二十一. 修行
山奥の神社。
彼女の母が修行をしている神社である。
その脇に滝がある。
白装束の彼女が滝に打たれている。
般若心経を唱えながら水の勢いに耐える。
それを見ている彼女の母。
厳しい目で見つめる・・・
水の勢いで倒れこむ彼女・・
怒涛の水にはたき込まれる。
思うように立ち上がれない・・
お母さんは手出しをしない。
「美奈子!
そんなんじゃ、あの親子は救えないわよ!」
「ヒロシ
くん・・」
キッと目を開き、また修行に戻る・・
壮絶なる修行の日々を送っていたのだった。
トゥルルル・・
トゥルルル・・
その夜、僕の家の電話が鳴る。
受話器を取ると、彼女の声。
何だか懐かしい・・
「元気にしてた?」
「うん。そっちは?」
「痛っ---
何とかね・・」
どうやら、痛みをこらえて電話をしているような気配がある。
「大丈夫?」
「うん・・
ちょっと大変・・」
無理しないでいいのにって思ったのだが・・
「ところで、学校のほうは変わったことは無い?」
彼女が聞いてきた。
「ん~。
教室では何も無かった。
でも、最近、運動部で怪我が多くなってるとか・・
先生が言ってたな~」
「そう・・」
電話の向こうで、考え事をしている様子だ・・
「あのさ・・
私の代わりに、霊感ケータイで学校を調べてもらえないかな・・」
「へ?」
「私のお父さんに、今まで調べていた図を預けてあるの・・」
先週まで、先生の事を調べながら学校中の地縛霊、浮遊霊を調査していたそうだ。
そんなの、いつの間に・・
そう言えば、僕の母の法事の時も慌しかった。
ひょっとして、先生の娘さんの魂の調査をしている時も調べていたのだろうか?
なんか、知らない時に、色々とやっていたなんて・・
「オレ、そんなことできるかな・・」
「うん!簡単だよ。
霊感ケータイで、地図の霊を確かめるだけだから。」
確かめるだけ・・・
霊感少女の彼女ならば何の抵抗も無く、すんなり出来るのだろうけれど、僕は、まだ霊の世界に触れて間もない。
「でも・・
やっぱり、気味が悪いよ・・」
「大丈夫だよ。
相手は何もしてこないから!」
何もしてこない・・
そう言われても、相手は霊だ・・この世に生きている者ではない。
「だ・・大丈夫・・かな・・・」
「うん!大丈夫!ヒロシくんなら出来る!」
太鼓判を押している彼女・・
ちょっと、考えたが・・
「うん・・やってみるよ。」
最後には決心をして彼女の申し出を受け入れたのだった。
半ば、彼女に押し通された感じもあるが・・
「ありがと!
それじゃあ、お父さんに伝えておくから、お願いね!」
ガチャン!
一方的に切られてしまった・・
僕って、貧乏クジを引くタイプなのかなあ~・・
でも、幾つもの経験をして、ちょっぴり面白そうでもあったのだ。
いつまでも、下僕や助手ではいけないって、思っていた。
彼女にも良いところを見せたいし・・
「霊感ケータイ」を握り締める。
明日から、学校中を探検だ!




