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霊感ケータイ  作者: リッキー
虚空間の住民達 1
279/450

5.霊感ケータイ


僕の所持している霊感ケータイは、形は旧型の携帯電話でも、「霊」を見る事が出来、死者と会話をすることができる。


メールも・・あたかも、普通の人と会話をしているが如く・・

亡くなった人とやりとりができるのだ・・


相手が、生きているような錯覚に陥る事もある・・

僕にとっては、便利な道具となっているのだが・・












愛紗さんが、マンションを飛び出して行った後、

僕は霊感ケータイでメールを打った。



「ヒロシ君、誰にメール出してるの?」

彼女が聞いてくる。

僕のメール相手に興味があるようだった。



「え?お母さんにだよ・・」


「そっか・・」


都心でHijiriの詮索をしている母と彼女のお母さん・・

「陽子と響子ぺア」は母の死後も健在だった。


「何か、変化があったら、お母さんに連絡してるんだよ。」



「そうだね・・

 こっちは、愛紗さんが見つかったんだもんね・・


 でもHijiriの手がかりはつかめなかったけど・・」



「いや・・

 犠牲者が出なかっただけでも、幸いさ・・

 下手すれば、

 愛紗さんも、どうなったか、分からなかったし・・」



先輩の機転で、何とか愛紗さんを探し出すことができたのだ。



 お母さん、

 愛紗さんは、何とか無事でした。

 そっちはどうですか?

      ヒロシ




僕がメールを打って、お母さんに送信する。









都心・・


とある駅前の広場のベンチで、今西と陽子が休んでいた。


平日は会社員が往来する駅前なのだが、土曜日の午前中だけあって私服の休日を楽しむ人達で賑わっている。

都内の休日の人口構成は、地元の人よりも、地方からの「御登り」の人達が多いのも事実・・

駅前で待ち合わせしている人達の喋り口調は、どことなく方言が濃いのだ。



「はぁ~。なかなか見つからないな~」

ため息をついている今西・・


「仕方ないわよ・・これだけの人数なんだもん・・

 霊視をしようにも、雑念だらけで、わからないし・・」

陽子が呟く。


「そうだよな・・

 それが狙いで、Hijiriも、あえて、都心に身を隠しているのかもな・・」


「そうね・・

 一筋縄ではいかない相手だから・・」


そんな会話をしている最中に・・




「・・・・・!!!!」

陽子が何かに気づく。


「どうしたんだ?」



「待って・・

 響子にメッセージが来てるって・・・」


「メッセージ?」


「ヒロシ君の霊感ケータイからよ・・」


陽子の直ぐ隣に、響子が憑いていた。

白装束で空中に浮かんでいる。


いわゆる「幽霊」なのだが、霊感のある陽子以外には見る事ができない。

目をつむって、ヒロシの霊感ケータイからのメールを受けている響子。


通常、携帯などのメールは、文字を打つと、相手の携帯の画面にメッセージが表示される。

霊感ケータイの場合、打ち込むメッセージは、文字なのだが、

伝えた相手・・すなわち「霊」に直接メッセージを伝える。


「霊」からメールが送られてくる場合は、その逆だ。


相手の「霊」が伝えたい内容を念じると、霊感ケータイに文字となって表示されるのだ。














 お母さん、

 愛紗さんは、何とか無事でした。

 そっちはどうですか?

      ヒロシ



ヒロシから送られてきた文字が、響子の心に展開される。



「陽子・・愛紗さんが無事だったって・・

 例のアプリを持ってた子よ・・」


響子が陽子にメールの内容を伝える。



「そう・・それは良かったわ・・」



「何か、あったのか?」

今西が恐る恐る聞いてくる。


そこに、陽子の側に、響子が居るという事は承知していたものの、「幽霊」には違いない。

相手はすでにこの世に生きている人間ではなく、死んでいる「霊」なのだ。



「ええ・・例のアプリを持ってた子が見つかったって!」

陽子が答える。


「そうか・・それは良かった!」


怖いながらも、喜びを共にする今西・・複雑な心境なのだろうな・・








「しかし・・

 霊感ケータイか・・

 死者とメールができるなんて・・

 便利な道具だよな・・」


今西が感心している。



「今西君には、あのケータイがどんな物なのか・・

 本質を見たはずだけど・・」

陽子が少し強い口調で聞いている。




「ああ・・

 あの電話は

 危険だ・・


 隙あらば、

 命を奪われる。


 香織さんがそうだったように・・」



かつて、ヒロシの持っている霊感ケータイで自らの命を断った香織さんの事を思い出している今西・・


「そうね・・

 隙だらけのあなたには、

 所持するのは難しい道具よ・・」


その言葉に、少しムッとなった今西。



「隙だらけで、悪かったね~!

