8.襲撃
その時・・
キキー!!!!!
急ハンドルを切ったタイヤの音が鳴り響いている。
駅前の通りを走っていた自動車が、急に方向を変えて、ロータリー内に入り、こちらへと向かってきた!!!
「危ない!!!!」
咄嗟に、陽子の手を引いて、その場から逃げる今西。
ガシャーン!!!
さっきまで座っていたベンチに突っ込んできた自動車。
バンパーが大破したベンチの上に乗り上げて止まっている。
ハンドルを掴んでいる放心状態の男の運転手・・
その手には、携帯電話が握りしめられていた。
「携帯に・・
注意を取られていた?のか??」
今西が叫ぶ。
「今西君!!ここは危険よ!!」
「ああ!!」
必死の表情の今西と陽子。
「響子!!携帯を持っていない人の方へ導いて!!」
陽子が幽霊の響子に逃げ道のナビを任せた。
「わかったわ!!」
少し、浮きあがって、辺りを見回す響子・・
方向を見定める・・
「こっちよ!!陽子!」
安全な方向を指し示している響子。
「今西君!こっちよ!!早く!!」
「ああ!!」
その方向へと走りだす今西と陽子・・
その様子をモニターで監視しているHijiri・・
「ふふ・そうだ・・
いい判断だ・・
今は、逃げるのが賢明だ・・
全ては計算通り・・ 」
不気味に呟くHijiri・・・
先生のマンション。
チャラララ・チャラララ
霊感ケータイが鳴る。
僕が霊感ケータイを見ると、メールが入っていた。
僕の母からのメール・・
ピッ
その内容を見る僕・・
ヒロシ!
たった今、Hijiriに襲われたわ
いえ、
攻撃を受けている!
響子
「何だって!?」
「どうしたの?ヒロシ君!」
彼女が驚いた僕の方へ来る。
「お母さん達が襲われた!」
「童子に?」
キッチンに居た先輩も驚いている。
こんな白昼堂々と、攻撃を受ける事があるのだろうか・・
しかも、Hijiriはネットを使って離れた場所で、他の人を操りながら間接的に攻撃するだけかと思ったのだが、直接攻撃してくる??
詳しい内容は書かれてはいない。
先生も父も、心配そうに、僕の側へと寄ってくる。
「陽子さん達が捜査している事がバレたのか?」
「何が起きたのかしら・・」
「分からない・・
でも、一筋縄では行かない相手だよ・・
捜索されているのは、計算の上なのかも・・」
心配だけが募る・・
都心・・
人通りの少ない鉄道のガード下・・
やっとの思いで逃げてきた今西と陽子・・
周囲の見張りに響子が憑いている・・
ハアハアと息を切らしている二人・・
「ここまで来れば、追手は来ないのか?」
「分からないわ・・
監視カメラは無いのかも知れないけど・・
携帯を持った人が来れば、
Hijiriの手が伸びている可能性もある・・」
「油断したよ!
捜索をしていれば、追い詰められると思っていたのに・・」
「逆に、
私達が追い詰められてたのね・・」
「ああ・・
作戦を練り直さないと・・
テリトリーを広げられれば、
詮索も出来なくなるよ・・」
「厄介な相手ね・・」
「陽子!ヒロシから連絡があったわ!」
響子が陽子に伝える。
霊感ケータイはダイレクトに連絡できるので、便利なのだが、今西には陽子から伝えねばならないもどかしさもある。
「こっちの状況を知らせてって・・」
「そう・・
今は、霊感ケータイだけが、唯一の連絡手段のようね・・」
「オレのケータイならどうだ?」
「私の覚えているのは、寺の電話番号だけだから・・」
山奥で修行している陽子にとって、連絡先など、寺だけで十分だった・・
「くそ~!
ここから出ても、Hijiriに何処で監視されてるか、わからんとは・・」
「いつ、襲われるか分からない・・」
「とにかく、迎えに来てもらおう!
弘子なら、今日は休みのはずだ!」
「自動車で?」
「ああ・・
歩いて行くよりは、少しは安全だ・・」
何が安全で、何が危険なのかは、全く判断がつかない・・
「待って!ヒロシから、今西君の電話番号を教えてって!」
響子が霊感ケータイからのメッセージを受けた。
「そうか!その手があったのね!
今西君!携帯の電話番号を聞かせて!」
「ああ!」
メモに書いて、陽子に手渡す今西。
「でも・・こんな短時間で、状況判断できる人が居るのか?」
今西が不思議がっている。
そう・・未来先輩が機転を利かせていたのだ・・・
チャラララ・チャラララ
再び、僕の霊感ケータイにメールが入る。
今西さんの携帯の電話番号が書いてあった。
「私が連絡します!」
先輩が、叫ぶ。
「私のケータイを使って!」
先生が携帯電話を差し出す。
「はい!」
霊感ケータイに表示された電話番号を打ち込む先輩・・
「都心の地図、ありますか?
