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霊感ケータイ  作者: リッキー
ファーストコンタクト
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54.再び家へ


ベンチに二人座って、公園で遊ぶ子供たちを眺めていた。

ユミちゃんが、ちょこんと、博士の腕に頭をつける・・


「何だか、博士と一緒に居ると、落ち着くんです・・」


「ふむ・・?」



「わたし・・ずっと・・ 本気にしてもらえなくって・・


 お母さんにも、


 お父さんにも


 友達にも・・


 『見える』事を黙っている事にしてたんです。」



「『見える』か・・・

 それは、小さい頃からなのかな?」


「いえ・・

 あの家に引っ越してからです・・・」



「あの家に引っ越してから?」

公園の樹木の向こうに見えるユミちゃんの自宅を見つめる二人・・


「この間、男の人の霊を消してもらったけど・・

 まだ、あの家に居るんです・・」


「まだ居る?」

博士が簡易測定装置で消去したはずの霊だったが、まだ居るのだという・・


「ええ・・

 お父さんに、その事を言ったんだけど、

 怒られたんです。

 『そんな霊なんて居ない!』って・・」


自分の家に・・しかも、住宅ローンをかかえて、やっと手に入れた我が家に、

そんな得体の知れない『霊』が居るなどど言われれば、頭に来るだろう・・

自分の家が『お化け屋敷』などと噂されるのは、嫌な事だと思う。


でも、ユミちゃんにとっては、毎日そんな『霊』を見るのは、耐えられない事なのだろう・・








「ふむ・・・

 ユミさんが見えるようになったのは、

 あの家に引っ越してから・・・

 か・・・」


「はい。

 あの家に引っ越してから、お母さんもお父さんも働いてばかりだし・・

 家に居ない事も多いんです。」


「それは、あの家のローンを返すために、ご両親は必死になって働いているんだと思うよ・・」



「そう・・

 お父さん、お母さん、

 いつも

 疲れて帰って来るんです・・


 私も、家の手伝いとかして、お母さんたちの役に立ちたいんです・・

 少しでも・・休ませてあげたい・・」


「そうか・・

 それは、立派な心構えだと思うよ・・」


そう言って、頭をなでる博士・・

健気けなげなユミちゃんの言動に、感服している博士であった。


褒められて、頬を赤くしているユミちゃん・・


「嬉しいな~

 私・・

 褒められるのって・・

 久しぶりです。」





頭をなでられて、気持ちよさそうにしていたユミちゃんだが・・

ポツリと言う・・


「でも・・、

 あの家に来るまでは、

 『見える』事はなかったんです・・

 私・・、変になっているんでしょうか?」


心配そうな表情のユミちゃん・・


しばらく、考えていた博士・・


「いや・・


 変ではないと思うよ・・

 何か理由があるはずじゃ・・」


「理由?」


「何らかの原因で、『見える』ようになったのだと思う・・

 それを付き止めなければならぬのかも知れぬのう・・」


「原因が分かれば、

 もとに戻るでしょうか?」


「ふむ・・

 それは、分からぬ・・


 じゃが、

 原因さえ分かれば、

 少しは気が楽になるのではないかな・・」




「そう・・

 ですね・・


 『見える』ようになった原因さえわかれば・・

 少しは・・」


「ワシは、霊能者でもなければ、医者でもない・・

 人間に起こる現象・・

 症状を治す事も出来ないが・・


 少しでも役に立ちたいと思っているよ・・


 その・・


 ユミさんの力になれればってね・・」


にっこりとほほ笑む博士。


「博士・・・」


真剣に見つめるユミちゃん・・・

体中の毛穴が開いて、鳥肌が立つのを覚えた・・・







再び、ユミちゃんの家を調査する事にした博士・・

公園を後にして、家まで歩いていく。


公園を出て、直ぐ目の前のT字路の交差点・・

その前に、ユミちゃんの自宅があった・・


「ちょっと待ってて下さいね!」

ユミちゃんが、門を開けて、玄関のドアのカギを開ける。

家中の窓を開けている間、博士は、道路から、家を観察していた・・・


両脇にある何軒かが、再開発されて造成されたのか、新たらしい家が建ち並んでいる。


都心にしては、比較的広い敷地。


ブロック積の塀で囲まれ、小さな庭と1台分の駐車スペース。

現代風の2階建ての住宅。

屋根は、洋風瓦で葺かれ、外壁も少し高級な感じであった。


こんな家に、『霊』が出るというのも、考えられないが・・・


胸元から装置を取り出した博士・・

計器を作動させる。


「ふむ・・

