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霊感ケータイ  作者: リッキー
オカルト同好会
194/450

78.真相



「どうしたのかね?」


廊下から博士の声がした・・・騒ぎを聞いて起きてきたのだろうか・・


「博士・・」


「夜中に、だいぶ騒がしかったのでね・・・」


「済みません・・起こしてしまって・・

 この部屋で、座敷童が出たそうです。」


「たった今かね?」


「はい」


部屋に戻って器材を持ってくる博士。


ピピ・・


計測器を作動させるが・・・



「うむ・・反応無か・・・」


「反応・・しないんですか?」


「見たという女の子は君かね?」


「はい・・」


涙目で、女子部員から介抱されていた楓ちゃん。まだ、震えが止まらない。

優しく、肩に手を添える博士。


「大丈夫・・ちょっと見せてくれるかね?」


「はい・・・」


頬に手をかざす博士。

涙が伝わっている。


「かわいそうに・・こんなに怯えて・・」


そのまま、まぶたを開かせる。

目の周りや瞳孔を観察する博士。


「ふむ・・・なるほど・・・」


「どうしたんですか?」


「わずかに、匂いもする・・・」


「臭い?」


「座敷童は、どこに出たのかね?」


「私の、布団の周りで・・

 左右に行ったり来たりして・・」


涙目で訴えている楓ちゃん。


「私達は気づきませんでした・・」

幸子さん達、他の女子達は全く気付かなかったという。


「この布団かね・・?」


「はい。」



布団の周りをくまなく観察する博士・・・

畳にわずかにこすれた跡がある。


「ふむ・・実体があるのか・・」


「実体?」


「足跡が残っているのです・・」


「足跡・・」


布団や畳に踏んだような跡があるという。









人差し指を口に入れ、指を湿らす。

指をかざして、部屋の壁を探り出す博士・・・


「何をしているんですか?」

不思議に思う今西・・


女子達も、その行動を固唾を飲んで見守っていた。


指をかざしながら、壁伝いに進んで行く。


押入れの所で立ち止まった博士。


扉を開けて、中を見渡す。

今西の時と同じく、女子部員の荷物以外は、変わった形跡は無かった。


押入れの壁を調べていると・・・


「うむ!」


何かを見つけたらしい・・


「ここか・・・」


何やら、考え込んでいる博士・・

そして、何かを思いついたらしく、今西の方を向く。



「今西君と言ったね・・

 女将さんを呼んできて欲しいのだが・・」


「はい・・」











しばらくして、今西が女将さんを連れてきた。


「どうか致しましたか?」


「ここに、泊まっていた女の子が、先程、『座敷童』を見たというのです。」

博士が話し始める。


「それは!

 またですか!

 この部屋は、よく目撃するとお客様から言われております。」



「その事なのですが・・

 その点で、妙な事がありまして・・」


「はい・・何でしょう?」


「女将さんに心当たりはありませんかな?」


「心当たり・・と申されると・・」


「これは、半ば、犯罪の匂いがするのですが・・」


「犯罪・・・?」

きょとんとしている女将さん・・



「この女の子の周りから、微かに薬品のにおいがしたのです。」


「薬品・・ですか?」


「麻酔の匂いが・・ごく少量ではありますが・・」


「麻酔を?」


「麻酔で、身動きが出来なくなった所で、

 この子の周りで、『座敷童』に扮した人物が、

 走りまわっていたようです。


 他の子達も、それだけ騒いでも起きれなかった所をみると、

 全員に、麻酔を施したか、

 夕食に、睡眠薬でも投与していたのか・・」








「待ってください!

