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霊感ケータイ  作者: リッキー
階段下の少女
181/450

65.帰り道


僕たちは、次々と、北校舎に居つく霊を除霊して廻った。

僕が地図を見ながら、次の場所へと誘導する。


千佳ちゃんに地縛霊を憑依させ、彼女が浄霊の儀式を行う。

一体一体成仏させていくのだ。


儀式が終わると、沙希ちゃんと先生の補給が行われる。

疲労した彼女と千佳ちゃんにホットケーキとドリンクが渡され、

エネルギーを補給している間に、僕と沙希ちゃんが彼女たちのマッサージを行う・・・


僕に肩もみをされながら、沙希ちゃんのスペシャルスイートなホトッケーキをほおばり、至福の一時の彼女・・


「あ~・・

 極楽だわ~。」


「ここ?こってる?」


「う~ん・・

 気持ちいいぃ~。」


ドリンクを飲みながら沙希ちゃんからマッサージを受ける千佳ちゃん・・



「ぷはぁ~

 高級ドリンクは効くわぁ~・・

 やっぱり、霊媒の役は疲労するなあ~」


「先輩。頑張って下さい~。」


「力が入ってないぞ~。」


「はいはい!」


「しかし・・このホットケーキ・・甘すぎじゃない?」


「はい。

 粉にもハチミツと砂糖をたっぷり入れてます。」


「うう・・・更に、ホイップにメープルか・・・

 確かに、スペシャル・スイートだわ・・・」


「千佳ちゃん。これが良いのよ~。あんこも欲しいな~」


「つ・・ついて行けん・・この甘党には・・」




「さて!お二人とも!時間よ~!!

 次、行ってみましょうか~!!!」

時計を見ていた先生が容赦なく出立しゅったつの合図をする。


「え~?もう時間~??」


「先生・・もう少し・・」


「ダメじゃ、ダメじゃ~!

 働け、働け~い!

(こっちは、新しい服、我慢してるんだから~)」


「ひえ~、鬼!悪魔~!」


まぁ・・・こんな感じで、1日に20体ほど除霊を行った・・・


しかし・・

この学校・・


霊が居すぎるんじゃないの????









下校時


夕方の除霊を行い、帰りの時間。

部活の皆と校門の前まで歩いている。


「は~・・

 今日は疲れたよ~。」

疲れ切っている千佳ちゃん。


「お疲れ様でした。先輩!」


「うう・・これが毎日続くと思うとシンドイ・・・」


「毎日、ホットケーキ焼くのも大変です・・」


「あんたねぇ・・

 ホットケーキ焼くレベルと違うんだけど~

 美奈ちゃんも、疲れたでしょう?」



「うん・・

 ちょっと・・・」


彼女は、確かに疲れていた。見てもわかるくらいに・・・


「う~む。

 ヒロシ君・・

 家まで送ってあげたら?」


「うん・・そうするよ・・」


実の所、僕も疲れていたのだ。

それでも、彼女が気がかりだった。


「え~?それじゃあ、私、一人で帰るんですかぁ?」

沙希ちゃんが嘆いている。


学校から帰る方向が彼女とは正反対なのだ。


「あんたは、一人で十分でしょ?」


「そんな~。童子四天王がいつ、襲ってくるか分からないんですよ~」




そうなのだ。


音楽室で皆が襲われて以来、ずっと攻撃は無かったけれど、いつ襲われるのかわからない状態が続いていた。

拓夢君が監禁されてから、僕と沙希ちゃんが一緒に帰っている。

彼女と千佳ちゃんが一緒だ。


僕や拓夢君、沙希ちゃんは学校から駅の方向。

彼女と千佳ちゃんは山側の方向だ。


僕が先生のマンションに引っ越す前は、彼女たちと一緒の方向だった。



家まで帰れば、彼女が施した結界によって守られている。

めいめいが護身用のタオルを持っているとはいえ、一人の時に、あの四天王に襲われればひとたまりもない。


沙希ちゃん一人にするわけにもいかなかった。









「困ったね・・

 翔子ちゃんも拓夢君も居ないし・・・」


そう・・

翔子ちゃんが、まだ健在で、拓夢君が居る時ならば、まだ、心強かったのだ。


いつの間にか、ゴーストバスター部も主力の2人が抜けた状態だった。




その時・・・


 チャラララ・チャラララ


霊感ケータイが鳴る。

メールの様だった。


 ピッ


メールの内容を読む。




 お困りの様だねヒロシ君!

