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霊感ケータイ  作者: リッキー
ファーストコンタクト
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56.鬼門



博士の研究室



研究室に戻って来ると、部屋の灯りが点いていた。


「大平君・・・」


部屋の中央にある実験用の大きな机に、パソコンを出して、何やら調べていた形跡の大平さん・・

昼間の疲れか、机に頭を伏せてうたた寝していた。


「あ・・博士・・・」


「まだ、居たのかね・・」


「はい。

 例の調べものをしていたら・・つい・・・」



「すまんね・・

 君には、

 雑用ばかり、押し付けてしまって・・」


「いえ・・

 あ、それで、色々分かったのです。」


「ほう・・」


大平さんの調査した報告を受ける博士。







「まずは、この家の周りの航空写真です。」

パソコン画面に上空からの写真が映し出される。


「ほう・・・人型交差点・・」

一目で、人型と分かる道路形状だった。T字路の頂点から伸びた1本道に逆V型に三叉路が交差している。

そして、その顔の部分に、問題のユミちゃんの家があったのだ。


「こうした人型交差点の場合は、三叉路や十字路よりも事故が起きやすい・・

 道路に沿って、荷電分子が流れやすい形状になっています。」



荷電分子・・俗にいう「気」のようなものだ。


「気」に関しては、科学的な実証はされていない。

オーラのように生物を取り囲むように空中に存在する生体エネルギーと言ってもよいだろう・・

博士の理論では、人間の周りに存在する水分子に脳波などの

何らかの生体活動により生じた電荷が転写されたものと定義されている。


そういった荷電(水)分子が行き来する人たちの活動によって、道路を流れる・・・


「うむ・・『道』というのは、人間にとっても、動物にとっても、

 何らかの生体エネルギーの流れができる場所になる・・」


「はい。」


三叉路では、その生体エネルギーが増幅され、その増幅されたものが流れて、

行きつくのがT字の「顔」の部分なのである・・


「そして、この胴体に当たる道路の方向です・・

 北北東の方向・・」


「『鬼門』・・・か・・・・」


「ナンセンスです。

 鬼門などという方角によって凶運になるという考え方は・・

 『迷信』というものです。」


「ふふ・・

 だが、あながち、そうとばかりも言えないのだよ・・」


「え?」

耳を疑う大平さん・・・









「地球の磁場というものを考えてみる・・・


 地球は、大きな磁石・・

 南極がN極となり、北極がS極の大きな磁石となっている。


 方位磁針のN極が北を差す・・・それは誰もが知っている事じゃ・・・」


通常、地球を大きな磁石とした場合、北がN極、南がS極と勘違いする場合が多い・・

実際には、方位磁針のN極は、北を差す・・

N極が振れるのはS極なのだ。すなわち、地球を大きな磁石とした場合、北極はS極になる。



「南極から出た磁力線が北極を目指して、地球周辺の空間に磁力線を描く・・

 地上では、ほぼ子午線状に南から、北へ磁力線が並ぶ・・


 帯電した水分子の受ける力を考えた時、地球の重力によって、地上・・

 地球の中心に向かって力が働くわけだが、この作用によって、電流が流れるはずじゃ・・」


「フレミングの法則・・ですね・・・」


「さよう・・」






フレミングの法則・・中学生以上の人ならば聞いたことがあるだろう。

左手の親指、人差し指、中指を直角に折り曲げ、


『電』『磁』『力』


中指が「電流」、人差し指が「磁場」、親指が「力」の方向になる。


「地球の自転方向に、電流が流れる・・

 すなわち、荷電分子の流れは、自転方向になる・・

 それは、地球が止まっている場合の話じゃ・・


 じゃが、地球は自転している」


「なるほど・・自転によって、コリオリ力が働くわけですか・・」



『コリオリ力』・・これは、高校生の人ならば聞いたことがあるだろう・・

「フーコーの振り子」はご存じだろうか・・

長い紐をつけておもりを吊り下げた場合、左右に振るといつまでも、左右に揺れているはずである。

