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霊感ケータイ  作者: リッキー
来ちゃった
268/450

152.心の整理


僕と父が、彼女たちの入った部屋から閉め出されている。

廊下で、ドアの向こう側の出来事を単に聞いているだけ・・


話し声も、正確に聞こえてきているわけでもなく、不安だけが募る。


「お父さん・・・どうなったのかな・・」


先程まで、愛紗さんの泣き叫ぶ声が聞こえて来ていた。

急に静かになり、逆に心配だ。


「わからない・・

 今は、見守るほかはない・・・」


「そうだね・・」


再び、ドアの方を見つめる僕・・

父は、居間の方へ歩いていく。


「ま、心配しても始まらないよ・・

 あとは、静江さん達に任せるしかない。」



ドカッとソファーに座り込み、新聞を読みだす父。

僕も、先生や彼女を信じて、やれることをすることにした。

キッチンのシンクに重ねられた食器を洗いだす。


居間と台所を挟んで僕と父が二人・・

会話も何もない空間・・


父がポツリと言う・・


「久しぶりだな・・

 二人きりになるのも・・・・」


新聞から目線を上げて、僕の方を見ている父。

確かに、父と先生が再婚するまでは男二人だけの暮らしが続いていた。


母の想い出から離れられなかった時間・・

今の状態からは、考えられないけれど、シーンと静まり返った空間・・

良く考えれば、愛紗さんも、その時と同じ心境なのだろう。


剛さんは亡くなって、まだ1年だけれど、

僕は、5年間も、ずっと母の死を受け入れられなかった。


ひょっとしたら、部屋の向こうから、母が現れるのではないかって・・










「そうだね・・

 俺たち、ずっと二人暮らしだったからね・・・」


食器を洗う手を止めて、答える僕・・


「ヒロシ・・

 まだ、母さんの事を覚えているか?」

父がポツリと言う・・


母とは、霊感ケータイで会話もしているので、覚えているも何もない・・

それは、普通ではありえないのだけれど、

それがあるから、母の死も受け入れる事が出来るようになった。



「うん。

 お母さんとの想い出は

 まだ、覚えているよ。」



「そうか・・

 オレも、静江さんと再婚したけど、


 まだ、

 響子の事は、忘れられない・・・


 短い間だったけど・・

 想い出は、鮮明に頭の中にある。


 それは、

 静江さんには、

 済まない事なのかもしれないけれど・・」


父も先生と再婚したとはいえ、お互いに家族があった。

僕と父には、亡くした母が・・

先生には、パパと翔子ちゃんが居た・・

それぞれに、過ごしてきた時間の分だけ、想い出がある。


霊感ケータイで、会話ができ、その存在が今でも確認できたとしても、

生きている時を、共有できる日々は、戻って来ない。

皆、この世を去っているのだから・・・



「それは、オレも同じだよ・・

 先生は、新しいお母さんだけれど・・

 オレにとって、『母』は『お母さん』だけなんだ・・・」



未だ、先生を「母」と呼べない僕がいる・・・

それは、まだ、『家族』として認識していないのだろうか・・



「そうか・・・

 過ぎ去った想い出は、

 消える事は無い。


 亡くなった人達との想い出を

 大切にしたいのは、

 オレも同じだ・・


 それは、

 先生も同じ事だ。


 翔子ちゃんや、前のパパとの想い出は

 先生にとって、大事なものだ。


 オレは、

 それを受け入れる。


 大事なのは、

 これから、新しい時と

 想い出を共有しあえる

 『家族』になる事だと思うよ・・


 それは、

 直ぐになれるものではないかもしれない・・


 でも・・

 いずれ、

 解決すると思うよ・・・


 時間をかけて、

 整理していけば、良い・・・」


「父さん・・」


再び新聞を読みだす父・・

僕も、洗い物を続けた。
















「愛紗さん・・」

愛紗さんの肩をポンとたたく先生・・


「うう・・・」

涙でぐしゃぐしゃの顔を上げた愛紗さん。


「私も・・

 娘を失ったのよ・・」


「え?」


「つい、この間・・

 5年間も意識不明で、ついに目はさめなかった・・

