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霊感ケータイ  作者: リッキー
悪霊
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二十五.絶体絶命



・・その時・・



例の布が僕たちの目の前に立ちふさがる・・・



布がぼろぼろと崩れ落ちる



霊感ケータイから激怒した悪霊の声がする。



「ワシの顔に傷をつけおって・・・

   許さんぞ!」


ブワーーーーーーッ!!!!!!!



再び、ポルターガイスト!

教室内に風が吹き荒れ、机や椅子が宙に舞う。



バキッ!

「うわーーー!!!!」

椅子が僕にぶつかり、飛ばされる。


「う!」

黒板に頭を打って気が遠くなる。


彼女の体は反対側の壁にはじき飛ばされていた。

女の子や母の姿も、ちりじりになっている・・


「ハッハッハ!

 手も足も出せまい?!」


霊感ケータイから、悪霊の声が鳴り響く・・

この世の全てを手に入れたように勝ち誇っている・・


「フフフ。

 この娘の命、

 もらって行くぞ・・


 お前には逃げる時間を与えてやろうか・・」


カメラ越しに、彼女の体に触れようとする悪霊の姿があった・・






 「待て!!!」


僕は、最後の力をふりしぼって、悪霊に言い放つ。


悪霊の足が止まった。



「その子は助けてくれ・・


 オレはどうなってもいい・・」



再び、霊感ケータイから、悪霊の声が響く。


「その言葉を聞くのも気持ちが良いものだ!


 愛するものを助ける人間の心・・


 美しいねえ・・」


悪霊が振り返る。


「お前たちの血に邪魔されて何百年・・!

 この積年の恨み・・

 ただでは消えんよ!」


「恨み?」


「教えてやろう・・

 私が人間だった頃から、

 この小娘やお前の一族に散々邪魔され、


 妖怪となった今でも、

 まだその血に翻弄されてきた。


 結界を張られ、

 身動きのできなかった何百年・・


 お前たちの首を取ろうと、

 このタイミングを待っていたのだ!」

積年の恨み?僕の一族と遥か昔からこの悪霊と死闘を繰り返してきていたというのか?


「この学校を狙っていたんじゃないのか?」


「こんな学校など、興味も無い!

 お前たちを狙っていたのが、本当の目的だ!


 この小娘がどこに行ったのか探していたが・・

 妙にお前だけはこそこそかぎ廻っていたようだったしな・・」


ああ・・・


この悪霊には僕の動きはつつぬけだったらしい・・


僕はただ泳がされていただけなのだ・・


「そんな時に、お前の母親が、まんまとワシに捕まりに来たのだ・・

 お前を守ろうとしていたらしいがな・・」



母が・・


僕を守っていた・・


僕は何もわからなかった・・



この悪霊との戦いはどう考えても勝ち目がない。

そう察した僕は・・


「和解は・・できないのか?」



「フハハハハ!笑わせるな!


 この恨み・・

 その血を見ない限りははらせないねぇ!


 そこで、この娘の最後を見届けるがいい・・


 もっとも、直ぐにお前も送ってやるがな!

 仲良くあの世で暮らすがいい!


 ワシからの手向けだ!!」


その言葉とともに、再び彼女の方へ振り向き、その手を振り上げて一突きにしようと構えている・・


ああ、もう何も出来ないのか・・


気絶した彼女を見る・・・


彼女の言葉が僕の心に突き刺さる



「私、自分が何時死んで、

 どうやって死ぬのか分るんだ」



「ごめん、

 守ってあげられなかった・・」


彼女は命がけで僕を守ろうとした。


こうなる運命を知っていて、それでも、僕を救おうとした。












霊感ケータイを使い切った僕の体は疲労も限界に来ている。


意識が朦朧もうろうとしている中、頭に浮かんだフレーズ




・・彼女の家で聞いたあの言葉・・



「これって、神とか召還もできるの?」


「神界は、海外通話みたいなものだから、通話料がかなりかかるよ・・

 命が無くなるかもよ・・」





僕にも命をかけて守るものができた!



   彼女を守るんだ!



僕が彼女に出来る最後のことは、これくらいしかない・・





「オレの命、



 持って行け!」






  ピ・・ピ・・・





「このガキ!!


 何をした?ーーーー」


悪霊が叫ぶ。


霊感ケータイが僕の手からポロリと落ちる・・





携帯の表示には




「11」





長距離通話は、






僕の命を奪っていく・・






気が遠くなる。






意識が薄らいでいく中、





僕は見た。






神なんて信じない性分だったけれど、





最後の最後で人間がすがるのは神なのだ。







眩い(まばゆい)光を放ちながら、






「それ」はやってきた。









  十一面観世音菩薩








その姿があった・・





そのきらびやかな出で立ちは、





この世の美を集約したような姿だった。





彼女のお寺で見た観音像そのものの姿・・





 カッ―――――――!





 「ウワァァアア――――――!!!!!」



全身から放たれた、眩しい(まぶしい)光に包まれながら、



悪霊は、もがく間も無く、瞬く間に消えていった・・・







・・全ては終わった・・






そこで、僕の記憶も途絶えた・・・




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