        翔子の父



「翔子ちゃんのお父さん!」

翔子ちゃんパパからのメールだった。




 私と、響子さんで帰りのガードをするよ!

        翔子の父



「え?本当ですか?」



 ミナちゃんの方面は、私が担当するわ。

          響子




 ヒロシ君の方面は私だ

        翔子の父




思ってもみない助っ人が舞い込んできた。すっかり忘れていた二人・・

直ぐ近くに来ているようだった。



 ヒロシ?私達の事忘れてたでしょ?

         響子



図星だった。


「うん・・ごめん・・忘れてた・・」



 全く!失礼しちゃうわね。

        響子









「部長・・誰と話してるんですか?」

沙希ちゃんが不思議がっている。


「ああ、

 僕のお母さんと、先生の旦那さんだよ。」



「え???

 その二人って・・

 亡くなってるんじゃ?」



「そうだよ。

 でも、帰り道を守ってくれるって!」


「え~~?????

 幽霊に守られるんですかぁ~???」


普通では考えられない事態だ。

沙希ちゃんの反応の方が普通だと思う。

僕や彼女には珍しくもなかったが・・



「あ・・

 でも、私、ヒロシ君と帰りたいな・・・」


彼女がポツリと言う。


「ええ~????

 私、先生の旦那さんと二人きりですか~~?????」


沙希ちゃんが嫌がっている。

もっともな反応だ。

幽霊と二人っきりなんて・・考えただけでもゾっとするのが普通だろう・・


しかも、相手は、幽霊(?)であっても「男」なのだ。

襲われでもしないか、不安になるか・・・


でも

僕も男なんですが・・僕なら良いワケ?沙希ちゃん・・





 うう・・オレ・・振られちゃったヨ・・

         翔子の父



「あはは・・そうガッカリしないでください・・」



 これでも、守備系の特訓を受けているんだよ!

         翔子の父



「凄いですね・・地獄での特訓ですか?」




 ああ・・日々鍛錬だよ・・まさに地獄さ・・・

         翔子の父



翔子ちゃんの代わりに、僕たちをサポートするために日々地獄での特訓を行っている翔子ちゃんのパパ・・その努力も評価しなければならないのだろう・・








「ヒロシ君・・男同士での会話はいいから・・

 どうするの?」

千佳ちゃんが、早くしろと言っている。


彼女は僕と帰りたいって言ってるし・・・

沙希ちゃんは一人が嫌だと言っている・・



 ヒロシ・・じゃあ、私と沙希ちゃんはどう?

         響子



「僕のお母さんとは、ダメ?」



「部長のお母さんですかぁ?

 少しは・・安心できますけど・・・」




 オ・・オレって・・・何????ヒロシ君・・

 完全に嫌われてるワケ??

