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霊感ケータイ  作者: リッキー
オカルト同好会
191/450

75.座敷童のいる宿


先程のトンネルからカーブの多い山道を抜け、山の麓に構えた一軒の老舗の旅館。

オカルト同好会の今夜の宿泊する宿だ。


夕方になり、薄暗くなった林に小川の流れる音が染み渡る。

山道を走って降りてきて、疲れ切った今西達一行・・


ハアハアと息の荒い部員達だったが、楓ちゃんが何かに気づく。



「この旅館・・ひょっとして・・・」

ポケットから手帳を取り出す楓ちゃん。


「やっぱり・・『座敷童』の出る旅館ですね・・」


「何でも知ってるね・・早乙女さん・・」


「はい。この周辺の情報は、事前に調べておきました。」











「いらっしゃいませ・・・」

宿に入ると、女将が出迎えてくれた。


老舗の旅館らしく、古い木造の、少し薄暗い玄関は、噂の通り「座敷童」が出そうな雰囲気だった。


「オカルト同好会の今西さんですね・・」


「御厄介になります。」


玄関を上がり、奥の部屋へと案内される。

ホールの中央に、貼り紙がされているのに目が行く。


  『座敷童のいる宿』


大きく掲げられた紙に、この宿の云われや「見た」という証言内容が書かれている。

新聞の切り抜きも紹介されていた。


「本当に、出るんですね~」

楓ちゃんが書かれた内容を読みながら感心している。


「早乙女さん、とりあえず、部屋へ行きましょう。」

幸子さんから呼び止められる。


「は~い」


部員達の方へと小走りになる楓ちゃん。フロントの脇のドアから、チラっと覗いている目に気づく。


女の子・・・


小学生低学年くらいだろうか・・

パタンと閉まるドア・・

不思議に思った楓ちゃん・・









8帖程の部屋へ案内された一行。

女将さんから鍵を渡され、宿での注意事項を聞く今西。


「隣の部屋が、女性の方の部屋になっています。

 お風呂は奥の方にございますが10時までにお済ませ下さい。」


「ありがとうございます。」


「あの・・」

楓ちゃんが訊ねる。


「はい?何でしょうか?」


「この宿には、『座敷童が出る』という噂ですが・・」


その言葉に反応し、少し表情を曇らせる女将さん・・

重い口ぶりで話し始める。


「はい・・

 この旅館は江戸時代から続いておりますが、

 不思議な云われがあります。


 いつの頃か、夜な夜な、童子わらしこの姿を見たり、声を聞いたりと・・

 また、そういう体験をされたお客さんが幸せになったとか・・

 色々な噂が広まっております。」


一同が固唾を飲んで、聞き入っている・・・








「本当なのですか・・」


「私達は、体験した事はありませんが、

 お客さんからお聞きしております。


 それが、一人や二人ではない事が、本当なのだと裏付けていると・・

 私どもも不思議な事ではありますが・・

 そう、思わざるをえません・・


 特に、隣の女性に用意させて頂いた部屋は、その話をよく聞く部屋です。

 新聞にも採りだたされたり、雑誌で紹介もされた事もありました。


 詳しくは、ロビーに資料がありますので・・

 お声をかけて頂ければ、詳しくご説明します。


 では、ごゆっくりどうぞ・・」


軽い会釈をして、部屋を出ていく女将さん・・

話を聞いて、女子達が振るいあがっている・・


「ほ・・本当なんですね・・・」


「うん・・・」


「今西君?私達、女子の部屋が出るって・・・」

幸子さんが聞いている。


「うん・・」


「出たらどうするの?」


「うん・・・」


「こら~!!!

 さっきから聞いてれば『うん』しか言ってないじゃない!

 ちゃんと考えてるの~???」


「あはは・・

 と・・とりあえず、汗かいたから・・

 お風呂にしようよ・・」



「この期に及んで、お風呂だ~???

