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霊感ケータイ  作者: リッキー
階段下の少女
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69.反論


世の中には、自分の考えと違った方向へと、

自分や皆、全体が行ってしまう事がよくある。


皆の考えと、別の行動をとろうと進言しようとしても、

全体の中の自分として、それに従わなければならないという意識が働く。


それを超えて、全体の意思と違った行動をとってしまったとき・・

全体の事を考えて、あえてとった行動だとしても・・


全体から見た、自分は・・

「裏切り者」となるのだろうか・・・


そこに、

理解者が居れば・・

別なのだろうけれど・・・


そのような人は

まず、居ない・・


誤解と疑念、憎悪・・

そういった目で見られる。


それが嫌で、

やむを得ず従う人達ばかりなのに・・・


影響力のある人の意見を聞くだけの・・

日和見ひよりみな人たちの集まりなのに・・・












次の日の昼休み。

音楽室。


ゴーストバスター部のいつものメンバーが集まっていた。

沙紀ちゃんからの報告を固唾を飲んで聞く部員達・・


昨日の帰り道、霊感ケータイ・アプリを使っていた人を見かけたという話だ。


「そんな事があったの・・」

「あの部のアプリが、学校の外に出回っているみたいです・・」


「その、アプリ・・

 私が出張の時に見たものと同じかもね・・・」


先生が東京へ研修へ行った帰りに、電車の中で、それらしきアプリを見たという。

携帯の画面の中に、白い物体が映し出されていた・・

昨日、沙希ちゃんが目撃したというアプリにそっくりだ。


ならば、

先生の出張した日には・・

いや、博士がこの学校へ来る前に、そのアプリが出来ていて、

都心でも既に広まっていたという事に他ならない。



白い物体・・

地縛霊の位置が分かるアプリは、かなり前に出来ていた事になる・・・


そして・・

もう一つ・・


「オレも・・昨日、住職から・・

 望月さんのお父さんから聞いたんだけど、

 『霊感ケータイ』っていうアプリが出回っているって・・」


こちらのアプリは、『本物』に近い。

亡くなった人を写し、メールでやりとりできるという噂だけれど、


そんなアプリは、まだ、見た事は無い・・

単なる噂ならば良いのだけれど・・






「ふ~ん・・

 二つのアプリが、世の中に出回っているって事か・・・」


千佳ちゃんが考え込む。


「今、部長さんのお母さんに、調べてもらっています。」


沙希ちゃんも、僕のお母さんに慣れたようで、一安心だ・・

恐怖に陥っていないか心配はしてたけれど、このまま、霊感ケータイを預けておいても良さそうだ。


「私の携帯で、そのアプリが見れれば何か分かるんだろうけどね~。

 せめて、アドレスでもわかればな~」

先生が自分の携帯電話を眺めながら、嘆いている。


「オカルト研究会のアプリは、パスワードが設定されているって、言ってました。」

沙希ちゃんが付け加える。


「さすが、教頭ね・・セキュリティーは万全ってところか・・」


「あとは、その校外で流れているアプリですね・・

 オカルト研究会で開発されているものと、関係があるのかどうか・・・」



「沙希ちゃん・・タクム君に、聞いてみてくれる?」


「はい・・」


例の文通作戦だけが頼りの綱だった・・

校舎の除霊作業と並行して、アプリの捜索も行わなければならなくなってしまった・・


   『見えない・・何か・・・』


その「何か」が不気味な存在に思えてならなかった・・・











放課後、視聴覚準備室。


オカルト研究会。


部員が一同に集まり、会議を開いている。


部長が中心となり、教頭先生が見守る中、

明日から開始する博士の「霊の消去作業」についての説明が行われていた。


「以上、明日は、北側の校舎から行うという事です・・」


「はぁ~いよいよか~」

「『霊』なんて居るんですか?」

「このアプリを見れば、居るじゃない!」

「う~ん・・この白い塊を消すのか~」

「これが、『霊』なんですか~?」


色んな意見が飛び交っている。


そんな様子を、輪の後ろから見守っている未来先輩とタクム君・・・


「お姉ちゃん・・いよいよ、明日だね・・・」


「ええ・・・」


未だ、思い悩んでいる様子の先輩・・


だが・・・


