11.学校で・・
次の日の放課後、音楽室にて・・
いつものゴーストバスター部の面々。拓夢君がいない。
「ジャーン。昨日の東京の出張のおみやげデース。」
「わー!東京名物。ヒヨコだ~☆」
彼女は、この上ない笑みを浮かべていた。今にも箱に飛びつきそうな勢い。
「美奈ちゃん、甘いものに目が無いのよ・・」
「そ、そうなんですか?」
千佳ちゃんが沙希ちゃんに説明している。
「特に、温泉まんじゅうの類は嬉しいみたいだよ・・」
「餡子が大好きなんです~☆」
「でも、ヒヨコの中は、餡子じゃないよ・・」
「いいのいいの!基本、甘いのは大好きだから~」
「副部長・・それでよく、太らないですね・・」
「えへへ~」
「まあ・・これだけ喜んでもらえれば、買ってきた方も、遣り甲斐があるわ~」
「美奈ちゃん・・2個までだからね!」
「う・・うん・・・」
千佳ちゃんに割り振りされ、少し残念そうな面持ちの彼女・・
ありったけ、食べようとしていたのだろうか?・・恐ろしい・・
「お茶って、ないんですか~?」
沙希ちゃんが聞いている。
「う~ん・・
あ!そうだ。
家庭科室からクスねてくるか~?」
千佳ちゃんも大胆な・・
「い・・いいですね・・」
珍しく千佳ちゃんと沙希ちゃんの意見が合う。
「どっちが行く?」
「じゃ・・じゃんけんで決めましょう!」
「普通は、年功序列だけど・・」
「言いだしっぺは、先輩ですよ!」
「う!じゃあ、じゃんけんか・・」
「負けた方が行くんですよ!」
「わかった・・1回勝負ね!」
「じゃんけん! ぽん!」
千佳ちゃんが勝った。
「やった~!!」
「く~・・結局、私か~」
「じゃあ、お願いね!」
「あ!」
突然何かを思い出した沙希ちゃん。
「な・・何?」
「やっぱり、ポットとお茶道具で、二人行かないとだと思うんですが~」
「げ!そうだった・・
仕方ない・・私も行くわ・・」
家庭科室へお茶道具を取りに行く千佳ちゃんと沙希ちゃん・・・
彼女は、まだ、東京名物ひよこに釘づけだった。
「う~・・早く食べたいです~。
先生、いつも出張だといいですね~」
「そ・・そういうワケには・・・」
苦笑いする先生。
「昨日も、夜遅くに帰って来たんだよ・・
疲れて大変そうだったよ。」
僕が先生のフォローをする。
「そっか・・それは、お疲れ様でした。先生!」
「はいはい・・どういたしまして・・」
「あ、望月さん・・」
先生が、彼女に改まって聞いてきた。
「何でしょう?」
「『霊感ケータイ』って・・特殊な携帯電話なんでしょう?」
「ええ・・そうですけど・・」
何故、先生はいきなり霊感ケータイについて聞いてきたのだろう・・?
「ヒロシ君の持ってる霊感ケータイは、
私の母の友人から譲り受けた物なんです。」
彼女のお母さんの友人・・それは初耳だった。
確か、前の持ち主は、この霊感ケータイで命を断ったと聞いている。
その、友人という人が、亡くなったという事なのだろうか・・
僕が、胸ポケットから霊感ケータイを取り出す。
見た目は古ぼけた携帯電話。
今の携帯電話は、半年もすれば新しいモデルが出て、それまでの品は中古となって、価値が下がって見向きもされなくなる。
電話会社も競争が激しく、ユーザーも新しいモデルに入れ替えながら、使っているので、
一つの物を、何年も使うというのは珍しいのだろう。
ましてや、何年も前のモデルは、機能が少なく、速度も遅い。
パソコンと同じで、携帯電話に求められる機能がどんどん増えてきているのだ。
携帯電話も、出始めは、本当に通話機能だけだったと思う。
それに、メールが加わり、ネットが繋げ、さらにカメラ機能が付加され、
現在は動画や音楽再生、更にパソコンのソフト並みのアプリも出来ている。
ゲームやネット閲覧なんてパソコンを使うよりも手軽になっている。
僕の持つ霊感ケータイは、かなり前のモデルの様だった。
「その携帯の機能って、アプリとか何かなの?」
先生が彼女に聞いている。
「いえ・・この携帯電話自体の特性です。
霊との波長が合ってるって、母が言っていました。」
霊感ケータイは電話会社との通話の加入はしていないので、通常の通話とメールはできない。
でも、霊との波長が合っているので、霊との交信はできる。通話とメールの両方ができるのだ。
ただし、通話料金の代わりに、生体エネルギーを消費する。特に霊との通話は、体にかなりの負担が掛かる。
その点、メールは、あまり消費しないので、近しい間柄の、翔子ちゃんとかは、メールのやりとりで十分だった。