 まさか、女子の浴衣姿だけが目当てじゃないでしょうね~!!」


「いや~。そんな事はないよ~

 お風呂あがったら、皆でミーティングだよ~」

 

ヒンシュクの目で見る女子部員達・・

仕方なしにお風呂に入る事にした一同・・








女性用浴場。


大浴場ではないが、露天風呂と室内の洗い場で構成された、中規模の浴場。

一応、冷泉が出ているらしく、沸かしてお湯を張っているらしい。

仄かに硫黄の匂いがする。


露天風呂の湯船に浸かる楓ちゃんと幸子さん・・

眼鏡を外した楓ちゃんは可愛い・・


幸子さんは高校2年だけあって大人っぽい。


(後は、読者の妄想にお任せしよう・・)



「ふぅ~。運動した後だから、疲れが取れますね~。」


「そうね・・トンネルの所から、だいぶ走って来たものね・・」


「部長は、いつも、バタバタしてるんですか?」



「うっ・・

 そ・・・そうなのよ・・・

 今西君にも・・困ったものよね・・


 後先考えないって言うか・・

 無責任って言うか・・

 ノー天気って言うか・・」


「でも、凄いことしてますよ。カメラだってこだわってるし、博士と遭遇するなんて、奇遇だと思います。」


「そうなのよ・・

 昔っから、くじ運だけは強いのよね~。」


「うふふ・・

 小さい頃から一緒なんですね。

 部長さんと副部長さんって・・


 ひょっとして、付き合ってるんですか?」


「え??

 まあ・・


 それなりにね・・・

 家に遊びに行ったりはしてるけど・・」


「やっぱりな~。

 でも、ちょっと嫉妬します。」


「え?」


「だって、この学校に入って来たのも、先輩の事、追いかけてきたから・・」


「あんな奴、やめといたほうがいいよ~。」


「そうですか?

 じゃあ、私が取っちゃいますよ。」


「あはは・・楓ちゃん・・」


「冗談ですよ~。

 でも、やってる事は、ちゃんとやってます。

 憧れるな・・」


表向きは和やかな会話なのだが、さりげなく、今西君の争奪戦が始まっていたのだ・・

小柄でかわいい楓ちゃん。バイタリティーも人一倍ある、活発な女の子だった。







風呂上り、浴衣に着替えてロビーまで歩いてきた幸子さんと楓ちゃん。

髪がしっとりと濡れ、まだ体から湯気が熱って(ほてって)いる。


壁に貼ってある『座敷童』の資料に目が行く。


「やっぱり、出るんですかね~」


「そうね・・これだけ、目撃者が多いと・・」


「私達の泊まる部屋の目撃が多いって・・」


「何か、怖いわよね・・」


雑誌の切り抜きにも、大きく見出しで、「老舗の旅館で座敷童を見た」とある。

目撃者の証言も、それらしき事が書いてあるが・・


二人で、眺めていると、後ろから・・


「いらっしゃいませ。お待ちしていました。」


誰か、他のお客さんが入って来たようだった。


振り向くと・・


「あ、お姉ちゃん!」


「弥生ちゃん・・・」


先程、トンネルの出口で別れた筈の博士と弥生ちゃんだった。

二人ともようやくたどり着いた感じで、疲れ切っていた。


「ほお・・君たちも、この宿かね・・」


「はい。・・奇遇ですね・・」


「いや・・この旅館は、『座敷童』が出るという噂で有名だ。

 あのトンネルとこの旅館は、セットになっているから、

 おそらく、ここに泊まるだろうとは思っていたがね・・・」


「そうですか・・」


「私とお父さんは、歩いてきたから、こんなに遅くなっちゃったけど・・」


「あら、お知り合いですか?」

女将さんが聞いてくる。


「はい。峠のトンネルでお会いしたばかりですよ・・」


「そうですか・・

 ずいぶん、お疲れの様子ですね・・」


「うん・・もう疲れちゃった~。」


「私達は、部屋で休んでから、お風呂に入ります。

 夕食は、8時頃でお願いしますよ。」


「では、お休みできるように、御布団を敷かせて頂きます。」


「そうして頂けますか・・」


博士と弥生ちゃんが部屋に案内される。

見送る幸子さんと楓ちゃん・・・


「そっか・・あのトンネルと、この旅館はセットなんですね・・」


「そうね・・ミステリーツアーだと、そうなるのね・・」


「でも、あの博士と一緒に泊まれるなんて、ラッキーですね。」


「また、トンネルみたいに、色々と計測するのかしら・・」




「あ、そろそろ、ミーティングの時間ですよ!」


「皆に、博士の事を知らせましょうか・・」


「そうですね。皆、驚くでしょうね~。」


今西の居る部屋へと歩き出す二人・・・



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