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霊感ケータイ  作者: リッキー
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53.博士の授業


公園。


ユミちゃんの家の近くにある公園。

ブランコやシーソーなどの遊具があり、子供たちが遊んでいる。


ユミちゃんがブランコに乗って、それをベンチに座って眺めている博士。

近くのユミちゃんの家が見えている。まだ、お母さんは帰っていないようだった。


ブランコに立ち乗りしているユミちゃん。

こちらに揺られて来る度にミニのスカートの中がちらりと見えるが、それを見ないように空を見ている博士。



急に手を放して、ブランコから飛び降りるユミちゃん。


ブランコの揺れが乱れる。

ベンチの方へ着地し、そのまま博士の方へと小走りに来る。


「博士。

 何を考えているんですか?」


「ふむ・・

 先ほどの話をね・・・


 ウサギか・・・」


「ウサギが気になるんですか?」


博士の脇にちょこんと座るユミちゃん。

学校で小屋に閉じ込められた事、踏切の向こうに居た女の子の話をしていた。



「ウム・・

 そうじゃな・・


 ワシが、ウサギと聞いて思い出すのは・・」


「思い出す事・・・

 ですか?」











「大国主乃命・・」


「オオクニヌシノミコト?」


「うむ・・『因幡の白ウサギ』の話は、知っているかな?」


「はい。

 ウサギがサメの背中に乗って、海を渡る話ですよね。」



『古事記』によると、こうである・・

耶蘇神やそがみと国内を旅していたオオクニヌシが、浜辺で赤裸で泣いているウサギに出会った。

サメを騙して、島に渡ろうとしたウサギがもう少しというところで、口をすべらし、散々な目に合ったのだ。

意地悪な耶蘇神達は、ウサギに塩水で洗うようにと教え、その通りにしたら、治るどころか苦痛に苛まれてしまった。

可愛そうに思った、オオクニヌシはガマの穂の粉で丁寧に癒す様にと教え、ウサギの傷も癒すことが出来たという。


その後、野原で火炎に襲われたオオクニヌシを、ウサギが、

巣穴へと導き、一命を取り留めたという恩返しの話だ。


オオクニヌシは、日本の国のいしずえを築き上げるに至るが、『大黒様』が現在の姿である。











「助けたウサギが恩返しをしてくれたんですね・・」


「うむ・・

 おとぎ話の様じゃがの・・

 『古事記』というのは、日本最古の最高機密書だったんじゃよ・・」


「最高・・機密書?」


「日本の重要書類に、おとぎ話みたいな話が乗るとおもうかい?」


「それは・・どういう事ですか?」


「うむ・・

 ユミさんのよく見るアニメは何かな?」


「え~?

 そうですね・・

 プリキュアとか見ますよ。」



「そうか・・

 例えば、日本の法律とか憲法に、いきなり『プリキュア』が入ってくるという事かのう・・」


「え~?そんな事があるんですか~?」


まあ、例えが適切なのかどうかは、わからないが、日本最古の重要文書に、

因幡の白ウサギや海幸彦、山幸彦等のおとぎ話が入っているのも、不思議な話だ。










「陰陽、五行・・」


「インヨウ?」


「うむ・・昔の人は、時間や方位を干支で現わしたのじゃ・・」


「干支・・

 ねずみ、牛、虎・・・ですか?」


「うむ・・

 子・丑・虎・兎・辰・巳・・・

 4番目にウサギがおるじゃろう・・」


「そうですね・・」


「方角では、ウサギは東・・時刻では日の出の時間なのじゃ・・」


深夜0時を『子の刻』、日の出を『兎の刻』とし、正午は『午の刻』、日の入りが『酉の刻』となる。

一日を12分割して、干支を振り分けている。


日の出と日の入りは、季節によって異なる。

夏至は日中の時間が最も長く、当時は短い。平均したのが春分、秋分となる。

それ故、『刻』という時間の制度は、昼と夜が一定の時間ではない。

『草木も眠る丑三つ時』と言うが、夏至では2時頃、冬至では3時半と、開きがあるのだ。


太陽が真南にくる、正午・・『午の刻』が最も重要で、次に『兎の刻』・・日の出が次に重要なポイントになる。


方角でも、『東』は日の出の方向で、重要な方角でもある。

方角も、北から360℃を12等分して、北を『子』としてはじめ、南が『午』の方角となる。


鬼退治で有名な桃太郎で出てくる、『犬』『猿』『きじ』は、干支で言うと、「南西」から「西」に位置する。

これは、『裏鬼門』の方角を現わし、その正反対である『鬼門』(北東)に相対する。


そして、鬼は頭に『牛』の角を生やし、『虎』の皮のパンツを履いているのである・・

まさに、『鬼門』に鬼がいるのである。


鬼退治が犬、猿、雉でなければならない理由がここにある。



そういった、干支、陰陽五行、八卦、十干じっかんの思想が、巧みに織り込まれているのが『古事記』なのだ。

古代の自然現象を現わした、易の思想は、単なる占いではなく、経験に基づく『自然科学』なのである。

数を基本とした西洋の現代自然科学に対し、万物の真理を経験や直感に頼った東洋の古代自然科学・・

その集大が日本の古代文章に書かれていたのだ・・。










「ウサギって、そんなに重要なんですか~?

