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霊感ケータイ  作者: リッキー
霊感ケータイ6 上
118/450

2.不思議な携帯電話


妹さんと待ち合わせの喫茶店。


カランカラン・・


「いらっしゃいませ~」


喫茶店の扉を開け、今西が入ってくる。


「あ、お兄ちゃん!こっちこっち!」


奥の窓際で座っていた弘子さんが、呼んでいる。





弘子さんの隣に友達らしき女性が座っている。


「こちら、谷内田 香織さん。

 私の同級生なの!」


「初めまして・・谷内田です。」

半袖シャツにキュロット、ポニーテール姿の香織さん・・

腕にはリストバンドをして、いかにもスポーティーな感じ・・


妹の弘子さんは、逆に薄手のブラウスにジーパンで、普段着にしては冴えない服装だ。


「弘子の兄の今西と言います。

 スポーツでもしてるんですか?」

取りあえず挨拶をする今西。


「はい・・」

「あ、香織は休日、テニスとかしてるんだって!」

「そっか・・あ、名刺を・・」

名刺を差し出す今西。



  月刊「オカルト」編集部


    記者  今西 啓助



「オカルト雑誌の編集者の方なんですね・・」


「まだ、駆け出しなんだけどね!まだまだよ~」

弘子さんが口を挟む。


「こら!うるさい!」

「えへへ・・・」

「お前だって、まだ部屋代仕送りしてもらってるんじゃないか!」

「もう!・・そのうち、稼いでやるんだから!」

「意気込みだけはあるんだからな~」

「うるさいな~もう!」

兄妹げんかなのか口論になっている今西と弘子さん・・


「うふふ・・」

隣にいた香織さんが笑っている。


「どうしたの?」

笑って見ている香織さんを不思議に思った弘子さん。


「仲が良いんだね・・」

仲が良い兄妹だと褒める香織さん。


「そ・・そうかな・・」

しっくりとこない弘子さん。





「で、どんな内容なんだ?相談したいことって・・」

本題に入ろうという今西・・


「あ・・この子の携帯電話なんだけど・・」

弘子さんが説明をする。


「携帯電話?」

「はい・・」

携帯電話を差し出す香織さん・・


「この電話なんですが・・」

何の変哲もない携帯電話に見える。


「この間、私の店で契約してもらったんだ・・」

弘子さんが説明を付け加える。

弘子さんは携帯電話販売の専門店に勤めていて、何か月か前に、香織さんが携帯電話の新規加入をしたという。


「それで、何か・・変わった事でも?」

「はい。この電話で話してると、時々、変な音が入るんです。」

「変な音?」

「人の声みたいな・・

 最初は周りの音だと思ったんです。

 でも、確かにこの携帯電話から聞こえるんです。」


電波の混線というのは、一昔前にあった・・・

携帯電話が、まだアナログの時代に、他の通話の音と混ざってしまう現象だ。


だが、デジタルになってからは、そういったトラブルは解消している。

そんな、他の通話の音を拾うという事があるのだろうか・・


「今は、そんなトラブルは無いわよ!」

弘子さんが念を押す。

では、何が原因なのだろうか・・


「ふ~ん・・時々・・ですか・・」

「はい・・」


こういった故障の様な現象は、電話会社の範ちゅうで、雑誌社の相談事ではないと思った今西・・

弘子さんをチラっと見る・・


「何度も調べたんだけど、機械や電波は全く異常が無かったのよ!」


「そっか・・普通では考えられない異常な現象だって言うんだね・・」

少し、怪しい雰囲気になってきた今西・・



「あと・・」

香織さんが付け加えた。


「え?まだ・・何かあるんですか?」

「はい。このカメラで写真を撮ると、たまに、変な物が写っていることがあるんです。」


「変な物?」

香織さんが、携帯を手に持って、操作する。

何枚かの写真を見せてもらった。


集合写真やら、友達とのスナップ写真。

香織さんの隣や後ろに、黒い人影の様なモノが写っていた。


「これは・・・!!」


一瞬、今西の目が輝く。

デジタルカメラが普及する前のフィルム式のカメラでは、こういった得体の知れないモノが写っているという、


 『心霊写真』


オカルト関係では、この心霊写真がよく話題になったのだ。

殆どは、光学系のトラブルや現像の時の事故が原因と言われた。


「二重写し」や「光の乱反射」等・・昔のカメラではよく起こったものだ。


故意やいたずらもあったと思われるが、中には、本当に「霊」が写っているという霊視による見解もあったにはあった・・


「同じ所を、他の人の携帯電話とかデジカメで撮っても、何も写ってないんです。」

説明を付け加える香織さん。


「ねえ!お兄ちゃん!こういうのって、雑誌の記事になるんじゃない?」

「この携帯電話の特性なのか??」

考え込んでいる今西。

確かに、得体の知れない音を拾ったり、変な映像が映し出される携帯電話はスクープ性が高い。


だが、やはりその筋の専門家に相談してみるのがいいだろう・・


「この映像データ、現像できるか?」

弘子さんにたずねる。


「うん・・ちょっと時間かかるけど、データもらえればやってみるよ。」


その携帯電話を預かり、陽子に相談しようと思った今西だった。




次の日・・

陽子の山の神社へ車を走らせる今西。


「今西さん!いらっしゃい!」

美奈子が出迎えている。


「お!美奈ちゃん。こんにちは!」

「この間は、ご馳走様でした。」

温泉饅頭の御礼を言う美奈子。


