18.望月ノ光
人里離れた夕暮れの林・・
夕日に照らされた僅かな明かりが木の幹に映り、辺りは闇に包まれようとしていた。
幹の根元にはうっそうとした茂みが広がっている。
ガサガサ
枝葉をかき分けて進む人影・・
山伏の様な格好をした、一人の男が獣道を歩いていた。
頭は大きな笠を被って顔が隠れている。
先を急いでいる様子だが・・・
ギャー ギャー
鳥なのか獣なのか分からない鳴き声が頭上に響く。
その方向を見上げる山伏・・
木の梢から覗く上空の空も、暗くなってきた。
「これはいかん・・
夕方までにはたどり着けると思ったが・・・
母上にも困ったものだ・・」
ポツリともらして、再び歩き始ようとした。
ふと見ると、遠くに家の灯りらしきものが見えた。
林の木の幹のうっそうとした暗闇に浮かぶ灯り・・
「これは、ありがたい!」
そう言って、その明かりの方へと歩き出す山伏・・・
その明かりに近づくにつれ、それが家でないことに気づく山伏・・
林の開けた河原に、
薪が焚かれ、その周りに縄を曳き、何やら呪文らしきものを唱える・・
白装束に身を包んだ・・
一人の女の人・・
いや・・
少女?
「ノーマク サンマンダー バサラダ・・
センダ マカロシャダ ソワタヤー
ウンタラター カンマン・・」
その呪文が辺りの林にコダマする。
薪に護摩を加えるとパッと明るく燃え盛る。
こんな人里離れた山奥で、少女が一人で何をしようとしているのか・・
その様子を草むらに隠れて窺う山伏・・
その異様な光景に、目を見張る・・
不気味な・・いや・・艶妖な雰囲気さえ漂う・・
パキ
パキ
バキッ
何か、枝を折るような音が林の一角から鳴り響いている。
その音に微動だにしない薪の少女・・
「姉様!そっちへ行きました!!」
もう一人、女の人の声が、その音の鳴る方から聞こえた。
やはり、少女の様な・・
『姉様』・・この薪の少女と姉妹なのだろうか?
バサーーーーー
草がかき分けられ、何かが、広場に姿を現わす。
黒い、大きな塊・・
薪の明かりに照らされて、何とか輪郭が分かる程度だ。
人間より一回り大きな不気味な影・・
「出たな?猫又!!」
猫又・・または、化け猫とも言う・・妖怪の類である。
そんな妖怪を林から追ってきていたとでもいうのだろうか・・
その影は、草むらから、河原の中央まで進んできていた、薪に距離を置いて様子を覗いながら・・・
グググウウウ・・・・・
その影が不気味な、喉をゴロゴロと鳴らすような音を轟かしている。
威嚇でもしているのだろうか・・・
ガサガサ
先ほど、影の現れた草むらをかき分けて、もう一人の少女が姿を現わした。
刀を抜いて構えている。
「姉さま!」
薪の少女の呪文がピタリと止まる。
辺りがシーンと静まり返る・・
「この一帯を荒らしまわっている妖怪は、そなたか!」
薪の少女が振り向き、影に向かって叫ぶ。
「グググググ・・・貴様ら・・・何者だ・・・
ワシの縄張りを・・・」
「縄張り?
もともと、ここは、村人の生活を営む場所・・
先祖代々、守ってきた聖域!
そなたの塒でも縄張りでもない!」
キッと目を見開き、妖怪に立ち向かっている少女・・
「小娘が・・
このワシに何ができると言うのだ!」
「ぬかすな!」
そう言って、薪の周りに張られた縄を潜り抜ける少女。
「姉様!結界を出ては!!!」
注意をする妹らしき少女。
「こしゃくな!」
影が、薪の少女に向かって、突進する。
「ハッ!・・ ハッ!・・・」
ビシ
ビシ
林から出てきた少女が、気の様な術を放って援護している。
影の背中に当たるものの、その勢いを止める事が出来ない・・
「姉様!」
少女の直ぐ目の前で、とびかかる影・・
バシーーーーーーーーー!!!!!!
