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霊感ケータイ  作者: リッキー
悪霊
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二十七.それからのこと、これからのこと


「行ってきま~す。」



「おう、気をつけてな!」



「行ってらっしゃい」


マンションのドアが勢い良く開いて、父が見送る。



新しいお母さん・・



雨宮先生が僕の新しいお母さんになっていた。



あの事件から2年が経った。



僕は受験も無事通過し、高校1年生。



父と先生、僕の3人暮らし。



来年の春には弟が出来るらしい・・



あの事件以来、僕は人と分け隔てなく接するようになっていた。



それまでの母親を亡くしたコンプレックスなど何処へ行ったかというくらいだ・・





学校へ行く道中、病院の脇の公園をチラっと観た。






あの時のことが思い出される・・





まばゆい光の中、垣間見た母の姿・・




彼女の姿・・



やさしかった二人・・



あの後、僕は奇跡的に助かった。



疲労困憊していた僕を見つけた父と雨宮先生が病院へ運び込んだのだ。



父にずっと「母の声」が心に鳴り響いていたという・・



僕は3日間くらい意識不明だったそうだ。




そう、




母がずっと見守ってくれていた。




それだけで幸せな気分になれる。



そこに居なくても、



姿が見えなくても、



心は通じている・・



僕の心の中に生き続けている











空を見上げながら、母の事を考えていた・・




その時


「何、ぼーっとしてるんだ?」


振り向くと、小学校からの友人達。

僕に寄り添ってきた。



「みんな・・」


皆、一緒の高校に通っている。



「雨宮センセってきれいだよな~」


「いいよな~、あんなきれいな人がお母さんなんてな~」


「ふふ・・いいだろ~?覗きもやり放題だぜ!」


「こいつめ~」


お互いに、冗談も言える仲になっている。

仲間がいるのは楽しい。

あの事件以来、僕はすっかり垢抜けたと言うか、ふっきれた感じがする。



チャラララ・チャラララ


携帯電話が鳴っている。


メールのようだ。



「トワイライト・ゾーンかよ」


「また、悪趣味な待ち受けだなー」



友達が見守る前で、おもむろに取り出す携帯電話・・

あの事件の後、「霊感ケータイ」は僕が譲り受けた。


携帯電話のメールの文面をチラッと見て、ポケットに戻す。

にやっと笑う僕を見て、友達も何やら興味ありそうな感じ・・


「メールかよ・・」


「まあな・・」


「彼女か?」


「メル友ってところかな・・」


メールなら、それほど通話料金(生体エネルギー)もかからないらしいことが発覚し、寂しい時やくじけそうになった時、霊界とメールを取り合っている。


他の人にはとうてい理解できまい・・


死者とコミュニケーションが出来る・・


こんなに便利なアイテムは、そこいらには無いのだから・・







ちらっと後ろを向いた友人がささやく。


「お、かわいい彼女のお出ましだぜ~」


「悪霊は退散!

 じゃあ、また後でな~

 バハハーイ」


「あ・・待てよ!」


すたすたと足早に去っていく二人・・


置いて行かれる僕に近づく女の子の気配・・



「ヒロシくん、おはよう」


「おはよう・・」



振り向くと、微笑む彼女の姿があった。


メガネもポニーテールでもない・・

素顔のままの彼女のかわいい姿。


いや、中学校の時よりも数段「美人」になっている。


実は、彼女も助かっていたのだ。


瀕死の状態だった彼女も、やはり僕と一緒に病院で意識を取り戻した。


奇跡と言ってもいいだろう。


僕は観音様を召喚するために、命を使い果たしたし、


彼女は、悪霊の攻撃を受け、致命傷に近いダメージを負った・・



そんな僕たちが助かったのも、


十一面観世音菩薩のご加護としか、考えられないのだった。


そして、今は正式にカレシ、カノジョの関係になっている。

(どっちがコクったでしょう?それは謎のままにしておこう・・)


彼女には少しばかり寿命が残っている。


いつまで生きられるかも分からない。


僕と結婚は出来ないかも知れないけれど、


子供も生めないかも知れないけれど、


この世に生きている間、精一杯生きることを僕に誓ってくれた。



僕も、


一緒に居る時間・・


掛け替えのない彼女と過ごす時間・・・


一日一日、一秒一秒を大切に過ごすことを決めた。


二人の間に、これからどんな事が起ころうとも、


後悔をしない様に、精一杯生きる・・


二人で誓い合ったのだ。







「ねぇ。今日はアップルパイ食べに行こうよ!

 駅前に新しい店ができたんだって!」


「え~?また、甘いもの~?」


「だってぇ~。甘いの大好きなんだもん!」


「太るよ~。」


「いいもん!好きなのは好きなんだから!」


「ふーん・・

 じゃあさあ・・

 僕と

 甘いの

 どっちが好き?」


「え~???


 もう!

 ヒロシ君の意地悪!!!」



まぶしい朝日の光の中、寄り添って歩く二人の姿があった。


一歩一歩その人生を踏み付けながら・・







メールの内容は次の通りだった。



 ヒロシ、しっかりやってる?

 新しいお母さんにヨロシク

         母より






 うん、


 時々くじけそうになるけど、


 それなりにやってるよ。


 そっちはどう?


      ヒロシ





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