「いや。どういたしまして。

 あ・・おみやげがあるよ!」

土産の手提げの紙バックを見せる今西。


「わー!東京名物、ヒヨコだ~!!」

「美奈ちゃんは甘いのが好きだね・・」

「うん!甘いの大好き~!!」


「珍しいわね・・あなたから訪ねて来るなんて・・」

神社から出てきた陽子が今西に話しかける。


「うん・・ちょっと見てもらいたいモノがあってね・・」


陽子に案内され、奥の部屋に入っていく今西・・

畳の上で二人が話し出した。

昨日、妹の弘子さんと、その友達に会って話をした事を伝えている。


「これ、なんだけど・・」

陽子に手渡す今西・・


「これが、その携帯?」

「うん・・」

眺めてみるが、見た目は何の変哲もない携帯電話。

陽子は高校時代のポケベル以来、こういった電話のような物を持った事が無かった。

もっとも、ポケベルに関しても、通常の通信手段として使っていたわけでなく、霊からのメッセージを受け取るアイテムとして所持していたのだが・・


「そうね・・・何か・・

 普通と違う・・・かも・・」


その携帯電話から、異様な空気が出ている事に気づく。

部屋から障子を開けて、濡れ縁へ出る陽子・・今西も後を追う。



パンパン!

「美奈子・・ちょっと・・来てみて!」


手を叩いて合図をすると、

御堂の脇にある庭へ先ほど外で遊んでいた美奈子が走って来た。


「どうしました?お母様?」





「美奈子・・ちょっと降霊の呪文を唱えてくれる?」


「え?あ・・はい!」

何が起きているのかキョトンとしていたが、母の命に従い、降霊を行う美奈子。


 『ちょっと、降霊』・・

その会話も、内容としては普通では考えられない事が話されている。

オカルト雑誌の編集をしていて、場馴れはしているものの、降霊の儀式は今西にとって大変な事であった・・


それが、『ちょっと』という単語で済まされている事に驚きを隠せない。

いったい、何をしようというのだろう・・


美奈子が空を仰いで目をつぶる。


しばらく、ブツブツと呪文らしき言葉を唱えていたが・・


「あ・・一人・・降りてきました・・」


「どの辺りに居る?」

「私の左の脇に・・」

美奈子の左隣に、誰か・・見えない者が降りて来たという・・


「え?霊が居るのが見えるの?」

「ええ・・美奈子は私よりも、霊力が強いのよ・・

 私は霊感メガネを付けないと、見えないけど・・」

「それは・・凄い!」

陽子よりも強いという美奈子の能力に驚く今西。





ピッ



先ほどの携帯電話を作動させる陽子。

美奈子の言った通りの場所をカメラで追ってみる陽子。


「これ程までとはね・・!」

陽子が感心している。

いったい、何が写っているのだろう?

陽子の脇から覗き込む今西・・


そこに


白い着物を着た・・


人影らしきモノが映し出されていた・・


「うわーーーー!!!」

その映像を見て、思わず叫んでしまった今西。

余りにもショッキングで、携帯から逃げて、後ろの障子戸まで下がっている。


その様子に微動だにしない陽子・・


携帯越しでないと、その姿は見えない事に気づく今西・・

庭の真ん中に美奈子が立っているだけなのだ。


確かに、携帯で見ないと、見る事は出来ないようだった・・・

恐る恐る、再び陽子の持つ携帯へと近づく今西・・


美奈子の直ぐ脇に、


白装束に身を包んだ・・


山伏の恰好をした


男が立っていた・・



そう・・

男性と見て取れるくらい、鮮明な画像なのだ。

修験者・・とでも言うのだろうか・・


威厳に満ちた風格と出で立ち・・


「こ・・これは!」

携帯の画面を覗き込んだ今西が驚いている。

携帯から目をそらして、直に見ても何も居ないのだ・・・


「私が霊感メガネで見ても、ここまで鮮明には映らないわ・・」


「そんな事って・・」


「美奈子・・その方に、何かを話してもらって!」

「はい」





プルルル・・プルルル・・・


携帯電話の受信音が鳴る。


 ピッ

通話ボタンを押す陽子・・


「誰だ!ワシを呼んだのは!お前か?小娘!!」


「な・・何だ!!」

携帯電話から流れてくる音声に耳を疑った今西・・


「これは、その山伏の声よ・・」

「そ・・そんな事って・・・」


「この携帯・・霊界の波長に合っているわね・・・」

「波長?」


「この携帯電話・・霊と交信が出来て、霊視もできる・・・

 それも、あなたの様な、霊感が無い人でも・・

 霊とのコンタクトができる電話・・・


 『霊感ケータイ』


 ・・・」


「霊感ケータイ?」

「ええ・・前に、聞いたことがある・・・」

霊媒師の仲間の話だが、日々大量に製造されている携帯電話の中には、霊界の波長を感知する特殊な物が存在するという。

通常、そういった電話は故障とみなされ、廃棄されるのだった。

その割合は、何万個に一個、あるかないかと言われているが、確実にあるということは、仲間内で密かに話題となっていた。


死者とコンタクトがとれる「霊感ケータイ」・・


霊の知識に長けた人ならば、その対処も出来るが、素人が扱えば、危険な事態も起こり得る。


「この携帯電話は、その少女に持たせておくのは危険よ。」

陽子の提案通り、香織さんには携帯電話を別のモノに変えてもらい、

例の携帯電話は、今西が預かる事となった・・


それが、あの恐ろしい事件に発展するとは・・誰もが予想できなかった・・・






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