飛び掛かる姿で、影の動きが止まった・・・
何かに打ち付けられたような・・いや、何かが妨害して、壁にでもぶち当たったかのようだ・・
「ナ・・・何ダ・・・?」
「私の結界は破れない!」
ニヤッと不敵な笑みを浮かべている少女・・
「き・・貴様・・・何奴・・・!」
「平之大納言が娘 正子!」
「同じく 芳子!!」
「都で噂になっている・・ヤスマサの・・」
「如何にも!
妖怪討伐の棟梁は、我が叔父上!」
「く!都の精鋭が何故、ここに・・」
「妖怪は一掃せよとの帝の詔である!」
「その命、頂戴仕る!!」
二人の少女に挟まれて、思うように動けない影・・・
「ググゥ・・・」
バシーーーーー!!!!
「きゃ!」
妹の芳子の足元の地面が吹き飛んだ。
その叫び声と共に、倒れ込む芳子・・
「何!?」
バキーーーーー!!!!!!
「きゃぁ!!!」
姉の正子も倒れる。薪の炎が消し去れ、結界の縄が跡形も無く引きちぎられた。
二人とも気を失っている。
不意を突かれた少女たち・・
「援軍が来たかーーー」
ニヤッと笑った影・・
「まずい!!」
草むらに隠れていた山伏が叫ぶ。
「どうだ?
都の陰陽師の話、誠であったであろうが・・
我々の元に来る決心はついたかーー!!?」
「その声・・
星熊童子か?」
河原の奥から、バシャバシャと水面を歩きながら、
大きな、もう一つの影が姿を現わす。
熊の姿をした、一回りも大きな影・・
「助かったぞ・・
この小娘たち・・」
「貴様の手におえる相手ではない。
霊力は我々に匹敵する。
だが・・」
妹の芳子の手を掴み、その身を引き上げる星熊童子。
「うう・・・」
「まんまと、我が術にはまるとは、幸運だ・・」
思うように動けない芳子・・
絶体絶命・・
その時・・・
サーーーーーーーーー
無数の敷紙が星熊童子達を襲う。
「何だ!?」
宙を舞い、妖怪の周りを飛び交う敷紙で、前が見えない。
「これは・・敷紙!!」
バシ!!!
一瞬、閃光が走る。
星熊童子に捉えられていたはずの芳子の姿が無かった。
「何奴!!!」
敷紙に視線を遮られながら、叫ぶもう一つの影・・
倒れている正子の元に立っている・・
芳子を小脇に抱え、刀を構える山伏の姿があった。
「ふ・・
貴様たちには 名乗る名はない!
動けるか?」
「はい!」
その声に励まされる芳子。
「こんなもの!!
ハーーーーー!!!!」
星熊童子の叫び声と共に周りを舞っていた敷紙が地面に落ちる。
「ふ・・さすがだな・・噂通りだ・・・」
山伏がもらす・・
「だが・・
俺は君たちとは戦いたくない!」
ザッ
山伏が刀を地に突き刺す。
「何??
陰陽師が我々妖怪と戦いたくないだと?」
その言葉に、耳を疑った星熊童子。
「そうだ。
戦いは何も生み出さない。」
「ふ!何をたわけた事を!!
戦いの最中で剣を収めた事を後悔するがいい!
まとめて、あの世へ送ってやる!!」
星熊童子が、構える。
「ち!仕方がない!」
一瞬、山伏の動作が速かった。
刀の持ち手に手を添える。
「ハッツ!!」
ブワーーーーーーー!!!!!
その刃から衝撃波が走る。
「グア!!!」
怯む(ひるむ)星熊童子。
「がああーーー」
隣にいた妖怪は、その波状攻撃に吹き飛ぶ。
「く!何という力だ・・!」
その様子を見て、九字を切る山伏。
次の攻撃に身を構える星熊童子。
「雷・風・恒!!!」
カーーーーーーーーー!
