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葵奈姉妹の飛び込み純愛組曲、第六組曲、交流

作者: 西山友洋

タカマキパンにて葵奈姉妹は小湊佳那子(こみなと かなこ)と共に旭中の友達と共に楽しい一時を満喫していた。タカマキパンの娘で旭中の生徒である高牧由美子(たかまき ゆみこ)葵奈洋美(あおいな ひろみ)葵奈友美(あおいな ともみ)と楽しく会話をしている。会話には高石麗美奈(たかいし れみな)笹村由利(ささむら ゆり)渡木瑠依(わたき るい)佐紀家敬(さきいえ けい)榊野真由(さかきの まゆ)秋浦雅(あきうら みやび)中井若菜(なかい わかな)といった面々の姿があった。

由美子:「洋美と一緒に勉強、楽しいわ」

洋美:「楽しい?」

由美子:「今の私にとって洋美はアイドルで理想の同級生よ」

洋美:「私だって由美子と一緒に飛込み競技とグラドルをやれたらと思うのがあるけど」

由美子:「それだったら私、首女中に転校するのが一番かも知れないげど現実は厳しいかなぁ。ところで洋美はバク転とバク宙、前宙は出来るの?」

洋美:「マットの上だったら出来ないわけではないけど愛美と幸美みたいにコンクリートやアスファルト、硬い床の上では怖くて出来ないわ。あいつら怖いもの知らずだから」

由美子:「確か遊園地でのステージイベントのステージの上で愛美ちゃんと幸美ちゃん、バク宙と連続前宙やってたよね。友美姉さんはバク転とバク宙、前宙はどうですか?」

友美:「私も洋美と同じですよ。確か体操競技と新体操の床演技は広いマットの上でやるんですよね?」

由美子:「そうですよ。チアリーディングの演技も同じです。時たま洋美と一緒に体操競技はと思ってしまう事もあるんです。どちらかと言えば飛込み競技なんですけどね」

笹村:「由美子ったら葵奈姉妹の虜になっているのね」

真由:「ここから首女中に通うとしたら片道、一時間半から二時間は、かかるじゃん」

友美:「電車とモノレールを乗り継ぐ事になるからね」

渡木:「電車通学は時間かかるよね。8時20分までに校門をくぐるとしたら遅くとも7時前までには家を出ないと間に合わないわ」

由美子:「旭中は近いから家を出るのは8時過ぎでも十分間に合うけどね」

友美:「私は毎日、7時半までには家を出てるのよ」

麗美奈:「朝、起きる時はどうやって起きるのかな?」

洋美:「友美姉ちゃんの平手打ちで叩き起こされるよ。左頬はアザだらけよ」

笹村:「友美姉さん、恐いね」

友美:「三人の妹の管理は大変よ。特に愛美と幸美はベソカキで泣き虫だからイライラするわ」

一方、佐紀家と雅は葵奈愛美(あおいな まなみ)葵奈幸美(あおいな ゆきみ)、佳那子と会話を楽しんでいる。

佐紀家:「佳那子ちゃんは愛美ちゃん、幸美ちゃんと同じ学級、同じ部活なんですね?」

佳那子:「はい、そうです」

雅:「佳那子ちゃん、部活は水泳部飛込み競技部門なんだね。佳那子ちゃんの趣味は?」

佳那子:「水玉模様のパンツのコレクションです」

佐紀家:「水玉模様のパンツのコレクション!?今日は何色の模様なの?」

雅:「こらぁ、佐紀家!すぐ鼻先伸ばすんだから!」

佳那子:「まあまあ、押さえて。実際はパンツの上に紺ブルを履く事多いよ」

愛美:「愛美達は学校でスカートめくりをやるわ」

幸美:「幸美は愛美お姉ちゃんのスカートをめくって中を覗いてるわ」

雅:「女子校だと男性目線は、ほとんどないね」

愛美:「愛美は幸美と一緒に上級生のお姉ちゃんのスカートをめくるわ」

佐紀家:「中はどんなのが多いんですか?」

幸美:「色々よ、ショートパンツだったり、スパッツだったり、下着のパンツだったりね。首女中と首女高の購買部では下着のパンツも売られているのよ」

佐紀家:「へぇ!」

幸美:「売られているパンツは速乾性に長けているスポーツインナーやスイムインナーがほとんどよ。色は白、黒、紺、ベージュ、パステルカラーがあるの」

雅:「そおなんだ。色んなのがあるのね」

葵奈姉妹と佳那子は旭中の生徒達と談笑を楽しんで過ごした。夕方になり葵奈姉妹と佳那子は旭中の生徒達と別れ帰路につく事にした。

由美子:「友美姉さん、洋美、愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃん、今日は、有り難うございました」

友美:「こちらこそ、お邪魔しました」

洋美:「由美子、今日は、お邪魔したわ。出来る事なら一緒に体操競技、飛込み競技をやりたいものだわ」

由美子:「あっ、それと愛美ちゃんに幸美ちゃん、練習中の私語は駄目よ。でないとまたビンタされるわよ」

愛美と幸美:「はーい、由美子姉ちゃん」

佳那子:「みなさん、今日はありがとうございました」

佐紀家:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんバイバイ気をつけて」

旭中の生徒達:「バイバイ」

葵奈四姉妹と佳那子は見送りを受けながら駅へと歩く。それらの手にはタカマキパンで購入したパンが入った手提げカバンが握られている。帰りの電車の中で愛美は母、葵奈育美(あおいな いくみ)からのメールを見た。メールの内容は

『今日、愛美と幸美を目当てに訪ねてきた人がいたよ。愛美と幸美宛ての手紙を預かったわよ。年齢は歩美と同じ年頃だわ』

である。愛美は、いぶかしそうに頭をひねりながら口を開く。

愛美:「誰が来たのかな?」

幸美:「解らない、逆茂木高校の三人衆でなければ良いのだけど」

愛美:「帰ったらママに聞いてみようかな」

佳那子:「どうしたの?」

愛美:「愛美達が出かけている時に愛美達を訪ねてきた人達がいたとの事なのよ」

幸美:「逆茂木高校の三人組でなきれば良いのだけど」

佳那子:「ああ、悠真さんが目をつけられていたというのね」

愛美:「どんなのかは帰ってからになるのね」

電車を乗りモノレールに乗り換え葵奈姉妹は佳那子と別れ下車して歩きだす。佳那子は葵奈姉妹が降りた次の駅でモノレールを降りた。自宅に帰り着いた葵奈姉妹は帰宅を告げる。

葵奈姉妹:「只今」

育美:「お帰り」

愛美:「ママ、今日訪ねてきた人の手紙は?」

育美:「これよ」

愛美が育美から手紙を受けとると四姉妹は二階に上がり姉妹の部屋に入る。そして手紙は愛美が読み上げる。

『葵奈愛美さん、幸美さん、いきなりの訪問でご免なさい。僕の名前は真木地優太朗(まきぢ ゆうたろう)です。今回訪問させて頂いたのは僕の同級生三人が愛美さんと幸美さんにたずねたい事があるという事なんです。僕は葵奈姉妹の写真集を購入し愛用させてもらっています。僕の電話番号とメールアドレスを記載しておきます』

