146.公園で
お寺。
彼女の部屋。
何者かに、再度、ワラ人形で攻撃されている美奈子・・・
胸が苦しそうで、押さえている。
「う・・やっぱり・・・もうダメ・・・!!
ガマンできない!」
美奈子が人差し指を差して、部屋の四隅に印を打つ。
バシィ!!!!!
結界を展開した。
「ハア・・・ハア・・・・」
布団にバッタリと倒れる美奈子・・・
丘の上の公園。
市街を見渡せるベンチのある公園の、脇にある樹林帯の中で、木の幹に貼り付けているワラ人形と打ち付けている・・
男の人の姿。
ワラ人形の頭部には「望月美奈子」と書いた紙が貼られ、胸の辺りに五寸釘が打ち付けられている。
その釘を打とうと、金槌を振りかざす男の人。
ビーン!!!
ビシ!!
その金槌の頭部が、柄から外れ、その男の額に当たった。
「ぐあーーーー!!!!」
男の悲鳴が、林の中にこだまする・・
額を押さえる、その男・・
手の隙間から血が流れてきた。
美奈子が結界を張り、その怨念が跳ね返ってきたと言うのだろうか・・・・
「お願い・・・もう・・やめて!」
美奈子が呟く・・・
公園の林で、額を抑えている男性。
手元の金槌を見るが、先端の槌部分が飛んで、柄だけになっている。
周りを探すが、先端部が見当たらない。
金槌が元に戻らなければ、ワラ人形を打つ作業が再開できない。
暗い林の中で、足元も暗く、全く見えない状態で、手探りで探す男性の耳に、僕と先輩の声が耳に入る。
咄嗟に、草むらに身を隠す男性。
「こっちなんですか?」
先輩が、中空に漂っているであろうパパに聞いている。
そうだ。この辺りだよ。
翔子パパ
「あの、林の方じゃないでしょうか?」
僕が樹林帯の方を指差す。
街を見渡せるベンチの脇に広がる林に向かう僕と先輩とパパ・・・
林の中は真っ暗で、公園の中央にある水銀灯の明かりだけが頼りだった。
ガサガサ
足元の草を掻き分けながら進む僕達。
パパの話だと、この辺りからワラ人形を打つ音がしたという。
「音」と言っても、「怨念」の衝撃波のようなものだそうだ。
「どうですか?」
先輩が聞いている。
さっきから、音がしなくなっている・・
どうしたんだろう・・
翔子パパ
真っ暗な林の中を、目を凝らして進む僕達・・
コツン
僕の足に、何かが当たった。
「何だ?」
足元に、拳の大きさの金属の塊が落ちていた。
拾い上げると、それが金槌の先端部分だということがわかった。
柄から外れたらしい。
「これは・・金槌の・・・」
「その形、この間、私が使った物と同じよ・・
Hijiriから送られてきた、ワラ人形のセットに入ってきたの・・・」
先輩が彼女に用いたワラ人形のセット。
他の誰かに、また、送りつけてきたというのだろうか・・
先程からパパに音が聞こえないと言う。
金槌が壊れて、ワラ人形の作業が中断しているのだろうか。
ならば、この近くに、あるはずだ。
再び、目を凝らして、辺りの木の幹を観察する。
少し、離れた開けた場所の木の幹に、なにやら貼り付いているのが見えた。
恐る恐る近づく僕達。
「これですね・・・」
それは、先輩に送られてきたのと同じワラ人形だった。
何か、名前が書いてある紙が頭の部分に貼られている。
望月 美奈子
その名前を見て、背筋に寒気が走った。
明らかに、ここで、呪いの儀式が行われていたのだ。
ワラ人形の胸に打ち付けられている5寸釘・・
「私の時と同じよ!
まだ、この近くに居るわ!」
このワラ人形に釘を打っていた「誰か」がこの近くにいる。
パパの話だと音が聞こえなくなってから、まだ僅かな時間だと言う・・・
周辺を見渡すが、真っ暗でわからない。
先輩が、僕の手に寄り添ってきた。
「ヒロシ君・・」
恐怖に苛まれて(さいなまれて)いる様子の先輩。
誰かが、僕達の様子を覗っているような気配がする。
ガサガサ・・
すぐ近くの草むらで音がした。
「そこに誰か、居るのか!?」
僕が叫ぶ。
ザザザ・・・・
誰かが公園の方へ逃げる足音がした。
追いかける僕達。
パパからメールが届く。
中学生くらいの男の子だ!
私が後を追うよ!
