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霊感ケータイ  作者: リッキー
ユーレイ博士 来る!
135/450

19.混沌

山寺で陽子と今西の会話が続く。



「そう言えば、早乙女さんが、教頭になってたよ!」


「早乙女さん?」


「ほら、高校の時、オカルト同好会で一緒に居た・・」


良くは覚えていなかったが、下級生の女の子がいた事を思い出した。


「そう言えば・・私に食って掛かった子がいたわね・・」


「ああ・・

 俺たちが悪霊退治をしようとした時・・・」




 ・

 ・

 ・

 ・


高校時代・・

オカルト同好会の部室にて・・

オカルト同好会の部員と、陽子・響子の間で会議が行われていた。

部長である今西から提出された、部の活動計画に対して部員が賛同するか、しないかの判断を仰ぐ会議である。



「こんなの、変ですよ!

 部長さんも、副部長さんも間違ってます!」


「早乙女さん・・・」



「得体も知れない事に、『命』を張るなんて!

 第一、霊なんて存在するんですか?

 未知のものだからロマンがあるんじゃないんですか?


 私、そこに興味があって入ったのに・・」


早乙女さんが激しく抗議している。

陽子が反論する。



「あなたが、現代科学に依存しようとするのは分かる・・

 でも、これが現実なのよ・・

 「霊」は存在し、私達の生活を脅かす事もある・・」


「そんなの!そんなの!!」



「早乙女さん・・

 信じなくてもいいよ。

 これ以上、僕たちに付き合わせる事も


 強いられない・・」


「部長!」


信頼していた部長から提案された言葉が容認できず、

涙目の早乙女さん・・


「私・・・部長の事・・・」


「早乙女さん・・まさか・・」


幸子さんが何かに気づく・・


 

「私、絶対、証明してやる!!

 こんなバカげた世界なんて無いって事を!」


そう言って、部室を飛び出す早乙女さん・・・  





 ・

 ・

 ・




「そう・・あの子が、博士と・・」


「ああ・・あれからネットワークを作って、研究を続けていたみたいだ・・

 今回、携帯のアプリでも本格的なものを作っていた・・」



「アプリ?」


「携帯のソフトだよ・・

 『霊感ケータイ』って・・」


「霊感ケータイ・・・」


「美奈ちゃんが持って行ってるのかい?」



「ええ・・

 さっき私が言った『ヒロシ君』が、今では使いこなしているわ・・」



「そうか・・

 おそらく、オカルト研究会のアプリは表示のみの機能だけだ・・

 でも、良くできていたよ・・


 そして・・


 あの博士と組めば、

 本当に『霊感ケータイ』が作れてしまう。


 普通の人でも、

 『霊』を見る事が・・」



「そんな技術があるの?

 本物の『霊感ケータイ』は・・・」



「あれは、『悪魔』の携帯電話だ・・

 人間の生態エネルギーを消費する・・

 人の命も奪う・・


 でも、


 人間の科学の粋を集めれば、

 それに似たものも作れてしまう・・

 人類の科学は、進歩しているんだ・・


 早乙女さんは、

 それをやろうとしている・・」


「霊」の世界が見えてしまう「霊感ケータイ」・・それができれば、夢の様な話だ・・

それぞれの思惑が交差していた・・・









愛紗の部屋・・


ベットに横たわりながら、携帯を見つめている愛紗。

携帯の画面は、あのゲーム・・


「Hijiri」と言う人のページになっていた。

未だに、inしている形跡はない・・・

メールも、あの後、全く発信もしてきていない。


ベットから起き上がり、何やら打ち込む愛紗・・・



 今、

 何をしていますか?

