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霊感ケータイ  作者: リッキー
二つの部活
140/450

24.ゴーストバスター部

音楽室


拓夢君からの手紙を読んだ千佳ちゃん・・・

読むや否や・・


「形勢不利だ・・・」


「千佳ちゃん・・」

彼女が不安な表情を浮かべている・・


「そうね・・あの博士が来てから、

 この部活も影が薄くなってるしね・・・」

先生が呟く。



「先生・・」

弱気な先生を見る僕・・



先生が続ける。


「雑誌の取材も来てるし、変なアプリも、かなり有効らしいって話だし・・

 何か、この部活も、本当に潰されるのかもね・・」


「珍しく弱気ですね~」

沙希ちゃんが聞き返す・・


代わりに千佳ちゃんが答える。


「あの教頭も、かなり今回は力入れて来てるから・・・」


「そうね・・教務室に居るのが辛いわ・・

 先生方の話題は向こうの部活ばっかりなんですもの・・・」


「それは・・大変ですね・・」


「わかる?千佳ちゃんも、本当はオカルト研究会に行きたいんじゃないの?」



「そうですね・・。

 タクムも向こうに拉致されてるし・・


 ユーレイ博士も居るし・・

 憧れの今西さんまで向こうの味方なんですから・・


 ・・興味ある・・ 」


「はあ~」


「私達って・・」


「不運・・」


ため息をつく先生と千佳ちゃん・・・

漫才コンビもここまで意気消沈しているとは・・


「あはは・・先生・・千佳ちゃん・・」








「ちょっと、しっかりしてください!」

勢いよく沙希ちゃんが先生と千佳ちゃんに迫っている。


「え~?」

千佳ちゃんは、どうでもいいような顔をしているが・・


「先輩たち、それでいいんですか!?」


「だって~・・」


「ねぇ~」


顔を見合わせる先生と千佳ちゃん・・


「『頭は生きているうちに使わなきゃ』って言ったの先生じゃないですか!」


「う!・・痛い所を・・」

間が悪い感じの先生。


「先輩だって、『あの教頭の下には付きたくない』って言ってたじゃないですか!」


「そ・・そうだっけ・・」

頭をポリポリとかいてる千佳ちゃん・・


とぼけてはいるが・・


「変な研究している博士が来たって、

 雑誌の取材とか来てたって、

 そんなの関係ないと思います!」





珍しく、沙希ちゃんの熱が入っている。


「私、この部活は、他と違って、

 温かさがあるって思ったんです!


 タクム君が居るからってのもあったけど・・

 もっと違う・・

 魅力があるって・・」


「魅力??」


「いつもは、ほんわかとしていて、いいんだと思います!

 あんなに、研究熱心にしてたら疲れてしまいますよ!


 私達は、研究しているんじゃない・・

 本物の『霊』を相手にしてるって・・


 除霊や悪霊退治を、

 本当にやってる・・


 のほほんとしていても、

 いざとなれば、


 やる時はやる!

 そんな部活だって思ったんです!」


「沙希ちゃん・・」

先生が熱意に動かされているようだった・・


「それには、

 いつも、焦っていてはいけないんだって・・


 温かい心で、迎え入れなければ、『霊』だって寄り付かない。


 部長さんも、副部長さんも、

 先生も、先輩も・・

 みんな、優しいから、


 温かいから・・


 でも、

 強い。

 悪霊にだって負けない強さを持っているんですよ!


 私、

 それが、


 この部活の魅力だって・・ 

 思ったんです。


 だから、

 入ったんです!」


「沙希ちゃん・・・」

千佳ちゃんが、沙希ちゃんを見つめる・・








僕も彼女と目を合わせた。


僕たちは、

そんな仲だったのか・・・って・・


「そうね・・


 私達、

 あの博士に翻弄されて、

 大事な事を忘れていたのかも知れないわね・・」


先生が、沙希ちゃんの言葉で気づく・・


「この部活の・・魅力か・・」


千佳ちゃんも考えている・・



でも、

何かに気づいた千佳ちゃん・・


「え?

 って事は・・


 あんた、

 この部活に入ったの?

 仮入部って事だったけど!」


「あ!」

慌てて、口を塞いでる沙希ちゃん・・


「えへへ・・

 そういう事に・・


 なるのかな・・・」


にっこりと笑ってる沙希ちゃん・・


「う~ん・・

 じゃあ、やんなきゃね!」


「え?」


「新入部員の歓迎会よ!

 拓夢君の時もやったじゃない!」


先生が思い出している。


「あ!ホットケーキ・パーティーか・・」


「そう言えば、まだ勝負がついてなかったわね・・

 千佳ちゃんとの、フライパンさばき・・」


「そうですね!今回も、負けないですよ!」


ライバル同士の先生と千佳ちゃん・・


「あ、私、今回はフルーツと、ホイップクリームをトッピングします!」


彼女の甘党も全開だった・・

何だか、方向が違っているような気もするのだけれど・・








  パチパチ・・・


どこからか、拍手の音がする。


「さすがです!

 ゴーストバスター部!!

