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霊感ケータイ  作者: リッキー
霊感ケータイ6 上
120/450

4.幸子さん

都心から車を走らせている今西。助手席に香織さんが座っている。


「すみません・・私のワガママで・・」


「いえ・・ 一緒に来てもらえるなんて・・

 思ってもいなかったですよ


 でも・・・」


「でも?」


「何で、オマエも付いてくるんだ~?」


後ろの席から身を乗り出す弘子さん。


「えへへ~ 

 だって、

 まだ二人とも、出会ったばっかだし~

 お兄ちゃんが直ぐに手を出さないか監視しなきゃ~

 香織を傷物にしたらタダじゃ済まないからね!」


「あのな~!

 オレが直ぐに手を出す奴に見えるのか~?」


「見える!下心丸出し!!」


「この~・・」


弘子さんも同乗していたのだった・・・






「まあ、旅は道連れ!人数は多い方が良いでしょ?

 私も、幸子さんにお参りしたいし!」


「じゃあ、一人で行けよ~」

「だって、電車代かかるじゃない~」

「交通費、浮かせるためか~??」


「あの・・」

香織さんが、兄妹げんかを見かねて、止めに入る。


「はい・・」

「幸子さんって、どんな人だったんですか?」


「お姉ちゃん、すっごい優しかったよ~」

「お姉ちゃん?」


「うん。私も妹みたいに面倒見てもらってたんだ~」

「ふ~ん・・兄妹同士の付き合いだったんだ・・」


「でも・・・」

「でも?」


「あれは・・お兄ちゃんが高校の時の話・・・」





オカルト同好会


今西が高校の時、「オカルト同好会」が存在し、今西が部長、幸子さんが副部長、部員が数名で構成される部活動を行っていた。


オカルトに特に興味があった今西は、オカルト専門誌の熟読はもちろん、自分で取材、研究した内容を雑誌社に持ち込む程の熱の入れようだった。


その業績を評価されてか、月刊「オカルト」編集部に目をつけられた。



幸子さんは、そんな彼をサポートする役目を担い、いつの間にか親しい仲になっていたのだった・・


そんな部活に噂話が舞い込む・・・


「ねえ、私達の隣のクラスの望月さんって、除霊とかしてるんだって!」

幸子さんが今西に話し出す。


「それ、ホント?」

今西が驚いている。


「聞いたことありますよ!」

眼鏡を掛けた、オタクっぽい女の子が話題に入ってくる。


「早乙女さん・・知ってるの?」

「はい。何でも、霊感があるって話です。」

「霊感・・」

「あと、もう一人、同じクラスの一橋さんって人も、

 一緒にゴーストバスターやってるって・・」


「ゴーストバスター?

 何か、凄い事してるんだね!」

「この高校も、色んな噂話、ありますからね・・

 中学校もそうでしたが・・」

情報通の早乙女さんの報告が終わる。


「まったく、灯台下暗しって言うか・・

 そんな子達が居たなんて・・

 オレも情報不足もいい所だったな・・」


「ねえ、その子達、この部活に入ってくれないかな~?」

幸子さんが提案する。


「ああ・・明日にでも勧誘してみるか!」



陽子と響子の霊感コンビは、密かに学校の噂になっていた。

霊感があり、悪霊退治をしている陽子。

それをサポートする響子。

1年生の時に出会ってから、いくつもの心霊事件を解決し、今は同じクラスで活躍していた。






車内に話は戻る・・・


「幸子さんとは同じ部活で活動してたんですね。

 なんか女房役みたいですが・・」

香織さんが感想を語る。


「あの頃は、燃えてたな~

 未知の領域に迫る、好奇心、探究心!

 まだ社会を知らない俺たちはガムシャラに突き進めた!」

高校の頃を思い出している今西。


「そんな熱意が、今の職場に活かされてるんですね~」

「お兄ちゃん、オカルトには子供の頃から目がなかったしね!

