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霊感ケータイ  作者: リッキー
ファーストコンタクト
176/450

60.勝敗の行方


「色即是空!空即是色!!」


シュワ!!!


 シュワーーーーー!!!


般若心経と共に、取り囲んでいた霊体が次々と消えていく。


「間に合ったか・・・」

僅かに(わずかに)笑みを浮かべた陽子がつぶやく・・・





「お母様!!

 お待たせしました~!!」



巫女姿の美奈子が姿を現わした。



「遅かったわね・・

 今西君!」


「いや~すまない!道路が渋滞してて!!」


山奥の神社から美奈子を連れて車を走らせてきた今西。


「さあ!今のうちに、ここを出るのよ!!」


陽子の言葉通りに、一同が近くの公園へと移動する。








公園から、自宅を見ている一同・・・


陽子や美奈子、ユミちゃんには、その家の玄関から無数の霊体が往来しているのが見えていた・・・


「お母様・・

 あの家は・・」


「鬼門線上は『霊』の通り道よ・・

 結界や呪いは、ほんの一時しか通じない・・・」


「危ない所でしたね・・

 ユミちゃんの家族・・・」



「あそこに住んでいれば、いずれは健康を害し、精神も病んでくる・・

 最期は死を迎えるでしょうね・・

 前にあったアパートも、住人達が精神異常を起こして自ら放火している・・・」









公園のベンチに腰を下ろし、嘆いているお父さん・・


「あああ・・・


 お・・

 オレは・・


 いったい・・・

 何の為に・・・!!!」


自宅を売り払ったとしても、借金は残るのだった・・


「お父さん・・・」

ユミちゃんが、ポンとお父さんの肩をたたく・・


「ユミ・・・」

見上げるお父さん・・・


「私・・

 どんな所へ行っても大丈夫だよ・・

 お手伝いもするよ!


 私・・

 お母さんや、お父さんと

 暮らせるだけで

 幸せだよ・・・」


「ユミ・・・」

目に涙をためて、ユミちゃんを抱きしめるお父さん・・


暖かく見つめるお母さん・・










公園の草原に、大平さんに担ぎ込まれた博士・・

一時ではあるが、霊体に危害を加えられ、負傷していた・・・


ハアハアと息が荒い博士・・


故障した計器を点検している大平さん・・


そこへ来て、陽子が話しかける。



「わかったかしら?

 この世界は、素人が足を踏み入れる所ではないのよ!


 生と死・・

 幸と不幸・・

 喜怒哀楽・・


 様々な念が入り乱れる世界・・」



「君たち霊能者は・・

 いつもそうやって、

 我々、知らない・・見えない者に向かって・・

 当然の様に勝ち誇る・・


 『答え』を知っていながら・・

 答えを教えようともしない・・


 その態度が気に食わないのじゃ!!」



「『答え』は、その人が自ら知る物・・探すもの・・

 教えてしまっては、その人の修行にならない・・・」








「ふふ・・

 その通りじゃ・・


 我々、研究者は・・

 その『答え』を求めて・・


 研究しておる・・・


 いつか・・

 きっと、


 見えない世界を

 見えるようにしてみせる!」


キッと瞳をこらす博士。



「それが・・・


 あなたの


 カルマ・・・」


笑みを浮かべる博士・・・



「完敗じゃよ・・


 この勝負・・


 ワシの負けじゃ・・」



その言葉に、安堵した陽子が、帰っていく。

それに着いていく美奈子・・








胸元から携帯計測器を取りだし、見つめる博士・・・


ユミちゃんが話しかける。


「博士・・・」


「ユミさん・・・」


見上げる博士・・


「ふふ・・

 負けた者の無様な姿だよ・・・


 ユミさん・・

 ワシは、研究の第一人者と言われても・・

 殆どが未知の世界なんじゃ・・


 思っているほど・・

 成果もあげておらんのじゃ・・


 そして・・

 ワシは、

 君たち家族に、何も出来なかった・・・・


 こんな哀れな奴を・・・

 笑ってくれんか・・」


敗者となった情けない顔で語る博士に静かに答えるユミちゃん。



「そんな事・・


 無いですよ・・・


 私・・


 博士が助けに来てくれて・・


 本当に・・

 嬉しかった・・!」


「ユミさん・・」




「わたし・・

 信じてます!


 絶対!!

 研究は成功しますよ!


 わたし・・

 他の誰かが

 何て言おうと・・


 ずっと・・

 博士に

 協力します!


 ダメ

 ですか?」


あどけない、円らな瞳で見つめるユミちゃん・・・


博士の目に・・


ユミちゃんと、


弥生ちゃんが


オーバーラップしていた・・



「ありがとう・・」

ユミちゃんを抱きしめる博士・・













「なにぃぃ~~~!!!!」


山奥の神社にて・・

月刊オカルトを手にした陽子・・


今西から封筒で最新号が送られてきたのだった。


「どうしたんですか?お母様???」


「どうしたも、こうしたもないわよ!!」


手渡された雑誌を見る美奈子・・




『ガンバレ!ユーレイ博士!!』

・・・「わたし、研究を応援します。」

 小さな霊能者が全面協力を誓う・・・・




陽子の活躍話ではなく、博士の応援で締めくくられていた。


「これじゃ、私は悪役じゃない!!」


「あはは・・

 いいじゃないですか・・


 一応・・お母さまが

 勝った事になってるし・・」


「いったい、何のために、東京くんだりまで行って、除霊したと思っているのよ~!!」


「修行ですよ。修行!!」


「い・・


 いい・・


 今西のバカ~~!!!」



 バカ~


  バカ~


山奥に陽子の叫ぶ声がコダマした・・・







 ・

 ・




星空を眺めている博士・・そして教頭先生・・・


「そうですか・・・

 そんな事が・・・」


「ふむ・・あれ以来、

 ワシは何かに取りつかれたように

 研究に没頭した・・


 ユミさんも、研究所に時々遊びに来てくれるようになったしな・・」


「実の娘さんみたいですね・・」


「そうじゃ・・

 ワシはあの時・・

 確かに

 弥生の姿を見た・・」



「不思議な事もあるのですね・・

 でも、もう一つ、

 不思議な事がありますよ!」



「ふむ?何じゃろう?」


「大国主命ですよ・・」


「オオクニヌシ?」


古事記の話を思い出していた教頭先生。



「その家族も

 博士も・・、

 ウサギが関与していたのですね・・


 ウサギに守られた・・・

 大国主命・・


 そっくりです・・」


「確かにな・・・」 



「偶然というのもあるものですね・・」



「ふむ・・

 世の中・・


 偶然は必然・・とも言う・・

 人との出会いも偶然の様じゃが・・


 星の数だけいる群像から・・

 自分に関係した人が


 妙に関わるものじゃ・・


 何万、何千万分の1の確率で出会う人達・・」



「類は友を呼ぶ・・

 ですか?」


「そうじゃな・・・」



「私は・・

 博士と

 研究を共にするだけで・・


 この上ない

 幸せですよ・・・」


「ふふ・・


 ありがとう・・

 早乙女君!」


満天の星が煌めく夜空・・

博士の心も、その空の様に澄み渡っていた・・・




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