 この部屋は、翔子の使っていた部屋なのよ・・

 あの子の想い出を失いたくなかったから・・

 部屋の荷物は、ずっとそのままだった・・

 あなたの気持ちも、良くわかる・・・・」


「娘さん・・

 確か・・

 翔子さんって・・・」



「そうよ・・

 私は、若くして、旦那にも先立たれた・・

 娘の看病に明け暮れた毎日だったけれど・・


 いつまでも、

 メソメソしていられない・・


 前を向こうって・・

 決めたのよ。」


「前を?」



「私の・・

 新しい家族・・

 大切な人達が増えたの・・

 今は、その家族と暮らす幸せをかみしめているわ・・

 娘や、元の夫の分も・・」









「私は・・


 剛君の事を・・

 忘れられない・・・


 私が

 剛君を忘れたら・・


 本当に、

 この世から

 剛君の全てが

 無くなってしまいそうで・・

 怖いんです。


 剛君が

 生きていた事も・・

 私との・・

 想い出までも・・

 消えてしまいそうで・・」


「もちろん・・

 前の家族を忘れたわけじゃないわ・・


 新しい私の家族も・・

 前の家族を、

 前の夫と、娘を・・

 ちゃんと受け入れてくれた・・


 ヒロシ君は・・

 翔子の事を、実の妹の様に・・・


 いえ・・

 それ以上に慕ってくれた。」



「ヒロシ・・

 君?」



「あなたも、会った事があるって聞いたわ。

 望月さんと一緒に、駅前のハンバーガー屋で・・」

彼女を指して説明している先生。


僕と彼女が一緒に居た事を思い出す愛紗さん。










「あなたが・・

 望月さん?

 そういえば、仲の良い子が一緒だったわね・・」


彼女とはハンバーガーショップで会ったが、

剛さんの法事でも会っていたと聞いている。




「はい。

 いきなり、叩いてスミマセンでした。」

ペコリと頭を下げる彼女。


「いえ・・


 私も

 感情的になりすぎたわ・・・」



「愛しい人を失えば、

 誰でも悲しみに打ちひしがれると思います。


 私も

 ヒロシ君と別れたら

 死ぬほど、

 気が狂うかもしれない・・・


 剛さんの

 法事の時に・・

 言われた通りですよ。


 でも、死ぬのはいけない事です。


 愛紗さんが亡くなれば、

 それこそ、

 剛さんの想い出を持った人が

 居なくなるってことですから・・」



「・・それは・・


 そうなのかも・・

 知れないけど・・・」


うなずいてはみたものの・・

いまいち、納得ができない愛紗さんだった・・・



「そうか・・

 あなたの彼氏が、先生の新しい家族になったんだ・・・


 あの時、会った子が・・

 ヒロシ君・・か・・


 なんか・・

 奇遇ですね・・」


その言葉に、先生が答える。

「ええ。

 偶然は、必然とも言うけれど・・

 不思議な縁があるのよ・・


 望月さんも、ヒロシ君も・・


 そして、

 新しい旦那さんも・・」



「良い人に・・

 巡り会ったんですね・・・」


「そうね・・

 いつか、あなたにも、

 そういう人と会える事を

 願っているわ・・


 あなたも、

 幸せにならなきゃ・・


 剛君も悲しむと思うわ。」


その言葉に、俯く愛紗さん・・



「そうですね・・


 でも・・

 私は・・

 もう少し・・・

 心の整理をしたいんです。」


「愛紗さん・・」



「今は、

 自分の幸せよりも


 剛君と

 過ごした日々を

 大切にしたいんです。


 直ぐに

 忘れる事なんて・・

 できない・・」


「そうね・・

 ゆっくりでいいのよ・・」


その言葉に、少し、表情が和らいだ愛紗さん・・











  ぐぅ~~~~



愛紗さんのお腹が鳴っていた・・・

昨日の夕食も抜いて、ずっと食事をしていなかった愛紗さん・・


「うふ・・

 人間、

 生きていれば

 お腹も空くのよ・・・


 朝ごはんにしましょう!」


「はい・・・」

少し、赤面している愛紗さんだった・・





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