする者の言い訳に過ぎん・・


 大いなる流れの為に

 多少の犠牲はやむを得ぬ・・

 今まで、どれ程の偽善者がその言葉を使ってきた事か!


 そなたが、一番良く知っておろう!


 その立場に立った時、

 自らを省みた時、

 己の矛盾と向かい合わねばならぬ!


 それが、上に立つ者の定め!

 善も、悪も、同一線上となるのだ!」



「違う!

 尊い命を・・

 大事にするかどうか、

 見る目を持つ者は・・!」









その時、


「父上!!!!危ない!!!」

イクシマが叫ぶ。


「何?」

その声に振り向いた玄海。



 ズバ!!!


「ぐ!!!」


玄海の背中からウズメの持つ長剣が貫いていた・・


先程、玄海の技に敗れたハズのウズメ・・





「ウズメ・・・


 そなた・・


 私の技に・・


 倒れたはずでは・・・」




「ふふふ・・

 そなたの愛したウズメは、

 既にこの世には居ない・・・」


伯麗が不気味な声で、あざ笑っている。


「何だと?」



「あの時・・

 先々代の帝が崩御され、そなたに放たれた刺客を追って、

 ウズメは道場を一人、飛び出したのだ・・


 刺客と刺し違えて、そなたを・・

 守った!!」



「ウズメ・・

 そなたが・・」


その場に倒れ込む玄海・・



「玄海・・様・・」


崩れ落ちる玄海を見つめるウズメの目に涙が溜まっていた。











「昔、愛し合った者から刺された味はどうだ?

 玄海!


 ワシは、ウズメの亡骸に『屍操術』を施し、

 ワシの下僕として、この世に蘇らせたのだ!」



「そなたの・・

 下僕?」


ウズメの髪の毛の隙間から、額に貼られた敷紙がチラリと見える。

伯麗によって操られているウズメ・・



「『屍操術』に操られたウズメにとって、ワシの命令は絶対だ!」



「屍操術は・・

 身延の・・

 門外不出の奥義だったのでは・・!」



「そなたが、不老不死の術に明け暮れている最中、

 伽代様から伝授してもらったのよ!」



玄海の脳裏に、伽代の最期の言葉が浮かぶ・・




 私は・・・


 この家と、あなた様に・・

 嘘をついておりました・・


 道を踏み外したのです!





「そうか・・・伽代の言葉は・・この事だったのか・・」

呟く玄海。



「愛されていた者達から裏切られた、哀れな男よ!そなたは!!

 長年、ワシが、受けていた屈辱を、思い知るがいい!!!

 そなたに負けて以来、この期を待っていたのだ!!」



 

「全ては・・


 私の・・


 身から出た・・


 サビ・・か!!」


目を瞑る玄海。











「ウズメ!止めを刺せ!!」


「御意!!」


伯麗の命令通り、惑わずに倒れた玄海の心臓を一突きにするウズメ。


「ガハ!!」


目を見開いて、その場で力尽きる玄海・・


ガクッと動かなくなる・・



「父上~~~!!!!!!!!」

泣き叫ぶイクシマ。



「ふ・・ふふふ・・


 やったぞ!

 これで、『身延』の姓は、私のモノだ!!」



「く!師匠をよくも!!!」


残された力で、やっと立ち上がる伊吹丸。


その姿に、振り向く伯麗。



「このウズメは、『屍操術』を施されておる・・

 そなたに、何度斬られようと立ち上がるのだ・・

 そなたが死ぬまでな・・」




「ひどい!

 ウズメさんを・・


 そんな体にするなんて!」



伊吹丸に長剣を向けるウズメ。

殺気に満ち溢れる瞳・・

まさに、キルマシーンと化していた。


ハアハアと息が荒い伊吹丸。


間合いを取るが、撃ち込める隙が全くない・・


「イクシマ・・

 屍操術に対抗するには

 どうすれば・・!」



「額に貼られた敷紙は、術師が死ななければ取り去れません・・

 敷紙か亡骸を焼き払う以外に・・

 方法はない!」



「亡骸を焼き払う・・」


妖術を使おうとしても、その隙がない・・

伊吹丸自体も、先程の伯麗からの攻撃で、立っているので精一杯だった・・



「ははは!我が身延の一門!!これより秀でし者は無い!!

 我々は最高の地位を手に入れるのだ!!」



勝機を確信し、あざ笑う伯麗・・




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