         翔子の父



「いや・・そういうワケではないと思いますが・・・


 あ・・

 お父さんは、先生と一緒に帰って来て下さい。

 僕は大丈夫ですから・・」




 そ・・そうするよ・・・

         翔子の父




話がややこしくなる前に、二手に分かれて帰る事にした僕達・・













僕と彼女と千佳ちゃんが帰宅している。

彼女も千佳ちゃんも、除霊の儀式で、疲れかえっていた。


初めは言葉も出なかったけれど・・・


「そう言えば、ヒロシ君と一緒に帰るのって、久しぶりだね・・」


千佳ちゃんが話しかけてくる。

いつも、明るい千佳ちゃんに助けられている面がある。


「そうだね・・

 先生のマンションに引っ越してから、

 こっちの方向は来なくなったから・・・」


「うふふ・・

 美奈ちゃん、寂しがってたんだよ~」


「千佳ちゃ~ん」

彼女が赤くなっている。



「あはは!冗談だよ~」


「もう~!!!」

今度は怒っている彼女。

千佳ちゃんは、ざっくばらんな性格で、冗談が言い合える仲だ。


ムードメーカー的な存在。

さっきも、僕が除霊を行えないジレンマを打破して、背中を押してくれた。



「千佳ちゃん・・・」


「何?ヒロシ君・・」


「さっきは、ありがとう・・・」


「え?何の事?」


「本当は、オレが、部活を引っ張って行かなければならないのに・・」


「ああ~、その事か~。

 美奈ちゃんへの負担を気にしなければならないヒロシ君の気持ちは、皆、分かってるんだよ。


 でも・・

 タクムがさ・・


 一人で、あの部活で必死に抵抗してる姿を見てるとさ・・

 私も何かをしなければって思ったのよ・・」


「千佳ちゃん・・・」



千佳ちゃんも千佳ちゃんなりに、自分で何ができるのかを考えているのだった。







「あの情報を流したって事は、

 博士に消される前に、除霊をして欲しいんだって・・

 思ったんだ・・


 それには・・

 ミナちゃんにも負担掛かけるけどさ・・

 何とかしたいじゃない?」


 

「そうだね!

 タクム君、部活には出て来れないけど、

 ちゃんと、ウチの部の一員なんだよ。」


彼女と千佳ちゃん・・

二人とも疲労しているはずだったけれど、何かを成し遂げたっていう、晴れ晴れした笑顔だった。



皆の心が、繋がっている・・

そこに居ても、居なくても、

離れ離れになったとしても、


ちゃんと、仲間として繋がっている・・




「あ、あとは、直ぐだから、ここまでで良いよ!」


千佳ちゃんの家の近くまで来ていたのだった。


「また明日、頑張ろうね!」



「うん。

 

 あ、

 ヒロシ君!?」



「何?」



「送り狼になるんじゃないよ~!

 ミナちゃんもね~。」


そう言って、小走りに駆けていく千佳ちゃんだった。



二人、残される・・・



「送りオオカミ?に・・なるの?ヒロシ君・・・」


「い・・

 いや・・・」


「私もって・・

 どういう意味なのかな・・・」


「わかんない・・」


急に意識し合う二人だった。










「行こうか・・」


「うん・・」


再び歩き出す二人・・・


千佳ちゃんが居ないと、話題も少なく、口数が少なくなってしまう。

何か話題を出そうと思っても、何を言っていいのかわかならくなる時がある。

そんな時、千佳ちゃんは、明るく、話題も提供してくれるから、助かる面もあるのだ。


でも、

僕は、言わなければならない事を思い出した・・・



「ミナ・・」


「なぁに?ヒロシ君?」


「大丈夫?疲れてない?」


少し、考えていた彼女。


「大丈夫だよ。


 でも

 嬉しかった・・・」


「え?」



「ヒロシ君が、私の事、気遣ってくれてて・・

 部活の事や、『霊』の事よりも・・

 私の事、心配してくれて・・

 嬉しかったのよ・・」


それは・・・当たり前の事だと思っていた。

目的の為に、誰かが犠牲になるのは、イヤだったし・・


それが彼女だったら、尚更の事なのだ。










「オレ・・


 やっぱり、

 ミナの事が・・

 大切だから・・・」


その言葉に、彼女が足を止めた・・・


「ヒロシ君・・・」

僕を見つめる彼女・・・


「何か、あったの?」


「え?」


「何だか・・いつものヒロシ君と、違うような気がして・・・」


「な・・何もないよ・・?」



鋭い・・放課後、先輩と屋上で会っていたのだ。

そして、先輩から情報をもらった事、助けを求められた事・・


そして先輩から告白された事・・

色々あったのだった。


その事を、見通しているのだろうか?


眼鏡を外して、髪止めをほどく彼女。


可愛い・・・


でも、何で???


