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霊感ケータイ  作者: リッキー
呪いの藁人形
202/450

86.呪いの儀式


その時・・


 コーーーン


ワラ人形を叩く音がした。


「この音?」

沙希ちゃんが気づく。

音の鳴る方へと向かう沙希ちゃん。


響子は援護するように童子との距離を保ちつつ、沙希ちゃんへ憑いていく。



「チ!気づかれたか!!」



「沙希ちゃん達の方へは行かせない!!!」


立ちはだかる翔子ちゃんパパ。



「フフ・・その程度の霊力で、私が食い止められると思ったか・・」


「何?!」


構え直す翔子ちゃんパパ・・

守備系では鍛えていたが、攻撃系の修行はままならなかった・・・


翔子ちゃんの様には戦えないパパ・・

怯んでいる姿に、ニヤっと笑みを浮かべた童子。


次の瞬間、目の前から姿が消えた。



「速い!!!」


気が付くと、直ぐ隣に童子の姿が!

先程の光のバリアを展開しようとしたが・・


 バシ!!!!


「ぐは!!!!」


童子の拳の一撃で、地面に突き飛ばされる翔子ちゃんパパ。


  ザザーーーーー


地面に倒れるが、素早く起き上がるパパ・・

次の攻撃に構えて、同時にバリアを展開した。


「ふ!一発では倒れんかったか・・・タフさはあるようだな・・・」


地獄での修行で、守備系とスタミナは強化することはできたが、相手が強敵だと反撃ができないパパ・・

分が悪い展開となっていた。




その時・・








バシーーーーーーーー!!!!!



「グアーー!!」


童子の肩に光が当たる。

よろめく星熊童子・・



「何奴!!」


その放たれた方向をキッと見る童子。


そこに、黒い数珠を構えた美奈子が立っていた。

次の攻撃を繰り出そうとしている。


驚いている童子・・


「く!まだ動けたか!!

 ふふ・・今日の所は・・ここまでか・・・

 次の仕掛けを楽しみにしているがいい!」



そう言って、瞬時に姿を消した星熊童子・・



「次の・・仕掛け??」

翔子ちゃんパパがつぶやく・・


 ガク!!


美奈子が膝を地面に落とす。


「美奈ちゃん!!」


パパが駆け寄る。

ハアハアと息が荒い美奈子・・ここまで来るのが精いっぱいだった。



「あの童子は、お父さんだけでは無理です・・・」



「そのようだね・・

 あれだけの実力とは思わなかった・・

 翔子は、あんな奴と戦っていたのか・・」



前の鉦熊童子とは互角に戦っていた翔子ちゃん・・

伊吹丸から修行を受け、攻撃系で鍛えられていた。










「翔子ちゃんは、

 かなり霊力が高まっていたから・・


 今の、私以上だったかも・・」



「翔子の応援が欲しい所だが・・

 もう、私達の手の届かない所へ行っている・・・」



「はい・・

 ヒロシ君から聞いています。


 あの子は・・

 あのまま、

 戦いに身を投じていたら、

 修羅へと落とされていたかも知れません・・・」



「ああ・・鬼教官もそれを心配していたよ・・

 現に、私と響子さんも、翔子に・・」


あの世で、翔子ちゃんの暴走に合い、パパと響子は負傷したのだった・・

感情をコントロールできなくなった時、暴走してしまう不安定さのあった翔子ちゃん。



「あの時は、私達だから許してもらえたけれど・・

 他人にケガを負わせたらと思うと・・恐ろしいよ・・

 やはり、あの御方の所で修行するのが一番だったんだよ・・」



「そうですね・・」


美奈子にとっても、ヒロシの心までも奪おうとしていただけあって、大きな存在となっていた。



「でも・・

 このままじゃ・・

 マズいかもね・・

 私も、修行しなおさないと・・」



「お父さん・・・」


考え込んでいるパパ・・先ほどの童子との戦いでは、全く歯が立たない事に気づいたのだった・・










公園の樹林帯。


音がした方へと進んでいた沙希ちゃん・・・


何かを打ち付ける音がしていた。

不思議と、その音が止んでいたが・・



いったい何なのか・・


不安がよぎる・・・


目をこらすと、木々の間に人影が見えた。



「あれ?」


恐る恐る近づいていく。



一本の木の幹を前に、一人の女の人が立っていた。

先輩なのか?



「やめてください!!」


勇気を振り絞って、叫んだ沙希ちゃん。



その声に振り向いた先輩・・・

その目は、激しい嫉妬と怒りに満ちていた・・

握られた金槌と幹に打ち付けられているワラ人形・・


その迫力に怯む沙希ちゃん。



「呪いの・・・

 儀式・・??!!」


呟く沙希ちゃん・・

この行為が、美奈子を苦しめていたと悟った。



「誰?

