17.玄海
「イクシマ・・どうしたのじゃ?
外が騒がしいが・・」
眠気まなこの幼い帝・・
「もののけの奇襲です。
正門から迫っています・・」
見張りの敷紙からの情報を得るイクシマ・・危険が迫っていると察知した。
「帝!こちらへ!」
「わかった!」
部屋から廊下へと移る二人・・
だが・・
その行く手に、長剣を構えた少女・・ウズメが控えていた・・
「こんなところまで!」
怯んで、構えるイクシマ・・
「帝とお見受けしました!
お命、頂戴、致しまする!」
「帝!私の後ろへ!」
帝をかばうイクシマ。
それと同時に、ウズメから放たれる剣型の敷紙。
シュン! ・・シュン!・・・
バババ!
イクシマも敷紙で応戦する。鳥型の敷紙を放つが、防ぎきれない。
「う!」
帝をかばう手に突き刺さる敷紙・・
「ふふふ・・
いつまで、持ちこたえられるかな?」
あざ笑うウズメ。
・・・私の命と引き換えに、帝をお守りせねば!・・・
心に呟くイクシマ。
ガッ
伯麗の剣を受ける伊吹丸。
その力に、押し返せず、後ずさりのみ・・
「ふふ・・
力の差は、歴然か!
これで、都に名を馳せておるとは・・
笑わせる!」
「く!」
バキーーーーーーン!
「ぐあ!!!!」
力任せに、押され、弾き飛ばされる伊吹丸。
地面を転げ廻って、再び構える。
ハア・・ハア・・
息が切れている伊吹丸。
次の攻撃に備えるが、再び、敷紙が襲い掛かる・・
サーーーーーーーーーー
「く!」
ビシ!・・ビシ!
体中が敷紙に刺され、傷だらけになっていく・・
勝算ありと見た伯麗。
「ガハハハハハ!
反撃も出来ぬか!!!」
あざ笑う伯麗。
その時・・
ピーーーーーーー
何かが鳴り響く・・笛の音の様な・・・
「何?!!!!」
上空から鳴り響く、かん高い音・・
シューーーーーーーン!!!
イクシマ達が使っている敷紙よりも一回り大きな一羽の鳥型の敷紙が中空を舞う。
「鳳凰型だと??!!!」
驚く伯麗。
サーーーーーーーーー
ビシ ビシ! ビシ!
伯麗の放った敷紙を次々に落としていく鳳凰型の敷紙・・
その飛ぶ姿は、まさしく鳳凰の如く、鮮やかで美しい・・
「この敷紙の主は!!」
門をくぐって来た一人の僧侶・・
笠を深々とかぶり、呪文のようなものを唱えている。
ジャリ! ジャリ!
踏み石を鳴らしながら、力強く歩いてくる。
「ふふ・・久しぶりだな!伯麗!!」
「その声は!!!まさか!!!」
笠をあげ、顔を見せた、その僧侶・・
「越後から参った、身延 玄海!!」
「玄海じゃと~!!!!」
その名に驚き、退く伯麗。
「師匠!!」
歓喜に沸く伊吹丸。
「何と!イクシマの父とな!!
病に伏せっていたと言うが!!」
「ふふ・・
伊吹丸だけでは、頼りなく思い、
馳せ参じました・・
病に伏せてはおられませぬ!」
その声と共に、持っていた杖を一振りする玄海。
ブワ!!!
衝撃波が走り、伯麗を襲う。
バババッババ!!!!
構えて、攻撃を受けるだけの伯麗。
「く!!!この力は!!!!
まさしく、玄海!!」
「次は、手加減せんぞ!」
不敵な笑みを浮かべる玄海・・
「ち!
ウズメ!引くぞ!!!」
「御意!」
離れた場所でイクシマと向かいあっていたウズメがうなずく。
「お土産だよ!!」
バ!!!
無数の敷紙を、ばらまくウズメ・・
イクシマに敷紙が襲い掛かる。
必死に帝をかばうイクシマ・・
攻撃が納まり、見上げると、ウズメの姿が無かった・・・
構えてにらみ合いが続く玄海と伯麗・・
シュン!シュン!!
玄海の方へ、無数の剣型の敷紙が襲う。
バ!
ビシ! ビシ ビシ!
持っていた笠を楯代わりにする玄海・・
敷紙が突き刺さる。
ピーーーーーーーーー
宙を舞っていた鳳凰型の敷紙が、ウズメに気づいて、突進していく。
「キャーーー!!」
ビーン!!
ウズメの持っていた剣の手元に玄海の敷紙が喰らいつき、刀を落とす・・
「ウズメ!まともに戦ってはいかん!
引くぞ!!」
「はい!」
剣を持ち直して、九字を切るウズメ・・
「雷・風・恒!!!」
パーーーーーーーーーーーーー
辺り一面が、眩い光に包まれる。
目くらましの術・・
その場に居た一同が、目を覆う。
伯麗とウズメがその騒動に乗じて逃げ出す。
「逃がさん!」
シュン!
敷紙を放つ玄海。
「う!」
ウズメの背中に突き刺さる敷紙。
だが、そのまま姿を消した伯麗とウズメ・・