更に、カメラ機能では、霊感が無い人でも、霊視ができてしまうのも、この霊感ケータイの大きな特徴だ。
ファインダーを覗けば、動いている霊も負う事ができる。
そして、
この霊感ケータイで、僕も様々な事件に遭遇した。
彼女は霊感があるから、こんな携帯電話なんて無くてもいいのだろうけれど、死んだ人とコミュニケーションがとれるから、
欲しい人にとっては、手に入れたいアイテムだろう・・
最愛の人を亡くした人にとっては、喉から手が出るくらい、欲しいだろう・・
僕もそうだった。
亡くした母が忘れられず、ずっと会いたかった。
彼女の持つ霊感ケータイを使って、母の姿を見て、話をしたかった・・・
今では、僕の所有物となっているから、いつでも、母と会話することはできるはずだ。
でも、
母とは、お盆に父と先生の再婚について話し合ったきりだ・・
色んな事件に巻き込まれるたびに、いつの間にか「霊」との交信が当たり前のようになり・・
「霊の世界」が、自分にとって、何の抵抗もなくなってきているけれど、
彼女の言う通り、「霊」にあまり深入りしてしまうと、向こうの方が離れなくなり、かえって精神的にまいってしまうという。
亡くなった人と、会話する事自体、通常は、ありえない行為なのだ。
僕も、極力、「霊」との交信を控えるようにしている。
幸い、僕には霊感が無いので、霊感ケータイを使わない限りは、「霊」の世界とは遮断することができる。
「あのね・・昨日、出張してるとき、『霊感ケータイ』ってアプリを使ってる人を見たの・・」
「え?」
彼女が驚いている。
「カメラで覗くと、画面に霊らしき物が写ってるのよ・・」
「そんなのがあるんですか?」
「私も、自分の携帯で検索したんだけど、見つからなかったの・・
レアなアプリなのかな・・」
「千佳ちゃんとか、拓夢君なら知ってるんじゃないんですか?」
「そうね・・千佳ちゃん達が帰ってきたら、聞いてみようか・・」
霊感ケータイのアプリ・・
どんなアプリなのだろう・・・
その頃・・
家庭科室にて・・
ピー
お湯が沸いている。
パチンとコンロのスイッチを切る沙希ちゃん。
「お湯、沸きましたよ」
「じゃあ、ポットに移し替えてくれる?私は、お茶道具を揃えるわ・・」
「はい」
ポットにヤカンのお湯を注ぐ沙希ちゃん。
女の子同士なので、手際が良い。
「先輩・・・」
沙希ちゃんが千佳ちゃんに聞いてくる。
「なに?」
「この間みたいな悪霊って、いつも出てくるんですか?」
童子四天王について心配の様だ。少し、脅かそうと思った千佳ちゃん。
「うん!いつも出てくるよ!幽霊だって、日常茶飯事だし・・・」
「ホントですかぁ?」
何やら、疑いの目で見ている沙希ちゃん。
それが、本当ならば、正式に入部するのは考えるのだろうか・・
「冗談だよ~。悪霊は時々よ・・」
「時々・・」
今まで、童子四天王が現れたのは、夏休みが始まってからの合宿所とお盆過ぎの音楽室、そして、この間の研修旅行の帰りの3回だ。
8月から10月までの3か月間で3回となるが、1か月に1回の割合だと、多い方なのだろうか・・
時々
という表現もおかしくないかも知れない。
「いつもは、副部長さんが、反撃するんですか?」
「うん。美奈ちゃんは、霊感があるし、悪霊にも通じる技をもっているわ・・
あと、翔子ちゃん・・」
「先生の亡くなった娘さんですよね・・」
翔子ちゃんの事に関しては、十一面観世音菩薩の元で修行をすることになり、もう、来れないという事を皆に伝えてある。
その時は、先生も、悲しい想いをしていたけれど・・
「翔子ちゃんの代わりに、亡くなった旦那さんが、助けに来てくれるって事だしね。」
「何か・・普通じゃ考えられない世界ですね~・・」
確かに、幽霊が助けに来てくれるというのも、普通では考えられないだろうな・・
「あと、タクムだね!」
「タクム君、悪霊退治用の武器があるって・・」
「うん。カッコ良かったよ!私を守ってくれた時は・・」
「ふ~ん・・見てみたいな~」
見てみたいって・・その時は、悪霊退治の時なのですが・・・
お茶の道具も揃い、音楽室へと向かおうとした二人。
でも、誰かが入ってくる感じがした。
何人か話ながら、家庭科室へと入ってくる。
「まずい!誰か来た!」
お茶道具をくすねる所を目撃されたら、えらい事になる。
千佳ちゃんが机の陰に隠れることを促す。
とっさに、隠れる二人。
ガラ!
