表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊感ケータイ  作者: リッキー
剛君
142/450

26.法事にて


美奈子のお寺


その次の日曜日・・剛君の法事が行われていた。

本堂の観音様の前に位牌と写真が正面に飾られている。


住職がお経を上げ、彼女が隣で木魚を叩く。

最前列にご両親・・

親戚縁者が参列する中、滞りなく式が進む。


亡くなられてから1年。

そこには、制服姿の愛紗さんの姿もあった。


冬服は、色も濃いので、法事にも合う。

いつもよりも、大人しく、清楚な感じの愛紗さん・・




線香をあげて、ご両親に挨拶する愛紗さん。


「愛紗ちゃん・・」


「ありがとう・・剛の為に・・」


「いえ・・」


俯いて(うつむいて)列に加わる愛紗さん・・







住職の説教も終わり、お墓へと向かう一同。

その移動の最中に、愛紗さんが声をかけられる。


「あの・・」


振り向くと、先ほど、木魚を叩いていた女の子。

眼鏡を掛けて、ポニーテール姿の彼女・・


「はい?何でしょう?」


愛紗さんには誰だかわからなかった。

駅前のハンバーガーショップで見た時は、可愛いバージョンの彼女だったから・・


それに気づき、眼鏡を外す彼女。


「あの・・あの時は、眼鏡とかしてなかったから・・・」


「ああ!あの時の?」


ようやく誰だかわかったようだ。



「あの時は、済みませんでした。

 急に説教じみた事、言ってしまって・・」


「ああ・・

 いいのよ

 気にしてない・・」


変なアプリは破棄するようにと促し、その通りに決心して実行した愛紗さんだった。



「今日の、法事の人・・

 剛さんの事を想ってるんですね・・」


「ええ・・

 あのアプリで、彼の姿を見たの・・


 でも・・

 あれは、

 本人じゃない・・」


あの時の会話で、霊感ケータイの本物があると言っていたのを思い出した愛紗さん・・


「あなた達の持っている携帯は本物だって・・

 言ってたけど・・」


「はい。

 亡くなった人を見る事も、

 会話することもできます。」



「そう・・

 それは便利な道具ね・・


 そんな電話があれば・・

 本当の事ならば・・


 私も

 使いたい・・」


『本物がある』とは言っていても、どこまでが本当なのか、分からない・・

半信半疑で聞いている愛紗さん。


実際に、本当にそんな電話があれば、誰しも使ってみたいだろう・・

それは、「霊」を見る恐怖を体験するのではなく・・


愛おしい・・この世を去って逝った人を見るため・・

親しい亡くなった人と話す事ができるのだから・・








「でも、


 それは、

 今を生きている人にとって良い道具になるとは限りません。


 ヒロシ君は、霊感ケータイを持ってても、

 亡くなったお母さんとは

 滅多に会ってないみたいです。」


「ヒロシ・・君?」


「あ、

 この間、一緒にいた彼です・・」



「あの子も・・

 お母さんを亡くしたの?」


「はい。

 初めはお母さんを亡くして、寂しかったみたいで、元気が無かったけど・・

 今は、そんな感じはないみたいです。」


「そう・・

 お母さんの事を忘れる事ができたのかな・・」



「いえ・・

 お母さんの事は、ずっと思ってると思う。

 いつも・・


 でも、

 心の整理がついたんだって・・

 感じてます。」


「心の・・

 整理?」





「お母さんは、もう戻って来ないし、

 自分も、

 新しい生活を始めなければならないって・・


 最近のヒロシ君には

 前向きな面が出てきたって・・

 思ってるんです。」



「うふふ・・

 あなた達、いいカップルだね・・」

ちょっと、笑みを浮かべた愛紗さん。


「え?」

顔を赤らめる彼女・・


「お互いに、想いあってる・・

 この間、


 ハンバーガー屋で会ったとき、

 息があってる子達だなって思ったわ・・」


「はい・・」


そして、愛紗さんの表情が曇りだす。



「私は、

 その最愛の彼氏を

 亡くしてしまった・・


 あなたにとっての、最愛の彼氏・・

 ヒロシ君が・・


 もし

 亡くなったら

 あなたは

 どうするかしら・・」  


「え?」


「彼が亡くなったら、

 あなたが、どんなに悲しむのか・・」


「それは・・

 そうですね・・・

 悲しむと思います・・


 死ぬほど・・」


それ以上は、何も言えなくなってしまった彼女・・

振り向いて、お墓の方へと歩き出す愛紗さん・・








墓前でのお参りを済ます法事の参列者の一同・・

ご両親に帰り際に呼び止められた愛紗さん・・


「今日は、ありがとう。愛紗ちゃん・・

 剛も喜んでると思うわ・・」


「はい。」


「愛紗ちゃん・・」

お父さんが、話し出す。


「はい?」


「剛の事を今でも思ってくれているのは嬉しいんだが・・

 君も、まだ高校生だよ。


 色んな人と付き合うのも、

 大事だと思うよ・・」


「それは・・どういう事でしょうか・・」


「亡くなった剛を忘れて、

 他の男の子とも付き合って欲しいんだ・・」


「剛君を・・忘れる・・?」


「あなた・・」




「剛は、もう、戻ってはこない。

 それは、仕方がないことだって、諦めている。


 そして、

 君も、自分の幸せを考えて欲しいんだ。

 剛も、君の幸せを願っていると思うんだが・・」



「私の・・幸せ・・?


 私・・

 剛君の居ない・・

 幸せなんて・・

 考えられない・・


 私だけ、幸せになるなんて・・・

 できません・・」


「愛紗ちゃん・・」


「ごめんなさい・・

 私・・

 忘れる事が、できないんです。


 彼と

 一緒に過ごした時間を・・


 間単に

 諦められない・・」


涙を流している愛紗さん・・


「失礼します!」


そのまま、小走りに駆けて行った愛紗さん・・

心配そうに見送るご両親・・



「あなた・・大丈夫でしょうか・・」


「うむ・・

 愛紗ちゃんが、一番、ショックなんだろうな・・

 今でも・・」


「将来を誓い合った仲ですから・・」

 

愛紗さんの立ち去った小道を見つめ続けるご両親だった。








街を放心状態で歩く愛紗さん・・

赤い目をした愛紗さんに、すれ違う人が振り向いている・・


「愛紗~」


後ろから声をかけられる。

声の方を向くと、美咲さんだった。


「どうしたの?今日は・・」


「美咲・・」


涙が枯れたような表情の愛紗さん。

立ち止まっている愛紗さんに近づいてきた美咲さんが、

愛紗さんの様子に気づいたようだ。


「そうか・・今日は剛君の・・・」


「うん・・

 私・・

 まだ・・」


「そうだよね・・

 まだ、剛君が亡くなってから1年なんだもんね・・


 ウチに来る?」


「うん・・」


美咲さんの家へと歩き出す二人・・
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