87.ライバル
お寺
布団に寝かせられている美奈子。
脇で座る先輩。美奈子を見つめる・・・
沙希ちゃんは、先に帰ったが、先輩は残ったのだった。
「望月さん・・・」
美奈子に話しかけるが・・
「済みません・・運んで頂いて・・・」
「・・・・・」
先輩は、しばらく黙っていたが、重い口を開く・・
「何で、そんな言葉が出るの?」
「え?・・
それは・・
ここまで、運んで頂いたから・・」
「それはヒニク?
ワラ人形で呪われて、その相手に運んでもらって・・
『よくも、ここまで痛めつけてくれたわね』って
言うのが普通でしょ?!!!
私は、あなたを呪ったのよ!!!」
目を閉じて、呟く美奈子。
「そうですね・・
よくも・・
やってくれましたね・・・
先輩・・
この痛みは、半端じゃないです・・・」
起き上がろうとする美奈子。
「う!!」
胸の傷が痛む。
咄嗟に、寄り添う先輩。
「大丈夫!?」
上半身を起こして、ハアハアと息苦しい美奈子・・
「大丈夫・・・・
じゃ・・
ないです・・」
痛みを我慢しつつ、笑みを漏らす美奈子。
「ごめんなさい・・・
私・・・
こんな事になるなんて・・・」
涙が溢れている先輩。
その手を握る美奈子。
「先輩は、何も知らなかったんですから・・
仕方がないですよ。
それに、
私にも覚えがあるんです。
『嫉妬』したことあるから・・・
先輩の気持ちが分かるんです。」
「あなたも?」
「ええ・・
前に、ヒロシ君に浮気されたことがあって・・・」
「浮気?」
『浮気』になるのだろうか・・・まあ、そうなるのだろう・・・
「ヒロシ君って・・
人から好かれるんですよ・・・
いえ・・
人ばかりじゃないか・・・『霊』からも・・」
「『霊』??からも?」
「はい。
雨宮先生の娘さん・・
亡くなってるんですけど、
翔子ちゃんから好かれてて・・
その子も、私より霊力が強くなってきて、
ヒロシ君の中で、存在が大きくなっていった・・・
私・・
ヒロシくんと付き合ってるはずだったけど・・
翔子ちゃんは・・
妹の存在だってわかってるハズだったけど・・
気が付いたら・・
私・・
その子に嫉妬してた・・
自分以上の力と存在・・
それが許せなかった・・・」
「望月さん・・・」
意外な告白を聞いた先輩。
「ヒロシ君って、
一緒にいると、安心するんです。
力があって、守ってくれるわけでもないけど・・・
でも
精一杯、守ってくれるんです。」
「そうね・・
私も
そういう所に魅かれたのかな・・・
タクムも・・
たぶん、そうなんだと思う・・
何故か、あなた達に魅かれるのよ・・」
「ねえ・・先輩!
私達って、ライバルですよね・・・」
「そうかしら・・
私が一方的に、あなたやゴーストバスター部に
嫉妬してるだけだと思うけど・・
あなたには
かなわない・・・
あなた達は、似てるのよ・・・」
「え?」
「ヒロシ君に似てるって、
さっき思った・・・」
「私と・・ヒロシ君が?」
「自分の事よりも、他の人を優先する・・・
真っ直ぐな気持ちと・・
誰かを救いたいって・・
守りたいって・・
そういう気持ち・・
姿勢が・・
一緒なんだって・・」
「そう・・
なんだ・・」
先輩から意外な褒め方をされた美奈子。
少し、照れている感じがある。
「お似合いのカップルよ!あなたたちは!」
「前にも、言われた事があります。」
その言葉は、響子にも、愛紗さんにも言われたことがある。
「・・・でもね。
私は、諦めたわけじゃないわよ!
隙あらば、ヒロシ君を奪うからね!」
「え?
こ・・怖いです・・」
「うふふ・・
だから、いつも仲良くしててね・・・」
「はい・・」
「私には・・
もう一つ・・
解決しなければならない事がある・・・」
「部活のことですか?」
「そう・・
私が、やらなきゃ・・・ならない事・・・」
「先輩・・・」
「じゃあ、私、帰るわね!
明日は、ウチの部も博士の研究で忙しくなるから・・・」
「はい。お休みなさい!」
「おやすみ・・
あの・・
望月さん・・・」
帰り際に、言い残した事が引っ掛かった先輩だった・・
「何ですか?」
「ごめんなさい・・
ワラ人形なんて使って・・・・
フェアーじゃ無かった・・」
ペコっと頭をさげて、部屋を出る先輩。
その姿を、見送る美奈子・・
先輩を見送り、しばらく布団に横になっていた美奈子。
パチっと目を開ける。
「お母さん・・
居ますか?」
お母さん・・ヒロシのお母さんを呼ぶ。
「ええ・・居るわよ・・・」
その言葉と共に、スーーっと姿を現わした響子。
ずっと、美奈子の側で見守っていたようだった・・・・
「お母様に・・
知らせて欲しいんです。
そして・・
童子の本体を・・・」
「童子の本体?」
「あの童子の本体は、ここには居ない・・
遠く離れた所で私達に、間接的に攻撃をしてきている・・」
「そうね・・」
「あの星熊童子・・
一筋縄では倒せない・・・
色んな人を、間接的に操っている・・
『霊感ケータイ』のアプリも気になります。
Hijiriって人も・・」
「陽子と調べてみるわ・・
でも、あなたの周辺は手薄になるわよ・・」
「やっぱり、ここも結界を張ります。
ここに誘き寄せようと思っていたけど、
私も、だいぶ傷が深いみたい・・
まさか、先輩を利用してくるなんて、思ってなかった・・」
「あの部活が・・
オカルト研究会が、あの童子の温床になっているのね・・」
「そうです・・
学校でも、手が出せないんです。
教頭先生や、部員達も危険にさらしてしまう・・」
「教頭先生・・早乙女さんか・・
あの人は・・
私達に強い憎悪を抱いている・・」
高校時代の事を思い出している響子・・
「そう言えば、翔子ちゃんのお父さんは?」
「修行に戻るって言ってたわ・・」
「そうですか・・
この戦いは、
皆にとっても、辛い・・苦しい戦いですね・・」
「ええ・・
でも、無理をしちゃだめよ!」
「はい・・」
目を閉じて、眠りにつく美奈子。
その様子を確認して、スッ・・・と姿を消す響子。




