11.防犯カメラ
都内のフルーツパーラー店にて・・
「ヒロシから連絡が来たわ!」
陽子が、響子からのメッセージを受け取る。
「弘子さんのアパートに、しばらく身を隠す様にって・・・」
陽子が、今西と弘子さんに伝える。
「え?弘子の所に、2人もか?
いや・・
3人???」
今西が、呟く・・
霊である響子も入れれば3人泊めてもらう事となる。
「お兄ちゃん、野宿でもしたら?
私と、陽子さんで手一杯だよ!」
「あと一人、響子も居るんだよ~!」
「え?響子さん?
亡くなったはずだけど・・・」
「あはは・・
弘子さん・・
実は、響子も来てるのよ・・
私の横に・・」
笑って、実態をバラす陽子だった・・
笑える事実でもないのだが・・
「え~~????
ひょっとして、幽霊なんですか~???」
「正確には、幽霊じゃなくて、
『霊』なんだけどね・・」
「しばらく、霊と一緒に住むんですか~????」
「オレもずっとそうだったんだよ・・・!」
「ちょっと・・待って下さい!」
しばらく考え込んでいる弘子さん・・
さすがに、霊と一緒と言うのも・・・
「わかりました!
私の所に、しばらく居てください!」
「え~??抵抗ないワケ~??」
その言葉に、驚いている今西・・
「私にとって、響子さんは、
昔のお兄ちゃんやお姉ちゃん(幸子)の友達以外の何者でもないわ!
生きていようが、死んでいようが、同じです!」
「あはは・・死んでいようが・・ねぇ・・」
苦笑いしている陽子・・
「仕方ないわよ・・私、死んでいるんだから・・それは事実よ・・」
響子が呟いている。
「あ~!!!オレはいったい・・
なんたる不運なんだ~!!!」
「お兄ちゃん、怖がりだからね・・
でも、月刊オカルトの編集者なら、願っても無い機会じゃないの?
体験をまとめて、記事にでもしたら?」
「余計なお世話だ!!」
かくして、弘子さんのアパートに、今西と陽子、そして響子が隠まる事となった・・・
先生のマンション。
「さて~、今日は、ミナ、お泊りなんです~。」
ニコニコ顔の彼女。
「え?あなた・・泊まるの?」
先輩が、その言葉に反応した。
「もちろんです~。お父さんに断わって来たし~。
お母さんも襲われたから、その対策も練らなければだし~。
着替えも持って来てあります~。
あ~。大変だな~。」
その割には、楽しそうな彼女・・
「もう!
あなたも、抜け目ないわね!」
「お互い様ですよ~。」
「水島さん、今晩はどうするの?
泊まっていく?」
先生が聞いている。
「是非!ぜひ、今後の対策もあるから~!!」
父が、嬉しそうにせがんでいるが・・
「この下心見え見え男が~!!!」
「ギャー!!!」
縛り上げられている父・・
「いえ・・
今日は、帰ります・・
ちょっと、調べモノもしたいし・・・」
意外な答えの先輩・・
少し、元気が無かった・・
先程のHijiriとの対決で、疲れたのだろうか・・
「水島さん・・」
先生が気を使う・・
「あ・・
大丈夫です。
でも・・
帰りは、ヒロシ君に送ってもらおうかな・・
襲われるかも知れないから・・」
「先輩・・」
「とか、何とか言って、ヒロシ君を襲うつもりじゃないですか~??」
彼女が突っ込んでいる。
「あなたとは違うわよ!」
「どうだか!」
「まあ、まあ・・
水島さんも、昨日から、疲れてるだろうから・・
家でゆっくり休んだ方がいいかもね!
ヒロシ君。水島さんを送って行ってくれる?」
「はい」
「先生~!
先輩の肩もつんですか~?」
「あはは・・望月さんには、スペシャルなスィートを作るわよ!」
「え~?ホントですか~??」
甘いものに釣られる彼女・・
それでいいのか~???
僕と先輩が先生のマンションを出る。
「お邪魔様でした。」
ペコリとお辞儀をした先輩。
「気をつけてね!」
「未来ちゃん・・また来てね~。」
「このオヤジが~!この期に及んで~!!」
「あ・・先輩・・」
彼女が呼び止める。
どうしたのだろう?という表情の先輩・・
「お母様達の事・・守ってくれて・・ありがとうございました・・」
「望月さん・・」
「先輩が居なかったら・・どうなってたか・・
それに・・私も・・」
昨晩のワラ人形の件もある・・
「これで、御相子よ!」
微笑んで、颯爽と玄関を出る先輩・・
エレベーターに乗る先輩と僕・・
二人だけの空間となる・・
髪の毛から、甘酸っぱい匂いがした。
先生のいつも使っているシャンプーの匂い・・
僕と先輩の目が合った。
ニコッと微笑む先輩。
「楽しかった・・
先生の家・・」
「そ・・そうですか?」
楽しかった?大変な事ばかりの様だったけど・・
そう言った後、上を向いて一点を見つめている先輩・・
何を見ているのだろう?
エレベータの階数の表示板の横・・
黒い板が貼ってある・・
「これよ・・・」
「え?」
「防犯カメラが内蔵されている・・」
「これが?」
エレベーターが1階に着いて、扉がスーっと開く。
一歩踏み出して、周りを眺める先輩。
やはり、上の方を見る・・
「あれね・・」
エントランスホールの自動ドアの脇・・
天井に黒いドーム型の機械が据え付けてあった。
「あれも、防犯カメラよ・・
コンビニとかでも、良く見かけるけど・・」
「あれが・・
防犯カメラ・・?」
さっきまで、都内で展開されていた母とHijiriの逃走劇・・
監視に使われていた防犯カメラや監視カメラが、都心から離れた僕たちの町にも点在していた・・
いや・・
僕たちの周りはいつの間にか防犯カメラだらけになっていて、
いつ監視されていても不思議ではない状況下にあったのだ・・
そう思ったら、急に恐ろしくなった・・
「もう・・
この社会に・・
プライベートなんて、無いのよ・・
『防犯』の名目で、常に誰かに監視されてる・・
私とヒロシ君が、一緒に居て、
何をしたかなんて・・
直ぐに分かっちゃうのよ・・
例えば・・」
先輩の顔が僕に近づく・・
「え?」
チュ・・
僕の頬に口づけした先輩・・
「こんな所・・
誰かに見られていても
不思議じゃないのよ・・
Hijiriが見ているかもね・・」
少し、微笑んだ先輩・・
振り向いて、道路の方へ歩いて行った・・
マンションを出る・・
ずっと家の中だったから分からなかったけれど、もう日は西に傾いていた。
「ちょっと行きたい所があるの・・」
行きたい所?どこなんだろう?
僕は、先輩の言うままに後を着いて行った・・
その道中のコンビニや駐車場、銀行や道路に設置されている無人カメラを説明された・・
「あれが、みんなネットに繋がっているんですか?」
「全部ではないわ・・
中には社内のコンピューターに直に繋がっているのもある・・
でも、
セキュリティーの物は・・ネットを介して、管制センターや警備会社に繋がっている・・」
「防犯カメラの無い所って、無いんですか?」
「山の奥とか・・よね・・
逆に、無いと、犯罪が起きてもわからないわ・・
今西さん達の隠れていたガードなんて、変質者に襲われやすい所よ・・」
犯罪から守るために設置されている防犯カメラ・・
犯罪は防げても、その分、プライベートは薄くなるのか・・
絶えず、監視することは、犯罪も個人も全てを監視する事に他ならない・・