 『心霊』の話とか聞けば、目の色変えて・・水を得た魚みたいに・・」


「それで、その霊能者の二人は勧誘できたんですか?」


「それが、ダメだった・・」




再び高校時代。


放課後、陽子と響子にコンタクトを取り、今西と幸子さんで自分達の部活に入らないかと勧誘をしているが・・・


「え~?私達に一緒に活動しないかって~?」

「それは・・無謀だと・・思う・・」


「え?」

霊感コンビの反応に驚く今西。


「アナタ達、霊感はあるの?」

「いえ・・」

幸子さんの答えに顔を見合わせる陽子と響子・・


「あのね・・

 私達、中途半端にこの世界に足を突っ込んでるんじゃないんだよ!」

「私も、何度か、危ない状態になった事もあるんです。」

「危険なのよ!素人が入れる世界じゃない!」

冷静に話す響子と、強い口調の陽子。


「ならば、取材だけでも・・」

それでも食い下がる幸子さんだったが、


「駄目よ!あなた達まで危険に巻き込めないわ!」

きっぱりと断られる今西達・・






今西の家。

今後の作戦会議を兼ねて、副部長の幸子さんと帰宅した今西。


「ただいま~」

「おかえりなさい!お母さん、今日遅くなるって!」

中学生だった弘子さんが出迎える。


「こんにちは、弘子ちゃん。お邪魔します。」


「あ・・お姉ちゃん・・・いらっしゃい・・」

「え~?私・・弘子ちゃんのお姉ちゃんなの??」

今西と顔を合わせる。赤くなっている。


「うん!私のお姉ちゃんだもん!」

幸子さんの腕に抱きつく弘子さん。


「これから作戦会議なんだから、邪魔するんじゃないぞ。」

「そんなの、お兄ちゃん一人でやってればいいじゃん。」

「もう!お前は勉強しとけ!」

「はいはい。」

2階にすごすごと上がって行く弘子さん。


居間のソファに座って作戦会議中の二人。


「どうすれば、認めてくれるのかな~」

「今日の話だと、難しそうよね・・」

「何か、世界が違うって・・思ったよ。

 俺たちのやってる事って、ほんのお遊びなんだって・・」


「あの二人は諦める?」

「いや!逆に興味が湧いてきたぜ!

 ゼッタイに仲間になってやる!」

熱意に燃える今西。


「うふふ・・今西君らしいわね!」

「へへへ・・」


ジュースとお菓子を持ってくる弘子さん。


「へえ~・・霊能者が居るんだ~」

「お前・・聞いてたのか?」

「だって・・あれだけ大きな声で喋ってれば聞こえるもん・・

 はい。幸子おねえちゃん!」

幸子さんにジュースを渡す弘子さん


「ありがとう」

「あ~あ・・幸子おねえちゃん、はやくこの家に来てくれないかな~」


「ブッ」

ジュースを噴き出す今西。


「え~??」

赤い顔の幸子さん。


「だって、勉強も見てくれるし、優しいしさ~

 お兄ちゃんと正反対だもん!」


「お前な~!俺は勉強もみないし、優しくないってのか~?」

「そのままじゃん!

 お兄ちゃん、頼りないから、お姉ちゃんの方が頼りになるよ!」


「く~!妹のくせに~!!」

和気あいあいと会話をしている3人・・




車内・・

ハンドルを握り締めながら、高校の頃を思い出している今西。


「あの頃が、一番、平和だったな・・・」

「うん・・あんな事件が無ければね・・」


「ああ・・」

そう言って遠くを見つめる今西。


「あんな事件?」

香織さんが聞いてくる。


「俺たちは、霊能コンビと付き合っているうちに、段々認められるようになってきたんだ・・

 でも、悪霊退治の時・・・」


「悪霊?」


「ええ・・お姉ちゃん、深手を負ってしまったの・・」


現在のヒロシの時代で悪霊との対決が繰り返されているのと同じように、陽子と響子の時代にも悪霊との死闘が繰り返されていた。


そして、あの酒呑童子達を封印するに至るが、その時に、陽子を始め、響子、幸子さんもダメージを喰らってしまった・・・


寿命の減った響子、幸子さんは、短命に終わる事となる。







病院



病院に入院している幸子さんの所に、今西と弘子さんが見舞いに来ていた。

ベットに横になっている幸子さん。細く青白い腕に点滴を付けている。


「こんちわ~」

「幸子・・来たよ。」

「いらっしゃい!元気だった?」

起き上がれず、ベットに横になりながら今西と弘子さんを出迎える幸子さん。


「うん!私はいつも元気だよ!」

「弘子ちゃんだもんね~」


「えへへ~、それだけが取り得だからね。

 お姉ちゃん、早く良くなって退院できるといいね~」

その言葉に、表情が曇る幸子さん・・・

今西も、何やら気づいている・・少し、顔色が悪いのだ・・


「今西君・・・」

「幸子・・」

ベットの脇の椅子に腰かける今西・・暗い表情になる。


「ねえ今西君。」

「何だい?」

「あの事件に巻き込んだのが自分だって思ってるでしょ?

 責任を感じてるんじゃない?」


「え?」

幸子さんの問いかけに動揺する今西。


「図星ね!そんな事ないよ!

 私も、あの現場に行けて・・皆の役に立てて良かったって思ってるの!

 あなたに付き合ったわけじゃないのよ!」


「幸子・・」


「でも・・

 あなたと一緒に行けて・・

 幸せだったよ・・


 私は・・


 もう

 長くないと思う・・」

目を瞑り、自分の人生の最期を悟っている幸子さん。


「そんな事言うなよ!

 もっと休んで、元気になるんだ!」

今西の言葉に、首を横に振る幸子さん。


「私。


 あなたと


 出会えて。


 一緒に居れて・・


 楽しかった!


 今まで


 ありがとう。


 今西君。」


「幸子!」

その言葉に、幸子さんを抱き寄せる今西。


「ねえ・・


 私の事・・


 忘れないで・・」



「ああ・・」

二人の頬に涙が伝わる・・・


「うれしい・・」

その様子を、固唾を飲んで見つめる弘子さん・・


「お姉ちゃん・・」

俯いて(うつむいて)涙をこらえる・・


その数週間後・・幸子さんはこの世を去った・・


享年18歳・・


短すぎた・・


少女の命・・





車内・・


「そうですか・・」

香織さんがポツリと呟く。

しばらく沈黙が続いた・・


ハンドルを握りしめ、前方を見つめる今西。


窓の外を見上げている弘子さん・・


手首のリストバンドを見つめる香織さん・・



今西の高校時代・・

陽子と響子の活躍の物語・・

そして、


少女たちの命を奪った対決とは・・













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