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霊感ケータイ  作者: リッキー
オカルト同好会
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76.交流


部屋に戻ると、今西達数人の部員が、浴衣に着替えて、ぐったりしていた・・・

座椅子にのけぞって動けない・・


先に来ていた女子部員が見兼ねている・・


「もう~!何~?

 このデリカシーの無い様は~!」


幸子さんが呆れて、今西に抗議する。


「ああ・・幸子か~。

 疲れ切っちまって・・

 動けね~。」


「ふぅ・・仕方がないですね・・

 あの話をしますか?」


「そうね・・」


「何~?何の話~?」



「え?さっきの博士の事よ。」


「博士~??」


「この旅館に泊まってるんですよ。」


「何だって!!!!」

飛び起きる今西。


「さっき、ロビーで会ったのよ。

 歩いてきたから、遅くなったみたいだけど・・」


「それは、凄いよ!

 さっそく、交流の準備だ!」


目の色を変えている今西・・水を得た魚の様・・

先程まで、ぐったりしていたのが嘘のようだった・・


「疲れてるみたいだから、そっとしていたほうが良いと思うけど・・」


「そうか~。頃合いを見計らって、コンタクトを取ろう!」


その『頃合い』というアバウトな表現に、一抹の不安が残る幸子さんだった。

いきなり、部屋へ押し入る事もやりかねない勢いだ。



「部長。

 それまで、昼間のトンネルの事とかまとめませんか?」


「そうだな・・

 じゃあ、幸子と早乙女さんで頼むよ。」


「え~??私、山へ登ってないのよ!荷物番してたし~!」


「あ・・そうだった・・っけ・・」


「もう!・・・全然、こっちの事知らないし~!

 一人で怖かったんだから!


 !!!!!


 今西君!

 さっきから、何処見てるのよ~!」


「え?」


浴衣を羽織っているだけの幸子さん達女子部員。浴衣の下は下着のみだった・・

座ると、かわいい太ももも半分露出される。

浴衣の襟元から胸元の肌が見え隠れする・・


先程から、今西の視線が、そちらを向いていた・・

胸元を押さえる幸子さん・・女子部員達も意識する。


「やっぱり、浴衣が狙い~??」


「いや!・・そういうワケでは・・」


「このドスケベ部長が~!」

ミーティングどころではなくなってしまった、オカルト同好会・・


座布団やら枕やらが飛び交う・・

新入部員達も、二人のやり合いが、半ば、掛け合い漫才の様なものだと、うすうす勘付いてきていた。









「夕食の支度が出来ました。」


女将さんが、今西に知らせる。


「はい。今、行きます~」


幸子さんに、羽交い絞めされていた今西が解放される。


「あはは・・夕食だって・・行こうか~。」


「全く・・あなたのせいで、ミーティングも出来なかったじゃない!」


「面目ない・・」


「さぁ。じゃあ、皆で行きましょう!