     aisa




メールの内容を打ち込む愛紗さん。


そして、

宛先は、「Hijiri」だった・・・


送信ボタンを押そうとしたが、ためらっていた・・



「ヒジリさん・・・」



色々な想いが浮かんでいた。

何故、あんなアプリを送ってきたのか・・


どこで、剛君を知り、画像を取得し、あのアプリで何をしようとしたかったのか・・


そして、誰なのか・・


全ては謎のままだった・・






昼間、消したはずのアプリ・・

美奈子の助言で、きっぱりと忘れようと決心した。


だが、メールに添付されたアドレスはそのままだった。



すなわち・・


あのアプリを取得しようと思えば、再びダウンロードして直ぐにでも起動できる状態だった。

美奈子たちや美咲には、ある意味嘘をついてしまったが、



真実を知りたかった。




  ピッ



送信ボタンを押した・・







携帯電話を見つめる愛紗・・



長い沈黙が続く・・・



CDを聞いたり、机に向かって勉強もした・・


でも、



なかなか返事が返ってこない・・




「来ないのかな・・」


ポツリともらす愛紗・・・


反省どころか、もう、自分には関わらないのかも知れない・・

その方が、お互いに、いい事なのかも知れない・・



「謎」は謎のままで、

そっとしようかと、思った愛紗・・



パジャマに着替えて、


ベットに横になる。












『メールが来てるよ!メールが来てるよ!』



メールの着信音が鳴り響く。

咄嗟に起き上がる愛紗。


携帯電話の表示には



「Hijiriさんからのメールが届いています」



待ちに待ったメールが届いた・・

でも、直ぐには、その内容を見れなかった・・


何が書いてあるのか・・


何だか恐ろしくなる・・



「お願い!変な事、書いてないで!!」


そう心に呟いて(つぶやいて)、メールを開ける・・







 返信遅れてゴメン

 そして、今までの事、

 スミマセンでした

    Hijiri



謝って来たことに、半分安心した愛紗。

そのメールに返信した。




 反省しているの?

    Aisa





 反省しています。

 あれからずっと

 食事も喉を通らなかった

    Hijiri





反省をしてはいるようだった。

そして、何故、あんなアプリを送ったのかを聞きただそうと試みる。







 あのアプリを、

 何故私に送ったの?

     Aisa






 あなたに見せたかった。

 そして

 喜ばせたかった。

     Hijiri





 喜ぶと思ったの?

     Aisa






 驚かせてしまったのは

 反省しています。

 でも

 本当に、

 あなたを

 喜ばせたかった

    Hijiri



 なぜ?

   Aisa







 あなたが

 元気がなかったから・・

   Hijiri




元気がない事を知っていた・・・

確かに、最近の愛紗は元気が無かった。

ゲームをして、それなりに楽しんでいるつもりだった。


でも、


何処かで、寂しい想いがあって、

その、寂しさを紛らわせるために

始めたゲームだった・・


そこで、知り合ったはずのHijiri・・

元気がない事を、ゲーム上で察したのか、

本当に、実生活を監視することで、知ったのか・・


少し、恐ろしくなった。






 なぜ、元気がないって

 分かったの?

    Aisa




 監視してたわけではないけれど、

 あなたを

 見ていたから

   Hijiri





「見ていた」・・実際に見ていたような表現に不気味さが増してきた。

勇気を振り絞って、メールを送る愛紗。







 あなたは、私の近くに居るの?

   Aisa







そのメールを送ってしばらく時間がたってから返信が帰って来た。






 近くにいます。

 でも、もう、監視はしません。

 約束します。

   Hijiri



近くに居るという・・

ゲームをしている時も、近くの誰かとしていたのだ・・

レアなアイテムを贈ってきたり、

攻略方法や情報を流してくれたのは、

自分を引き付けたいため??

そして、今回のアプリも・・・








 約束って

 あなたは

 誰なの?

  Aisa




 それは言えない。

 すみません。

 決して

 イタズラをしようと

 思っているわけではないんです。


 ずっと、

 あなたを

 見ていた・・


 いえ、

 好きでした。


 あなたが

 元気がないのが

 ずっと気になっていたんです。 

   Hijiri







「好きだった」と告白されてしまった。

しかも、自分の周りに居る誰かなのだ・・・


相手は、素性を明かしたくないと言っている。


でも、自分の事は、相手につつぬけなのだ・・

こんなに不安な事はない。


それでも、このHijiriという人物は、

自分に好意を持っていて、

ずっと、慰めようとしていたのか・・・


相手がどこの誰なのか分からないけれど、

自分の気持ちを素直に打ち明けようと思った。






 確かに、

 私は元気が無かった・・

 それは

 剛君が亡くなったから、


 ずっと

 彼の事を想っていたのよ。

 だから、

 あのアプリで


 彼の姿を見た時、

 驚いた。


 初めは

 死んだ人を見てしまった驚きだった。


 でも

 会いたいって

 思い始めた


 今日は、

 あの場所へ行ったの


 でも

 彼の姿が映らなかった

   Aisa 











 あなたを

 驚かしてしまったので

 見せないように

 設定しました

   Hijiri




やはり、Hijiriという人物がアプリを作動しない状態にしていたようだった。

それで昼間の事は説明がつく。

だが、まだ気になる点もあった。




 あの写真は

 どこから持ってきたの?


