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霊感ケータイ  作者: リッキー
霊感ケータイ アプリ
126/450

10.電車で・・

都内の電車。


夕方の帰りのラッシュで、乗客が乗り込んだ車内・・

朝の通勤ラッシュほど満杯ではないが、椅子は埋まり、通路もほぼ満員状態だ。



その中に、雨宮先生の姿もあった。


出張で、都内のビルで研修があり、その帰りだった。



・・・やっぱり、東京は人がいっぱいいるわね・・・・






廻りを見渡すと、会社員や学生、主婦?・・


スーツを着た年配のオヤジさんは、新聞を折りたたんで読んでいる。

OLなのだろうか・・若い女性は吊皮に手をかけながら、しきりに周りの様子に警戒している。

長椅子に座って話している学生達。

いちゃいちゃと話し込んでいる、若いカップル。


ゲーム機を出して、脇目も振らずに夢中になっている男の子。

イヤホンで何やら聞いている女の子。


話している人も居るのだが、無言に近く、自分の世界へ閉じこもる人が大半だった・・・

中でも、携帯電話を取り出して、操作しだす若い人達が目立つ・・


何をしているのだろう・・・

車内では、通話はマナー違反の為、何やら操作をしているのだが・・


メール?


フェイスブックやツイッター?


いや・・


どうやら携帯ゲームというものらしい。



画面に表示されるカワイイ女の子、強そうな武士、高機能ロボット・・

そんなキャラクターが羅列され、上へ下へとスクロールさせて、眺めている。







・・・ふうん・・こんなのが流行っているんだ・・・



車内での暇な時間をつぶすために、ゲームに勤しんでいるのだろうか・・

無言で画面を見つめながら、生気を抜かれているような若い人達・・


笑うでもなく、怒るでもなく・・

その光景が、異様な感じに映ったのだった・・


女学生が、ケータイを見ながら、話している。


「ねえ、この人、いつも絡んで、ウザいんだよ!」

「どうせ、その辺のオタクでしょ?」

「ヤバくね~?辞めてやれば?」


「こっちの、『ヒジリ』って人の方が親切だよ~」

「ああ・・いいよね、この人、レアとかくれるって・・かっこよさそう・・」

「カキンしてる人のほうがいいよね~」


学生でも、携帯ゲームにはまる世の中なのかと、少し、ヒンシュクの目で見つめる雨宮先生・・


・・・ケータイの世界でも結局、男は金なのか・・・





窓際に目を向ける。


隣の女の子が、一人、窓に向けて携帯を操作している画面が気になった。

会社帰りの女の子なのだろうか・・


その上にタイトルが表示されている・・・




   『霊感ケータイ』




・・え?・・・



先生は目を疑った・・・


その女の子が窓から覗き込む外の世界。

電車が走っていくのと共に流れている風景。


その中に、うっすらと光っている物体が風景と共に流れていく・・

その光景を眺めながら、少女は何をしているのだろう?



霊感ケータイは、僕の持っている携帯電話だけかと思った。

でも、何万個に一個という割合で、霊の世界を見る事の出来、また通話することのできる携帯電話が存在する。

その確率で言えば、意外にいくつあってもおかしくはないのだが・・


その女の子の持っている携帯電話が、ブルブルと鳴りだす。


メールを着信したようだった。

そのメールを読んでいる女の子・・



  大根、買ってきてね!


           母より



どうやら、その女の子のお母さんからのメールらしい。

本物の霊感ケータイならば、通常の通話やメールはできない・・


メールを読んだ後、また先ほどの画面に戻している。


どうやら、


    「アプリ」


のようだった。

「霊感ケータイ」を装ったアプリが存在しているのだろうか・・





マンション



夜遅くに先生が帰って来た。


ガタン


「た・・ただいま~・・」

長く電車に揺られ、疲れ切っている様子だ。


「あ、お帰り~!」


お父さんが、居間から返事をしている。

ソファーに座りながらテレビを見ている。深夜のニュースの様だった。

机には缶ビールとつまみ。


僕は、翔子ちゃんの部屋で爆睡中・・


「ただ今、帰りました~☆」


居間に入って、先生が改めて、お父さんに声をかける。

ソファーから振り返り、父の第一声・・


「お帰り!ご飯にする?お風呂にする?」

それは・・若妻が旦那にかける言葉じゃないの?



