14.保健室で・・
僕が目覚める。
まだ薄ぼんやりした意識だ。
何があったんだっけ・・・・
そうか・・・
さっき、童子四天王が攻撃を仕掛けてきたんだ・・・
辺りを見る・・
ベットに寝かされている。
カーテンにさえぎられて、少し薄明るい部屋の中・・
保健室?
そうか・・・
彼女が追い払ってくれたんだっけ・・・
意識が遠のく中、彼女の放った念波で、童子を撃退していたのを、覚えている。
先輩を守るために、僕は・・・
僕には、守るべき技が無い・・
ああやって、自分の体で盾になるくらいしか、やりようがないんだ・・・
彼女や拓夢君、翔子ちゃんには対抗する方法があるけれど、
部長と言えど、何もできない・・
足手まといになるだけなのかな・・
こうやって、保健室まで担ぎ込まれて・・
何とも・・情けない・・・
ガサガサと布団で顔を隠す。
その音が、カーテン越しに聞こえたのか、誰かの声がする。
「あ、気が付いたみたいね・・」
保健室の先生か・・誰か他にいるのかな・・
サー・・・っとカーテンが静かに開けられる。
そちらを向くと、
保健の先生と、もう一人、女子の制服の姿・・眼鏡?
「大丈夫?」
未来先輩?
僕は、少し起き上がろうとしたが、
「う!」
背中に激痛が走る・・さっきの童子の攻撃で負傷してしまった・・
「まだ、動かない方が良いよ!」
心配そうに、声をかける未来先輩。
ベットに寝直す僕・・
深呼吸をする・・・
呼吸をすると、少し痛みがあった・・
天井を見る・・
「皆・・皆は?」
皆の事が心配になって先輩に聞いた。
「作戦会議だって!音楽室よ!」
「はあ・・・皆、無事なんですね・・・」
少し安心した。
でも、咄嗟に気づく・・
「ここは・・結界が!」
「大丈夫、望月さんが、盛り塩して行ったわ・・・」
保健室の四隅に、紙が敷かれ、盛り塩が置いてある。彼女が簡易的な結界をしていってくれたようだ。とりあえずは童子からの侵入は防げる。
ベッドの隣の椅子に腰かける先輩・・
寝ている僕に話しかけてくる。
「・・・痛い?」
「はい・・・」
しばし、沈黙が続いた。
先輩が、僕の寝ている姿を見回している。
何を言っていいのか分からない感じだった。
「僕・・霊感無いんですよ・・・」
「ええ・・・」
「技とかあって、皆を守れればいいんですげど・・・
何もできないんです・・・」
僕は、部長と言っても一番霊感が無い。
霊感ケータイは使えるけれども、技を繰り出して悪霊を退治する方法もない。
ただ、見守っている他ないのだ・・・
「あなた・・・何もできない・・・って・・・」
「はい・・みっともないですよね・・・担ぎ込まれて・・」
そのまま、天井を見る、僕・・
「そんな事・・ない・・・」
ポツリと呟いた先輩。
「え?」
気づいたら先輩に、見つめられていた・・
「あなたは・・
私を・・
守ってくれたじゃない・・・」
「あ・・あれは・・・
先輩が危なかったから・・」
それなりの言い訳をしたが、
「私は・・
あなたの・・・
悪口言ったのよ・・・」
先輩には、あの事件が起きるまで、威勢よく僕に頭が悪そうだとか、
部長に向いてないとか・・さんざん言われた。
それは、その通りだと思った。
そして、先輩をかばったのも、本当に危ないって思ったから・・
童子たちの攻撃をまともに喰らったら、大変なことになる。知らない人に危害を与えるわけにはいかない・・・
「気にしてないですよ・・
その通りなんだから・・
僕が一番、霊感無いから、皆の足手まといになってるんです・・
先輩の言う通りなんです。
部長なんて、名ばかりです・・
失格です・・」
「もう!!」
先輩が、勢いよく話し出す。
「え!?」
「そんな事ないって!言ってるでしょ!!」
怒り口調になってる先輩・・ちょっとドキっとした・・
怒った表情は意外と可愛いものだと思ってしまった。
「何で、私なんか守ったのよ!!
あなたの部活をつぶそうって・・
敵なのよ!!私は!!」
激しい口調の先輩・・
僕は、むくっと上半身を起こす・・
やはり、背中に激痛が走る・・
「う!」
思わず手を出す先輩・・
「む・・無理しないでよ!」
僕の背中に、手を添える先輩。
僕はハアハアと息が粗い。何とか声を出す・・
「悪霊を前に、敵も味方も無いですよ・・・」
「え?」
「危険なんです。あの悪霊は・・」
僕を見る眼鏡越しの先輩の目に、きらりと光るものが見えた・・
「あなた・・・」
その言葉と共に、僕の背に添えた先輩の手に、暖かいものを感じた。
背中をさすりながら、僕を優しく介抱しているような感じだった。
「ありがとう・・・」
「え?」
「私を・・守ってくれて・・・」
僕が先輩の方を向く・・
目の前に先輩の顔が近づいていた。
さっきまでの強がりだった表情は無く・・、
柔らかい・・あどけなさを感じさせる女の子っぽい表情になっている。
目が赤くなっていた・・
見つめ合う、僕と先輩・・・
かわいい・・・
彼女も可愛いけれど・・
先輩・・・
綺麗だ・・・・
「コホン!!」
保健の先生が咳払いをしている。
先輩が、急に僕から離れる・・・
「どう?少しは落ち着いた?」
「あ・・・まだ背中は痛むけど・・」
「ふ~ん・・・いったいどうすれば、そうなるの??」
「え?ああ・・机の上から・・落ちて・・・」
「机?音楽室に机なんかあった?」
「あ・・椅子・・かな・・?」
疑いの目で見られている。
「それに、悪霊って何?
他の生徒とか虐めてるんじゃないでしょうね?」
「あ・・それは・・」
なかなか良い言い訳が思いつかない。
まさか、悪霊と闘って負傷したなんて・・
信じてもらえないだろうし・・
信じても驚くだけだろうし・・・
「私がハードロックのコンサートに誘われてて迷ってたんです。
他のコンサートもあったし、どっちにしようか・・
ケガはヒロシ君が、壁に貼ってあるポスターを取ろうとしたんです。
机が無いから、椅子に乗って、私が押さえてたんですが、
バランス崩しちゃって・・・」
先輩がフォローしてくれた。
ちらっと僕の方を見る。ちょっと笑みを見せた??
「とりあえず、ケガの具合を見せてくれる?
上着とシャツ、脱いで!」
「はい」
僕が服を脱ごうとした時、先輩が顔を赤らめながら。
「あ、じゃあ私、部活があるんで、これで失礼します!」
「後は、私が見ておくわ・・
あ、雨宮先生に、後で来てもらうように頼んでて!」
「はい!」
そう言って、先輩が慌ただしく保健室を出て行った・・