手紙の締めくくりに真木地の電話番号、メールアドレス、自宅住所が記載してある。愛美が手紙を読み終えると幸美は不安げな口調で愛美に問いかけた。

幸美:「愛美お姉ちゃん、どうする?会うつもり?」

愛美:「いきなりは、ちょっと・・・」

洋美:「そおね、いきなりは危ないわ」

友美:「電話番号が載っているなら電話かけてもいいじゃない。間違ってもすぐ会うなんては思うな」

愛美は手紙に記載してある番号に自身のスマホで電話をかける。程なくして相手につながる。

真木地:「もしもし」

愛美:「あの、真木地優太朗さんですか?」

真木地:「はい、そうです」

愛美:「私、葵奈愛美です。今日、自宅に来られて手紙をもって来られたそうですね?」

真木地:「はい、そうです」

愛美:「同級生三人がたずねたい事があるらしいと手紙にありましたけど」

真木地:「はい、その三人に、ここが葵奈姉妹の家だと教えられて来たんです」

愛美:「えっ!?教えられてきたの!?住所を見て気になったんだけど真木地さん、通っている学校はもしかして!?」

真木地:「僕の通っている学校は県立逆茂木高校なんですけど」

たちまち愛美の口調は上がずってしまう。

愛美:「え〜っ!?さっ逆茂木高校!?」

真木地:「はっはい、そうです。県立逆茂木高校なんです」

愛美:「嘘!?マジで!?」

真木地:「はい、そうですけど。どうかしましたか?」

愛美:「実は私のクラスメートで逆茂木高校の三人組に目をつけられて怖がっている人がいるんです」

真木地:「えっ!?そおなんですか?僕は逆茂木高校から近い所に住んでいるんです」

愛美:「そうなんですか、どうしたら良いのか今すぐには判断出来ないので、お姉ちゃん達と相談した上で考えます」

真木地:「解りました、今日はいきなりでごめんなさい」

愛美:「ありがとう真木地さん」

真木地:「ありがとう、ではこれにて失礼します」

愛美:「真木地さん、おやすみなさい」

電話を終えると愛美は友美、洋美、幸美に向き直る。

愛美:「逆高三人衆に、ここ知られたみたいなのよ」

幸美:「えっ!?」

洋美:「知られたって!?」

友美:「真木地さんの同級生三人が逆高三人衆なのかしら!?」

愛美:「何かそんな感じだわ」

友美:「とりあえず真木地さんの電話番号とメールアドレス、皆で共有しておこう。できたら自宅住所も」

四人は真木地の電話番号、メールアドレス、自宅住所を各々のスマホに登録する。それらを済ませたあと入浴、食事、勉強を済ませて就寝する。例によって愛美と幸美は深夜に目を覚ましトイレに足を運ぶ。用便の後、愛美と幸美は話し合う。

幸美:「愛美お姉ちゃん、逆高三人衆に、幸美達の自宅の場所、知られてしまったのかな?」

愛美:「どうかしら、真木地さんに逆高三人衆の写真をメールで送信して確認してもらったらどう?ついでに真木地さんの写真もメールで送ってもらえば良いじゃん」

幸美:「それ、いいね」

愛美:「ねぇ幸美、ちょっと良い?」

幸美:「なあに、愛美お姉ちゃん、うんぐっ!」

愛美は幸美の唇にいきなり口付けを交わす。

幸美:「愛美お姉ちゃん」

愛美:「幸美、美味しいわ、好きよ」

幸美:「幸美もそうよ」

そこへ洋美が部屋から出て来た。

洋美:「愛美、幸美、お前ら、また話し合っているのか、明日もあるぞ、早く寝ろ」

洋美に促され愛美と幸美は再び就寝する。明けて6月2日月曜日となり葵奈姉妹は、いつもののように起床し朝食を取り首女中に登校する。モノレールで佳那子と会う。

佳那子:「おはようございます」

友美:「おはよう佳那子、昨日のタカマキパン、家族の反応はどうだった?」

佳那子:「上々です」

洋美:「今日から夏服への衣替え期間が始まるね」

佳那子:「そうですね、私は白緑の半袖セーラーにしようかと思っています」

首女中に到着し中等部一年A組の教室では愛美と幸美、佳那子が牟田内悠真(むたうち ゆま)と挨拶を交わす。

愛美と幸美:「おはよう、悠真さん」

佳那子:「おはよう悠真さん、あれからは菊池先生、大水先生、池澤先生と一緒に、あちこち出掛けたんですね?」

悠真:「そうよ、咲が車のエンジンオイルを代えたいと言ってたし、主にショッピングだったけどね。あれ?愛美、幸美、どうしたの?浮かない顔して」

愛美:「悠真さん、実は愛美達の自宅住所、逆高三人衆に知られてしまったのかも知れないのよ」

悠真:「え〜っ!?マジで!?そっ、それじゃ私のせいで愛美と幸美が巻き添えに・・・」

幸美:「落ち込まないで悠真さん。愛美お姉ちゃん、真木地さんにメール送っておいてね」

愛美:「今、送ったわ」

やがて担任の池澤瑠美奈(いけざわ るみな)が教室に入りホームルームへと移行し一時間目が始まる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

放課後の旭中では新聞部の佐紀家敬は葵奈姉妹の記事の作成に腐心していた。

新聞部部員A:「佐紀家、葵奈姉妹の写真、素敵なモノばかりだな」

佐紀家:「葵奈姉妹と言っても一番の注目株は愛美と幸美の双子姉妹ですよ」

新聞部部員B:「色々とインタビューしたんだ」

佐紀家:「ええ」

新聞部部員C:「親善大使生としての件も先生達に話を進めてもらいたいけど果たして、どうなるのか」

佐紀家:「上手く進んでほしいモノですよ」

一方、旭中の体操部では由美子が笹村と葵奈姉妹の事で話に華を咲かせていた。

笹村:「ねぇ由美子、あんた本当に飛込み競技を考えているの?」

由美子:「洋美がやっているから」

笹村:「洋美が好きなんだ」

由美子:「大ファンなのよ、私」

笹村:「そおなんだ」

由美子:「由利はどう思っているの?」

笹村:「私は高い所苦手だから駄目。でも由美子は、飛込みやりたいんだね」

由美子:「洋美の次姉、友美姉さんに厳しくしごいてもらいたいと思っているの」

笹村:「洋美は三姉なんだ。友美姉さんて厳しくて恐いお姉ちゃんなのかな?」

由美子:「そうみたい。この学校のプール、首女中のプールより貧弱だと言わざるを得ないわ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

首女中で部活が終了した後、愛美と幸美は真木地からのメールを見ていた。真木地に確認してもらう為に逆高三人衆の写メールを送っていて、その返信メールを見ているのだった。

幸美:「愛美お姉ちゃん、真木地さんからの返信はどうだった?」

愛美:「送った逆高三人衆の写真、真木地さんの同級生三人と人物一致したよ」

幸美:「やっぱり逆高三人衆、真木地さんを連れて家に真木地来てたんだ」

愛美:「それと真木地さんの写真、写メールで来てるよ」

幸美:「どれどれ、逆高三人と雰囲気が違うわ」

愛美:「逆高三人衆は皆、不良ぽさが感じる」

幸美:「それに引き換え真木地さんはおとなしくて真面目そうな感じだわ」

愛美:「ねぇ幸美、真木地さんに会いたいと思う?」

幸美:「何とも言えない。勝手に行動は出来ないから友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんに相談しないといけないわ」