 噂通りの部活ですね!」


男の人の声がした。

振り向くと音楽室の入り口に、背の高い大人の人・・


見覚えがある。

ダウンジャケットを着て、サングラスを掛けていた・・


博士と一緒に来た雑誌社の・・・


「この学校に、もう一つ、

 本格的に浄霊をしている部活があるって聞いて・・

 興味が湧いたんです。」


「あなたは・・」


「初めまして、

 月刊オカルトの今西と言います。

 美奈ちゃんは初めてじゃなかったね!」



・・・『美奈ちゃん』?

ちょっと馴れ馴れしい人だなって、ムッとした僕・・

彼女の方を見ると・・


「今西さん!」


何なんだ?

この反応は~!!!


目がハートになってるぞ~!!

突然のライバル登場なのか?


「あはは・・

 ちゃんとおみやげは持って来てるよ!

 はい!」


雷おこしと人形焼の袋を見せる今西さん。


「やった~!東京名物だ~!!」


彼女の過剰反応は、これだったか・・・

今西さんも、この手法で彼女を手なずけているのか??


そして、


「今西さん!

 ファンなんです!!

 サイン下さい!!!」


やはり、目をハートにしている千佳ちゃん・・


恐るべし、今西さん・・

短い時間で、既に二人の女子の心を掴んでいた。






音楽室の中央に並べられた椅子に座り、僕たちの会話に入ってくる今西さん・・

おみやげの品々を開けている。先生と沙希ちゃんがお茶道具を取りに家庭科室へ向かった。



「校長先生から、お話は聞いてます。

 合宿所とか、校舎の霊のお払いとか・・

 悪霊とも対決してるって・・」


「はい!

 悪霊退治してます!!」


千佳ちゃんが嬉しそうに返事をしてる。


「あの、悪霊と対決しているのか・・」


「え?知っているんですか?」


僕が聞いてみる。


「ああ!俺たちが高校の頃・・

 美奈ちゃんのお母さんたちと、

 この学校で対決したんだ・・」


「え?」


それは、初耳だった・・

僕のお母さんと彼女のお母さんでコンビを組んで、悪霊と対決したという話は聞いていた・・

でも、今西さんも加わっていたとは・・


「じゃあ・・僕のお母さんも・・知っているんですか?」


「君が、ヒロシ君か・・」


え?僕の名前を知っている?なぜ?









「陽子から聞いたよ・・

 あの悪霊を退治したのが、君だって・・

 そして、ゴーストバスター部の部長もしてるって・・」


「は・・はい・・」


彼女のお母さんから、話を聞いているらしかった。

でも、それほど、大したことはしていないのだけれど・・


ちょっと、恥ずかしくなる僕・・


「似てるね・・」


「え?」


「一橋に・・、

 いや・・

 君のお母さんの面影がある。」


「そ・・そうですか?」


僕にとって、お母さんは、僕にとっての『母親』という一面しか知らない。

それ以前に、何をしていたのかという事も、僕には見当がつかなかった・・


「あと、、

 君が、あの携帯を譲り受けたって・・」


「霊感ケータイを知っているんですか?」


「ああ・・

 あれは・・


 俺の・・

 友人が持っていたものだ・・」









遠くを見つめている今西さん。


彼女から、この携帯を所有していた、前の持ち主は、この携帯で命を断ったと聞いている。

その、前の持ち主が、今西さんの友人・・

その友人から、彼女たちが譲り受けたという事なのだろうか・・・


僕は、ポケットから、霊感ケータイを取り出す。


「これです・・」


そのまま、今西さんに手渡す・・

古ぼけた携帯電話・・

手に取って、懐かしそうに見ている今西さん。


「香織さん・・・」


「カオリ・・さん?・・」


「ああ・・

 前の持ち主だよ・・」


「あの時の、人ですね・・」


彼女が話に加わってきた。

前の持ち主は、女の人だったのか・・

彼女は、その人を知っているようだった。


「この携帯は、死者と通話をすることができるけど・・

 生体エネルギーを消費する・・

 扱いに注意しなければね・・」


「はい・・

 その通りです・・」


「ヒロシ君は、使いこなしてますよ!

 不必要に通話時間を長くしないようにしてるみたいです。」


彼女の言うとおり、僕は、長電話を避けて、

通話しない時は、通話を切りながら使っている。


滅多に使わない様にもしているけれど・・

出来れば、メールに切り替えてもいる。








「そうか・・

 この携帯は、両刃の剣だ・・

 便利な使い方もあるけれど、

 一歩間違えば、危険な道具・・


 悪魔の・・」


「え?」


「あ、いや・・

 ちゃんと使いこなしていれば、問題ないよ!


 ただ、

 注意しておかなければならない事がある・・


 この世での『命の存続』への『迷い』があれば・・

 この携帯を使って、

 自らの命を断つこともできるんだ・・」


「迷い・・ですか?」


「ああ・・

 俺の友人は、


 その迷いに憑かれて

 命を断った・・」


携帯を握りしめる今西さん・・

過去に何があったのか・・


今西さんにとって、その女の人が、大切な人だという事はわかった・・

そして、その人を亡くしてしまった無念・・

その想いがひしひしと伝わってきた。



霊感ケータイ・・



それは、僕の思っている以上に、恐ろしい道具なのかも知れない・・






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