52.異変
学校からの帰り道
駅前の通りを歩いていると、ミカちゃんが気づいて寄って来た。
「ユミちゃん!今帰り?」
少し、怒った表情のユミちゃん。
「ミカちゃん・・何で?」
「え?どうしたの?」
「ウサギ小屋の当番だよ・・」
「ああ、家の用事思い出したんだ!」
「小屋のカギが掛かってたんだよ!」
「あ、そっか・・・ごめんごめん!
大丈夫だった?」
「いや・・
うん・・
大丈夫・・」
影の事を言おうとしたが、怪しまれると思い、止めてしまったユミちゃん・・
どうやら、カギに関しても悪気も無いような感じがしたので、それ以上は詮索はしなかった。
ミカちゃんと別れて一人、駅前の通りを歩いていく。
腑に落ちない行動ではあったけれど、それ以上に、小屋に現れた影の方が怖くてたまらないユミちゃん。
いったい、あの影は何だったのだろうか・・
こちらに近づいてきたのを、鮮明に思い起こす・・
その時・・
キキー・・・
ガシャン!!!
後ろの方で、何か、ぶつかる音がした。
「女の子がバイクに跳ねられたぞ!」
目撃していた男の人が叫んでいる。
女の子?
ハッとなって、振り向くユミちゃん・・・
人だかりができている。
その群衆の中をかき分けて、現場を見るユミちゃん・・
「ミカちゃん!」
前輪がへしょげたバイクと、
ぐったりとしているミカちゃんの姿があった。
救急車が来て、病院に搬送されるミカちゃん。
カン カン カン カン・・・
駅の近くの踏切。
警笛が鳴り響き、踏切の棒が降りてくる。
足早に渡る数人の人達・・
ユミちゃんは、急がずに、無理せず、その場で待つことにした。
向こう側にも、買い物袋を持った主婦や学校帰りの学生、社会人の人だかりができている。
その中に、一人、小さな女の子が、ウサギのぬいぐるみをかかえて、待っている姿があった。
その子の目線が、こちらに向けているのが分かった。
・・何処の子だろう・・・
幼稚園くらいの女の子・・
そして、その目に、引き寄せられるような感覚を覚えた・・
かかえていた、ウサギのぬいぐるみが、風にあおられて、道路に落ちる。
「あ!」
踏切の向こう側で、距離もある。
でも、思わず、そのぬいぐるみを取ろうと、踏切の構内へと入ろうとしてしまったユミちゃん・・
子供の背丈なら潜れてしまう高さの踏切・・
「危ない!!」
後ろから、手を掴まれる。
ファン!!!!!
バァーーーーー!!!!
その次の瞬間、快速列車が、目の前を勢いよく通過していった・・・
放心状態で、目の前の列車を見つめるだけのユミちゃん・・
車輪と車軸の固まりが、ゴウゴウと通り過ぎていく。
もう少し、前に出ていたら、本当に危ない所だった。
電車が通過した後、向こう側を見たが、先ほどの女の子の姿は無かった。
掴まれた手を振り向く。
「博士!!!」
ユミちゃんの手を握っている博士が、そこに居た・・
「ユミさん!・・・
どうしたんだい?
危ないトコだったよ・・!」
「あ・・
ありがとう・・
ございました・・」
まだ、何が起こったのか、自分でも信じられないユミちゃん・・・