そこへ友美と洋美が声をかけてくる。

洋美:「愛美、幸美、早く着替えろ!」

友美:「お前ら何やっているんだ!」

下校の為に着替えを済ませ、葵奈姉妹は下校すべく校門をでる。校門の外では首女中と首女高の生徒達がいくつかのグループで談笑を楽しんでいる。校門を出て歩きだそうとした時、愛美のスマホが電話の着信音がなった。かけてきたのは真木地だった。愛美は電話に出て話す。

愛美:「もしもし真木地さんだね」

真木地:「はい、実は首女中の近くのモノレール首女大付属高前駅に来ているんです」

愛美:「えっ!?そのなの?愛美達は今、校門を出てモノレールの駅へ歩こうとした所なのよ」

真木地:「そうですか、もし、よろしければ会う時間を作ってもらえたら有難いですけど無理ですか?」

愛美:「ちょっと待ってくれる?友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、ちょっと良い?時間」

友美:「ああ、少しなら良いよ」

洋美:「長引かないようなら」

愛美:「少しなら良いよ。聞いてみたい事があるので」

葵奈四姉妹は真木地と会うべくモノレールの駅へと急ぐ。駅に着くと真木地が立っていた。真木地は逆茂木高校の制服姿であった。愛美は真木地に声をかける。

愛美:「真木地さんですね?」

真木地:「はい、首女中と首女高の全景、拝見させてもらいましたよ。良い校舎ですね。僕が通っている県立逆茂木高校よりも立派です」

愛美:「ありがとう。どこで話しましょうか?」

真木地:「この周辺はベンチは多くないし、珈琲店、ファーストフード店もないですし」

幸美:「モノレールの次の駅、『首女大アーケード前』だったら多いわ」

真木地:「寄る事多いんですか?」

幸美:「あまり寄らない方よ。寄るとしたら自宅から最寄り駅周辺の店に入る事が多いよ」

真木地:「それなら葵奈姉妹の自宅の最寄り駅周辺の店でどうでしょう?」

愛美:「良いわ、一緒にモノレールに乗りましょう」

葵奈姉妹と真木地はモノレールに乗った。モノレールの車内で葵奈姉妹は真木地に話しかける。

友美:「真木地さん、普段は何で逆茂木高校に通学しているんですか?」

真木地:「普段は徒歩です」

洋美:「逆茂木高校って共学なんですよね?」

真木地:「はい、県立ですから。女子でも共学校と女子校とでは気質と雰囲気が違うような気がします」

友美:「私達の学校は基本的に中高一貫の女子校ですよ。高等部には市立中など他の中学からの編入学者もいますよ。聞く所によると、ゆくゆくは女子初等部すなわち女子小学校の併設も検討されているそうなんですよ」

真木地:「そおなんですか。僕の中学時代の同級生女子の中には首女高へ入学した人もいます」

愛美:「そおなんだね、真木地さんは彼女いますか?」

真木地:「いませんけど」

幸美:「それなら幸美達が所属している水泳部飛込み競技部門、競泳部門のお姉ちゃん達はどうですか?」

真木地:「きっかけ作りが出来れば良いのですけど」

幸美:「きっかけ作り?」

真木地:「首女中と首女高の水泳部の人達ど出会う事が出来るかなんです。基本的には僕、葵奈姉妹一筋派なんですよ。写真集、愛用させてもらっています」

友美:「そおなんですね。ありがとう」

話し合っているうちにモノレールは葵奈姉妹の自宅の最寄り駅に到着し四姉妹と真木地は下車する。改札口を出て五人は近くのファーストフード店に入って会話を再開する。

真木地:「あの聞いてみたい事って例の三人の同級生ですね?」

愛美:「そうなんですよ」

愛美はスマホに保存している逆高三人衆の写真を真木地に見せる。

真木地:「その三人、僕の同級生三人です。その三人に連れられて昨日、愛美さん達の自宅によさせてもらったんです」

幸美:「やっぱり・・・」

友美:「私達、その三人の事を便宜上、逆高三人衆と呼んでいるんです」

真木地:「そおなんですか?」

洋美:「ええ、その三人、愛美と幸美に目をつけてるみたいなので、目的は何なのかが気になるんですよ」

愛美:「最初は愛美と幸美のクラスメートが最初なんですよ」

幸美:「真木地さん、その三人はどんな人物でしょうか?気になります」

真木地:「その三人、僕の同級生三人は、逆高ではちょいワルタイプと言った方が言いやすいと思います」

友美:「ちょいワルタイプ?」

洋美:「友美姉ちゃん、ちょいワルだと何か連想しない?」

友美:「そおね、小6の時の同級生にも、それに近いのがいたわ。加代をいじめていた男子をね。私、加代がいじめられて泣いていた時、いじめていた男子に鉄拳と平手打ちを食らわしてたわ」

洋美:「そおだったね、加代ねぇ、どうしてるかな?」

友美:「何とも言えないわ。それで真木地さん、その三人の同級生の評判はどうなのか解りませんか?」

真木地:「そうですね、女子の評判は、どちらかと言えば良い方ではないといった感じですね、僕が見た限りでは」

友美:「そおなんですか」

愛美:「逆高に目をつけられている愛美と幸美のクラスメートの家は逆高からさほど遠くはないんですよ」

真木地:「そのクラスメートの名前は何と言うのでしょうか?気になるのですが」

愛美:「牟田内悠真と言うんです。悠真さん、と呼んでます」

真木地:「牟田内さんなんですね。どうして目をつけられたのかは僕自身にも計りかねますが恐らく、たかった上、無理矢理おごらせるのが目当てじゃないかと思います。三人は女子のみならず男子でも評判は芳しくないんですよ」

幸美:「そおなんだ。逆高三人衆って懐が暖かいと見たら老弱男女関係無しにたかろうとするんだ」

愛美:「恐らく悠真さんが電動三輪自転車に乗っているのを見て懐が暖かいと判断したみたい」

真木地:「牟田内さんの愛車である電動三輪自転車って高いのでしょうか?」

愛美:「詳しい事は聞いてないけど高いと思う。特注品となればもっと高いかも」

真木地:「牟田さんは普通の自転車は乗れないんでしょうか?」

愛美:「乗れないんですよ。理由有りで」

真木地:「理由有り、と言いますと?」

友美:「ニュースでやっていたから解ると思いますけど、実は悠真さん、今から12年前に私達が通っている首女中に入学したんですけど入学して短時日のうちに誘拐され12年もの間、監禁生活を強いられていたんですよ」

真木地:「12年もですか!?確かにニュースでもやっていたし新聞にも載ってましたね。そうだとしたら12歳の時に誘拐され12年も監禁されていたとしたら24歳ということになってしまうんじゃないですか!?」

友美:「そうなんですよ。嘘ではありません。私の三人の妹、洋美、愛美、幸美が救出に加担したんですよ」

真木地:「えっ!そおなんですか?あの、どういった経緯で救出に加担したんですか?」

友美:「その事は洋美に話させるわ。洋美、真木地さんに話してあげろ」

洋美:「わかったわ、友美姉ちゃん。愛美と幸美が私と友美姉ちゃんに無断で、ある男性と交際したの。それで私が愛美と幸美に『私も入れろ』と言って三人で友美姉ちゃんに内緒で、その男性と付き合う事にしたんですよ」