「う~ん・・」

先生も考えるか~?

お風呂はシャワーだし、ご飯はレンジでチンなんだけど・・







「直人さんがいい~!!」


と言ってお父さんに抱きつく先生。


オイオイ・・



「ひゃ~!」

いきなり抱きつかれて、リアクションに困る父・・


「ひゃ~??  その反応は何??」


「あ、いや・・急に・・飛びつかれるとね・・(そういうの、弱いんだよ・・)」


ソファーの父の隣に座る先生。


「ホント・・疲れちゃった・・・」


「長旅、ご苦労様!」


飲みかけの缶ビールを一気に飲み干す先生。


「プハ~・・やっぱり家が一番ね~」


「はいはい・・つまみもあるよ・・」


出されたスルメをくわえる先生・・なんか・・オヤジっぽい・・


「何かサ~・・都心で暮らしてる人って・・大変だって思った・・」


「大変?

 でも、何でも整備されてて便利だけどね~」



「それはね~。

 モノは溢れてるし、交通の便もいいし、華やかな所もあるけどね・・


 でも・・

 何か、皆・・寂しそうなの・・・」



「寂しそう?」


また、抱きついてくる先生。


「こうやって~・・好きな人と・・一緒になってると・・

 疲れも飛ぶんだろうけど~。」


「俺は、癒し系の・・ゆるキャラじゃないんですが・・・」


「う~ん・・十分癒されるよ~」

甘い声で父に迫っている。


「な・・何か・・リクエストでもおありですかな?お嬢さん・・」


「えへへ・・肩揉んで!」


「ハイハイ・・」


それが目的だったか・・父は渋々(?)先生の後ろに廻る。






ソファーに腰かけ、後ろから肩を揉まれている先生。



気持ちよさそう・・



「う~ん・・疲れが飛ぶ~」


「かなり、凝ってますな~」



「ずっと、緊張してたから・・

 都会だと、ずっと緊張してなきゃなんだよ・・」


「ま・・それも大変だわな~・・」



「私も・・

 一人の時は・・


 翔子が寝たきりの時は、

 毎日、疲れてた・・


 その時は、翔子の事だけを想ってたから・・

 何とも思わなかったけど・・


 今思えば・・

 大変な事してたんだって・・・」





「ああ・・

 オレも・・


 響子が入院して・・

 他界して・・

 ずっと、ヒロシと二人暮らしだったけど・・


 今にして思えば・・

 もう一度できるかといえば・・

 出来ないかもな・・」




「私達・・


 良かったのよね・・


 一緒になって・・」



「うん・・


 二人とも、大変な事を乗り越えた・・

 ご褒美なんだよ・・


 この

 安息の日々は・・」



父の手を掴み、振り向く先生。



「私は・・


 幸せです。」




「静江さん・・」



目をつむる先生。


二人の顔が近づく・・






バタン!


僕の部屋のドアが開く。


とっさに離れる二人。

僕が、先生が帰って来ているのに気づく。


「あ!先生帰ってたんだ・・お帰り。」


「あはは・・ただ今~」

苦笑いしてる先生。


先生の荷物を慌てて片付けている父・・


「なに?何かあったの??」


父と先生が妙な感じになってるのが不思議だったけど、僕はトイレに起きて来ていたので、それどころではない。


「と、東京名物、ヒヨコだよ~」

先生が土産の箱を見せる。


「ミナが喜ぶね!」


「そ・・そうね、望月さん、好きだもんね~甘いの・・」


その言葉を最後まで聞かずに、トイレへと急ぐ僕だった。


「お・・お風呂にします・・」


「うん・・ご飯、温めておくよ・・」


すごすごと、通常の生活に戻る二人。

脱衣室へ向かう先生がポツリと言った・・


「でも・・」


「なに?」


「みんな・・疲れた顔をしていた・・

 つい・・この間の・・私達と同じ様に・・」


昼間の事を思い出している先生。

それを見つめる父・・・






「無機質な



 携帯の画面を見つめて・・



 癒されるのかな・・



 若い人達は・・」



電車内で、ケイタイに勤しむ人たちを想い出している先生だった。






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