   Aisa





 卒業アルバムから・・

 でも

 誰のアルバムを使ったかは

 言えない

    Hijiri



卒業アルバムの写真から、画像データにしたようだ。

確かに、いつも見ている剛君の写真は卒業アルバムに写った

黒い制服を着た写真だったから・・


その出た所がわかれば

彼の事も分かってしまうのだろう・・


ただ、

彼が持っているアルバムではない事がわかった。


自分の同級生ではない。


つまり


一緒のクラスでも無いという事・・


そして、

この Hijiri という人物は

自分に危害を加えないような気がしてきた。


でも、相手に自分が気があるような事を言ってしまったり、

うやむやにしておくと、

勘違いして、ストーカー行為に走ってしまう気がした。





 あなたが

 私の事を

 好きだとしとしても


 私はまだ、

 剛君の事を

 忘れられない

   Aisa






 わかっています。

 まだ、

 亡くなってから

 1年も経っていない


 それは

 当たり前だと思う。


 好きだった人を

 そんなに

 直ぐに

 忘れる事は

 できないと

 思います。

   Hijiri




剛君が亡くなった時期も、知っているようだ。

亡くなった今でも、忘れられない事も、知っている。

現実世界では、自分に、かなり近い人の様に思えた。


「誰?」とダイレクトに聞いても、教えてはくれないだろう・・

何処の誰だか分からない不安は残る・・


それでも、自分と剛君の事を、少なからず、思ってくれているようだ。

複雑な心境の愛紗さん・・


このまま、

この Hijiri という人と付き合っていいのだろうか・・








 私と

 剛君の事には


 もう

 これ以上

 触れて欲しくないの

   Aisa







 分かりました   

 あなたを

 追いかける事も

 止めます


 安心してください。

 私は

 ストーカーには

 走りません。


 あなたとは

 ネット上でしか

 コンタクトを取りません


 携帯のメールアドレスは

 破棄します。


 約束します。    

    Hijiri





ストーカーに走らないという・・

でも、ネット上で必要以上に絡む事は、ストーカーと紙一重なのでは無いか・・


直接アドレスも、消去すると言うが・・

それを信用していいのかどうか・・


最悪は、ゲームを止めて、メールアドレスを変更すれば、良いのだろうけれど・・

相手は、自分の事を知っているのだ。


ネットでの繋がりが切れたとしても、

現実世界では、一方的に、向こうの想いのままなのだ。


せめて、相手が誰なのかが分かれば、対処もできるが・・

厄介な相手と、交信してしまっている。


どうしていいか、わからなくなってしまった愛紗さん・・





 

 私・・


 どうしていいか

 わからない


 あなたを

 許そうとしている。


 でも

 気味が悪いの


 あなただけが

 私を

 知っているなんて

   Aisa

  


 私を

 信用してほしい


 なんて

 都合のいい話ですよね


 わかりました

 ゲームもやめます


 あなたを

 忘れます

    Hijiri





そんなに、簡単に、人の事を・・

好きだった人を忘れる事ができるのだろうか・・



それは

「好き」だという感情ではないのではないか??


ネットでは相手の姿も見えない。

手軽に、「好き」といい、手軽に別れる事もできてしまう・・


言葉だけの


薄っぺらい


世界・・・


ゲームも、これまで、時間をかけて、レベルを上げてきたのに、

それをやすやすと放り出せるのだろうか?





 あなたは、それでいいの?

 ゲームもあんなに

 楽しくやってたのに


 そんな間単に

 やめてもいいの? 

   Aisa








しばらく、メールが返って来なかった。

おそらく、色んな事を考えているのだろう・・




















 止めたくない


 できれば

 あなたと


 また、

 一緒に

 楽しみたい!


 私は

 それだけでも

 いい!

    Hijiri













時計を見る。

夜の2時を過ぎていた。


メールをしていて、いつの間にか時間がかなり経ってしまった・・・

夜も遅く、お互いに寝なければならない。

明日も学校がある。


ゲームだけは、継続しようと思った愛紗さん・・







 わかった。

 あなたを信じる。


 ゲームはペナルティが解けてるよ

 inしないの?

    Aisa




 できなかった。

 君を傷つけてしまったから

    Hijiri





 せっかく、Lvも上がって、

 カードも育ってるんだから

 もったいないよ


 また、

 一緒にやろうよ

    Aisa




 いいんですか?

 私は、

 あなたにとって

 得体の知れない

 存在・・

    Hijiri





 わからない。

 でも


 今まで、

 一緒にゲームをしていて

 楽しかったから・・

    Aisa




 はい。

 でも、今日は遅いので、

 明日から・・

    Hijiri





携帯のスイッチを切る愛紗・・


少し、疑問に思っていた事や不安に思っていたことが和らいだような気がした。


でも、

どこの誰なのかわからないのは、不安でもある。


ただ、

ずっと自分を見守ってくれていたという事がわかった・・



不安と安心が交差する・・


目に見えない相手・・


携帯電話だけが、二人を繋げていた・・











大谷先輩の部屋


机の上にパソコンが置いてあり、それに向かって熱心にキーボードを叩いている大谷先輩。

パソコンの画面の明かりだけの、不気味な暗い部屋・・


ヘッドホンを付けて無心に画面とにらみあっている先輩。

画面には、メールの文字が・・・





 いよいよ、

 本格的に動く時が

 来たようだね


       Hijiri






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