真木地:「そうですか、その後の進展はどうなったのですか?」

洋美:「その男性にレンタカーで車を出してもらって四人でスイーツバイキングに行ったんです。バイキングでたらふく食べた後、車を流してもらって、ある所で休憩している時に悠真さんがフラフラとしたぎこちない足どりで歩いているのを見て救出を決めたんですよ」

真木地:「どうして救出と決めたんですか?何か決め手となったものはあったんですか?」

洋美:「決め手は四つだったんです。一つ目は今言ったようにフラフラとした足どりだった事、かなり体が脆弱化していたのではないかと思うものがありました。二つ目は履き物の類いを一切履かず裸足だった事、おそらく早く逃げようとあわてていたか、犯人に履き物の類は没収されていたかだと思います。三つ目は長い間お風呂に入ってない為か髪の毛が長く伸びきっていて体臭が酷かった事、おそらく入らせてもらえなかったかと思います。四つ目は頻りに『助けて下さい』と言った言動を何回も繰り返していた事だったのよ。ちなみにレンタカーを出してもらった男性も私達の写真集を購入し愛用されてる、お客さんの一人なんです」

真木地:「洋美さんって洞察力が凄いですね。流石は首都女子大学附属女子中ですね。それで、その後は?」

洋美:「四人で悠真さんをレンタカーの車に乗せて交番へ走り常駐していた警察官に事情を話したの」

友美:「警察に悠真さんを引渡して保護を要請したのよ。その後、悠真さんは救急車で病院へ搬送され治療を受けたのよ」

真木地:「そうだったんですか!?」

洋美:「そうなんですよ。そういう経緯があったので悠真さんは愛美と幸美のクラスである中等部一年A組で勉強する事になったんですよ、現役の生徒と一緒に12年遅れで。悠真さんを監禁してた犯人は未成年者誘拐容疑で逮捕され精神鑑定にまわされたらしいわ」

真木地:「そうなんですか、12年も監禁されていたなんて信じられないです。想像し難いです」

友美:「監禁生活の影響で悠真さん、男性不信に落ちいって精神のみならず運動能力にも支障をきたしているので普通の自転車に乗る事は出来ず電動三輪自転車に乗っているんです」

真木地:「成る程・・・電動三輪自転車が買えたのは?」

愛美:「どれぐらいかは解らないけど犯罪被害者見舞金が関係してると思うのよ」

真木地:「やっぱり犯罪被害者見舞金なんですね、それを狙ってたかろうとするなんて憤りを禁じ得ません」

友美:「私達だって真木地さん以上に憤りを禁じ得ないですよ。真木地さんの学級と学校で悠真さんみたいな人はいませんよね?」

真木地:「いないですよ。12年遅れなんて留年12回と同じじゃないでしょうか?もし仮にいたとしたら特別教室になると思います」

ひときり話し合った後、葵奈四姉妹は真木地と別れ帰宅する事にした。真木地はモノレールの改札口で四姉妹に別れを告げる。

真木地:「友美さん、洋美さん、愛美さん、幸美さん、お時間ありがとう」

友美:「いえ、どういたしまして。真木地さんの方こそ、お時間ありがとう」

洋美:「真木地さん、気をつけて帰って下さいね」

愛美と幸美:「真木地さん、お気をつけて」

真木地はモノレールに乗るべくホームへ上がるエスカレーターに乗った。真木地の姿が見えなくなるのをまって四姉妹は葵奈家の自宅へと歩きだす。歩いている最中に友美が洋美に話しかける。

友美:「洋美、今度の日曜日、悠斗さんに頼んでレンタカーを出してもらう事できるかな?」

洋美:「レンタカーを!どうしてなの?」

友美:「さっき真木地さんとの会話を聞いていたら私もスイーツバイキングに連れてって欲しくなったのよ」

洋美:「スイーツバイキングを?」

友美:「そう、行程は悠真さんを救出した時と同じで」

洋美:「確か、その日は4月27日だったわ。悠真さんを救出して1ヶ月以上はたつわ。その時と同じ行程なのね、友美姉ちゃん、悠斗さんと二人で行きたいと思っているの?できたら私と愛美、幸美も誘って欲しいわよ」

友美:「勿論、誘うつもりよ。仮に悠斗さんと付き合うとしても二人きりは不安があるわ」

洋美:「じゃあ悠斗さんと私達、四姉妹の5人で行く?それか他に誘いたい人いる?」

友美:「スイーツバイキングのついでに洋美が愛美と幸美、悠斗さんと一緒に悠真さんを救出した現場を見てみたいのがあるのよ。悠真さんはどうかしら?スイーツバイキングは?」

洋美:「スイーツバイキングだけなら良いかも知れないけど救出現場を見るとなったら無理じゃん。トラウマを抱えてそうだし」

友美:「じゃあ佳那子はどうかな?悠斗さんには七人乗りをレンタルしてもらおうかしら?」

洋美:「そおね、愛美、悠斗さんに聞ける?」

愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、話は聞こえていたから聞いていたよ。今度の日曜日、6月8日の事だよね?」

友美:「そおよ。4月27日と同じ行程でスイーツバイキングに行きたいのよ、悠斗さんと一緒に」

幸美:「スイーツバイキングの話なんだね?幸美、楽しみ」

愛美:「じゃあ悠斗さんに電車するわ」

愛美は三矢悠斗(みつや ゆうと)の携帯に電話をかける。やや間があって悠斗が出て愛美は悠斗と会話をする。

愛美:「もしもし、悠お兄ちゃん久しぶり」

悠斗:「愛美、久しぶり。どうしたの?」

愛美:「今度の日曜日、暇だったら7人乗りのレンタカー借りて欲しいんだけど」

悠斗:「もしかしてスイーツバイキングに連れてって欲しいの?」

愛美:「ピンポーン、当たり悠お兄ちゃん。友美姉ちゃんが4月27日と同じ行程でスイーツバイキングに行きたいと言っているのよ」

悠斗:「牟田内さんを救出した時と同じ行程だよね。確かその時は洋美と愛美、幸美の四人で牟田内さんを救出したんだよね。了解したよ。当日の待ち合わせは、あの日と同じで良い?」

愛美:「いいよ。友美姉ちゃんったら、お前らだけで美味しい思いをして、とヤキモチやいているのよ」

悠斗:「あははっ、そおか。で、その牟田内さんとニューフェイスの小湊さんは元気にしてる?」

愛美:「悠真さんは今、大丈夫。毎日放課後、水泳部競泳部門の部員の手助けを受けながら水中ウォーキングを頑張っているよ。佳那子も頑張っているよ。毎日、昼休みにバク転、バク宙、前宙の特訓を佳那子に課しているよ」

悠斗:「そおなんだ、付き添っているんだね」

愛美:「そおよ、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美が補助しているのよ」

悠斗:「体育館のマットの上でやっているの?」

愛美:「違うの、コンクリートやアスファルトの上でやっているのよ」

悠斗:「それは危ないじゃん、それで頭を打ったら頭蓋骨陥没で脳に障害が残る危険があるよ。そうなったらグラドル&飛込み競技どころでなくなるよ。運悪ければ生死をさまよいかねないよ」