今はネットは使わない方がいいです!」
同時に、先輩が地図を求めた。
「この間の、出張の時の地図があるわ!」
部屋へ地図を取りに行く先生・・
トゥルルル・トゥルルル・・・
今西の携帯に通話が入る。
ピッ
電話に出る今西。
「もしもし!今西です!」
「今西さんですか?水島です。
教頭先生と一緒だったのを覚えてますか?」
穏やかな口調で冷静を装う先輩・・
「ああ・・
オカルト研究会の副部長だった子だね・・」
今西には覚えがあったようだ。
「はい。
私が、遠隔からナビを行います。
落ち着いて聞いて下さい・・」
「わかった!
言う通りにするよ!
君なら、頼りになりそうだ・・」
そう言って、自分に言い聞かせ、とりあえず落ち着くことに専念した今西。
隣を見ると、陽子も頷いている。
「ありがとう・・
まず、現在地を教えてください。」
先輩の前に、地図が広げられた。
駅から少し離れたガード下・・
そして、絶えず監視されているらしいという事も・・
今西さんと先輩の会話と同時に、母から少しづづ、霊感ケータイで状況が伝えられてきていた。
「そう・・
Hijiriは、ネット経由で防犯カメラの映像を見ている可能性が大ですね・・」
「そんな事ができるの?」
先生が聞いている。
「インターネットの性質を巧みに利用してます・・
『智将』と言われた星熊童子なら、容易く(たやすく)理解できるかも・・・」
インターネット・・
今では、普及して当たり前の様に使われているが、
その原理を良く理解して利用している人が、一体、どれくらいいるのだろうか・・
インターネットはネット用の回線を使い、世界中と繋がっていて、ありとあらゆる情報が手に入る。
公共機関はもちろん、大学、企業・・アメリカでは国防軍の情報手段としても使われている。
そして、その情報伝達は、特殊な方法を用いている。
通常電話回線の場合、AさんからBさんまで、回線が直接繋がる。
インターネットの場合、AからBまで到達するのに、まず、情報を幾つかのデータ群(パケット:IP)に分割し、それをインターネットの回線に回す。
インターネットの中では、複数のルーター、CとかDとか・・多くの情報伝達のためのルーターを通るが、
そのルートは、
A→D→E→B
とか
A→E→F→C→B
の様に、決まったルートは無い。
最悪、AからBまで伝達されないデータもあるのだ。
そして、各ルーター、C、D・・の各地点で何らかの方法でデータをハッキングしてやれば、AからBへ伝えたい情報を第三者が得る事も可能だ。
通常、データにはセキュリティー・・認証、鍵を設けて、データを盗み読みされない手段を用いるが、所詮、人間の作ったデータである・・
現在では、ネットの普及に伴って、データ転送が安価になったため、手軽に利用している。(電話回線を使えば高価な通話料となる)
「素人が、何でもかんでも繋げるから、こうなるのだ・・」
というHijiriの言葉は、全くその通りで、軍事や政府機関すら手軽にインターネットを採用するのは、外部のサイバー攻撃を考えると、危険な行為なのだ。
「ヒロシ君!
お母さんに、周りの状況を探ってもらって!
特に、防犯カメラの状況とか・・」
「はい!」
先輩の指示通り、霊感ケータイでお母さんに周りを探ってもらうようにした。
わかったわ!探ってみる!
響子
ガードを出て、周りの建物を調べる響子・・
マンションのエントランスの天井に設置された防犯カメラがあちこちに点在している。
「全く・・都会はカメラだらけなのね・・」
防犯上と言いながら、いつの間にか、監視カメラだらけになっている都会・・
地方都市でも同じような状況になっている。
防犯と個人情報の保護は反比例するのだ。
「両刃の剣」となっている。
「あのガードは、死角だらけか・・
だが、
いつまでも、そこに居るわけにもいくまい!」
モニターを見ているHijiriが呟く。
ガード内を見渡せる監視カメラは存在しなかった・・・
「先輩!今西さんの妹さんが動けそうだって!
携帯の電話番号が来たよ!」
霊感ケータイに母からのメッセージが届いた。
「わかったわ!
・・・・・・
お父さん!」
「はい!」
突然の先輩の声に、父が半ば驚きと歓喜の返答をした。
「お父さんの携帯を貸してください!」
「はい~!喜んで!」
嬉しそうに携帯を手渡している父。
何か、下心ありそうな~・・・
「う・・
胃が痛い・・・・」
お腹を押さえる先輩。極度の緊張のせいだろうか・・
「大丈夫?水島さん・・」
「ちょっと・・トイレをお借りします・・」
バタン!
トイレに入った先輩・・そのほうが落ち着くという事らしかった。
何やら、弘子さんと連絡し合っているようだったが・・・
ジャーーーーーー
パタ・・
トイレから出てきた先輩・・
「ふぅ・・・弘子さんには、指示を出しました・・」
「水島さん・・」
「この勝負!負けられない!!」
意気込む先輩。再び、テーブルに座り、地図を前に、今西さんと連絡を取り合う。
何だか、頼もしい感じがした・・