家庭科室の扉が開く。
教頭先生と数人の生徒が入ってきた。
一つのテーブルを囲んで、何やら会議をしようという様子。
オカルト研究会のメンバー?
部長らしき男子生徒、眼鏡を掛けたもう一人の男子生徒と、この間の未来先輩。
「それでは、まず、現状の部活の様子について、報告をお願いします。」
教頭先生の一声で、会議が始まる。
未来先輩が、オカルト研究会の現状を報告する。
「そうですか・・研究も、あまり進んでいないようですね・・」
「はい。」
「ゴーストバスター部は、夏休みに成果を上げています・・
教員や生徒の間でも、あの部の評判が密かに流れている・・
何としても、オカルト研究会の存在をアピールしたいところですね・・」
「先生。大谷が、ちょっと面白いものを作ったんです。」
それまで、沈黙していた部長が、話し始める。
「何ですか?」
「これなんです。」
携帯電話を教頭に渡す。
「携帯のアプリ?」
「はい・・」
大谷という男子生徒が説明をする。
「ゴーストバスター部に、不思議な携帯電話があるって聞いて、それらしきものを作ってみたんです。」
ピッ
教頭先生がアプリを作動させる。
「霊感ケータイ?」
携帯の画面に『霊感ケータイ』と表示されているらしい。
隠れている千佳ちゃんと沙希ちゃんが驚いて、目を合わせる・・
「何も見えないけど・・普通の風景よ・・」
教頭先生が、何の変哲もないカメラの映像だと嘆いている。
「あ、少し、辺りを見て下さい」
大谷先輩の言葉通りに、携帯のカメラで辺りを眺める教頭先生。
ふと、見慣れないモノが写っているのに気づく。
「なに?これ・・」
少し、驚いた表情を見せた教頭先生。
実際には居ないモノが写っていて、その人影らしきものが蠢いている。
そして、前回、未来先輩が見た映像よりも、立体になっていて、その人影が、歩いているのだ・・
「バーチャル世界の物を投影しているの?」
「はい・・先週、副部長に見せたときは、まだ、移動しなかったんですが・・」
「移動するようになったの?」
未来先輩が、こんな短時間で改良したことに驚いている。
「はい。フリーのプログラマーで協力してくれる人が現れて・・
かなり見れるレベルまで改造してくれたんです。」
「フリーの・・」
「私も、メール内容見せてもらったんですが、
学校には協力的なしっかりした感じの人なんです。
報酬も要らないって・・」
部長が補足している。
「サーバーは、無料レンタルを借りてます。
容量が少ないので、一部屋分くらいしかデータが入らないんですが、
学校のサーバーを使わせてもらえれば・・」
「学校って、部活で使ってるヤツ?」
「はい・・」
「あれは、他の研究機関とも繋がってるから、
下手に外部の人を入れるわけには・・」
「私も、そう思って、保留にしていたんです。」
未来先輩が補足している。前回の会議の時の話だ。
しばらく考えている教頭先生・・
「容量が大きくなれば、学校にもエリアが広げられるってわけね・・」
「いえ、校区くらいはカバーできるって、言ってました・・」
教頭先生の眼鏡がキラリと光った。
「教頭先生?」
何を言い出すのか、一瞬、耳を疑った未来先輩。
「よろしい!許可しましょう!」
「え?」
「ただし、プログラムに強制停止のモジュールを付けてください」
「はい!ありがとうございます!!」
「良かったな!」
「教頭先生・・」
未来先輩が心配そうに聞いている。
「これは、私達を勝利に導くための秘策・・
あのゴーストバスター部に一泡吹かせてあげましょう!」
千佳ちゃんと沙希ちゃんには、プログラムの事など全くの素人で、何が話されているのか分からなかった。
でも、ゴーストバスター部に危機がせまっている事は分かった・・
二人とも、恐怖の表情・・
いったい、何が起ころうというのだろうか・・
「あと・・そこにお茶道具が置いてあるけど・・・」
教頭先生が二人の隠れている机の上に、先ほどのポットやお茶道具が置いてあるのを見つけた。
とっさの出来事で、隠すことができなかったのだった・・
ギク!
