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霊感ケータイ  作者: リッキー
二つの部活
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23.オカルト研究会


学校



放課後、オカルト研究会による校舎の探索が行われていた。


二人一組になって、携帯電話を使い、アプリで校舎内の「霊」ポイントを巡っている。

オカルト研究会の部員の男子と女子のペア。


携帯電話を男子が操り、女子が校舎の地図を片手に、指示をする。

携帯電話の画面には、例のアプリの画面が展開されていた。


ポリゴン処理された画面だと、若干処理速度に問題があるので、

通常のカメラ映像の上に、博士の計測したデータを表示するモードになっていた。


普通の風景の上に、うっすらと博士のデータが白い濃淡になって現わされる。

携帯を左右に振ると、背景の方向に濃淡も移動する。


携帯越しに覗くと、空間の上に白い塊がぼんやりと浮かび上がっているようなイメージだ。









白い塊に近づき、実際に触ろうとしてみるが、スッと透けてしまう・・

実際に、そこに「霊」が居るのかどうかはわからないが・・・


「やっぱり、透けちゃうねぇ・・」


「この塊って、何なのかな・・」


「分からない・・博士の計測した磁場の乱れの濃い所だけど・・」


「こんなに、塊になってるの?磁場の乱れって・・」


「本当に・・『霊』・・だったら・・」


「あんまり、触らない方が・・」


「うん・・」


少し気味が悪いようだ。本当に、そこに霊がいれば、透けるとはいえ、手を触れてしまっている・・


本物の霊感ケータイで見れば、そこに『霊』が居るのかどうかは一目瞭然だ。

姿がくっきりと映されるわけだから・・


このアプリでは、「塊」でしか映らない。

人の形をしているわけではなく、塊なのだ。


それでも、動かない「地縛霊」に関しては「位置」だけは分かってしまうようだ・・・

地縛霊が何処に居るのか分かるような、アイテムになっている。


それは、それで、画期的な、そしてショッキングな映像だと思う。







博士は、大平さんと器材で校舎の廊下を探索中だった。

計測しながらアプリを使って位置を確認している。

付き添う片桐さん・・


博士達の場合は、計測したデータを、サーバーに送り、そのデータをリアルタイムで見ているのだ。


「うむ!これなら計測しながら、位置を割り出すのが楽じゃ!」


「そうですね・・画期的ですよ・・」


「何か、これ、凄い事に付き添ってるような気がするんですが・・」


片桐さんも、携帯のアプリを見ながら、驚いている・・

科学的な解析に無縁な素人ですら、そういう感想なのだ。


画面に浮かんだ、白い塊を指さして、


「博士・・本当に、ここに『霊』がいるんですか?」


基本的な質問のようだった・・

大平さんが代わりに答える。


「この濃い塊は、磁場の乱れの強い部分です。

 通常、こんなに塊になる事なんてありえない。

 空間にうっすらと、一様に分布するはずなんです。


 それが、こうやって『塊』として観測されるということは・・

 その部分に、『何か』が存在する・・

 と、考えられるのです。」






「その・・何かとは?」


「我々が『霊』として定義している・・

 磁場の乱れ、空間上の水分の電気的記憶の濃い部分・・

 生前の人間の『記憶分布の強い』部分・・」


「それって・・本当の『霊』なんじゃないんですか?」


「『霊』です。

 ただ、俗にいう、幽霊とか非科学的な存在ではなく・・


 ああいった、『人格』のようなものを持って・・

 恨みや強い怨念を持って存在するようなものではない・・


 『怖い』という存在ではないんです」



「でも、本当に幽霊がそこにいたら・・」


「それは、ありえない。

 非科学的概念です。」


幽霊という物を認めない大平さん・・

博士も同じ見解なのだろう・・・








「でも、前に、『人間の脳』も、磁場の乱れを作るって言ってましたが・・」


片桐さんが質問をする。


「うむ!良い所に気が付いた!」


博士が珍しく、片桐さんの言葉に反応した。



「脳も磁場の乱れや、電気的な変化を与える・・

 その通りだ!