「先生!質問があります・・・」


「お姉ちゃん・・」


手を挙げる未来先輩。


「はい・・何でしょう?水島さん・・・」


教頭先生が先輩に聞き返す。








「あの・・

 基本的な質問なのですが・・・

 『霊』を除去する目的は何なのでしょう?」


「水島・・・」

部長がポツリともらす・・分かっているはずだと思っていたが・・・


「これまで、『霊』の位置を計測してこられた博士ですが、

 その作業もほぼ、完了し、

 今回、実際に除去しようということになりました・・・・。」


教頭先生が説明をし始める・・・


「『霊』を除去する目的・・

 それは、校舎内に点在する磁場の乱れ・・


 荷電分子の存在が、異常なまでに、多いのです・・

 この学校は・・・


 それは、この校舎内での生徒や教師の「念」が強く蓄積されているという事・・

 古い校舎・・学校の歴史が長い事を物語っています・・


 そういった、念は、在校の生徒たちに悪影響を与える可能性があります。

 その除去を行う事で、今の生徒たちの安全を確保したい・・

 そういった博士の思惑があるのです。」



除去を行う目的・・

それは、最もな理由であった。副部長である先輩も周知していた。









だが、更に、質問を付け加える先輩。


「ならば・・

 その

 『除去』をした場合、何らかの影響は出ないのでしょうか?」


ザワ・・・・・

部員達がその意見に驚いていた・・

眼鏡がキラリと光る教頭先生・・




「ありません!」


きっぱりと言い切る。

一点の曇りもない様子の教頭先生。


「『霊』の存在は、現在を生きる私達にとって、良いモノでも悪いモノでもありません。


 いえ・・

 過去の記憶の蓄積、固まりは、『負』のモノが多い・

 苦難や苦悩・・憎悪・・そういった念の固まりの方が多い・・


 そういう存在は、

 現在を生きる健全な人たちに、かえって、悪影響を及ぼしかねません。

 

 脳の直接影響して、幻惑や幻影・・様々な現象で悩ませる結果となります。」



博士や教頭先生の概念では、『霊』とは空間上に転写された人間の記憶・・

その場所に触れた生きた人の脳に、その転写された記憶が作用し、幻覚や幻像が見えるという・・

それが「心霊現象」でいう「見える」という事の正体なのだ。


その『記憶』は、負のモノが多い・・










確かに、

転写される想いとして、歓喜に満ち溢れた感情よりも、苦悩や憎悪などの方が多いのだろう・・


  「中学校」・・


その学校の特徴として、思春期特有の悩み、受験、家庭の問題、教室での人間関係など・・

様々な苦悩が多いのも、その原因として考えられる。


でも、

本当に、『霊』が博士の理論である、空間上に転写された記憶の存在なのだろうか・・


そうでなく、俗にいう『霊魂』が存在しているならば・・

その消去を一方的に行った場合、その作業を当たっていた人に、影響は出ないのか・・


それだけが心配な先輩だった・・


部員や博士の事を心配している未来先輩・・

更に、もう一言、付け加えた・・・


「あの・・


 本当に・・

 『霊』は、記憶の固まりだけの存在なのでしょうか・・


 その「除去」を行った場合、

 私達に、何らかの影響があれば・・・」



「水島さん?

 私達の理論が間違っていると言うの?」


自信に満ちた教頭先生を、止められるモノは、無かった・・・



「いえ・・

 それは・・・」


「作業に当たっては、細心の注意を払います。

 計測を同時に行いながら、安全を確かめながらの作業です。」


これ以上は、無駄だと覚った(さとった)先輩・・


「わかりました。」


その返事に、ニヤリと笑みをもらす教頭先生。


「よろしい・・

 他に質問は?」



その言葉には部員の一同・・返す質問も見当たらなかった・・・

その様子を見回して、会議の終了を促す教頭先生。


「では、会議を終了します。明日は、3時からの作業になります!」



部員達が解散し、方々の部署へと戻る。

パソコンに向かう部員や図書館へ調べものに行く部員、校内の計測へ向かう部員達・・



「お姉ちゃん・・」

俯いたままの先輩を心配そうに見守る拓夢君。



「水島さん!

 ちょっと・・・」

教頭先生から声がかかる。


「はい・・」


部屋を出ていく二人・・





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