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霊感ケータイ  作者: リッキー
呪いの藁人形
199/450

83.見えない壁


学校の屋上


先輩の秘密の場所・・

一人で座り、空を眺めている先輩。


爽やかな風が髪をなびかせる。


心地よい場所・・

それとは裏腹に、先輩の心の中は、暗雲の中に閉じ込められ、身動きもできない状態だった。


ゴーストバスター部をどうしても抹消したいという方向を曲げない教頭先生・・

だが、その過去に繰り広げられた今西や陽子達との因縁・・

それを断ち切れない教頭先生の想いも理解できる。


今西に心を寄せていた教頭先生・・その想いもかなわず、また、

部活と研究を続けてきても尚、立ちはだかる陽子達の血筋・・


その、血筋の一人を好きになってしまった先輩・・

その想いも、虚しく、かなわない相手が居る・・・




「ヒロシ・・君・・・」


一人、呟く(つぶやく)・・・



その時・・

梯子を誰かが登って来る気配がした。


「誰?」


「やっぱり、ここでしたか・・・」


ヒロシが顔を出す。


「ヒロシ・・君・・」


「拓夢君が居ないって・・心配してましたよ。」


「そう・・」


俯く先輩。


「先輩が来る所は、ここかなって・・・」









「覚えていてくれたのね・・」


「先輩の秘密の場所だから・・」


未来先輩の隣に座るヒロシ・・


「ここ・・良い場所ですよね・・」


「ええ・・一人でいたい時は、ここに来るの・・・」


グランドを見つめる先輩。

横顔を見つめるヒロシ・・


「一人で・・

 居たいんですか?」


「・・・・・」


ヒロシの、その問いに、言葉が出てこなかった・・




しばらくして、重い口を開く先輩・・


「一人は・・

 辛い・・・」


「僕なら、ここに居ますよ。」


ニコッと笑うヒロシ・・



「あなたと居ると・・

 不思議と安心できるの・・


 なぜかしらね・・」


ヒロシの頬に手を伸ばす先輩・・


「こんなに近くに居るのに・・

 あなたには

 手が届かない・・・」


そう呟いたとき・・






「ヒロシ君!何やってるの?」


「え?」


「ミナ・・」


美奈子が急に割り込んできた。


「ヒロシ君、また、浮気~??」


「いや・・そういうワケでは・・・」



「先輩。ヒロシ君は私の彼氏なんです!

 横取りしないで下さい!」


「望月さん・・・」


「だいたい、先輩は、私より霊力がないんですから・・

 「霊」の事は私に任せておいて下さい!

 素人は足手まといになるだけです!」


「それは・・

 分かっているわよ・・


 でも

 私にだって・・」


「私と張り合っても無駄ですよ!

 ゴーストバスター部だけで、解決できます。

 オカルト研究会のやってる事なんて、無意味なんですよ!」


「無意味な事なんて・・無い・・!

 博士や教頭先生だって、必死に研究してきたのよ!」


「『霊』は居るんです。

 それを全面否定して研究した所で、出発点が間違っていれば

 どんなに研究しても、その出口は見つかりません。


 それは、

 先輩も、承知しているんじゃないですか?」


「それは・・」







「先輩だって、霊感があるんだし、

 何で、本当の事を伝えないんですか?

 博士や教頭先生は間違ってるって!!」


「そんな事・・言えない・・

 私は、博士達を尊敬しているから・・・

 頑張っている人たちを、見捨てたくない・・


 でも・・

 あなたの言う通りよ・・

 

 『霊』の世界は、確実にあるし・・

 それを伝えなければならない・・

 危険を冒そうともしている・・・」


「それが、分かっていて、言わないのは、卑怯です!」


「卑怯?!!

 どうしていいのか、分からないのよ!

 共に、歩めないかも考えているわ・・


 でも

 出口が見えないのよ!


 それに・・

 私は・・」

ヒロシを見つめる先輩。


「どうして、あなたなの?

 どうして、敵対する人を好きになったの?

 どうして・・」



「駄目よ!ヒロシ君は渡さない!」


ヒロシの前に立ちはだかる美奈子。


「何故・・あなたが居るの?

 ゴーストバスター部なんて・・無ければ・・


 あなたさえ・・

 居なければ!!」








 ガバッ!!!






その言葉を放った時・・



ベットの上に飛び起きていた先輩・・



「夢?」



ハアハアと息が荒い先輩・・・



時計を見ると、深夜を廻っていた。


いつの間にか寝ていたのだった・・・・





そして・・





頬を触ると、涙が伝わっていた・・・・




「ヒロシ・・



 君・・・」





部屋の隅に置いてある、夕方届いた包みを見つめる・・・









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