「うわッ!」
辺りが眩しい光に包まれる。
気絶した正子を抱えて、その場を立ち去る山伏・・・
その光が止んだ時、山伏と姉妹の姿は見当たらず、
妖怪たちが立ちすくむ。
「あの技・・・」
「知っているのか?」
「ああ・・
噂で聞いたことがある・・
望月の君と頼光の間に生まれた男子が、
高野山で修行しているという・・」
落ちていた敷紙を拾い上げ、握りしめる星熊童子・・
「この敷紙・・
噂は誠であったか・・
親方様に匹敵する力を持つという・・
唯一の・・
望月之・・
光・・」
「望月之・・・光・・?!」
「だが・・・あの陰陽師・・
我々と戦いたくないと・・・・」
敷紙を見つめる星熊童子・・
山奥の神社の祠に3人の姿があった・・
床に寝せられている正子を介抱してる光・・
ロウソクの灯りがゆらゆらと揺れている。
妹の芳子は祠の四隅に塩を盛って、何やら呪文を唱えている。
「簡易的ですが、結界を張りました。」
「そうか・・凄いね・・。」
「いえ・・」
顔を赤らめる芳子。
「うん・・・」
「姉様??」
「ん?気づいたようだ!」
正子が眼を開ける。
見慣れない山伏の姿・・・
無精ひげに覆われ、如何にも怪しい感じだ。
「きゃーーーーーー!!!
何???
誰よ!!!
あんた~!!!!」
咄嗟に離れて、身構え、そこらにあった荷物を投げつけている。
「い・・痛ッ!!
な・・何だよ~~!!!!!
イテ!!」
「近寄らないで~!!!」
「それが、助けた人に対する態度か~~???」
「姉様!」
「助けた~ぁぁぁぁ???」
正気に戻り、今まであった事を思い出している・・・
「あ・・・そう言えば・・・」
「姉様・・先ほどまで妖怪に反撃されて気絶していたんですよ・・」
「そう
だったわね・・・
すみません・・
助けて頂いたのに・・」
「いや・・わかってもらえれば・・」
「芳子・・さっきの相手は・・」
「星熊童子って言ってました」
「星熊!?・・
そう・・
童子四天王の勢力が、ここまで・・」
「まあ・・
無事で良かったよ。
君たち二人で、あの妖怪たちと戦うなんて無謀だ!」
「え?」
「それに、たとえ妖怪であっても、
昔は、この世を生きていたモノたちだ。
むやみに攻撃するのも、
あまり良い事ではない。」
急に説教じみた言い方になっている山伏。
その言葉に、カチンときた正子・・
「そんな・・
あの妖怪は村の人たちに害を及ぼしていたんですよ!」
「相手にしてみれば、人間の方が害を及ぼしている存在の時もある・・
山を切り開き、今まで暮らしていた動物たちの住処を奪ったのも事実だし・・」
「なら、黙って見過ごせと?」
「いや・・
共存の道もあるのではないかって・・」
「話し合って分かる相手ではないのですよ!」
山伏と正子が言い争いになっている。
初めて会った仲でここまで喧嘩が出来るのかと、感心していた芳子だったが、
言葉が激しくなったってきたので、仲裁を試みる。
「まあ・・姉様・・
このお方に助けられたのですし・・
穏便に!」
「これが、穏便にしていられますか!」
腑に落ちない正子を宥める(なだめる)芳子。
「あ・・ところで、あなた様のお名前は?」
話をそらす。
「俺か~?
別に、名乗る程の者ではない・・
今は、修行の身・・
母上に用事を言いつけられて、
高野山から降りて来たのだが・・」
「高野山?」
「あなた・・ひょっとして、望月の君様の??」
「え?俺の母上をご存知か?」
「ええ・・よく知ってます。」
「じゃあ・・あなたは、霊力の修行しているという・・」
「光・・」
「様?」
「え~~~????」
二人とも驚いている。
「え??何で知ってるの??
