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霊感ケータイ  作者: リッキー
紗代
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144.イクシマと紗代


夕食が終わり、一人部屋にて書物を読んでいるヤスマサの部屋へ赴く和泉の君。


「兄上・・・宜しいでしょうか?」


「うむ・・・」


書物を置いて、相・対して座るヤスマサ。


「昼間の件、正子から聞いたのですが、

 紗代殿が童子に襲われたと・・

 大事に至らず、ほっとしました・・・」


「家来が二人、やられてしまった・・・

 我が邸内の者も、童子に狙われている事・・

 皆に良く伝え、注意をせねばならぬ。


 常に、戦場にあると・・

 心を引き締めてかからねばならぬようじゃ・・・」


「紗代殿の件は、

 正子がお札を頂きに上がれば良いと

 軽率にも申したが故の失態でしたが・・

 

 紗代殿も

 望月様の事を想うての事なのです。

 どうか、お許しの程を・・」


「望月様の・・為に・・」


紗代が離さなかった病除けのお札を見つめるヤスマサ・・・


「のう・・・和泉よ・・・」


「如何しましたか?」


「紗代殿を見る度・・

 亡きイクシマを思い出す・・

 今日の件もそうじゃが・・・

 容姿が似ているだけでなく、

 心までも、イクシマに似ていると・・

 思うておるのじゃ・・」


「それは・・

 私も同じでございます。


 自ら台所へ立ったり・・

 用事へ自分で赴くところ・・

 何かをしていなければ、済まぬ事・・

 他人に尽くす御心までも・・


 イクシマに似ていまする。」














「ワシが東方征伐に赴く前の事じゃ・・

 望月様が、ワシの前から姿を消し・・

 途方に暮れていた時・・


 イクシマが、ワシの心の支えとなってくれたのじゃ・・

 まるで、望月様の「代わり」となってくれた様じゃった・・」


「兄上・・・」


ヤスマサには、高野山へ行く際に、望月の君とイクシマとで交わした約束など、知る由もなかった。

和泉の君は、その事に薄々感付いてはいた。

身ごもった子が、頼光の子供であるという事も聞かされていた和泉の君・・・



「望月様には、悪いのではあるが、

 あの時、ワシはイクシマを心から好いておった・・・ 

 婚礼の儀を結ぼうかとも考えておった程なのじゃ。」


「それは、

 イクシマも

 幸せにございましたでしょうな・・


 イクシマは幼い頃から、

 兄上を慕っておった故・・・」


「紗代殿も同じ事を申しておった・・」


「さようで、ございますか・・」



「和泉・・・

 女子の幸せは、慕っている男と暮らし、

 その子が授かれば、これ以上の事は無い・・

 と申しておったよのう・・」


「はい。」


幼い頃の話を思い出しているヤスマサ。




「帝の一件がなければ・・

 話は変わっていたのかも知れぬ・・・

 ワシとイクシマの間に、子供がいてもおかしゅうない仲だったからのう・・・


 それだけが、心残りなのじゃ・・

 イクシマがこの世で、味わえなかった幸せを、

 紗代殿に与えるのが

 ワシの宿命なのではないかと・・

 思うたのじゃ・・」


「兄上・・


 もしや、

 紗代殿を・・

 本妻にと?」



「それは・・・

 分からぬ・・

   分からぬのじゃ・・・


 ワシは、

 やはり・・・

 望月様を・・・」


「兄上・・・

 望月様には、婚儀の件を申されたのですか?」



「ああ・・

 未だ、心にわだかまりがあるようじゃ・・

 心の整理がつくまで、待ってくれと、申された。


 ワシは、

 光殿を、身内同前に扱っておる。

 ワシには、光殿が誰の子であろうと、構わぬ・・・」


和泉の君は、望月の君より打ち明けられている。


 光が頼光の実の子であると・・・・


その事が、望月の君にとって、大きな心の傷になっている事が痛いほど良くわかっていた。

心の整理など、つかない程の事であるとも・・


そして、

光が誰の子でも構わないという、ヤスマサの姿勢が、

逆に、望月の君に対して、酷な事であるとも・・・察していた。


ヤスマサから突き落とされた方が、踏ん切りがつくであろう・・

望月の君にとって、それが足かせになって、抜け出せない原因にもなっているのだった・・


その対応が、かえって望月の君を苦しめている・・





「兄上は・・・

 何故、そのように、お優しいので、ございますか?」



「何を・・

 申すのじゃ?」


いきなり、和泉の君が、何を言いだすのか見当もつかなかった。


「女子には、常日頃、優しく接しておる。


 いや、

 どんな者にも、分け隔てなく、接するのが

 人の道だと思うておる・・・


 幼き頃から、そう、教わってきたからのう・・・」


それは、和泉の君も同じだった・・・

両親から、そういう風に教えられてきたのだ。

また、ヤスマサに至っては、剣術の指南役であったイクシマの父からも強い影響を受けていた。

剣術や妖術と共に、人の道も示され、叩き込まれた幼少期を過ごしたヤスマサ、伊吹丸、イクシマ、和泉の君・・この4人が同じ価値観を持つに至っているのは想像に足りる。



「確かに・・

 そうですな・・・

 私めも・・

 それが、

 人の道の美徳と・・

 教わってきました・・・


 でも、


 人間・・

 多少は、ずる賢くなった方が

 良いのかも知れませぬ・・・」



「ずる賢く?」



「私には、自分が何を言っているのか、

 見当もつかなくなって参りました。


 何が、いい事で、

 何が、悪しき事なのか・・


 分かりませぬ・・・」


そう言って、ヤスマサの部屋を出て行く和泉の君・・・

しばらく、モノ想いにふけってたが、やがて、疲れて寝込むことを決めたヤスマサ・・・











そして・・


遠い子孫である、ヒロシも、同じ事で悩む事となる・・・


それは、


望月の君の子孫である美奈子も同様である。




皮肉にも


どちらも、


星熊童子の精神的な攻撃に利用されているのだった・・・










 物語は、



  再び、



 現代に戻る・・






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