表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊感ケータイ  作者: リッキー
母と父と
18/450

十七.  おじいちゃん達


次の土曜日の朝、


いや・・朝ではなく、

もう昼近くにもなっている。


時計は10時を回っている・・


 トゥルルル・・・・

 トゥルルル・・・


居間にある電話が鳴り響く・・

僕が眠気をこらえて電話に出る・・




父の部屋の戸を開ける。

まだ布団に包まっている父に話しかける


「おじいちゃんたち・・

 これから、来るって」

父は夢うつろの中で聞いていたらしいが・・


「えー!マジかよ~!」


飛び起きる。

まさに寝耳に水といったところ・・・




大急ぎで着替え、掃除を始める父・・・

散らかった部屋(正確には家中)の掃除は大変だ・・

押入れの中に荷物を詰め込む。


僕も、食器を洗ったり、洗濯をしたりする。


明日は母の命日だ。

法事は明日のはずだったのに・・

急に祖母と祖父が訪ねてくるという。


片付けは今日一日で終える計算が狂ってしまった。


まあ、法事といっても僕と父、母方の祖父、祖母くらいの、身内だけのささやかな儀式で済ませる予定だ。

まだ一日あると思っていたけれど、抜き打ちで私生活を見ようという魂胆か・・



一通り片付いたのは2時間後ぐらいだった

父は、ハアハアと息を荒立てている・・



「こ・・

 これで・・

 いいか・・?」


「うん、

 いいんじゃない?」



 ピンポーン。


丁度、祖父たちが来たようだ。

ぎりぎりセーフといったところ・・



「よお、久しぶり!

 ヒロシも元気にしてたか?」


「ハンバーガー、

 買ってきましたよ!」


祖母の手に、駅前のハンバーガー屋さんの袋・・・


生前、母が好きだったハンバーガー


明日は、母の命日だ・・

祖父たちは、ここへ来る前に、母の墓でお参りを済ませてきたそうだ。


「はっはっは~!

 直人君!

 一杯やらんかね~!」


ビール1梱包を片手で高々と上げ、父にすすめる祖父・・


「はあ・・」


「あなた、昼間っから・・・」


「そう、硬い事言うなよ~」

祖父が机に、買ってきたビールやつまみを広げ、父にビールを勧めている。


祖母と僕は、チキンをほおばっていた。

じゅわっとくる食感・・

母とよく、こうして味わってたっけ・・


祖母にとっては、母の入院時の世話の頃から、子供の居る家庭での習慣が身に付いたようで、外食でハンバーガー店のものをお土産にすることが、しばしばある。


僕も、油系統は好きなのですが・・・




食事もあらかた済んだところで、


「ヒロシも、もう中2か・・・

 来年は受験生だな~。」


「う・・・ん」

祖父の一言は、きびしく僕に突き刺さる・・

先日も父が雨宮先生に指導されていたかと思うと、ぞっとする・・

祖母が、僕の態度を見て察したのか、話をそらしてくれた・・


「学校では、付き合ってる娘でもいるのかい?」


「あ・・・いや・・・」

彼女のことを一瞬、思い出した・・


でも、まだ付き合ってるワケじゃないし・・


「ふふふ・・

 気になってる子が居るんだね・・・」


顔を赤らめる僕・・・

昔から、僕のことを見抜くのが上手い祖母・・

母が入院し、家に居ないときは、よく世話をしてくれた・・

ここから電車でかなりの距離に住んでいるけれど、殆ど毎日来てくれていた・・


 長い闘病生活だった・・


母より祖母のほうが長く接していたような気もする。

だから、僕のことが手に取るようにわかるのだろう。



 ピンポーン


玄関のチャイムが鳴る。


誰だろう?


「ごめんくださ~い」


彼女だ!

何か僕に用事があったのだろうか?また、何かの事件に付き合わせよという魂胆か?


玄関のドアを開ける・・

かわいいバージョンの彼女だ!


「あれ?

 望月さん、どうしたの?」

 

「あら、

 かわいい、

 何処のお嬢さん?」


祖母も出てきていた・・


「あ、お寺の者です。

 明日の予定なんですが・・

 急な用事ができまして、

 今日、ちょっと・・

 お経を読ませて頂きたく・・」


ご住職(お父さん)のギックリ腰の件がひびいているらしい・・

雨宮先生の件もあり、予定が付かなくなったらしく、母の命日の読経を、繰り上げてきたらしい。


それにしても、プライベートで会う時は素顔が多い彼女である。

まあ、祖父達に会わせるにしても、こっちのほうが好印象だろう。


でも、ここまでの道中、色々なものが「見えて」しまうのに・・

無理をしなくても・・・



彼女を居間へ案内する。


「昨日は、どうも・・」


父と挨拶をする彼女。

父は初め、誰だか分からなかったようだったが・・・



「あ、昨日はこれでした・・」

手で眼鏡の形をつくって、目に当てる・・


「ああ、昨日の!」

父もようやく理解したようだ。


昨日の眼鏡少女の中身が、こんな美少女だったなんて思いもよらなかっただろう・・


「ご住職は、大丈夫ですか?」


「まだ、ちょっと本調子でないので・・・」


「それは大変だ・・

 明日が命日ですが早くなっても構わないですよ。」


「すみません・・」

事情を知っている父だ・・

すんなりと申し入れを受け入れた。

丁度、おじいちゃん達も来ている事だし、一日早めても問題ないと判断したのだろう。



「何々?