俺って・・
有名??」
山伏の格好をしてはいるが、何か今一つ足りないような人物・・
その強力な力とは裏腹に、戦いを好まないという性格の様でもある。
京の都
老舗の料亭の奥座敷・・
畳の部屋に、若い美形の青年に酌をする娘・・
その前に、この料亭の亭主が座っている。
御膳の上に出された巾着袋・・
「ふふ・・金ならいくらでもある。
亭主よ、この娘、買い取るぞ!」
「はぁ・・でも、その娘は、貧しい家の出・・大したしつけはしておりませぬが・・」
「構わん・・
これだけの器量があれば、申し分ない。」
「旦那がそこまで申されるなら・・」
そう言って、巾着袋を手にして、奥へと下がる亭主。
「お雪・・良かったな、これで自由の身じゃ・・。」
「ありがとうございます。
でも、
お雪は、伊吹丸様の元で・・
こうして酌をしているだけで、
幸せにございます。」
「ワシの元へと参るか・・」
「はい」
酌を受ける伊吹丸。
『伊吹丸』・・絶世の美男と言われたその容姿は、艶妖な雰囲気を醸し出し、若い婦女子を虜にしていた。
中世日本において、『最凶の鬼』と呼ばれた『酒呑童子』のもう一つの素顔である。
ロウソクの灯りが揺れた・・
「うむ?」
伊吹丸がその異変に気づく。
部屋の隅の暗がりに、人影が現れている。
座って手を付き、頭を下げている・・若者?
「聖か・・」
伊吹丸が名を呼ぶ。
「只今、戻りました・・・」
「どうじゃ?あの小娘達は・・」
「取り逃がしました・・
が、例の妖怪は、我が軍勢に・・」
「うむ・・
良い知らせじゃ・・」
「聖様!
長旅でお疲れになられたでしょう・・」
娘が名を呼ぶ。
「ソチも酌を受けるがよい」
「はぁ・・」
近くへ寄ってくるその若者・・
やはり美形で背が高い・・
盃を取り、娘の酌を受ける「聖」・・
「しかし・・
四天王でも一番の智将である
聖王丸ともあろうものが、取り逃がすとはな・・」
「申し訳ございません・・
邪魔が入りまして・・」
「ほう・・
ソチを手こずらせる者がいたか・・」
ニヤッと笑う伊吹丸。
その時・・
バーーーーーン!!!
襖が勢いよく外れ、一人の武士が入ってきた。
急な来客に娘が驚いている。
微動だにしない伊吹丸と聖・・
「伊吹丸!!」
腰の刀に手を掛けながら、叫ぶその男性・・・
「これは・・ヤスマサ殿・・」
伊吹丸が、その男性の名を口にする。
「お久しゅうございます。」
礼をする聖・・
「貴様ら・・大胆にも、このような場所で・・!」
「食事を取っておったのです」
不敵な笑みを浮かべる息吹丸・・
「帝の詔である・・
だが、
大人しく都を立ち去れば、
お前の首は取らん!」
「ヤスマサ様も、今の帝に従わずとも・・
民衆は関白様の悪政にことごとく苦しめられております。
今日も、この娘を、苦行の道から救ったばかりでして・・」
伊吹丸に身を寄せる娘・・
「我らは、民の味方・・
ヤスマサ様も越後の国へと戻り、
望月の君様と仲むつましゅうお暮しになるがよいのです・・
都は、我らが手中に収める故・・」
その目をギラリと光らせる伊吹丸。
「何だと??」
「我は、食事中にて・・」
そう言って、娘を抱き寄せる伊吹丸・・・
目を閉じる娘・・
「伊吹丸様・・」
口づけをする・・
いや・・
みるみるうちに、娘の肌が荒れ、かさかさになっていく。
髪の毛が白髪になり、バサバサと抜けていく。
精気を抜かれているのか・・・
老婆の様に頬がこけ、しわだらけの顔になる。
そして・・
ミイラの様に干からびて動かなくなった・・・
ドン!
先ほどまで、若い娘だった亡骸が床に捨てられる。
口をすする伊吹丸・・
「若い女子の精気は、やめられませぬな・・」
その様子を見ていたヤスマサ・・・
「貴様!!!罪も無い者を~!!」
「この娘は、これで幸せだったのです・・
悪政に苦しめられ続けるよりは・・
快楽に身を委ねながら、逝くのが、
最高の幸せ・・」
「そんな幸せなど!!」
「ふふ・・どうされます?私めを・・・」
刀を抜くヤスマサ・・・
チリーン
部屋の片隅にかけてあった鈴が鳴る。
「厄介な客人が来たようですな・・
今宵はここまで・・」
「何?」
パチン!
指を鳴らす伊吹丸。
サーーーーーーーーーー
無数の敷紙がヤスマサを襲う。
「うわ!!」
ドサーーーーー
大量の敷紙で部屋が覆い尽くされ、埋まったヤスマサがもがく・・
「ははは!
