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霊感ケータイ  作者: リッキー
オカルト同好会
195/450

79.朝食で


次の朝、広間で、朝食を一緒に食べている部員と博士達。


御善には、心なしか料理の量が多く盛られている感じがした。

宿からの口止め料なのかも知れないと、一瞬思ったものの、「好意」だと受け取る事にした今西達・・

男子部員は、何故なのかは分からないだろう・・


博士の隣で話をする今西。


「昨日は、ご迷惑をおかけしました。」


「いや・・私も、探偵ごっこの様な遊びが出来て、いい想い出になりました。」


「え?探偵ごっこ?」

弥生ちゃんが反応した。


「大人のお遊びだよ・・」


「ふ~ん。弥生も見たかったな~。」



「我々も、色々な現象を研究していますが・・

 大半は、こうした詐欺まがいなのです。」


「大半が・・詐欺・・」


「人が人を騙す行為・・

 それは、許しがたい行為でもある・・

 騙した方は優越感に浸れるのだろうが・・

 騙された方は、悔しい想いをしなければならない・・」


「そうですね・・・」


「でも・・

 騙された方も、騙されたと思わない方が幸せな事もあるのです。」


不思議な事を言い出した博士。








「幸せに・・なれるんですか?」


「『座敷童』・・それは、実態はどうなのか分かりませんが、

 見た人は、幸せになれると言われています。


 この宿に泊まりに来た人の中には、

 怖いもの見たさで来る人も居れば、

 苦しい、不幸な人生から脱却したいと・・


 そういった人もいるのです。」



「でも・・騙されたってわかれば、残念でしょうけれど・・」



「いえ・・そういう人たちは、藁をも掴む想いで来ている。


 仮に、この宿の詐欺に合い、・・騙されて『見た』としても・・

 その人にとっては、幸せの糸口・・きっかけになるかも知れないのです。


 幸か不幸かは、心の持ち様・・

 それまで抱いていた心の蟠り(わだかまり)が払拭ふっしょくされ、

 それからの生き方が変われば、それは、その人にとって大きな転機ともなり得ます。


 ひょっとしたら、その転機より先は、幸せになるのかも知れない。



 結果として、その人が幸せになれば・・

 また、一瞬でも心の休まる時があるのならば・・


 それは、まぎれもなく、本当の『座敷童』を見たことになる・・

 それが、子供の扮した偽物だったとしてもね・・」





「そ・・そうですね・・・

 『座敷童』を見れば、幸せになるって・・

 そうとも考えられますね・・」



「昔、私が小さかった頃・・

 お祭りで、よく『見世物小屋』というのがあった。


 屋台の並ぶ一角に、四方を塞がれた小屋が設けられ、

 その中に、「蛇女」とか怪しいモノが居て、それを覗くだけの催し物だった。


 ほんの一瞬だけ見るだけだけれど、子供心に、大きく焼きついた物です。

 珍しいモノ、恐ろしいモノ・・そういったモノを見てハラハラ・ドキドキしたものだ・・


 今にしてみれば、それは、誰かが仮装していただけの・・

 大人が子供を騙して、お金を取ると言った商売だったと・・

 良く考えればバカバカしいモノを見ていたものだと思うのですが・・・


 その時に見た、旋律・・好奇心と興奮、想像力を掻き立てる・・そういった日常と違った経験ができた。


 そういう意味では、

 騙される事で、色々教わったわけですから・・

 見世物小屋自体は、私にとっては良い思い出になっているのです。


 現在は、TVや色んなメディアがあって、情報が溢れているけれど・・

 昔は、娯楽も少なく、お祭りや集会など・・

 楽しめる機会はそういう時しかなかった・・」








「そうですね・・

 今は、色々楽しいモノが手軽に入ります・・」


「我々の時代は、自ら飛び込んで行かなければ、情報は来なかった。

 自分から進んで、楽しいものを追い求めて行った・・

 無い物は、工夫して、自分で作る。


 子供の頃から、

 創造力や応用力が養われて行ったのです。

 

 今は、情報が向こうから来る時代なのです・・

 何もしなくても入ってくる。


 多大な量過ぎて、入ってくる情報を仕分ける必要がある・・

 そういった中で育つ子達に、

 果たして、創造力や応用力が身に着くのか・・

 そういう危機感があるのです。」


「今と昔・・どっちが良い時代なんでしょうね・・・」


しみじみと話し込んでいる博士と今西。





「今回の事は、我々の心の中に仕舞っておきましょう・・

 ただし、この世界では、こういった「騙し」の行為もあるという事を心に停めて頂きたい。」


「偽りの・・行為・・ですか・・。」


「今も昔も、人を騙して楽しむ人はいるのです。

 そういったモノの中から、本物を見抜く目・・

 真実を見抜く目を養っていって頂きたい・・」


「はい。頑張ります。」


今西も博士との出会いが無ければ、おそらく、この宿で座敷童を見たという事を間に受け、報告書を書いていたであろう・・・

そういう意味では、彼にとって、今後の部活の活動を深めていくに当たり、いい機会であった。








 


「何ですか~?さっきから博士と二人で、別世界になってますが~」

楓ちゃんが、朝食を済ませたらしく、話に割り込んできた。


「ああ・・色々と話し込んでてね・・いいお話を聞かせて頂いたよ。」


「ふ~ん。いいな~。」


「今西君、今日のスケジュールは?」

幸子さんも時間が気になっているようだった。


「いけね!そろっと準備しなきゃ!バスに乗り遅れる!」


「おお・・こんな時間か、私達も急ごうか・・」


朝食を済ませ、荷物をまとめる一同・・




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