 ヒロシのガールフレンドか~?」

祖父も、思いがけない美少女の登場に、何としても話しに入りたがっている。


「こんな美人が彼女か~!

 ヒロシもやるの~」


「いえ・・」

彼女は赤面している。


「おじいちゃん、オレたち、まだ付き合ってないよ・・!」


「ん?『まだ』ってことは、そのうち付き合う気があるのか~?」


「う・・」

そうだった・・

「まだ」ってことは、いずれ僕たち、付き合うというニュアンスもあったのか・・


彼女はどうなんだろう?

僕と付き合うことに抵抗はあるのだろうか?


「下僕」とか「助手」程度にしか思っていないのだろうか・・

でも、彼女の家での様子だと、そんなところでもなさそうだったけれど・・


本当のところはどうなんだろう?



「どうなんじゃ~?

 白状せんか~?」


執拗に攻めてくる祖父。

僕も赤面し、下を向く・・

何も言えない・・・


「あなた、からかうものじゃないですよ」


「はっはっは」


大人は、こうやって子供をからかうのが好きなようだ・・・



彼女も、これ以上付き合っていては、ラチがあかないと察したのか、開き直る。


「それでは、お勤めをさせていただきます。」


「はい。お願いします。」


父が、母の位牌へと案内する。

カバンから小さな、器を取り出す彼女。


 塩?


まずは、部屋の4隅に塩を一つまみ程の山を盛る。


「ほう・・盛りもりしおか・・」

祖父が、感心したようにつぶやく。


次に、母の位牌の周りにも塩を四隅に・・


四角に細かく切った紙を撒く・・


水をコップに入れ、ロウソクに火を灯す。


「オン・アボキャ・ベイロシャノゥー・マカボダラ・マニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバーリタヤ・ウン・・」

お経・・というより、なにやら呪文のようなものを唱えている。


「変わった、お経ね~」

祖母も不思議がっている。


 確かに・・・


供養というよりも、何だか儀式を行っているような・・・

2~3分で、その呪文は終了した。



この後、彼女が説教をするのだろうと一同は期待していた。


御仏の心とか、

命についてとか、


有難い言葉が、この小さな子供から放たれるのか・・

内心、(ため)しているような感じもあった。


  いい大人が・・


見守る大人たちの視線の前で、


「お母さんは、あちらで元気でいると、伝えてもらいたいと言ってました。」


「はい?」

一同・・その意外な言葉に唖然とする・・



 こら!

 素人相手に説明無しで

 本当のことを言うと、混乱するでしょ!


冷や汗もので聞いていた僕だったが、更に・・・


「ご家族を見守っているようですヨ」


「はあ・・」



怪しいでしょ・・

あたかも、見てきたような事を言うと・・・


実際に見えるんだろうけれど・・



「この、塩とか、お札は?」


「結界を張らせて頂きました。ご心配はいりません。」


「結界?何ですか?」


「あ、それは、今は秘密です」


秘密といわれると、余計心配になってくるじゃない?

これ以上は、まずいと思って、彼女の背中を押しつつ・・部屋を出る・・


「あ、ちょっと、送ってくるから・・」


「ヒロシ君、荷物まとめなきゃ・・」


「おう、二人っきりで・・ランデブーか~」



急いで荷物をまとめて、皆に見送られて外へ出る。

霊感少女だったなんて知ったら、みんな何て言うか・・・


彼女と玄関を出て、階段を下りながら、下の広場へと送る。


「どうしたの?ヒロシ君。」


「いや・・皆、ちょっと変だって思ってるんじゃないかって・・」


少し、考えて・・


「ああ、結界のことね!」


それだけじゃないのだけれど・・

彼女もマイペースすぎる・・

でも、何で結界が秘密なのかも知りたい。


「どうして?」


「それはぁ~・・

 ヒ・ミ・ツ!」


両方の一指し指を口の前でバッテンに交差させる。

その仕草も可愛い!


マイペースなところさえなければ、最高の彼女なんだけどな・・

天は2物は与えんってところか・・


「でも、あの結界がある限り、お母さんは大丈夫だよ!」


「大丈夫って、何か、大変なことになってるの?」


「う~ん・・今は何も言えないの・・ごめん!」


そう言って、パタパタと家路を急いだ彼女だった・・

後姿を見送る僕。


どうしたんだろう・・


何だか慌しく見える。


家に帰ってくると、祖父たちがお札とかを不思議そうに眺めていた。


「変わった娘ね~。」


「まあ、いいじゃないか・・効きそうだし」


「そうですね・・」


「あ、お布施渡すの忘れてた!」


「急いでる様子だったよ・・明日にしたら?」


おそらく、例のギックリ腰やら雨宮先生の件で、お寺も忙しいのだろう。

二人しかいないのだから切り盛りするのも大変だ。


でも、あの慌て様は、それだけではなさそうだったが・・


何があったのだろう?


でも、こっちも祖父たちが居る限り、気が抜けないのだ。

父と二人、何とか生活しているというところを見せないと・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