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霊感ケータイ  作者: リッキー
オカルト同好会
190/450

74.祠


「ここか・・・」


博士が目的地についた。


 ピ~~


口笛を鳴らして、弥生ちゃんに合図を送る。



「あ・・着いたみたい・・・」

トンネルの出口付近に居た弥生ちゃんが気づく。


「お姉ちゃんも行きますか?」

幸子さんに聞く弥生ちゃん。


「いえ・・私は、ここで荷物を見なくちゃだから・・・」


「じゃあ、私達のもお願いします!」


「はい。

 行ってらっしゃい!」

にっこりして、送りだす幸子さん。



今西と楓ちゃんが博士に追いついた。

博士は既に周りの調査をしている。ナタで草木を刈っている。


「博士・・・これは・・・」


今西が訊ねる。


「ふむ・・・これは、古いほこらだな・・・」


そこには、古く、朽ちてしまった祠があった。

樹齢数百年くらいの大木が何本か立っていて、その根元には雑木が生い茂っている。

博士が草を刈って、その全容が現れてきた。


崩れ落ちた石造りの祠・・

苔むした屋根の部分や、壁、土台の部分・・


「山に人が入らなくなって、久しい様だ・・

 ここは、昔は峠で、多くの人が往来していたのだろうが・・・」


「これが・・

 古い祠が・・

 原因だったのですか?」



「ふむ・・・

 祠というのは『イヤシロチ』の場合が多い・・・」


「イヤシロチ?」








イヤシロチ・・・


遥か昔に書かれた『カタカムナ文献』に出てくる。

この世のモノが「陰」「陽」で大別される場合、その状態は「蘇生型」「崩壊型」のどちらかに分類される。


「蘇生型」の状態だと、モノが腐らず、長持ちする。蘇生型の微生物が活発に活動し、発酵を促す。

逆に、「崩壊型」の状態は腐敗が進むのだ。


「蘇生型」の特性を示す「イヤシロチ」、「崩壊型」の性質を持つ「ケカレチ」が存在する。

昔から、神社や墓地、神聖な場所の場合が多いが、そういった場所は決まってイヤシロチであるという。


「イヤシロチ」と「ケカレチ」は地形的に交互に現れ、「イヤシロチ」が直線上に結ばれる線となる。これが『レイライン』として知られている。

昔の人の知恵・・経験上の知識には、現代科学を絶するモノがある。



「昔は、下刈りをして、山を整備することで、その土地が活性化しておったのだ・・」


「活性化・・ですか・・」


「イヤシロチは、その土地の性質上、空気中にマイナスイオンとプラスイオンの両方が多大に分布する。

 そこにあるモノを活性化する性質がもともとある土地だ。

 地下の水脈に、その性質が転写され、麓から出る泉の水は、飲めば健康になるが、


 トンネルが掘られ、どこかで、滞留してしまった水は、腐敗する可能性もある・・

 今まで、蘇生型だった水脈が、何らかの原因で、その効果が得られなくなれば、

 止まった水が徐々に悪性に転じてくるだろうな・・」









「その原因が、この祠の崩壊・・・ですか?」

今西が博士に確認する。


「いや、祠は、単なる『形』・・象徴でしかない・・

 この山を整備する行為自体が無くなることが・・

 山が荒れたことが原因だろう・・


 トンネルが通って人の行き来が便利になると、都会への人口流出が始まる。

 元は、この辺りに住んでいた人も、徐々に都会へと移り住んでいく。


 そうなると、森を整備する人も必然的に少なくなって、手が回らなくなるだろう・・

 よって、山の整備が行き届かなくなって、山が荒れる要因の一つになる。


 そして、トンネルの工事事態もな・・・


 さっきも言ったように、水が滞留すると腐敗型へ移行してくる傾向がある。

 水質が悪化した場所には、悪い性質が転写された荷電分子が貯まりやすくなる・・

 負の感情の記憶・・苦しい事、悲しい事などの記憶が集まりやすくなるのだ・・」


「それが、ここで、『幽霊を見た』という現象に繋がるのですか・・」



「そう・・

 『霊媒師』のように・・脳に影響を受けやすい体質の人が存在する・・

 そういった人が幻覚を見たり、幻聴を聞いたりするのが俗にいう「心霊現象」ととらえている・・・」



「凄い!やっぱり、『ユーレイ博士』だけありますよ!」


「ふふ・・私の専門は『怪奇現象』ではないのだけれどね・・」


そう言って苦笑いする博士。

本来の研究と別の面で有名になってしまったのは皮肉であろうか・・






「お父さ~ん」


山を登ってきた弥生ちゃん。


「お?弥生か・・」


「原因は、分かったの?」


「うむ・・

 この祠の周りの状態からして、山が荒れている事が直接の原因だな・・

 トンネル工事で水脈を堰き止めたのも原因として考えられる。

 人の健全な営みが途絶えてしまった・・

 そんなところかな・・」


「そう・・」


そう言って、祠の石を拾い集め始めた弥生ちゃん・・

祠のあった場所に、石をかため、手を合わせる。


「昔は、みんな、お祈りしたんでしょうね・・・」


「うむ・・

 昔の人たちは、山を大切に・・

 いや・・生活の糧を恵んでくれる大事な存在として崇拝していたのだ・・

 そういった文化が失われているのは、悲しいものだな・・」


部員全員で、その場の草を刈り採って綺麗にしたところで、祠に花を添えて、その場を後にしたのだった・・・






山を降りて、トンネルの前で待っている幸子さんと合流する今西達・・


「遅かったじゃない~。」


「ゴメン。

 ちょっと後始末に時間がかかってね・・・」


「ふ~ん・・

 ま、いいか・・

 ところで、宿泊場所まで、歩いていくんでしょ?

 時間はあるの?」



腕時計を見る今西。

「ゲ!もうこんな時間か?

 みんな、走るぞ~!」


「え~????」


「では、博士、機会があったらまた、お会いしましょう!

 記事が出来たらお送りします。」


「はい期待しております。」


ニコッと微笑む博士。



「お姉ちゃん、さようなら!」


「またね。弥生ちゃん!」

幸子さんと弥生ちゃんが別れの挨拶を交わしている。



山道を小走りに降りていく部員達・・・



「何か、バタバタしてる人達ですね~。」


「うむ・・こっちは、ゆっくり行こうか・・」


「うん。」


歩き出す博士と弥生ちゃん・・







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