 そう言えば、鳥小屋もウサギ小屋の後ろにありましたよ・・」


「うむ・・

 ひょっとしたら、ウサギ小屋が東に・・鳥小屋は西にあったのかものう・・」



「それだったら、凄いですね・・

 でも、馬なんか、学校じゃ飼えないですよ~」


「そうじゃな・・

 人間にとっては害獣である『鼠』が一番初めにあるのも変な話だが・・


 我々、哺乳類の祖先は『デルタテリジウム』という鼠のような姿をしていたと言う・・

 それを知っていたのかどうかは定かではないがのう・・」


「へぇ~。私達の祖先って、ネズミだったんですか・・」



「そう・・

 天災を知らせてくれる重要な動物でもあるのじゃ・・」


「天才?」


「地震とか、火事とかになる直前に、鼠が集団で居なくなるのじゃ・・

 沈没する船には鼠が一匹も居ないという・・」


「へぇ~。不思議ですね・・」


ユーレイ博士と小学4年生の女の子・・

奇妙な組み合わせの二人が公園のベンチで座って、『古事記』や哺乳類の祖先について語っている姿も、妙であった・・










「でも、博士って、凄いですね!

 何でも知っているんだもん・・」


尊敬の目で見るユミちゃん。


「フォフォフォ・・

 知識量というのは興味に比例するのじゃ・・」


「興味?」


「さよう・・

 自分が興味のある内容というのは、自然に頭の中に入るものじゃ・・」


「自然に頭に入る?」



「『興味がある』という事は、その分野を見る好奇心の度合いが高いという事・・


 『興味本位』という言葉があるけれど・・

 『すぐ首を突っ込む』というように取られて、あまり良い使い方はされていないね・・


 ワシは、逆の意見だ・・

 人間が物事に『興味を持つ』というのは当然の事だと思うのだ・・


 『何だろう?』『なぜだろう?』という探究心が現代科学を推し進めてきた原動力なのじゃ・・

 物事を『不思議』に想ったり、『面白そう』と思う事は、興味が湧くための重要な要素じゃ。


 それがなければ、人間として面白みがないと思っておる・・



 学校でも、授業中に習う事を、単に『教わる』のではなく、

 それが、自分の生活に、どのうように役立つのか・・自分にとって面白いモノなのかどうか・・

 受け方によっても、身に着くかどうかを大きく左右するのじゃ・・」


「そうですね・・

 私、漢字は苦手だけど、家庭科は好きですよ。」


「自分の得意分野というのは、覚えるのが早い・・

 逆に、苦手な事は、なかなか覚えられないのじゃ・・」



「あ~。漢字・・苦手なんですよ~

 覚えられなければ、覚えなくってもいいですか??」









「ふふ・・

 そういうワケにもいかんのじゃ・・

 人間、努力は必要じゃ・・


 小さい頃に、我慢したり、不得意な分野を克服するというのは、大変、重要な事だと思っている。

 大人になってから、不得意な分野を克服しようとしても、なかなかできない・・

 意外に、役に立ちそうにない事が、大人になってから活きてくる可能性もあるのじゃ・・


 『あの時に習った事』・・それをここに使えばいいのでは・・


 とか


 『あの時、先生がこう言っていた・・』という事も、しばしばある・・


 『ヒラメキ』の元になる事もあるのじゃ・・」


「ひらめき・・ですか?」


「我々、科学者というのは・・

 いや、科学者でなくとも、世の中で働いている人の中でも、

 何もない所から・・一から何かを作り出す仕事というのは、

 違う分野からの『ヒント』や『ひらめき』が重要なポイントになっている事が多い・・


 公式や法則などを丸暗記するよりも、

 『なぜ、そうなのか』という原理・・

 『考え方』さえ頭に入れておけば、全てを覚えておく必要もない・・

 分からなくなったら、詳しく調べれば済むものなのじゃ・・


 問題は、

 『この時に、これを使ってみたら・・』という発想が生まれるかどうかなのじゃ・・

 必要に応じて、新しい物を作れるかどうか・・


 道を切り開くため・・

 それには、ある程度の知識は詰め込んでおく必要もある・・」


「そっか・・・・

 やっぱり、勉強は必要なんですね・・

 しっかりやらなきゃ・・」



「君たちの年代は、頭が柔らかい・・

 どんどん吸収していく、良い時期でもあるのです。」


「はい!

 頑張ってみます。」




学校で・・


家庭で・・


『勉強をする』という事の意味が、少し分かったユミちゃんだった・・






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