愛美:「佳那子は、ちょっとでも早く出来るようになりたいからコンクリートの上でやりたいと言っているのよ。出来ないのなら死んだ方がマシだと言っているのよ」

悠斗:「命懸けだなぁ、くれぐれも小湊さんには無理をしないように、急いては事を仕損じるよ、と伝えてね」

愛美:「うん、伝えておくわ、6月8日の午前9時半にあの駅で」

悠斗:「楽しみにしてるよ、その次の日曜日6月15日は撮影だよね」

愛美:「悠お兄ちゃん、良かったら佳那子にも誘いをかけて良い?」

悠斗:「良いよ。何だったら牟田内さんにも声をかけてみても良いよ」

愛美:「ありがとう悠お兄ちゃん。おやすみなさい」

悠斗との会話を終え葵奈四姉妹は自宅へと帰宅する。入浴、晩御飯、勉強を済ませ四姉妹は就寝する。夜中に愛美と幸美は目を覚ましトイレに足を運ぶ。幸美が愛美に話し掛ける。

幸美:「愛美お姉ちゃん」

愛美:「幸美、どうしたの?」

幸美:「用便すんだら夜空を見ながらしゃべらない?」

愛美:「良いね、幸美の目を見るのもいいけど夜の星空も良いね」

幸美:「愛美お姉ちゃん、幸美の目、どう思うの?」

愛美:「宝石のようなモノかな、とにかく用便を済ませよう」

愛美と幸美は用便を済ませ夜空を見るべく玄関へ歩こうとするが部屋から出て来た友美と洋美に問いただされてしまう。

友美:「愛美、幸美、お前ら何処へ行く気だ?」

洋美:「夜中だぞ、部屋にもどれ」

愛美:「幸美と一緒に夜空を見ながらしゃべりたいの」

幸美:「幸美も大好きな愛美お姉ちゃんと一緒に夜空を見ながらしゃべりたいのよ」

友美:「愛美、幸美、答えろ。私に叩かれるのと洋美に叩かれるのと、どっちがいいのだ?」

愛美:「そんなの答えたくない。菊池先生に叩かれる方が好き」

幸美:「幸美も同じ。菊池先生と愛美お姉ちゃんに叩かれる方が好き」

友美:「全く何を考えているんだ、まぁ良いわ。愛美、これからは幸美よりも早く起きろ。起きたら幸美を平手打ちで叩き起こせ」

愛美:「えっ・・・・」

幸美:「えっ?」

洋美:「どうした!返事は?返事せんか!!」

洋美の激しい口調に愛美は泣きだす。

愛美:「うっ、うっ、うぇ〜ん。幸美を叩け、なんて、いっ、いゃ〜。たった一人の大好きな妹の幸美を叩くなんて、そっ、そんなのいゃ〜」

幸美:「愛美お姉ちゃん、良いのよ。幸美、愛美お姉ちゃんに叩かれるのなら何発でも何十発でも何億発でも良いよ。遠慮は無用よ。お願いだから泣くのは止めて。元気出して」

愛美:「ゆっ、幸美・・・・」

幸美:「これから毎朝、起きる時は大好きな愛美お姉ちゃんの平手打ちを楽しみにするつもりよ」

愛美:「幸美、良いの??」

幸美:「良いよ愛美お姉ちゃん。幸美の事が好きなら思いっきり叩いて欲しいのよ」

愛美:「ありがとう幸美、それなら幸美も愛美を叩いて良いよ」

幸美:「ありがとう。でも幸美は愛美お姉ちゃんのお乳を飲みたい」

愛美:「もう、幸美ったら。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美と幸美に平手打ち食らわしたいのならお乳吸って飲ませてよ」

洋美:「友美姉ちゃん、吸わせてあげたら。散々、私と愛美、幸美に平手打ちしてたから吸わせてあげたって良いじゃん」

友美:「それなら菊池先生に吸わせてと言え。気持ちよく平手打ちしてくれるから。明日もあるから早く寝ろ」

こうして四姉妹は部屋のベッドで再び就寝する。愛美と幸美は同じベッドで抱きしめあって寝る。その様子を見ながら友美は思案に暮れながら眠りに入る。

(愛美、幸美、いつになったら乳離れするのかしら?母乳よりも姉乳が好きなのかしら?)

愛美と幸美はお互いの目を見つめ合いながら、ささやき合う。

愛美:「幸美の目、うっとりするぐらい美しいわ。ネイビークリスタルのように」

幸美:「そう言われると愛美お姉ちゃんの目も美しい。おやすみ、幸美の大好きな愛美お姉ちゃん」

愛美:「おやすみ、幸美」

そして明けて6月3日火曜日の朝、愛美と幸美は同時に目を覚ます。友美と洋美は、まだ眠りから覚めていない。

愛美:「幸美、おはよう。同時に目を覚ましたね」

幸美:「そおね、おはよう、幸美の大好きな愛美お姉ちゃん」

愛美:「幸美にそう言われると愛美うれしい。幸美を益々好きになるわ」

幸美:「愛美お姉ちゃん、今朝の平手打ちを・・・・」

その時、友美と洋美が目を覚ます。

友美:「ふぁ〜あっ、愛美、幸美、お前ら起きてたのか?」

洋美:「今朝は起きれたのね」

愛美:「友美姉ちゃん、お乳飲ませてよ」

幸美:「幸美も飲みたい」

洋美:「友美姉ちゃん、吸わせてあげたら良いじゃん。今まで友美姉ちゃんの平手打ちに耐えてきたんだから」

友美:「困ったわ、仕方ないわね」

友美は渋々、愛美と幸美に乳を飲ませる。

(あ〜あっ、やっぱりお姉ちゃん辞めたい、どうすれば・・・)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

首女中での昼休みの昼食後、佳那子は校庭にて友美、洋美、愛美、幸美の補助を受けながらバク転の練習に励んでいた。

友美:「佳那子、感覚はつかめた?」

佳那子:「何回もやっていたら自然についてくるんじゃないかと思います」

洋美:「ついて来たら補助なしでやれると思うわ」

愛美:「佳那子がバク宙と前宙が出来るようになったら愛美嬉しいわ」

幸美:「幸美も同感。佳那子、バク転が出来るようになったらバク宙と前宙をマスターして欲しいわ」

佳那子が葵祭四姉妹からバク転の特訓を受けるのを悠真は中等部3年A組の担任の菊池由利(きくいけ ゆり)、中等部2年B組の担任の大水咲(おおみず さき)と一緒に校舎の片隅のベンチから眺めていた。菊池と大水は悠真の為に首女中と首女高の制服を着用している。