 この表示されているデータの殆どは昨日使用した

 『ハイサーチ』による広域データだ。


 その時に居た生徒たちの脳の部分も、活性化していれば、

 磁場の乱れのデータとして残っている可能性もある。


 それ故に、こうして

 補足の測定を行う事で、

 より確実なデータとなるのじゃ・・」



なるほどね・・・

そういった地道な隠れた努力が、身を結ぶのですな・・

ご苦労様です・・






オカルト研究会の部室


拓夢君と未来先輩が机に座って話し込んでいる。

他の部員が、校舎内をアプリで探索しているため、部室には二人と数人の部員のみが残っているだけだった。


身柄を拘束されている拓夢君を監視する必要があるため、副部長の未来先輩が見張っている事になった。

そこまで、しなくても、良いとは思うのだけれど・・・


拓夢君にとって、今まで、こうして真のお姉さんと一緒に居る場面は、あまりなかったようだ。

最近は、共通の話題ができたせいか、話す機会が多い。


シスコン・・お姉ちゃんにずっと憧れ続けていた拓夢君には、ゴーストバスター部へ行かなくても、

ここで欲求が満たされているのかも知れない・・



拓夢君が、未来先輩に話し出す。


「ねえ、お姉ちゃん・・あのアプリだけど・・」


「うん・・本物にはかなわないけど・・

 『地縛霊』のような、動かない霊には有効ね・・」


「お姉ちゃんも、『霊感メガネ』をかけたよね・・

 あのレベルなのかも知れないね・・」


霊感メガネ・・・彼女のお母さんが、所有していた霊力を高めて、霊視ができる眼鏡だ。

かける人の霊力を増幅するので、霊感の無い人がかけても、何も変化はないけれど、


霊感の強い人がかけると、その強さに応じて増幅され、見る人によっては、オーラや更に霊の姿まで見えてしまう。



「私が掛けた時、オーラがくっきり見えたけど・・

 確かにあんな感じね、あのアプリは霊の姿は見れないけど、位置は割り出せる・・」


「でも、博士は、地縛霊の位置を割り出して、何をするのかな・・」


「わからない・・

 でも、博士もとんでもない装置を持っているわ・・」


「とんでもない装置?」


「あなたにも聞こえた?あの音・・」


「昨日の御昼前でしょ?かなりすごい音だったけど、

 他の人には聞こえないみたいだったよ」


「あれは、霊感のある人にしか聞こえないって・・

 宮脇さんが言ってたわ・・」



「おねえちゃんが?」







ちょっと、ムッとする未来先輩。


・・・・・「おねえちゃん」・・・学校では千佳ちゃんとは姉弟関係の拓夢君・・

その関係については、先輩も、あまり良くは思っていないようだ。


「恋人」としてではなく、「姉弟」という関係も、普通ではない。

それとも、姉として、同じ姉の関係になっている千佳ちゃんに、少なからず嫉妬でもしているのだろうか・・



「あなたねぇ・・

 あの子の事・・

 どう思ってるの??」


「おねえちゃんの事?」


「その・・『おねえちゃん』って、ホントの姉弟じゃないんだから・・」


「僕と、おねえちゃんは、学校だけの姉弟なんだよ。

 優しいし・・」



「優しい??

 私は、優しくないって言うの?」


怒り気味の表情に、たじろぐ拓夢君。

こんな表情を浮かべたお姉さんを見るのは、初めてかも知れない・・・


「え?

 あ、

 いや・・


 優しい・・

 カナ・・」


困っている反面・・嬉しい拓夢君・・

ずっと追い求めていたお姉さんが、自分を直視しているのだから・・


そんな様子をみて、笑みを浮かべる未来先輩。


「フフ・・

 あなたも、変わってるわね・・」


「え~?」


「小学校以来ね・・こうして私達が話すのって・・・」


「うん。

 小学校の時は、楽しかったよ!

 4年生まではね・・」


「4年生?」










「お姉ちゃんが、中学校へ行ってから・・

 全然、楽しくなかったんだよ・・


 学校へ行っても、霊感のある人はいなかったし・・

 かえって、いじめられてたよ・・」


「タクム・・」


「この部活でも、同じだった・・

 お姉ちゃんが居るのに・・


 ずっと、待ち焦がれたのに・・

 同じ部活に入っても・・


 面白くなかった・・  


 昔みたいな、霊とかの探検に行けるかって・・

 思ってたのに・・」


「面白く、無かったの?」


「うん・・でも、あの先輩たちに会ってから、楽しくなった・・

 たぶん、おねえちゃんと会ったのもあるけど・・


 昔みたいに、ワクワクできるからなんだって・・

 思い始めたよ。


 ここに閉じ込められて

 音楽室に行けないと・・

 皆に会えないと・・

 あの部活が、自分にとって、何なのか・・

 わかった気がしたんだ・・」


「それは・・・」


「あそこは、僕にとって、大事な・・

 家族みたいな人達なんだって・・


 温かく僕を迎えてくれる・・

 大切な、掛け替えのない・・


 仲間なんだって・・」


「仲間・・」


「お姉ちゃんも、あそこに行ってわかったでしょ?」


その言葉に、少し考え込んだ未来先輩だった・・・

前は、教頭先生同様、敵対心しか無かったゴーストバスター部・・


でも、


その部活のメンバーと触れ合うたびに・・

対抗心も和らいできていた。


そして、悪霊と本当に戦っている姿・・

悪霊の攻撃から身を挺して、かばった僕の事・・


今まで、付き合ってきたどのタイプの人間とも違う・・


それは、


ゴーストバスター部の部員、全員がそうだった。

皆が皆の個性を認め合い、

最善を尽くして、目的に向かっている・・


アットホームな・・・千佳ちゃんや先生・・


霊感が自分よりも強い彼女・・


それぞれが、認め合い、和気あいあいと過ごしている。


オカルト研究会には無い・・独特な雰囲気・・


いや・・それは独特なのではなく、

ごく、自然にありふれた・・



  仲間


そこに流れる言葉は、強制されたり、努力を促したり

自分を背伸びさせて無理をしている感じではない


 自然に流れる言葉


そんな、


 柔らかく温かい・・、


そして、何者にも負けない・・


 強い


何かが流れている・・

そんな感じを受け止めていた・・











「でも・・

 私たちは、オカルト研究会なのよ・・


 そして、私は・・

 ここの副部長・・


 この部活を裏切る様な真似は・・

 できない・・ 」


「ねえ・・お姉ちゃん・・」


「何?」


「二つの部活が、共存できる方法って無いのかな・・」


「共存?」


「科学的な方法で研究しているオカルト研究会と、

 本当に霊の世界に精通しているゴーストバスター部・・


 現代科学と自然現象・・みたいなものだけど・・

 この二つが協力し合えば、もっと道が開けるような気がするんだけど・・」


「協力し合う・・」


「何で、争わなければいけないのかな・・」


「それは・・

 教頭先生の・・


 意向だから・・」


事の発端は、夏休みの合宿所の除霊で成功し、教頭先生に目をつけられてしまったのだけれど・・

それ以前から、ゴーストバスター部に執拗まで反対していた教頭先生・・


そこまで嫌う理由があるのだろうか・・

確かに、同じような内容なのだとは言うのだけれど・・








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