二人とも、冷や汗が出ている。二人で顔を見合す・・
「ヤカンもある所を見ると、さっきまで、お湯を沸かしていたようね・・
そこに誰か居るの?出ていらっしゃい!!」
教頭先生も鋭い・・
二人が隠れているのを見抜かれてしまった・・
もう隠れていても、見つかるのは時間の問題だ。
千佳ちゃんと沙希ちゃんが、静かにその場に立ち上がる。
「あなた達は!」
未来先輩が、驚いている。
「水島さん、知っているの?」
教頭先生が水島先輩に確認する。
「い・・いえ・・いつも、家庭科室でタムロしてるって・・」
千佳ちゃんが、先輩の意外な回答に驚いている。
「あなた達・・クラスと名前は?」
「2年2組の宮脇千佳です・・」
「1年1組の相沢沙希です・・」
「あなた達、今の話を聞いたの?」
「はい・・」
教頭先生は、困った顔をしていたが・・
「この事は、他言しないように!
もし、話すような事をしたら、生徒指導を行いますよ。
家庭科室に勝手に入り込んで、学校の物を私物化してたって・・」
「はい・・」
沙希ちゃんが返事をする。
「よろしい・・では、かたづけて、行ってよろしい!」
教頭先生の見ている前で、ポットのお湯を捨て、お茶道具を棚に仕舞う二人。
かたづけて、そのまま、家庭科室を出ようとした時・・
「待ちなさい!」
教頭先生に呼び止められる。
「茶碗も二人にしては数が多かったわね・・
それにポットって・・何処かへ持って行こうとしていたの?」
背筋が凍る千佳ちゃん・・
「あ・・あの・・校庭でお茶にしようと・・天気もいいし・・」
「そう・・」
「失礼します!」
ペコリとお辞儀をする沙希ちゃん。早く立ち去りたい一心で、挨拶を交わす。
「あと・・宮脇さん?何処かで聞いた名前ね・・・」
「よ・・よくある名字だと思いますが・・」
千佳ちゃんも必死で話をそらすが・・
「工作の授業に来ている宮脇さんの?お孫さん?
確か・・ゴーストバスター部の・・」
校長先生が源さんとバスの中で話していたのを覚えているだろうか・・
源さんの孫である千佳ちゃんが夏休みに合宿所にて除霊を行ったメンバーの一人だというのは、
教員の中でも、知れ渡っていた・・
「ふふ・・これは、意外な人が聞いていたものね・・・」
教頭先生から不気味な笑みが・・
「丁度、いいわ!
宣戦布告する手間も省けたようね・・
あなた達、ゴーストバスター部を、この学校から抹消してあげるわ!」
「そ・・それは・・」
「今も、聞いての通り・・あなた達の活動のカラクリを暴いて見せる!
そして、『霊』なんて実在しないって、証明するキッカケにさせてもらうわ!
私の持つ、ネットワークを駆使してね!」
「そんな!私たちのやっている事は本当の事です!」
「そうです!だから、拓夢君だってウチの部に協力してくれてるんです!!」
必死に反論をする千佳ちゃんと沙希ちゃん。
「タクム?・・・水島さんの弟?」
未来先輩に聞く教頭先生。
「は・・はい・・」
渋々答える未来先輩・・
「あなた達の部に入り浸ってるって噂が流れてるわね・・
私の部を差し置いて・・
いい笑いものになっているわ・・
これで、ゴーストバスター部に移籍したなんて事になったら、当部活の恥です!」
「教頭先生・・」
教頭先生の強気な発言に、何も言えない未来先輩だった。
「水島さん!弟さんによく言い聞かせておいてね!