翔子パパ
幽霊のパパならば、相手を逃がすことはないだろう。
こんな時は便利な存在だった。
公園の広場を走っていく一人の男性。中学生くらいの男の子だと言う。
その後を追いかけていくパパ。
が、その時
ビューーーーー
一陣の風が吹きすさぶ。
そこに、大きな熊の姿をした黒い塊が立ち塞がっていた。
「きさまは!」
パパが叫ぶ。
「久しぶりだな・・・・」
この前、対決した星熊童子が立っていた。余裕の表情の星熊童子。
応戦体勢に入るパパ。
間合いを取って、相・対するパパと星熊童子。
地獄での特訓がどこまで通用するのか一抹の不安の残るパパ・・
握った拳から汗がにじみだす・・・
ブワーーーー!!!!
星熊童子が腕を振りかざし、衝撃波が走る。
「く!!」
バリアーを展開するパパ。
ババッババッバババッバ!!
辺りの草むらの草が音を立てて、散っていく。
僕達が、そこへとたどり着く。
チャラララ・チャラララ
霊感ケータイにメールが入る。
来るな!!童子だ!!
翔子パパ
カメラを作動させると、そこに、パパと水銀灯の近くに立ち塞がっている
星熊童子
その姿があった。
「あれは・・音楽室で見た!」
先輩が叫んでいる。
チャラララ・チャラララ
更に通話が入ってきた。
ピッ
僕が、その電話に出る。
「星熊童子なのか!!?」
「その通り・・
久しぶりだな・・・
ヤスマサの子孫よ・・
その容姿・・
よく似ておるわ・・」
「ヤスマサ?」
初めて聞く名前に戸惑う僕・・
「霊力も無い身でありながら、
望月の君の子供達と共に・・
我ら四天王と親方様を封印した宿敵・・
その恨みは、晴らさせてもらうぞ!」
「親方様???
酒呑童子の事か!!」
僕と彼女が対決したのは、酒呑童子だったと、拓夢君や先輩の調べでわかったが、本当のことだったのだろうか・・
「その通り・・
京の都も、もうすぐ、手中に収められるところだったが・・・
ほう・・
隣の娘は
紗代・・・」
「紗代?」
童子が、その目をキッと見開いて、こちらを睨む。
パパがその間に立ち塞がる。
「今回の作戦は、失敗に終わったが、
ジワジワと貴様達を追い詰めていくぞ・・
覚悟しておくのだな!!」
バーーーーー!!!!!!!
その手を再び振りかざす星熊童子。
「ヒロシ君!伏せて!!!」
パパの声がケータイに入ってきた。
その通りに僕は先輩に覆いかぶさり、身を守る。
ババッババッババッババババ!!!!
辺りの葉っぱや土が舞い上がる。
パパのバリアーが展開されていた。
バリアーで守られる僕と先輩。
砂埃や枝葉の塵で前が見えなくなる。
その、埃が落ち着くと、童子の姿は跡形も無く消え去っていた。
もちろん、逃げた男子も、見当たらない。
くそ!
目くらましだったか!
男の子を逃したのか!
まだ、近くにいるはずだ。
探してみるよ!
翔子パパ
「う・・・」
身動きが取れなくなっている僕・・
「パパさん。ヒロシ君が!」
さっきの通話で疲労したな・・
童子がいつ、襲ってくるかわからない・・
離れるわけにもいかんか・・
翔子パパ
公園のベンチに座り、少し休むことになった・・・
ベンチに座る僕を介抱している先輩。
「大丈夫?ヒロシ君!」
「はい・・ちょっと疲れてるだけです・・・」
霊感ケータイは少し通話しただけでも、体に負担がかかる。
なるべく、メールで済ませたいのだが、悪霊は逆にそこを狙って通話してくるのだ。
「あの童子の話・・」
ポツリと先輩が言う・・
「はい・・ヤスマサとか言ってました・・・」
「平井保昌・・・
文献からは消されているけど、
源頼光と共に酒呑童子を退治したって・・・
ヒロシ君が・・
ヤスマサの
生まれ代わり?」
「僕が・・
生まれ代わり・・
平井・・
保昌・・・
の・・
先輩の事を・・
紗代って・・
言ってました・・
望月の君って・・・
ミナの事?でしょうか?」
「わからない・・
文献とか読んだとしても、
そんなに細かくは書いていないわ・・
伝承なんて
ある意味、作り替えもされてるから・・
どこまで、本当なのか・・・」
彼女が前に言っていた・・
僕と彼女は、ずっとこの世を、見てきた気がするって・・
何度も何度も、生まれ変わり、その度に、僕と出会い、
お互いに想い続けてきた・・
その中の一つに
ヤスマサという人物だった時期があって、
望月の君・・・
おそらく、その苗字から言って、代々、彼女の性が受け継がれているのだろう。
遠い先祖が、あの妖怪と対決をしていた。
今と、同じように・・・
僕と彼女は、ずっと絡み合いながら生まれ変わっていたのだろうか・・・