 私の邪魔をしに来たの?!」


先輩が脅してくる・・・。

勇気を振り絞って制止しようと試みる沙希ちゃん。


「や・・止めて下さい!

 副部長が苦しんでいるんです!!」



「苦しんでいる?


 それは、

 私も同じよ!!


 私だって・・・!!!

 苦しいのよ!!!」



「だからって・・

 そんな方法で、人を苦しめるなんて・・


 卑怯です!!!」




『卑怯』・・その言葉が先輩の心に突き刺さる・・・



「そうよ・・

 私は、卑怯者よ!!!


 叶わない相手・・

 思うとおりにならない相手・・


 どうしようもなくなったのよ!!


 憎くてたまらない!!


 だから・・

 私は!!!」


怒りをぶつける先輩・・








「副部長は、結界を張っていないんですよ!」


「結界?何よ、それ・・」



「結界を張れば、あなたの攻撃から、身を守れる・・

 でも、結界を張ってしまうと、あなたの念は、跳ね返って来てしまうって・・!!」


公園に来る途中に響子から結界の事を教えられていた沙希ちゃん。




「え?」

その言葉に驚く先輩・・


「だから・・


 あえて、結界を張ってないんです。

 あなたの、念を一身に受けているんですよ!」



「そんな・・・


 あの子が・・」


握られていた金槌が地面にポトリと落ちる・・・


跪く(ひざまずく)先輩・・・



「私は・・・


 私は・・・」




ガサガサ・・・

草をかき分ける音がする。


「副部長!!」


美奈子がそこまで来ていた。

たどたどしい足取りで、何とかたどり着いた様だった。



「望月さん?」


美奈子の様子に驚く先輩・・

かなりダメージを喰らっている様子だ。


そこまで、苦しめているとは、思っていなかった先輩。



「この・・ワラ人形は・・

 そんなに効果があるの?」


幹に打ち付けてあるワラ人形を見つめる先輩・・

事の重大さに気づいている。


自分の犯してしまった行為・・・



沙希ちゃんが駆け寄る。

ハアハアと息が荒い美奈子。








「良かった・・・

 無事で・・」


安堵の表情を浮かべた美奈子。


だが、胸を押さえている。

自分の呪いによってダメージを与えていた事に気づいた。



「望月さん!!」

美奈子の言葉に驚いている先輩。

自分が呪いを受けても、まだ他の人を気遣っている言葉だった。



「呪いの儀式は、他人に見られたら、その効果が自分に帰って来るんです・・

 沙希ちゃんに見られて、返って来てるって思ったけど・・

 大丈夫だったようですね・・」


先程から、呪いの儀式が中断されていた様だった。

童子と対決している時も痛みが襲ってこなかったのだ。



「あなたは・・・


 私の事を・・・

 心配するの?


 私は・・

 あなたを!

 呪ったのよ!!!」


後悔の念が襲ってくる先輩。


わなわなと震える手を見る。

怒りと恨みで、我を忘れてしまった行為・・・


衝動的とはいえ、人を呪う事・・



「素人が、こういう儀式に手を出すと

 大変な事になるんです。


 誰から、教わったのか知らないけれど・・・」






沙希ちゃんに介抱されて、木に打ち付けられていたワラ人形の前にたどり着いた美奈子・・

その前で、呪文を唱える。


九字を切って、ワラ人形をもぎ取る美奈子・・



「これは・・・

 都に伝わる密教の・・・」


「都の?」

沙希ちゃんが驚く。


「このワラ人形は、祈祷師が用いる本格的なモノ・・

 念を送る人の霊力を最大限に発揮できる・・

 人を殺す事も出来るわ・・」


「そんな!」

Hijiriさんから送られてきたワラ人形が、それほどまでのモノとは思いもしなかった・・

恐怖で手が震えている先輩・・



「先輩・・


 これを・・・

  どこで・・・?」




「それは・・・

 Hijiriさんが・・・」



「Hijiri・・・・」



その名に聞き覚えがあった・・

駅前のハンバーガー屋で出会った二人の女子高生が口にしていた名前。

『霊感ケータイ』のアプリを使っていた・・・


ここで、その名が出てくるとは・・・





 ガク!


急に倒れる美奈子。


「副部長!」

「望月さん!!」


「大丈夫・・めまいがしただけ・・・」


思ったよりもダメージが大きかった美奈子・・

二人によって、お寺まで担ぎ込まれたのだった・・・






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