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霊感ケータイ  作者: リッキー
五里霧中
159/450

43.葬儀で


次の日・・


朝から葬儀が行われている本堂。

昼には、火葬場へ搬送される母の遺体・・


相変わらず、ヒロシは母の亡骸から離れようとしなかった。


そして、食事もずっとしていなかった。

もう丸1日は食べていない。


頬はこけて、ふらふらの状態だ・・

意識が朦朧もうろうとしているようだった・・


参列している人たちも、心配になっていた。


お父さんが、見かねて、朝食の残りを前に差し出している・・

皿に数個のおにぎりが乗っている・・


「ヒロシ・・・」


見上げるヒロシ・・

その目は、少し、ひっこんでいる。


「お父さん・・・」


「食べるんだ!

 本当に、死んでしまうぞ!


 ここにいるみんなが

 お前を心配してる。」


見渡すと、一同がヒロシを見つめていた。




「できない・・」

ポツリと言うヒロシ・・


母の方を向く・・

母の体は、既に、温もりのあった「母」とは思えない・・


表情は穏やかだが、

蝋人形のように、硬くなって、皮膚はからからに乾ききっている。


変わり果てた母の姿

ずっと、その姿を傍に居て見続けていた。






「お前の、そんな姿・・

 食事も食べないで、


 ヨロヨロになった姿を

 お母さんが見て、喜ぶと思うのか?」


お父さんが諭すが・・


「お母さん・・」

涙がぽろぽろと出てくるヒロシ・・

それまで、人前で泣く姿は見せていなかった・・・


「僕・・

 お母さんが


 死んだなんて・・

 信じたくない!!」



「ヒロシ・・」


「ずっと、優しかったお母さん・・

 僕を見守ってくれていた・・


 一緒に

 病院から

 退院したかった!


 病気が治って・・

 ずっと一緒に暮らしたかった!」



「それは・・

 父さんも・・

 同じだ!」

 


「でも

 でも・・・


 ここにいる

 お母さんは・・


 違う!!!」


「え?」


ヒロシの意外な言葉に言葉を無くす一同。



「僕のお母さんは!!


 ここには

 居ない!!」


そう言って、差し出されていた、おにぎりを鷲掴みにした。

そのまま、本堂から走り出すヒロシ。


「ヒロシ君!!」

いち早く、後を追う美奈子。


「ヒロシ!」


父が叫ぶ。その声に振り向かずに走り去っていった。

後を追いかけたいが、葬儀の最中だ。


見渡すと・・・


「直人さん!私が行きます!」

控えていた陽子が後を追いかけるという・・


「陽子さん・・・

 お願いします!」


心配ではあるが、陽子にヒロシを任せた父・・








「うわーーーーーーーーー!!!!」


泣き叫びながら走り続けるヒロシ・・


まるで、気でも狂ったかのように・・


土手を走りながら、その手に持ったおにぎりを食べている・・


一体・・何処へ行こうというのだろうか・・


すでに、病院は通り過ぎている。



病院でないのならば、どこへ・・


必死に後を追う美奈子・・







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