 異常なし・・

 か・・」




「あ、お待たせしました~」

ユミちゃんが、準備が出来たのか、博士を呼んでいる。


計測器をしまって、家に入っていく博士。





その時、今西からの依頼をしぶしぶ引き受けた陽子が、たどり着く。

その家を見るなり、驚きの表情となる・・



「ここは・・・!」










居間に通された博士。まだ、部屋は熱気で充満している。

コップに注がれた麦茶を出される博士。


「やっぱり、暑いですね~。」


「ふむ・・お茶を頂くよ。」

汗をかきながら、ゴクゴクとお茶を飲む。

冷えた麦茶が心地よい。


ソファーに座った博士の隣に、ちょこんと座ったユミちゃん。

笑顔で可愛らしい。


でも、この可愛らしい表情と裏腹に、『霊』に怯えているのだ。


「この間は、男の『霊』が居たというが、まだ、他にも居るのかね?」


「はい。

 時々、見るんです。

 階段を上がった所とか、廊下の奥とか・・・」


「ふむ・・」


再び、計測器を作動させてみるが、反応はない。


「今は、反応は無いようじゃ・・・」


「ええ・・時々です・・」


「『見える』時は、何かのきっかけがあるようじゃな・・

 その『きっかけ』だけでもつかめれば・・」


「分かるんでしょうか?」



「ふむ・・

 何とも言えぬ・・

 ずっと付きっ切りなわけにもいかぬし・・」






「今日・・

 お母さん、帰りが遅いんです・・・」


俯き(うつむき)加減で上目遣いのユミちゃん・・


「そうか・・

 それは、心細いのう・・」


考え込んで、部屋を見渡す博士・・途方に暮れている。


「でも、博士と一緒に居れば、安心です!」

そう言って、博士の腕に寄り添ってくるユミちゃん・・


な・・何か・・博士を誘ってないかい????



チラッとユミちゃんを見る博士・・

半袖にミニのスカート・・今日びの小学生は露出度が高い。


先程、ブランコで遊んでいる時も、チラチラとスカートの中が見えていた。

半袖の襟元からは、ふくよかではないながらも、カワイイ胸が見え隠れする。


ユミちゃんにとっても、憧れの博士なのだ。

一緒に居るだけでも、この上ない幸せなのだが、


心から尊敬する博士から、


 『力になりたい』


と言ってもらった時、体中の毛穴が開いて、感動をしたのだった・・

そんな博士が、直ぐ隣に居る・・


大の男と、可愛い少女が一つ屋根の下・・・



「ユミさん!!」

博士が、急にかしこまり、ユミちゃんの方をキっと見る。


「はい!!」

何が始まるのか期待に満ちた表情のユミちゃん・・


「さっき・・

 ちゃんと勉強するって、決意をしたと思うが・・」



「は・・はい・・・

 し・・しました・・」

博士の意外な言葉に、小声になるユミちゃん。


「宿題じゃ!!!!」


「え~??これからですか~??」


「そうじゃ!

 ワシが直々に見よう!


 小学生の今頃から、学習の習慣を身に着けるのが一番なのじゃ。」


「うう・・・」

たじたじになるユミちゃん。


「それから!」

まだ、何かあるのか???


「漢字じゃ!漢字をみっちり書いて覚えるのじゃ!

 苦手な科目は、見逃してはイカン!

 お母さんが帰って来るまで、ワシが見ておる!!」


「え~~~????」


それから、猛勉強が始まるのだった・・

漢字ドリルを片手にユミちゃんの指導をする博士。


「こ・・

 こんなはずじゃ・・」


「ん?

 何か言ったかな??」


「いえ・・」


ふふふ・・ユミちゃん・・

この博士は、一筋縄ではいかんのだよ・・






トゥルルル・トゥルルル・・


今西の携帯電話の呼び出し音。

月刊オカルト編集室のデスクで、キーボードを片手に原稿を打ち込んでいたようだった。


「はい。今西です。」


電話の相手は・・・


「ああ・・望月か・・

 どうだった??」


陽子の様だった。先ほど、ユミちゃんの家の前で、唖然としていた。


「え?何だって!!」


新幹線のホームで、公衆電話を片手に、今西に報告する陽子。

尋常でない表情だった。


「いい?あの博士には、手を引いてもらうのよ!

 あと、あそこに住んでいる人には、家を引き払ってもらって!


 特に、あの子は危ないわ。


  ・

  ・


 そんな事できないって?

 人の命が関わっているのよ!


  ・

  ・


 もう!


 いつも、そうなんだから!!」


ガチャンと受話器を切る陽子・・





プルルルルルルルルルル


列車の発車時刻となった。


慌しく電車に乗り始める乗客たち・・

時刻表を睨みつけている陽子・・




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