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霊感ケータイ  作者: リッキー
黄泉の国
113/450

23.決意


「そなた、その醜い娘と、未来永劫、ここで過ごすというか?」

老婆が、僕に問いかける。


「そうです!」


「現世に戻れば、そなたの家族や彼女がおるのじゃ!

 たった今でも、そなたの帰りを待っておる。

 その者たちをも、見捨て、ここに留まるというか!」


「僕は、この子に、『守る』って約束したんだ!

 『癒す』って言ったんだ!

 その言葉に、嘘偽りはない!

 僕が命を失おうと、家族と離れ離れになろうと・・


 恋人と別れることになっても、

 僕の事を信用してきた人を見捨てることはできない!」


僕の決心に一点の曇りもなかった。


僕は、ヘソから伸びている紐を手にする。

僕の肉体へとつながっている透き通った紐・・・


これが切れれば、僕は戻れなくなり、肉体は死んでしまう。





その紐を、僕は両手で握り、




力任せに、一気に引っ張った!








   ブチ---!!!




鈍い音を響かせて、紐が切れる。


まるで、運動中にアキレス腱を切ったような音が辺りに響き渡る。



「お兄ちゃん!」


「何!?・・・」









翔子ちゃんの部屋・・・


ベットに横たわる僕の体を前に、祈祷をしている彼女。

僕の体の異変に気付く。


「息が無い!!

 ヒロシくん!!何が起きたの??」


急いで、彼女が僕の上にまたがり、蘇生処置を始める。

心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す。


「いやーーー!

 ヒロシくん!!

 逝かないで!!」


必死に、僕の上で叫び続ける彼女・・・









黄泉の国


僕が翔子ちゃんに寄り添いながら、老婆と対峙している・・・


「お兄ちゃん!何で!!」


「そなた・・自分で何をしたのか分かっておるのか??」



「僕は、ここに残る!

 翔子ちゃんを、ここに残して行くくらいなら・・

 ここに残って、痛みを分かち合う!


 僕だけ幸せになろうなんて、思わない!

 ここで、翔子ちゃんの痛みを癒す!


 虫も一匹残らず取り払う!

 介護が必要なら、僕がする!


 未来永劫、僕はここで翔子ちゃんと暮らす!!

 それが・・・僕の・・・


 せめてもの・・翔子ちゃんに出来る事だ!!」


そういって、僕は翔子ちゃんを抱き寄せた・・・


「ずっと・・一緒だよ!」


「お兄ちゃん・・・」


口づけを交わす二人・・



「お兄ちゃん・・・


 嬉しい・・・」


しっかりと抱き合う僕と翔子ちゃん。












「南無・・




十一面観世音菩薩様・・・





翔子は・・・




決めました・・・」



涙が一粒・・翔子ちゃんの目からこぼれた・・・







その時・・





翔子ちゃんの体が、光り始める・・・



体に付いて居た虫が、ちりちりと消えていく。





その場に居た老婆の姿が消えていく・・



辺りに見えていた、部屋や庵が消え去り、廻りの庭も、木々も、景色すらも消えていく。








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