「私が、さっき言ったことは、本当の事だよ・・」


「さっき?」


「私は

 ヒロシ君の為なら・・

 何でもする・・


 除霊をしろと言われれば、喜んでする・・

 例え、私の体が・・どうなろうとも・・


 私は・・」













「それは・・違うよ!」


「え?」


僕が反論する。驚いている彼女・・

僕が反論してくるなんて滅多にない事なのだ。


そう・・

あの時、僕が言おうとした言葉が出てきた・・・


皆が沈黙したとき、僕は何かを言おうとしていたのだ。



「ミナが、僕のために、何かをしてくれるのは、嬉しいよ・・


 でも

 ミナを・・


 いや

 誰かが犠牲になって、いい事なんて、無いって思うんだ。」




「誰かが犠牲にならなければ

 ならない事も、あると思うけど・・」



「いや・・

 オレは・・


 そんなの、イヤなんだ!


 何か、

 別の方法があるんじゃないかって・・」


「別の方法?」



「今回の除霊については、

 博士の研究から回避させるために、

 『霊』が消去される前に、除霊をしようという事だった・・


 それは・・

 オカルト研究会や博士の一方的な研究のためだ。


 オレ達の部活がやるべき事は・・

 博士の行動の前に、ウラをかいてしまう方法・・


 それだけしかないのかって・・

 思ったんだ。」



「他に・・

 あるの?」


「わからない・・

 誰も犠牲にならないやり方があるんじゃないかって・・・」



「誰も犠牲にならない・・方法?

 そんな事が・・あるの?」


「わからない・・


 でも

 何かあるような気がして・・

 ならないんだ・・」



雲をつかむような話をしている僕だった。

それは、理想論なのかもしれない・・

非現実的な事なのかもしれない。


目の前に出された課題を、早急に解決しなければならないのだ。

あ~だ、こ~だ考えている余裕など無い。


でも・・









「うふふ・・

 ヒロシ君って、

 面白い事考えるんだね・・


 誰も考えつかない事を・・

 誰も行かないような道を・・」



「そうかな・・」


「何だか・・

 ヒロシ君・・

 大人になってるような気がしたんだ・・」



「大人に?」


「前の優しさと違うの・・

 私だけへの優しさなんじゃなくって・・・


 皆を

 守ってくれてるような・・」


「そ・・そうかな~

 オレの方が守られてるような気がするけど・・」



「何だか・・

 魅かれるモノがあるんだよ・・」



放課後、屋上で先輩から告白された時、今まで会ってきた人と違うと言われた。

成績も優秀な人たちが沢山いる中・・なぜ、僕なのだろうと疑問に思っていたのだ。


前に、お母さんや翔子ちゃんにも言われたことがある。


僕には、


 『霊感よりも強いモノを持っている』


と・・

それが、一体、何なのか・・

自分でも良くわからない。


でも・・

誰が来ようと、好きだと言われようと・・

ミナが一番大切なのは、変わらない。













「ねえ・・

 ヒロシ君・・・」


「何?」


「私は・・

 どんな事があっても・・

 ヒロシ君の味方だよ。


 私は・・

 あなたの

 モノ・・・」



「ミナ・・・」



「何だか

 ヒロシ君が

 遠くへ行ってしまいそうで・・


 私・・

 何だか・・

 寂しくて・・」


涙目になっている彼女・・・


うう・・

なんて・・可愛いんだ・・!!

 

「大丈夫だよ!

 オレも・・

 君から

 離れはしない。


 いつも

 一緒だよ。」


 

「ヒロシ君・・・」


見つめ合う二人・・・


自然に、彼女の目がとじ、

僕の方へと寄り添って来る・・


僕も


彼女の肩に手を掛けようとした・・





「そこの二人~!!!!!」


「え?」


千佳ちゃんの声がした。


「千佳ちゃん!」



「まだ、10mも歩いていないうちに、既に自分たちの世界になってるし~!!!」


確かに、先程、別れた場所から、まだ、何mも歩いていなかった・・


「この二人は、目を離すと直ぐこれだ・・

 美奈ちゃん・・

 ダメだよ~。

 逆送り狼になってるし~!!


 ヒロシ君も、ちゃんとしてよね!

 まだ、中学生なんだから~。

 やっぱり、お母さんか誰かに憑いて来てもらってたほうが良かったんじゃない?」


「あはは・・」


笑ってごまかす僕だった。





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