悠真:「佳那子、頑張っているんだよね。私もっと頑張らなきゃだめかしら」

菊池:「悠真、歩くのはどう?」

悠真:「少しずつ疲れを感じにくくなってきたみたい」

大水:「あれから1ヶ月余りになるよね」

悠真:「水中ウォーキングの効果があるみたい」

菊池:「競泳部門の部員達は温かく優しく接しているからだと思うわ」

悠真:「優しく接してくれるから部活は水泳部にした方が良いような気がする。でもタイムには自信がないから迷うし悩むわ」

大水:「間違っても陸上部は嫌よね?」

悠真:「私は走って飛ぶのは駄目だし、入部したら車での送迎運転手をやらされそうだから」

大水:「私はそれを許さないつもりよ。まして悠真は運転免許は一切無しだから。それどころか部員に人力車で悠真を送迎させるかもしれないわ」

菊池:「人力車で送迎か、そう言えば京都の嵐山では人力車での観光サービスやっているのがあるみたいだわ。葵祭四姉妹も言っていたから」

悠真:「もし、私が水泳部に入部したら他の部員の手足まといかしら?大会に出るのは・・・・」

菊池:「悩んでも無駄よ、悠真は今までどおり水中ウォーキングに励めばいいわ」

悠真:「ねぇ由利、もし私が水泳部に入部するとしたら競泳部門と飛込み競技部門、どっちが良いかな?」

菊池:「今は悩まなくても良いよ。25㍍泳げるようになれば良いから」

大水:「でも考えてみたら話変えて悪いけど私、成人式は由利とヤマキの三人で行ったよね」

悠真:「私は監禁生活の真っ只中だったから行けてないわ。やっぱり私、由利、咲と一緒に成人式に行きたい」

菊池:「やっぱり悠真は私、咲と一緒に成人式に行きたいんだ・・・」

大水:「じゃあ来年の1月の成人式で考えよう。まだ日にちはたっぷりあるから。何だか私も悠真と一緒に振り袖、着たくなってきた」

やがて昼休み終了のチャイムが鳴り響き、菊池と大水は職員室へ、悠真は一年A組へと歩きだした。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そして放課後、葵祭四姉妹を始めとする水泳部飛込み競技部門の部員と悠真はプールで練習に励んでいた。悠真は、いつも通り競泳部門の部員に手ほどきを受けながら水中ウォーキングに励んでいる。

(悠華お姉ちゃん・・・・・)

悠真は死んだ姉を思いながらウォーキングに励むが表情に露にせずにはいられなかった。そんな悠真に競泳部門の部員達が声をかける。

競泳部門部員A:「悠真さん、時々顔つきが暗くなるみたいだけど」

競泳部門部員B:「まだ誘拐による監禁生活の後遺症が抜けてないのかしら?」

悠真:「お姉ちゃん・・・・・」

競泳部門部員C:「えっ!?どうして、お姉ちゃんなの?悠真さん」

悠真:「お姉ちゃん・・・・・」

そこへ菊池が声をかけてくる。

菊池:「悠真、ちゃんと練習しているの!?」

競泳部門部員A:「菊池先生、最近、悠真さん『お姉ちゃん・・・』と呟く事が多いですよ。何か悲しげな顔つきです」

競泳部門部員B:「どうしてですか?菊池先生、知りませんか?」

菊池:「悠真には、お姉ちゃんがいたけど悠真が産まれる前に交通事故で死んでしまったのよ」

競泳部門部員一同:「え〜っ!?」

菊池:「そうよ、みんなには悠真に対しては、優しく接してあげて欲しいのよ。勿論、気配りは大事なのは言うまでもないわ」

競泳部門部員C:「悠真さん、今月の30日が誕生日でしたよね、何が欲しいと思っているんですか?」

悠真:「お姉ちゃんが欲しい」

競泳部門部員A:「それって誕生日プレゼントに、お姉ちゃんを望んでいるんですか?」

悠真:「そおよ。お姉ちゃんが三、四人もいる愛美と幸美がうらやましい」

競泳部門部員B:「私達、水泳部ではどうにもならないですよ、こればかりは、どうしても」

競泳部門部員C:「悠真さんのお姉ちゃん、交通事故で死んだんだ、可哀想に・・・・」

競泳部門部員A:「なんだか運転免許、取るのが嫌になって来そうだわ」

菊池:「確か葵奈姉妹には小学五年生の弟さんがいるけど」

競泳部門部員B:「悠真さんに愛美ちゃんと幸美ちゃんの弟さんを婚約者として誕生日プレゼントにするのはどうかしら?」

菊池:「それは無理だわ。小湊さんと付き合わせるようだから」

競泳部門部員C:「それじゃ、どうしたら良いのかしら?小湊さんの弟さんはどうでしょう?二人ほどいるようなので」

菊池:「小湊さんの弟さんも無理かもしれないわ。マッチングアプリでお姉ちゃんがいる彼氏を探させるのが一番だと思うんだけど悠真はどう思うか」

そして部活終了後、葵奈四姉妹は佳那子と共に悠真に声をかける。内容は来る6月8日の事である。

洋美:「悠真さん、佳那子、今度6月8日の日曜日は予定ない?」

佳那子:「今度の6月8日の日曜日ですか?小学校時代の同級生が久々に会いたいと言ってきているんです。こないだの写真集の事で話を聞きたいと言ってきているんです」

悠真:「私も予定はあるんですわ。井之上さんと一緒に遠藤さんの家に行く予定なんです」

友美:「佳那子、友達にも写真集の事、話しているんだ」

佳那子:「はい。どんな感じで写っているのか気になると言ってます」

悠真:「私は井之上さんと遠藤さんから飛込みの特訓を受けるつもりですわ」

友美:「そうですか、頑張って下さいね。実は今度の日曜日、悠斗さんに7人乗りのレンタカーを出してもらってスイーツバイキングに行く予定なんです。四姉妹で」

愛美:「佳那子、昼休みの特訓、もっと厳しくしごかない駄目だわ」

悠真:「スイーツバイキングよね。それから色々見て廻るの?」

友美:「はい、妹達が悠真さんの救出に遭遇した所を見てみたくなったので」

悠真:「それだったら私、パスするわ。思い出したくないので」

洋美:「やっぱり悠真さんトラウマを抱えているんだ、わかりましたわ。井之上先輩、遠藤先輩と一緒に楽しんで下さいね」

悠真:「ごめんね、友美、洋美、愛美、幸美」

友美:「佳那子も小学校時代の同級生と楽しんでね。出来る事なら、かっこよくバク転を見せてあげてね」

佳那子:「バク転は何となく感覚が掴めてきたような気がします。その次はロンバクかバク宙でしょうか?」

愛美:「それならマットじゃない所でバク転が出来るようにならないと」

幸美:「瞬発力とジャンプ力を今よりも高めないとバク宙、前宙は出来ないと思うよ」

佳那子:「だとしたらロンバクでしょうか?プールサイドでロンバクの練習と行きたいです」

悠真:「佳那子、それだと由利に怒られるわよ」

洋美:「そうなったら平手打ちは免れないわ」

佳那子:「そうかも知れませんね、一番良いのはマットの上での練習ですよね。でも私は平手打ち怖くないです」

悠真:「佳那子、勇気と根性が身についているね」

この時、菊池が悠真に声をかける。

菊池:「悠真、行くわよ」

悠真:「由利、今行くわ。友美、洋美、愛美、幸美、また明日」

菊池に促され悠真は菊池の元へ急ぎ、井之上家の送迎自家用車に乗る。井之上真美奈(いのうえ まみな)と菊池も乗り込み車は発進し走り出す。そのテールランプが見えなくなると葵奈四姉妹と佳那子はモノレール首女大付属校前駅へと歩く。

