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霊感ケータイ  作者: リッキー
探索
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13.現場検証


「じゃあ、これから、始めるわよ!」


先輩が眼鏡を掛け直し、勢いよくベンチから立ち上がった。

何が始まるというのだろう?



「まずは・・

 あの水銀灯だったわよね・・」


水銀灯?

公園の広場の中央にある水銀灯を指さしている先輩。


そして、颯爽と歩いていく・・


僕も、その後を追う・・





水銀灯の真下に来た僕達・・

いったい、何をしようというのだろう?


「そして・・

 私達は、あの草むらに居た・・」



草むら?

そうか・・昨日の夜、この公園でワラ人形の事件があったんだっけ・・・


「行ってみましょう!」

草むらの方へ小走りに向かう先輩・・


昨晩の事を再現しようというのだろうか?



先輩の、すぐ後について行く僕。

目標の草むらに到着する。


先輩が到着するやいなや、クルッと後ろを向いて、広場の水銀灯の方を見る。


「ここから、あの水銀灯の下にいる、星熊童子を見たのよね・・」


「はい・・

 (翔子ちゃんの)パパが既に対峙していました・・」



「そして・・

 音楽室で使った攻撃を、あそこで放った・・」


「そうです。

 土埃で見えなくなりましたが・・」











「あの時、不思議に思ったのよ・・


 確かに、目くらましだったけど・・

 次の瞬間、童子は消えていた・・


 一瞬の出来事だったわ・・」



「見ていたんですか?」



「うん・・

 土埃が立つギリギリまで、私は見ていた・・


 ヒロシ君がかばってくれたから・・

 安心して、見ていたのよ!」



「見ていたって言っても・・

 霊感ケータイは僕が持っていたから・・・

 先輩には、見えないハズ・・


 ・・・


 あ!」


僕は思いだした。

先輩には、彼女とまではいかなくても、拓夢君以上の霊感があるって事を・・



「見えていたのよ・・

 私には!


 パパもうっすらとね・・・」



凄い!って思った・・

そして・・


「ヒロシ君・・

 パパを呼んでくれる?」


「え?」



「あの時の、パパの証言も聞きたいのよ!

 あの童子の動きに、何らかのヒントがありそうなの!

 これから、童子達と、どう戦えばいいのか・・」


「わかりました。」


僕は、霊感ケータイを取りだし、パパにメールを打った・・













 お待たせ~

    パパ



翔子ちゃんのパパがやってきた・・


どうでも良いのだが・・

「翔子ちゃんの」を付けなくても、「パパ」で通るようになっているのが怖い・・


開き直りとでも言うのだろうか?

確かに、他に「パパ」と呼ばれている人はいないけど・・



 私に、聞きたい事って?

    パパ



「昨日の夜の事なんです。

 確か、その水銀灯の下に、童子が居ましたよね!」



 そうだ。

 あの時に、目くらましを喰らって、

 姿を消したんだ・・

     パパ



「あんなに早く、姿を消せるものなのですか?」




 そうだね・・

 前に戦った時も、かなり素早かったから・・

 童子の速度ならば、アリだって思ったんだが・・

     パパ




「前に・・戦った時・・


 私が

 ワラ人形を打ってた時ですね・・」


あの時は、僕ではなく、沙希ちゃんが目撃者だった。

童子の動きについて行けなくて、地獄で特訓をやり直しているパパだった。



「あの公園に、行ってみましょう!」


先輩にとって、ワラ人形を使った公園に行くのは、いささか気が引けるような気がした。

でも、何かを感じ取ったらしく、颯爽と公園へ向かう先輩・・


いったい・・何があると言うのだろう?













噴水のある公園。


この公園は、図書館の近くにある公園だ。


彼女と初めてのデート(?)の時に悪霊に襲われた彼女を落ち着かせた場所・・

彼女と初めて喧嘩した時、童子に襲われたという公園・・


そして、先輩がワラ人形で彼女を攻撃した公園・・



噴水の前で立ち止まるパパ・・


 ここだ・・

 この噴水に、

 あの童子が居たんだ・・

     パパ


ワラ人形の攻撃を止めさせるために、沙希ちゃんや僕のお母さんと、この公園に入った時、童子に襲われたという。

パパと童子が対峙したと言うが・・



 私が、

 ここで構えていたら、

 急に、

 隣に姿を現わしていた・・

     パパ



入り口付近の広場で、童子の出方を窺っていたパパ・・

その、童子の現れた場所を詳しく観察しだす先輩・・


脇の草むらをガサガサとかき分ける・・









「これだわ!」


何かを見つけたようだ!