 貴重品は、ちゃんと持って行ってね!」


「は~い」


幸子さんが今西の代わりに指示を出す。部員もどちらかと言うと、幸子さんに仕切ってもらった方が良かった。

部長の面目まるつぶれの今西・・とぼとぼと後からついて行く・・・


楓ちゃんが、付き添ってきた。


「部長。元気出してくださいヨ!」


「ああ・・何か・・頼りない部長だよ・・」


「そんな事ないですよ。

 昼間の博士を追いかけてる時なんか凄いって思いました。」


「そう?」


「皆、内心は、部長の事、尊敬してると思います。

 副部長もそうだと思いますが・・」


「そ~かな~

 幸子には、いつも、ガミガミ怒鳴られてるし・・」


「うふふ・・・」


少し自信を失った様子の今西を見て、微笑む楓ちゃん。








「それでは・・・

 全ての食材に感謝を込めて・・

 いただきます!」


今西の発生で、一同が合掌をする。夕食を食べ始める部員達。

予算の割には、御膳に盛りだくさんの料理が乗っていた。


「しかし・・この・・状態って・・」

今西が呟く(つぶやく)・・


今西の隣に幸子さん、そして反対側の隣に楓ちゃんが座っていた。

『両手に花』状態の今西・・さっきは、幸子さんにけなされ、さんざんな目に合ったのだが・・


「部長!私の、お肉、食べてください!」


「え?いいの?早乙女さん・・」


「はい。私、牛肉がダメなんです。」


「そう・・意外だね・・」


楓ちゃんに先手を取られた幸子さん・・


「今西君。ジュースはどう?」


酒の代わりにジュースをお酌する幸子さん・・

高校生だからお酒というワケにはいかなかった・・


「あはは・・」


何だか、殺気を感じた今西・・先程から、二人の視線が気になる・・

いや、他の部員達からも、冷たい視線で見られていた・・・


この場は、明るく振る舞追うと決心した今西・・


「よっしゃ~!これから、オカルト同好会名物、

 部員交流カラオケ大会を~開催します~!」


部長・・・と言っても・・宴会部長か・・・今西は・・・














カラオケの音が微かに鳴り響いている博士達の部屋。

お風呂から上がって、浴衣に着替えている弥生ちゃん。


「お父さんはお風呂、入らないの?」


「うむ・・もう少し、データを整理してからな・・」


「浴場は10時までだって言ってたから、早めにね・・」


「そうだな・・

 夕食が終わったら、行って来るよ・・」


弥生ちゃんは、宿について布団で少し横になっていた。

博士は、ずっと、器材のチェックと昼間のデータの整理をしていたのだった。


「なんか、向こうは賑やかだね~」


「ふふ・・若いって証拠だよ。」


「ねえ・・お父さん・・」


「何だね?」


「この旅館・・『座敷童』が出るって噂だけど・・

 ホントかな~?」


「座敷童か・・

 ロビーに貼り紙がしてあったな・・

 『出る』のかも知れないね・・」


「お父さんの理論でも、『座敷童』は説明できるの?」


「うむ・・何とも言えんな・・

 それが、自然現象なのかどうかは、見てみなければわからん・・」


「それって、どういう事?」


「この旅館に入って、計測器に反応がないんだよ・・」


「反応が・・

 無い?」


博士の言葉に、驚いている弥生ちゃん・・

「霊」の出る場所ならば、多少の反応はあっても良いはずだった。












「いや~カラオケ、盛り上がったね~」


廊下をドヤドヤと部屋まで引き返してくるオカルト同好会の部員達・・

意外にカラオケで盛り上がったようで、部長としてもメンツを保てた感じだった。


「副部長の『涙そうそう』良かったです~」


「早乙女さんの『安室奈美恵メドレー』は意外だったわね・・」


「小室さんのファンなんです・・多摩ネットワークからの・・」


「しかし・・

 今西君の『愛は勝つ』って古くない?

 小学校の頃でしょ?」


「え?アレ、卒業式に歌った想い出の曲なんだけどな~。」


作者の年代がバレそうなので、このくらいにしておこう・・・

今西が前を向くと、博士が洗面道具を抱えてこちらに歩いてくるのが見えた。


「博士!」


「おお・・さっきの高校生諸君か・・

 カラオケで盛り上がってたみたいだね。」


「はい。

 あ、後で、お話をお聞かせ願いたいのですが・・・」


「ほう・・

 興味のある話があれば良いのですがね・・」


「博士のお話なら、何でも興味ありますよ!」


「そうですか・・

 それでは、後ほど・・」


浴場の方へと歩いていく博士。

見送る部員達・・・


「博士と繋がる事ができましたね・・・」

楓ちゃんが今西に話しかけてくる。


「ああ・・この合宿での収穫だよ・・

 博士の話を直に聞けるなんて・・!」


興奮している今西・・













先程、ミーティングが中途半端で終わってしまった続きを、今西達の部屋で行っていた。

カラオケ大会の効能か部員が和気あいあいとした雰囲気になっている。


楓ちゃんからトンネルの現場の報告を受ける。


「写真は、現像してみないとですが、博士の説明だと、

 トンネル工事に寄る水脈の水質悪化が原因ではないかと言う事でした・・」


「山の手入れも滞っているというのも強調していたね・・」


「何か、目から鱗です。

 『心霊現象』は、本当に目に見えない・・

 得体の知れない超常現象だって思ってたけど、

 科学的に解明できるんですね・・」


「後で、博士の意見が聞ければいいと思うけど・・」


「また雑誌に投稿できるんじゃない?」 


「そうだね・・ウチの部も、意外に評価されてるみたいだから、

 このまま活動を続けていきたいね・・」


前向きなミーティングの内容に、部員達も希望を見出していた。

1年前に立ち上げたばかりの部活だったが、今西と幸子さんで、色々な事を調べ、

雑誌にも投稿をしていた甲斐あって、それなりに評価もされていた。

今年入った部員も大半は、その活動に参加したいという意欲のある人なのだった。

楓ちゃんもその一人である。


その時、


ス・・・っと襖が開いた。


「あ、博士!」


「ここだったかな?」


「はい。こちらへどうぞ!」


「この子も、同席させたいのだが・・」


弥生ちゃんも博士と一緒に入って来た。

ウサギのぬいぐるみを抱えている。


「どうぞどうぞ、お入りください。」


「弥生ちゃん、こっちよ。」


「はい。」


幸子さんの隣へ行く弥生ちゃん。昼間の件で、仲が良くなったようである。

ジュースを貰って、ちょこんと座る弥生ちゃん。


「可愛いぬいぐるみね・・・」


「うん・・これが無いと寝れないの・・

 お父さんが、小さい頃に買ってくれたんだよ。

 私の宝物・・」


それから、延々と博士の講義が始まった。


「私の理論は、電磁気学と認知脳科学が基本になっているのです・・・・。」


電磁気学、認知脳科学・・共に、高校生にとっては高度な内容である。

部員も昼間の疲れはあったが、一人も眠る事なく、博士の話に聞き入っていたのだった。









「お?もうこんな時間か・・・」


博士が気づいて、時計を見ると、深夜を廻っていた。

さすがに部員達にも疲れの色が見えて来ていた。眠そうな感じである。

幸子さんに寄りかかって寝ている弥生ちゃん。


「そろそろ、部屋へ戻ります。」


「ありがとうございました。博士。」


「明日は、別の所を廻るのでしょうが、今日の出来事は、とても有意義でした。」


「こちらもです。

 今後、交流を続けさせて頂ければ、嬉しいのですが・・・

 また、こういう機会も設けたいです。」


「ふふふ・・

 君たちの様な、やる気のある若い人たちに話すのも、楽しいものです。

 今後とも、良いお付き合いができることを願っております。

 では、おやすみなさい。」


「おやすみなさい」


挨拶を交わして、弥生ちゃんとぬいぐるみを抱えて、部屋へ戻る博士。

幸子さん達女子部員も、自分たちの部屋へ戻って行った。




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