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霊感ケータイ  作者: リッキー
ファーストコンタクト
173/450

57.マイホーム


「赤外線処理によるリモートセンシング画面を見ていたんですが・・」


「これは・・」


「ススや木炭、燃焼時の化学物質の分布です。」


再開発された何軒かの住宅地の周りの建物に、赤い模様が浮かび上がる。


「新しい住宅には、見受けられませんが、

 周辺に、延焼の跡が観測されました。」



「やはり・・

 そうだったか・・・」


「気づいていたんですか?」



「うむ・・

 今日、周りの建物の外壁を見てな・・

 不自然な部分があったのじゃ・・」




「新聞記事で火災のあった時期も調べました・・」


パソコン画面が当時の記事に切り替わる。

記事と共に写真が画面いっぱいに映し出されている。




『古アパート全焼180㎡・・死者6人』


逃げ遅れたお年寄り、子供が犠牲になったようだ・・・



「3年前・・か・・・」


「おそらく、土地の売買価格は格安だったでしょうね・・」


「都内の宅地を購入して、住宅を建てるのには、よほどの収入がないと建てられないからのう・・

 あの子の家庭では・・」


失礼とは思いながらも、ユミちゃんの家庭の様子から見て、ギリギリの生活だった・・ 



「火災時に亡くなられた方々の、記憶が転写されたものと思われます・・

 周辺の地形によって、荷電分子が増幅され、現象が出やすい・・」



「そうじゃな・・

 そして、その最も現れる確率が高いのが、深夜・・か・・・」



「博士?」

何か、考え込んでいる博士・・













ユミちゃんの家



 ガチャ・・


「ただいま・・・」


玄関のドアが開き、お父さんが入ってくる。

疲れきった感じのお父さんの声・・


夜10時を廻っていた。

いつもは、お母さんが玄関ホールまで迎えに来るのだが、姿が無い。


居間も電気が点いていないようだった。


「寝たのか?」


呟いて(つぶやいて)靴を脱ぎ、廊下を歩いてくる。


暗い廊下・・・



 パチ


真っ暗な居間に入り、照明のスイッチを押す。


ソファーにお母さんが俯いて(うつむいて)座っている。

ユミちゃんが、その隣で寝ていた。


「何だ・・居たのか・・」


少し、安心したお父さん。

ネクタイを緩める。









「あなた・・・」

お父さんが入って来た事に気づいたお母さん。


「食事は、済ませてきたよ。」

キッチンへ向かい、コップに水を入れてゴクゴクと飲むお父さん。


「いつも、遅いんですね・・」


「ああ・・借金があるからな・・・早く返さなきゃ・・・」


「私達・・

 何のために働いているんでしょう・・・」


「え?」


「私も、あなたも帰りが遅い・・

 子供の面倒を見てあげられない・・

 この子が大変な目に合っているのに・・・」


「仕方がないよ・・

 みんなで協力していかなきゃ・・」



「協力?

 私達、何のために・・

 協力しているの?」


「それは・・」





答えを迷っているお父さんに、責め寄るお母さん。


「お金のため?

 家のため?

 何のためなの?」



「それは・・・


 家族のために決まっているだろう?」



「家族・・


 その家族が犠牲になることって・・

 本当に家族のためになっているの?


 私とあなたは、一日中、死に物狂いで働いて・・

 この子は、ずっと一人で、この家で留守をしている・・


 この家に来てから・・

 団欒の時間も無いし・・

 私達が揃って笑顔でいた事って無いじゃない!


 私達・・


 幸せなの?」


「何を言っているんだ!!

 都内に一軒家があって、

 これ以上の幸せがあるか!!」



「『家』なのね・・

 結局・・


 あなたは・・

 家が欲しかっただけなのよ。


 そのために・・

 私は・・


 お腹の子を・・・」



「それは・・」








「う・・ん・・・」

ユミちゃんが目をさます。


寝ぼけ眼のユミちゃん。お父さんが帰っている事に気づく。

先日、博士の一件で喧嘩になってしまったので、笑顔でというわけにもいかなかった・・


「お・・ お父さん・・

 お帰り

  なさい・・」


「ただいま・・」


なんとも、間の悪い二人・・

お母さんを見るユミちゃん。泣いているのに気づく。



「お母さん・・

 お父さん!お母さんに何をしたの?!」


キッとお父さんを睨む。


「何も・・」

気まずそうに向こうを向くお父さん。


「何でもないのよ・・ユミちゃん・・」

お父さんをかばうお母さん。






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