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霊感ケータイ  作者: リッキー
母と父と
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十九.  屋上で


次の日の昼休み、

僕と彼女は校舎の屋上で話していた。


学校での彼女は相変わらず、メガネとポニーテールの冴えない姿。


「メガネ取ったほうが可愛いのにな・・・」


「もう慣れてるから・・

 だってこれが無いと、

 誰が人間で誰が霊か、

 わからなくなっちゃうし・・」


近眼でも乱視でも何でもないのに、度の入っていない伊達眼鏡。

クラスの女子の中には、眼鏡を止めて、コンタクトにする娘もいる。

自分には霊感は全く無いけれど、あればあったで大変なのだ。


「大変だね」


「うん。大変・・・

 この町、最近何か狙われてるって感じ・・」


「狙われてるの?

 この町」


「この間、

 ちょっとそう思った・・・

 何とかしなきゃね」


屋上のネット越に眼下に広がる町並みを見つめながらつぶやいた彼女の言葉に、一瞬ドキっとなった。

やはり、ゴーストバスターかエクソシストでもやろうというのか?

この娘は・・・


「対決するの?」


「どうかしらね~・・、

 あんまりやりたくないんだけどね~・・・


 しんどいし・・

 誰も褒めてくれないし・・」



彼女が愚痴を言うのもめずらしい。


確かに、他人のために身を削っても、誰も褒めてくれないし、何も見えないのだから、無くなっても誰もわからない。


まあ、中には見えている人もいるだろうから、そういう人には評価されるかも知れないけれど・・


「何でも見れるって事は、あんまり良いことじゃないよ。

 私は、自分が『いつ』死んで、『どう』死ぬのか知っている・・・」


「そんな事もわかるの?」


「なんだか、いやだよね~。

 ふふ・・」


自分の最期を知っている・・・


そんなことも知っているのか・・


すごいと思う反面、確かに苦悩の面もある。


自分の置かれている状態や、この先のことまで知り尽くして、何が楽しいのだろうか。


何もわからないで、可能性にかけて努力したり、友達と時間の経つのを忘れて楽しんだりするほうが、遥かに人生が面白いような気がする。


そういった楽しみを味わえない、彼女の視線は、悲しそうだった・・





そうか・・


だから、あんなに明るく振舞っているのか、この娘は・・・


何だか、僕に似てる。

クラスの皆とは確かに親しく、話題にもついてきていた僕だけれど、皆とは心の中で一線を引いてきた。

自分は母の居ない分、ちゃんとやらなきゃならないって・・


皆には両親も居るし、授業参観や卒業式や入学式に家族が参加している姿は内心、うらやましかった。

年頃で、親といっしょにいるのは恥ずかしいのか、そっけない態度を取っている友人の姿を見ると、


「もっと甘えればいいのにな・・・」


とも思う。

霊感は無いけれど、みんなのそういった姿はものすごく良く見えるのだ。



霊感があって何でも見えてしまう彼女と、


母の居ない分、皆の家族への態度が見えてしまう僕。


皆に溶け込もうと、明るく振舞ってきた・・。


その差は、どこにあるのだろう?




「あ、明日から私、

 一週間、居なくなるから・・

 ちょっと修行し直して来る。」

笑顔で決意を新たにしたすがすがしい彼女の顔。


「その間、これを預かってて!」


「霊感ケータイ・・?」


ケータイを片手でパシっとはたく彼女・・


「このケータイは使い方次第で、人を活かしも殺しもする・・」


「活かしも殺しもする?

 どういうこと?」


「この間も、ヒロシくんや雨宮先生がこの電話を使っていたけれど・・

 あれ以上使っていたら、死んでいたかも知れない」


女の子のほうで話を止めて、長電話にならずに済んだため、生体エネルギーの消費が抑えられたけれど、あのまま長時間通話していれば命に関わってくる・・


「前の持ち主は、この電話で命を絶ったのよ・・」


この電話で・・

人が一人亡くなっている・・・


命を吸い取る「霊感ケータイ」・・

今まで思いも寄らなかったが、確かに恐ろしい道具だ!


活かすも殺すもその人次第・・


彼女から、携帯を渡される・・

なんだか、いつもより重たい感じがした・・・


「じゃあ、お願いね・・」


しばらく会えないと思うと寂しい感じもする・・・


次の日、彼女はお母さんの居る神社へと修行へ向かったのだった。



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