しかし、長時間観察していると、左右に振れていたフリコが徐々に左回転を始めるのだ・・

地球が自転している事の証・・、北半球だと左廻りにフリコが回転していく。南半球は逆である。


台風や低気圧が北半球では左廻り、南半球では右回りになるのだ。




「赤道方面で自転方向に流れる荷電分子じゃが、

 我々の暮らしている緯度だと、ほぼ、60度から30度くらいの角度になる・・


 平均すると45度くらいじゃが、北上すればするほど、鉛直になる・・

 この、地球規模の水分子の流れが「鬼門」と言われる方角と一致する・・」



「なるほど・・地球規模の荷電分子の流れの方向ですか・・」



「さよう・・

 生体エネルギーなどがあった場合、その鬼門の方向に、水分子が流れるように分布する・・

 人が居れば、鬼門の方向に荷電分子が流れ出るのじゃ・・・」







人間の周りに、そのような「気」の流れが存在するというのが博士の理論である。

地球の自転、磁場によるダイナミックなマッピング、ロケーションが可能なのだ。


渡り鳥などは、そういった磁場を利用して、自分の位置を割り出しているという・・

従来の磁場の考え方だと、渡り鳥に正確な体内時計がないと経度の補正が出来ない。


人間の体内時計は1日25時間で、1日につき、1時間の補正が必要だ。動物の体内時計は意外にアバウトなのだ。

海洋を運行する場合でも、クロノメーターという正確な時計が無いと海図上の位置からズレが生じてしまう。

8分規や6分規などによる天体観測などによって補正が行われる。


現在は、衛星軌道上からの電波により、正確な位置を割り出す。GPSがそれである。


博士の理論から言えば、荷電粒子の方向さえ分かれば、緯度の割り出しが簡素化される。

地球上のどこに自分が居るのかが割り出されるのだ。




「そして、イオンには、陰と陽・・2つの種類が存在する。

 鬼門方向から向かってくる陽イオン、裏鬼門から向かってくる陰イオン・・

 このイオンの特質から、様々な、現象が出てくるのじゃ・・」 



「なるほど・・

 体に影響を与える陰陽のイオンの性質で、

 健康か不健康になるわけですか・・」


「昔からある風水、八卦などは、太古からの経験によって、

 こういった地球規模のエネルギーの流れに気づいていたのかも知れん・・」









「でも、荷電分子だと、気象の影響を受けやすいはずですが・・。」



「そう・・

 太陽風や季節風、ジェット気流など・・さまざまな気象条件がある。

 じゃが、そういった条件が弱まる時間帯があるのじゃ・・」


「弱まる時間帯?」



「生命活動や風など、あらゆる動的影響が少なくなる時間帯が存在する。

 深夜0時から、12分の1だけズレた、午前2時~3時・・


 いわゆる・・


 『草木も寝むる丑三つ時』・・ 


 これは、季節の日の出、日の入りにも影響される・・

 夏至で2時、冬至で3時半だ・・

 昼間の場合も、やはり、午後2時~3時の間じゃ・・」


「日の出と日の入り・・

 元来の『刻』の概念ですね・・」


「さよう・・

 1日を24時間で等分に割った西洋の時間の考え方と、

 日の出、日の入り・・自然の営みを基本とした東洋の時間の考え方・・


 『刻』に関しては、一見、不合理に想われがちだが・・

 あながち否定するばかりでもない・・

 むしろ、古来からの経験から、合理的に考えられている事もあるのじゃ・・」



「でも、それは、自然の地形上での話ですよね・・

 海風や山風、ナギなどがあった時代は当てはまりますが・・

 現在は、人工物もあるし、環境も変化しています。」


「そう・・

 現代のビルに囲まれた都会では、

 昔の概念が通用しない。

 時間帯も不確定になっておる・・」


そして、そのまま、考え込む博士・・・




「気になりますか?」

大平さんが聞いてみる。



「うむ・・

 気になる・・


 あの

 少女が・・」



「もう一つ、気になることがあります。」


「うむ?」


再び、パソコンの画面で説明をしだす大平さん。




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