オカルト研究会から逃げ出すことは、絶対に許さないって!」
そう言って、教頭先生が家庭科室を颯爽と出て行った・・
自信に満ちた後姿に、その場にいる生徒の誰一人も反論が出来なかった・・
「宮脇さん・・聞いての通りよ・・
当面、拓夢には、音楽室へは出入り禁止にします・・」
拓夢君への対応を告げる未来先輩。
「先輩・・」
悲しい目をして見つめる千佳ちゃんだが・・
「ごめんなさい・・」
そう言って、先輩も家庭科室を後にする。
部長と大谷先輩も、その後に付いていく・・
家庭科室に取り残された千佳ちゃんと沙希ちゃん。
「どうしましょう・・」
沙希ちゃんが心配する。
「う・・
うん・・
大変な事になった・・・」
「皆に知らせないと!」
「そうね!」
音楽室へと向かう二人・・
でも千佳ちゃんは、気になった事があった。
先輩が、二人を知っていたのに、知らないふりをした事。
そして・・
・・・「ごめんなさい」って言ってた・・・
呟く(つぶやく)千佳ちゃん。
音楽室に戻った千佳ちゃんと沙希ちゃん・・
「ただいま帰りました・・」
「あ、お帰りなさい!あれ?」
返事をした彼女。
お茶道具を持ってきていない二人に気づく。
「どうしたの?青ざめた顔して・・」
先生が二人の様子がおかしい事に気づいた・・
「先生・・」
泣きそうな顔になっている沙希ちゃん。
「教頭先生に、見つかって・・
それで・・」
千佳ちゃんが先ほどの家庭科室での話をする。
・
・
・
「そう・・それは、大変な事態ね・・」
「『霊感ケータイ』って携帯電話用のアプリまで作ってました・・」
「それが・・私が電車で見たアプリの正体なのね・・」
でも、会議の話では、家庭科室内のデータしか入っていないはずだった・・
それが既に都心の地図まで入っているというのだろうか・・
それとも、まだ、未完なのだろうか・・
オカルト研究会に協力しようというプログラマーも凄腕のような気がした。
そして、そういった相手が、僕たちを潰そうとしている事に、恐怖感を覚えたのだ。
「先生・・どうしますか?」
僕が改めて先生に聞いてみる。
黙って、外を見ている先生・・・
こんな展開になれば、誰もが迷うだろう・・
翔子ちゃんも居なくなったし、拓夢君も出てこれなくなった以上、
彼女以外、霊力のある人物は居ないのだから・・・
悪霊退治もままならぬ状態になってしまったゴーストバスター部・・
いったいどうなってしまうのだろうか・・
「クックック・・・」
何?その笑いは?
「受けて立とうじゃないの~!!!
あの、インテリ処女に一泡吹かしてやらないと気が済まないわ~!!」
ひえ~・・
女教師同士の戦いになってしまった~!!
合宿所の除霊の時もそうだったけど、先生も、意外に火が付きやすいのだった。
「先生~・・」
女の子達が先生の強気の発言に期待を寄せる。
何か作戦があるのだろうか?
「うふふ。ヒロシ君!霊感ケータイを貸してくれる?」
「は・・はい・・」
怖い・・先生が、何をするのかは分からなかったが、その雰囲気に飲まれ、僕は霊感ケータイを手渡した。
「あはは~!私には『元亭主』っていう、強~い味方がいるのよ~!」
翔子ちゃんパパの事か・・
確かに、翔子ちゃんの後を引き継いで、地獄で特訓を行っているという話だったが・・
霊感ケータイを片手に、電話をしようというのか・・
「先生・・!」
彼女が先生に聞いている。
「何?」
「元旦那さんの電話番号って知ってるんですか???」
「あれ?・・・
何番だったけぇ~」
だめだこりゃ・・・・
その後、どう対応するのか、皆で相談したのだった。
拓夢君無しでは、あまり、良い策も出なかったのだが・・・
オカルト研究会の部室の隣にある情報処理室。
先ほどの教頭先生の指示を受け、部長と大谷先輩がサーバー本体らしき大きな箱の前で作業をしていた。
端末のパソコンに向かって設定をしている大谷先輩。
「なあ・・大谷・・」
「何だい?」
「何で、『霊感ケータイ』にこだわっているんだ?」
部長の質問に、キーボードを打つ手が止まる大谷先輩・・
「え?・・
そ・・
それは・・」
少し、考えている。
「ゴーストバスター部の『霊感ケータイ』なんて、直ぐに作れるアプリだって・・
証明したかったんだよ・・
俺たちの部が何やってるんだって・・
言われるのが嫌なだけさ・・」
再び、キーボードを打ち始める大谷先輩。
「そうか・・」
部長が、その答えに、少し安心したような笑みを浮かべた。
だが・・
何か他に、理由があるような感じがしたのだった・・・




