135.交換条件
シュン シュン!!!
一瞬で、式神に取り囲まれる望月の君・・
「く!」
こちらも、式神を放つが・・頼光側の式神にまたたくまに消されてしまった。
「そこまでだ!!」
振り向くと、先程のもののけ達に囲まれている。
取り押さえられ、縁側に居る頼光の前に連れて来られた。
「ほう・・これは・・大納言殿に仕えておられる陰陽師ではないか・・・
今宵は、我が邸宅に何の用ですかな?」
勝ち誇った頼光に、キッと目を見開く望月の君・・
「もののけを裏で操る黒幕を探っておったのです!」
「ほお・・・
その黒幕が誰だか、分かったと・・・」
「頼光殿!あなたは、もののけを使ってまで、都の民を脅かし、
帝を追い詰めようと言うのですか!
そうまでして・・・」
「ふふ・・・
そのような大それた事など、企んではおりませぬ・・・」
「この期に及んで・・・」
「我が目的は、
そなたの慕っている、ヤスマサの命・・」
「何と!!!」
頼光の答えに驚いた望月の君。
「宮中で暗躍する妖術師と、とりまく輩を一掃したいのが、
我らの目的。
昨今、その者達の存在が大きくなってきた・・
今の内に悪しき存在は取り払っておこうという関白様の御意向でな・・・」
「そのような・・・
政は、関白様独断の物ではありませぬ!」
「力在る者が収めるのが、よいのでござる・・
力なき帝や茨木の君の、ままごとでは、この国をまとめて行けぬのです。
唐の国も危ういと聞く・・
大きな時代の流れに対応できる力が必要なのです。
民も悪政に苦しんでいるともっぱらの噂ですが、
先の飢饉や疫病にて、地方も財難なのは民も承知の事・・
それを政のせいにする・・
誠に身勝手な話です。」
「それは・・・」
望月の君にも、その事情は分かっていた・・
唐が滅び、宋と言う新しい国に生まれ変わる前夜・・
大きな時代の渦が、日本を襲おうとしていた・・
国風文化の栄える平安の時代、鎖国に近い政策をとっていたとしても、近隣諸国には目を配っていなければならない。
国内の統治でさえ、ままならない存在では、対応が難しいのが現状だった・・・
「御分かりならば、大納言殿に、宮中よりヤスマサとその配下の者達を引き上げさせ、
新たな帝を立てるように進言して頂きたい・・・」
「それなら、真っ向から、なぜ、帝に直訴されぬのですか!
このような・・なぶり殺しの様なやり方など・・・!」
「手段が気に入らないと言うのですかな・・・」
「このように、こそこそと・・
裏で手を回すのが、
真の政を目指すお人のやる事だと、
思えないのです!」
激しい口調になる望月の君。
「ふふ・・
そなたは、ご自分の御立場が分かっておられないようだ・・・」
「く!」
取り押さえられている身の望月の君・・
「そなたの、命を取る事は、
た易い事なのです・・・」
首に指をやり、スッと振る真似をする頼光・・
「そして、
ヤスマサの命も・・」
「ヤスマサ様を・・!
何をなされるおつもりか!!」
「私や関白様の力をもってすれば、あやつの息の根を止めるも、
た易い事・・もののけの騒動を用いずとも・・」
キッと目を向ける望月の君・・
「ヤスマサ様から、もののけの追従を止めて頂きたい!!!
私はどうなってもいい!!」
「ほう・・
愛する者の為に、
ご自分の命を犠牲にする御覚悟か・・・
何とも、美しき事・・・」
ニヤッと笑う頼光・・・
「よろしい・・
そなたの頼み・・
聞いてしんぜよう・・」
「え?」
「その代り、条件がありまする・・・・」
ヤスマサの命を保証する代わりに、頼光から出された条件・・
それは、大納言やヤスマサ、宮中内に居る伊吹丸とのやり取りを流す事・・
事実上の密偵に他ならない・・
そして・・・・
頼光の部屋に敷かれた布団の上に座る望月の君・・
スダレを上げて部屋に入ってくる頼光・・・
「ふふ・・
その美しき身も心も・・
我がモノとなる決心がついたようだな・・・」
俯く(うつむく)望月の君・・・