「何か、あったんですか?」


僕も先輩の居る方へ向かって見てみると、そこには、

草むらに隠れていた、スポットライトがあった・・

夜になると、草木がライトアップされるのだ。



そして・・

噴水の方に近づき、水面を調べる先輩・・・


「やっぱり・・」


噴水にも、ライトアップのためのイルミネーションランプが設置されていた。

夜の噴水を色鮮やかにディスプレイするライト・・



「このライトが、何か・・関係あるんですか?」


僕が聞いてみる。

パパも興味がありそうな表情だった・・


「このスポットライト同士は、配線で結ばれている・・

 そして、さっきの公園の水銀灯も・・」


「配線?電気の線って事ですか?」


「そう・・

 あの童子は、電気配線を利用して、

 瞬時に移動が出来る・・」




 電気の配線を利用していたって?

        パパ



「都市伝説的な噂なんだけど・・

 ネットや電気には、悪い気が集まりやすいって話があるのよ・・」








人類が「電気」や「電波」として用いだしてから、まだ数百年しか経っていないけれど、

それ以前は、雷や静電気など・・自然現象として存在していた。


現代文明の象徴としての「電気」・・

便利なモノ・・


まだ、世に出てから、日は浅いが、既に、地球を覆い尽くしている。

世界の隅々まで行き渡っている電気や電波・・


そして、その電気の通る配線や電磁波自体、また、通信に用いる電話配線等には、人間の欲望が乗せられやすく、

邪悪なモノの温床としてはびこっているという・・


実際、ネットに流れるメッセージなどは、良い気を持ったものよりも、邪悪な念を持ったものが多い。


誹謗中傷・・人を蹴落としたい・・人を非難する事で、他人よりも優位に立ちたい・・

そういった念である。



その様な悪意に満ちた邪念が、電気の配線を通して、世界に流れ込んでいる。


また、そういった所には、類は友を呼ぶ・・というワケではないが、似たような念、「気」が集まりやすいという・・



「星熊童子は、この電気配線やネットのケーブルを利用して、

 自由に行き来ができるのよ・・


 一瞬で、空間を移動したのではなく、

 こういったコンセントや端末から入って、配線を通って、別のコンセントや端末へと移動できる・・

 電磁波は光と同じ速度・・普通に見れば、「瞬間」に移動したように見える・・」




 そうすると、あの時は、

 噴水のライトから入って、私の脇の草むらにある照明から出て来たから、

 瞬時に移動したように見えたって事か・・

          パパ




「そうなります。

 目くらましと同時に、瞬時に姿を消したのも、同じ方法だと思います。」




 なるほど・・

 星熊童子は、こうした電気配線のある場所では、優位に戦えるという事か・・


 でも、

 それでは、どうやって戦えと・・?

          パパ












「相手の出方さえ、分かれば、次に、何を仕掛けてくるのかが予想できます。

 全くワケのわからない攻撃を仕掛けてくるのではない・・

 戦い方の一つのパターンが分かっただけでも、対策はできる・・」



 そうか・・

 相手の手の内が一つわかっただけでも

 対策が練れるか・・

        パパ



「電気的な配線の繋がっている・・家電製品とかパソコンとか・・

 たくさんある場所での戦いは不利です。

 

 おそらく、そういった場所に誘い込む作戦を仕掛けてくる・・

 そういう状況にならないように、注意してください。


 この場所・・公園みたいな・・

 電気の通っている照明やコンセントのある所が限られていれば、

 そこだけ気をつければいい・・」




 未来ちゃん・・頭いいね・・

 私では考えつかないよ・・


 あ・・

 でも・・

 童子ができるなら、私も出来るのではないかな?

 電気の配線の中に入る事が・・

        パパ



確かに・・同じ霊なら、童子と同じ事が出来ると思ったパパ・・

早速、先程のライトの上に立ってみる・・



しばらく、立ちすくんでいるパパ・・




 う~ん・・なかなか・・

 入れないな~。

 呪文とかあるのかな・・・

     パパ




「さっきも言ったけど、邪悪な気が蔓延るって・・

 パパは、たぶん、良い人だから入れないんじゃないんですか?」


先輩の一言・・

『良い人』というフレーズが、引っかかったみたいだ・・



 良い人!

 良い人か~。


 あぁ~・・

 未来ちゃん、嬉しい事、言ってくれるね~!

     パパ


嬉しそうなパパ・・


どうでも良いけど・・

 オジサンに人気のある先輩・・




「たぶん、パパが入り込めても、何処へ行っていいのか分からなくなると思います。

 電気配線は複雑ですから・・


 童子は、どこで戦うのかを事前に・・

 用意周到に下調べをしていると思いますよ・・。」



 そうか・・難しいか・・

 でも、わかったよ!

 その辺に注意しながら、修行を続けることにするよ!

         パパ

 


そう言って、再び地獄の修行へと戻るパパ・・


なんだか、嬉しそうだった・・


オジサン心をくすぐる先輩・・それはそれで・・恐ろしい・・・






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