また会いましょうぞ!!」
笑い声と共に立ち去る伊吹丸・・
「くそ!!」
身動きが取れず、もがいているヤスマサ・・
「ヤスマサ様!」
女の人の声が聞こえる。
「望月様・・」
身動きが出来ないヤスマサ・・
だが、誰かに抱き寄せられる。
「え?」
「お気を確かに!」
女の人の胸に顔をうずめる・・・
気が付くと、それまで、部屋を覆っていたはずの敷紙が消えていた。
もがいていたヤスマサが自由になる・・・
「あれ??」
望月の君に抱き寄せられているヤスマサ・・・
「幻覚を見ていたのです」
「幻覚?」
「ヤスマサ様・・無茶をなさらないでください!
単身で、撃ち入るなど・・
ケガをされては・・」
涙目になっている望月の君・・
「すみません・・・」
自分の力で、立ち上がるヤスマサ・・
部屋の片隅に転がる亡骸を見る。
「娘が一人、やられました・・」
「そうですか・・
あの妖怪も、どんどん力をつけております・・」
「我らも、加勢が欲しい所ですな・・
和泉の子達も、危ない目に合わせたくはないが・・」
「あの子たちも力をつけております・・」
「頼らざるをえぬか・・
全く、
無力なのを思い知らされる・・
足手まといになってしまわぬかと・・
自分でも焦ってしまう・・
今も、伊吹丸に軽くあしらわれてしまった・・」
「ヤスマサ様は、そのままで良いのです。
我らの大切なお方・・・
どっしりと構えておられた方が、安心するのです。」
「はぁ・・」
そういった役は自分の性に合わないといった感じのヤスマサ・・
「でも・・
このままでは、我々も不利です・・
正子様達に迎えに行ってもらっていますが・・」
「光・・殿か・・
高野山での修行は聞いております。
力もつけておられるとか・・
今は一人でも味方が欲しい・・」
「あの子は、弱腰・・
役に立つのかどうか・・
不安です。
それに・・・」
「どうしたのですか?」
「いえ・・・」
そのまま、黙ってしまう望月の君・・
実の息子である「光」は、元は敵方である「頼光」の忘れ形見・・
最愛のヤスマサの前で、「光」を愛でる事に抵抗を感じていた望月の君であった・・
そして、その母の想いを知りながら、自分が最悪の父をして生まれた事にコンプレックスを持っていた光・・
この親子に、真の愛情が芽生える事があるのだろうか・・
長きに渡る 光と姉妹の妖怪退治の話が続くのであるが・・
それは、また・・
別の機会に・・・
(今巻って・・さわりが多いな~)
・
・
・
畳の部屋から庭を眺めている今西・・
辺りはすっかり暗くなり、部屋の灯りに照らされた庭が暗闇に浮かび上がる。
砂利の敷き詰められた庭に苔の生えた大きな石が転々と横たわる。
霊感ケータイ越しに美奈子の降霊によって現れた霊の姿を見た場所である・・
初めて「霊感ケータイ」を体験した場所・・
つい、昨日の事の様に思われる。
「そうか・・美奈ちゃんも、あの悪霊と対決したのか・・」
「ええ・・
でも、ヒロシ君に助けられたの・・」
「ヒロシ・・君?」
「響子の息子さんよ・・
美奈子と同級生なの・・」
「え?
一橋の?・・」
「そう・・
昔から、あの血筋に・・
遥か平安の時代から・・
私達、望月の血筋の者が助けられている・・
因果なモノね・・
二つの血は・・
絡み合いはするけれども・・
決して、
混ざり合う事は無かった・・」
「そうか・・会ってみたいものだな・・
ヒロシ君に・・」
「え?会わなかったの?
美奈子も、あの中学校に通ってるのよ。」
「え????
そうだったの??
じゃあ・・
博士の会ったって言う・・霊能者って・・・」
「たぶん、美奈子の事ね・・」
偶然なのか、必然なのか・・あの中学校に召喚され、全ての事が繋がりだしている事に、
不思議にも思え、神秘的にも思え、そして、好奇心が湧いてくるのだった・・
何かが起ころうとしている・・
ジャーナリスト魂が、にわかに奮い立つのを覚えた今西。