 それでは、私どもが仕組んだとでも・・!」


博士の説明を聞いて動揺している女将さん。

その顔色をうかがって、押入れの方へ向かう博士。




「では・・

 これをご覧ください・・」


押入れの扉を開き、その奥の壁を押す博士・・


 パチ・・


押入れの壁の一部が、ドアの様に開いた・・

向こう側は、反対の部屋の押し入れの様だった・・・


使われていない部屋・・



「!・・・これは!」


一同が驚く。

今まで、寝ていた部屋と隣の部屋が通じていたとは・・・



「何か、この部屋の持ち物で無くなった物はないかね?」


博士に言われて、女子達が慌てて荷物を調べる。

鞄の中の貴重品や下着を確かめ始める。



「女将さん。

 これから、警察を呼ぼうと思っておるのですが・・・

 盗難の線もありますので・・」


その一言が効いた・・・・











「申し訳ございません!!」


女将さんが頭を下げている。

そこに居あわせていた一同あ突然の事で何が起こったのか分からなかったが・・・


「『座敷童』が出るのは、仰せのとおり、自作自演でございます・・・」


女将さんが観念したらしく、その全容を語りだした・・・

聞けば、その発端は、ほんの出来心だったらしい。


老舗の旅館ではあるが、年を追うごとに客が減り、何か策は無いかと思案している最中、TVを見ていたら、「座敷童」が特集で組まれていたという・・

試しに、女将さんのお孫さんに頼んで、変装してもらい、お客の寝ている側に立ったところ、目を回してしまったという。


次の日、慌てたお客が報告をしたが、老舗の旅館だという事で、この宿にも「座敷童」が出るのかも・・と話をしたら、


たちどころに噂となり、お客がお客を呼び、新聞社や雑誌まで取材に来てしまったという・・


「頃合いを見計らって、止めようと思っていたのですが・・・」


「そうでしたか・・・」

博士が、また、もの想いにふけっている・・・





ス・・・っと一人の子が入って来た。


    座敷童


長い髪に昔の羽織を纏った(まとった)女の子・・


一同は、その光景に驚いた。

本物の座敷童????


いや、その恰好に扮した女の子だった。



「あなたは・・・」

楓ちゃんが思い出した。


フロントの脇で、顔を見られない様に、直ぐに隠れた女の子だった。


「お姉ちゃん・・・脅かして、ごめんなさい・・・」


楓ちゃんに謝っている女の子。

その目が涙であふれている。










「ふむ・・あなたたちの行動は、ここに泊まる人達を驚かせていた・・

 他人を騙す行為は許しがたい行為・・


 だが・・

 こんな幼い女の子に、人を驚かせる役を演じさせていたなんて・・


 私は許せない!

 罪も無い子供に、罪を犯させる・・


 これ以上の罪は無い!

 あなたがたは!!」



「スミマセン・・・

  スミマセン・・・」


激しい口調で迫る博士に、女将さんが泣き崩れる。












「しかし・・・


 『座敷童の居る宿』・・・・


 我々、超常現象を研究する者としても、

 また、その幸運にあやかりたいと、期待してこられる方々も大勢いるのです。


 そういったロマンは、残しておきたい。」


「え?」

博士の、その発言に耳を疑った女将さん。


「今晩、見た事は、忘れましょう・・・

 単なる詐欺行為だったなんて、私も結論を出したくないのでね・・・」



「それは・・」



「警察への届け出をするかは、考えましょう・・

 そこにいる女の子の意思次第でね・・

 どうかな?」


楓ちゃんにどうするかを聞いている博士・・








静かに、答え始める楓ちゃん・・


「はい・・・


 確かに、驚かされました・・・


 その、

 カラクリにも驚かされました・・

 こんな女の子が演じていたなんて・・


 旅館の皆で私を騙していたなんて・・

 思ってもみなかった・・


 とても、残念な気持ちです。



 でも・・

 博士の言うとおり・・


 私も、

 その事実は、

 忘れます。


 仕方なく、やった事だと思って・・



 あ、


 でも、


 怖い想い出は・・

 残しておきます・・・


 座敷童を見たんだって・・



 それは、

 本当の事ですから・・


 わたしの

 合宿の

 良い思い出として

 取っておきたいんです・・」



「ありがとうございます!ありがとうございます!」


女将さんが何度も、お礼を言っている。

事実を知っているのは、女子部員と、今西、そして博士だけだった・・・







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