 どうせ、オレはいつまで経っても青二才だよ!」



「ふふ・・

 分かってるじゃない・・


 興味本位で、この世界に入ってくる事が

 どんなに危険か・・

 まだ、わからないみたいだしね・・」



「じゃあ、今、持ってるヒロシ君はどうなんだ?」


その言葉に、響子の方を見つめる陽子。

端から見ていると、単に、そっぽを向いたようにしか見えないのだが・・


「ヒロシ君は・・


 あなたの死と直面し、

 その死を乗り越えられた・・


 まだ、中学生だけど・・

 あの子の心の中には

 強いモノがある・・


 この

 霊の世界を

 自分なりに、理解しているのよね・・


 だから、

 あのケータイも

 使いこなせるのよ・・」


その言葉に、コクリとうなずく響子・・


今西には、陽子が中空に向かって、独り言を言っているようにしか見えない・・

端から見れば、危ない人なのだが、

今西には、そこに響子が居るという事が分かっているので、陽子の行動も理解していた。












「霊感ケータイ・・か・・・」


呟いて、自分のケータイを開いて、カメラモードで、陽子の視線の方を見る今西・・


普通の携帯電話の為、当然、何も映っていない。

霊感ケータイならば、そこに響子の姿が映し出されるはずなのだ。


「霊を見ることが出来、会話もできる携帯電話・・

 こんな道具があれば、夢の様よね・・」

陽子が今西に聞いている。


「ああ・・

 手軽に、亡くなってる人が見れて、話せるんだからな・・」


「私達、霊能者にとっては、日常茶飯事なのよ・・」


「そうだよな・・

 人間でも、特殊な能力のある人は、見れるんだよな・・」



「霊感ケータイは、

 そんな能力が無くても、

 霊能者と同じ事ができるのよ・・」


「確かに・・」


そして、改めて陽子が今西に問いただす。



「今西君・・

 今、霊感ケータイがあったら・・


 その携帯電話で、霊を見る事ができたら・・


 あなたは

 どうする?」



「え?オレか?」


急に、思わぬ質問を投げかけられた今西・・少し動揺している。








「亡くなった人を見る事ができるのよ・・

 あなたにとって、

 亡くした大切な人を見る事ができる・・」



「幸子・・」

今西が咄嗟に呟いた、女の人の名前・・


高校の時、一緒にオカルト同好会で活躍した恋人・・

そして、響子と同様、童子によって、命を奪われ、若くしてこの世を去った・・



「あの、ケータイで

 幸子に会う事も出来るのよ・・・」



「それは・・

 


 欲しいよ・・


 会いたい・・

 会って、また話をしたい・・・」


それは、まぎれも無く、多くの人が思う事である。

最愛の人を亡くし、もう会えないと思っていたのが、その人と再会できるとなれば・・

会う事ができれば、どんなに嬉しい事か・・



 『再会』


別れた人・・この世にまだ生きていれば、再開することもあるだろう・・


だが、死別した場合は、もう、一生会えないのだ。

その人と、また会えるとなれば・・


それは、「恐怖」という感情ではなく、「期待」や「喜び」を伴う事となる。











「死んだ人は


 もう

 戻って来ないのよ・・


 生きている人は、遅かれ早かれ、死に別れる時が来る・・


 生きている間の僅かな時間・・

 お互いが、共にする短い時間を

 精一杯、生き抜いて、お互いの事を思いやる・・

 最愛の人に、出来る限りの事をしたいって・・思うはずよ・・


 霊感ケータイを使うと


 まだ、

 既に亡くなった人が生きてるって

 錯覚に囚われる・・


 それは

 その人が生きる上で、

 支障になる事もある・・


 辛い、悲しい事を乗り越えて、

 次なる人生を歩み出す「強さ」を身に着ける上での

 支障に・・」



「新たな・・

 人生を歩む・・」




「人はね・・


 何事も

 乗り越えなければ、強くなれないのよ・・


 それも

 自分一人では、どうでもならないって事を・・


 誰かの助けがあって・・

 誰かが差し伸べる手があって・・

 初めて、乗り越えられるのよ・・

 

 あの携帯は・・

 その強くなるタイミングを

 逃してしまう道具となり得る・・」



「一人では・・

 強く・・・なれないのか・・・」











「そう・・

 私達、霊能者は、

 あなた方、霊の見えない人に

 メッセージを伝える事も出来る。


 これから起こりうる人生の・・

 『答え』を教える事も出来るのよ・・


 でも

 それは、

 フェアではない・・


 自分で見つけて

 自分で切り開かなければならない事・・


 それを

 教えては

 その人の為に、ならないのよ・・・」



「人生の・・

 修行って・・

 ヤツか・・?」



コクッとうなずく陽子・・


人にはそれぞれ、この世で生を受け、やらなければならない「使命」や「業」があるという・・

霊能者は、その答えを教える事も出来る。


弱い人の中には、その答えを知りたくて、霊能者に近づく人もいる。

そんな人に、答えを教えては、その人の為にはならないのだ・・


霊感ケータイは、霊能者に代わって、「答え」を教えてくれる道具になり得るのだ。
















「博士は・・

 その霊を見る装置を作りだそうとしているよ・・」



「そうね・・

 あの人は、私達、霊能者に強い疑念を抱いている・・


 『答え』を知っていながら、教えない私達に・・

 憎悪の様な感情さえ抱いている・・


 だから、

 霊能者なしでも・・

 霊が見えるように研究を重ねているのよ・・


 普通の人が

 霊を見る事ができるように・・


 あなたの

 その携帯で

 手軽に見れるような研究をね・・」



「博士の理論は、

 『霊』は人格も無い・・

 空間上に残った・・過去の記憶の塊だという・・」




「そうね・・

 その通りよ。」




「え?」


今西が、その意外な答えに驚く。



「『霊』は、過去に生きていた人の記憶の媒体・・

 それは、広い意味では、合っている・・・」



「じゃあ、君が、博士に反論する事なんてないじゃないか?」



「そうね・・

 その通りよ・・


 問題は、

 その霊と、どう向き合うかなのよ・・


 単なる

 自然現象ではない・・


 この世の二重構造を理解して

 この世界を・・

 「生」と「死」の意味を・・

 どう考えるか・・


 その人の真価が問われる・・・

 「答え」がそこにあるのよ・・」



「人生を生きる上での・・

 答え?・・・」


都会に林立するビルの隙間から覗く空を見上げる今西・・


晴れ晴れとした秋の空が広がっている・・




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