井之上家の自家用送迎車の中では真美奈、悠真、菊池が談笑を楽しんでいた。

真美奈:「悠真さん、友美、洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんと談笑されてましたね」

悠真:「ええ、佳那子はバク転の練習に精を出しているから私も頑張らないと・・・・」

菊池:「悠真、負けてはいられないわよ。水中ウォーキングを」

真美奈:「悠真さん、足腰の調子はどうですか?」

悠真:「そおね、ぼちぼちですわ井之上さん。まだ走るのは無理がありますわ。それよりも、お姉ちゃんが欲しい・・・」

菊池:「やっぱり悠真、お姉ちゃんが欲しいのね」

真美奈:「どうして、お姉ちゃんですか?悠真さん」

悠真:「本当は、私にお姉ちゃんがいたんだけど私が産まれる前に交通事故で死んでしまったのよ。それだから車の購入と運転免許の取得は嫌なの」

真美奈:「えっ!そおなんですか!?私、初耳ですわ」

悠真:「何だか水泳部の全部員が、お姉ちゃんとして映る事が多くなってきたのよ。井之上さん、遠藤さん、宇都さん、友美、洋美、愛美、幸美、佳那子までもが」

真美奈:「そおなんですか・・・・」

悠真:「それで、おこがましいですけど私が井之上さんの事、『真美奈姉さん』か『真美奈姉ちゃん』と呼ぶのは駄目ですか?」

菊池:「さん付けか、ちゃん付けのどちらかだね」

真美奈:「う〜ん、これは何と言ったら良いのかしら?」

悠真:「やっぱり・・・・駄目かしら」

菊池:「悠真、どうしても、お姉ちゃんが欲しいのね」

悠真:「そおなの。愛美と幸美が羨ましい。井之上さんには弟はいませんか?いたら私に・・・・」

真美奈:「残念ですが、いないんです。私は一人っ子です」

悠真:「井之上さん、私を妹にしてくれませんか?今月の30日の誕生日プレゼントはそれでお願いします」

真美奈:「悠真さん、ごめんなさい。それは無理難題な相談ですわ」

菊池:「井之上さん、責めて呼び方だけでも受け入れてあげたらどう?」

真美奈:「解りました・・・・・」

悠真:「それじゃ真美奈姉ちゃんで呼ばせて下さい」

話し合っているうちに車は悠真の自宅に到着した。車から下車すると悠真は菊池と真美奈に挨拶する。

悠真:「真美奈姉ちゃん、由利、また明日」

真美奈:「悠真さん、また明日」

菊池:「悠真、また明日」

運転手:「お気をつけて、悠真お嬢様」

悠真:「ありがとうございました。お気をつけて」

車は方向転換して走り出す。そのテールランプが見えなくなると悠真は自宅へと入る。

悠真:「ただいま」

悠真の母親:「おかえり悠真。今日は何か変わった事なかった?」

悠真:「そおね、来年の成人式の事なんだけど」

悠真の母親:「成人式がどうしたの?今月の30日で25歳じゃないの」

悠真:「やっぱり私、どうしても由利、咲と一緒に成人式に行きたい。振り袖ある?」

悠真の母親:「押入の桐だんすにしまったわ。元々、悠真が帰って来た時のために買って用意したものよ。本当は悠華にも着てもらいたかったわ」

悠真:「おっ、お姉ちゃん・・・・」

悠真の母親:「悠真、お姉ちゃんが恋しいのね」

悠真:「うん、お姉ちゃんに会いたい。生き返らせたら良いけど」

悠真の母親:「無理よ」

悠真:「新しく、お姉ちゃんを産み直すのは・・・・」

悠真の母親:「産んだとしても弟か妹のいずれかになるわ。悠真が、お姉ちゃんになってしまうわ。悲しんでもどうにもならないから晩御飯の支度をしましょ」

悠真は母親と共に台所に入って晩御飯の支度に入る。支度ができた頃に父親が帰宅する。

悠真の父親:「ただいま」

悠真と母親:「おかえり」

悠真の父親:「悠真、どうだい?学校生活は」

悠真:「私、お姉ちゃんが欲しい。お姉ちゃんに会いたい」

悠真の父親:「悠真、悠華が恋しいんだ・・・・」

悠真の母親:「間違っても新たに子供は・・・・」

悠真の父親:「養子縁組で養女になってくれる26歳以上の女性を募集するのはどう?それか実姉がいる男性を結婚相手としてを探すかだけど」

悠真の母親:「悠真は結婚に対して積極的にはなりにくいかも知れないわ」

悠真:「私、結婚は嫌」

悠真の父親:「じゃあ養子縁組しかないな」

悠真の母親:「そおね、由利ちゃんと咲ちゃんに相談するのも手だわ」

悠真:「その方が良い」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

モノレールの車内では友美、洋美、愛美、幸美、佳那子が談笑を楽しんでいた。そこへ宇都香織(うとう かおり)工藤美千代(くどう みちよ)が加わる。

香織:「佳那子ちゃん、最近昼休みに友美と洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃんからバク転の特訓を受ける事が多いね」

美千代:「特訓はどう?楽しい?厳しい?」

佳那子:「厳しくて涙が出ます。でも自然に感覚が嫌でもついてきそうです」

友美:「佳那子にはグラドル葵奈姉妹の一員として頑張って欲しいものがあるのよ」

佳那子:「今はまだ補助無しでは出来ないのよ。10メートルからの高飛込みは101Aしか出来ないの」

洋美:「佳那子には頑張って欲しいものがあるから、つい厳しくなってしまうの。弟の勝幸からは厳しくし過ぎて泣かさないで、と言われる事あるわ」

美千代:「洋美の弟さんは小学五年生だよね。中学はどうするのかな?」

洋美:「わからないけど1番上のお姉ちゃんが通っていた中学になるかも」

愛美:「市立榊台中ね、歩美姉ちゃんが通っていたね」

幸美:「そう言えば七島の加代姉ちゃんが通っているはずだよね」

友美:「加代・・・」

幸美の言葉に友美は顔色を曇らせる。しばらくすると佳那子がモノレールを下車し次の駅『榊台』で葵奈四姉妹は下車する。駅の改札口を出てから友美は加代の事で思案に暮れだす。

(加代、どうしているのかしら?出来れば榊台中から首女中に転校してくれたら有難いのだけど)

友美は小学六年生の時のクラスメート七島加代(ななしま かよ)の事を気にかけ続けているのだった。そして口を切り出すように話す。

友美:「洋美、愛美、幸美、少し加代の自宅を見てみないか?」

洋美:「良いよ友美姉ちゃん

愛美:「良いよ」

幸美:「良いよ、加代姉ちゃんの自宅を見るのは久々だわ」

四人は葵奈家の自宅を通り過ぎ加代の自宅である長屋の住宅へと足を運ぶ。加代の自宅である長屋は建築年数が長い為なのか、かなり古びた雰囲気を漂わせている。『七島』と書かれた表札に近づいて見る。ポストの中は封書の郵便物やポスティングのチラシ等がぎっしりと入っていて長期間、留守になっている事を思わせる。当然、扉は施錠されていて開かないし、叩いても応答は無い。そこへ近所の中年女性が葵奈四姉妹に声をかけてきた。

中年女性:「あら、あなた達、七島さんを訪ねてきたのね」

友美:「そうなんです。加代を訪ねるつもりで」

中年女性:「ああ、七島さんちの加代ちゃんだね?残念だけど今は消息がわからないのよ」

友美:「えっ!消息不明なんですか!?」

中年女性:「ええ、そうなのよ。加代ちゃん、お兄ちゃんが亡くなって、その後には、お母さんも亡くなって、お父さんは失意のうちに逐電してしまって、加代ちゃんは親戚の家々を転々を余儀なくされてるらしいのよ」

友美:「じゃあ榊台中には通っていないのかしら?」

中年女性:「そうなるかしらね、私は何とも言えないけど、あら、あなた、もしかして加代ちゃんの友達なの!?」

友美:「はい、私は加代の小学六年生の時のクラスメートなんです」

中年女性:「そぉなの、で名前は!?」

友美:「葵奈ともうします」

中年女性:「もし加代ちゃんと会ったら伝えておくわ」

友美:「そうですか、解りました。有り難うございました」

中年女性と別れ四姉妹は自宅へと歩きだす。帰宅後、いつものと同じように入浴、食事、勉強を済ませ就寝するが友美は目を覚ましてしまう。友美は窓の外を眺めた。そうしているうちに洋美、愛美、幸美までも目を覚ます。

洋美:「友美姉ちゃん、眠れないの?」

友美:「何か眠れないから目を覚ましてしまったのよ。加代の事が気がかりだから」

愛美:「加代姉ちゃんの事気になるのね」

幸美:「幸美だって加代姉ちゃんの事気になる」

洋美:「手掛かりが掴めないからどうにもならないわ。明日もあるから早く寝ようよ」

四姉妹は再び就寝する。明けて6月4日水曜日となった。普段通り四姉妹は首女中へ登校する。昼休みに四姉妹は佳那子のバク転の特訓に精をだす。この日は美千代と洋美のクラスメート津軽礼子(つがる れいこ)も補助に付き添う。

礼子:「佳那子ちゃん、最近、バク転に精を出してるね」

佳那子:「はい、でもバク宙と前宙はまだまだです」

美千代:「佳那子ちゃんは小学校時代はどうだったの?」

佳那子:「今の悠真さんほどではないですけど運動は全く駄目でした」

友美:「入部した当初は飛込みどころか泳ぐ事もままならなかったね」

洋美:「それにしても誘拐監禁事件に会う前の悠真さんって、どんな感じだったのかなぁ?」

愛美:「菊池先生と大水先生だったら知っていると思うよ」

幸美:「多分、今とは違う感じのような気がする」

友美:「佳那子、練習を続けるわよ」

佳那子は葵奈姉妹と美千代、礼子の補助を受けながらバク転の練習を続ける。そこへ菊池と大水、悠真が通りかかった。

悠真:「佳那子、相変わらず頑張っているね」

佳那子:「そうですよ悠真さん、出来る事なら体育館のマットの上で練習するのが良いかもしれないですけどね」

菊池:「ちゃんと補助はしてあげないと怪我のもとよ」

大水:「間違っても悠真にはさせようと思わないように」

葵奈姉妹:「はーい」

美千代:「ところで菊池先生、大水先生、誘拐監禁事件に会う前の悠真さんってどんな感じだったのでしょうか?」

菊池:「どうしてなの?」

美千代:「事件によって失ったものを私達で蘇らせる事はないかと思うので」

悠真:「失ったものって・・・・・なにかしら?急には思い出せない」

菊池:「私だって悠真が誘拐された事で失ったものは・・・あるような気がする」

悠真と菊池が思案に暮れた時、昼休みが終わるチャイムが鳴り響き、友美は中等部三年A組へ。洋美と美千代、礼子は中等部二年B組へ、愛美、幸美、佳那子、悠真は中等部一年A組へ、菊池と大水は職員室へ急いだ。五時間目の授業が終わった後、佳那子は悠真に声をかける。

佳那子:「悠真さん、まだまだしんどいですか?」

悠真:「お姉ちゃん・・・・」

佳那子:「悠真さん、どうしたのですか?お姉ちゃん、がどうかしたのですか?」

悠真:「お姉ちゃんが欲しい・・・・・」

佳那子:「えっ!?お姉ちゃんが欲しい、ってどうしてなのですか?」

悠真:「愛美と幸美がうらやましい。お姉ちゃんが欲しい・・・・」

愛美:「ねぇ佳那子どうかしたの?」

幸美:「さっきから悠真さん、様子が」

佳那子:「悠真さん、お姉ちゃんが欲しいと言ってるのよ。愛美と幸美がうらやましいって」

愛美:「菊池先生に言った方が良いかも」

そして六時間目の授業が終わり放課後の部活となった。愛美と幸美、佳那子は悠真を連れてプールへ移動すべく教室を出る。しかし教室を出た所で友美、真美奈、菊池とかち合う。佳那子は菊池に言う。

佳那子:「菊池先生、悠真さん独り言で、お姉ちゃんが欲しい、と言うんですよ」

菊池:「これは理由があっての事なのよ。悠真にはお姉ちゃんがいたんだけど悠真が産まれる前に交通事故で亡くなったのよ」

佳那子:「えっ!そおなんですか!?」

悠真:「そおなの。私、お姉ちゃんが三、四人いる愛美と幸美がうらやましい」

愛美:「悠真さん、お姉ちゃんがいたんだ」

幸美:「悠真さん自身、お姉ちゃんの事、知らなかったのかな?」

菊池:「もし生きていたら27歳か28歳だわ」

友美:「悠真さんは私と同じ二女なのね、長女ではなく」

真美奈:「悠真さんには私の事を『真美奈姉ちゃん』と呼ばせてあげる事にしたのよ。悠真さん、誕生日プレゼントは、お姉ちゃんが欲しい、というものだから」

菊池:「さっ、早くプールへ移動しよう」

菊池に促され友美、愛美、幸美、佳那子、真美奈、悠真はプールへ移動する。その後を追いかけるように、洋美、美千代、礼子もプールへ移動した。更衣室で水着に着替えると悠真は水泳部員達と共にプールサイドで準備体操をするが、動きはぎこちない。それを見た競泳部門の部員達は悠真を気遣う。

競泳部門部員A:「悠真さん、気を落とさないで」

悠真:「う、うん・・・おっお姉ちゃん、悠華お姉ちゃん」

競泳部門部員B:「悠真さん、泣いているわ」

悠真:「悠華お姉ちゃん・・・・」

競泳部門部員C:「悠真さん、しっかり準備体操はしないと駄目ですよ」

悠真:「うん」

準備体操を終えると悠真は競泳部門の部員達と共にシャワーを浴び水中ウォーキングに精をだすが、動きのぎこちなさは隠せない。その様子を菊池は眺めながら思案するのだった。

(悠真、相当落ち込んでいるわ。悠真の御両親と話し合ってみようかしら)

飛込みプールの飛込み競技部門の部員達も悠真を心配するような顔つきになっていた。飛込みプールの片隅で愛美と幸美も心配の表情を露にする。

幸美:「愛美お姉ちゃん、悠真さん悲しそう」

愛美:「やっぱり、亡くなったお姉ちゃんが恋しいんだわ」

幸美:「なんか、こっちまで悲しくなりそう」

愛美:「何だかバイクの免許、取るのが嫌になりそう」

幸美:「幸美だって免許、取るのが嫌になる。万が一、まりなちゃんのような小さい子どもを死なせてしまったとしたら・・・・」

そこへ洋美が愛美と幸美に叱りつける。

洋美:「愛美、幸美、また私語をしているな。お前ら、由美子にも言われただろ!」

愛美:「だって悠真さん悲しそうにしているから・・・・」

幸美:「悠真さんに、お姉ちゃんを分けてあげたくなる。クラスメートなんだから」

洋美:「分けてあげたくなるって、誰をなの!?」

愛美と幸美:「友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんを悠真さんのお姉ちゃんに差し上げたい」

洋美:「あのな、悠真さんは歩美姉ちゃんよりも年上よ!」

そこへ血相を変えた菊池がやってきた。

菊池:「これ!練習中に何してるの!?姉妹喧嘩とはどういうことなの!?」

洋美:「悠真さんの事で喧嘩になってしまったんです。愛美と幸美、私と友美姉ちゃんを悠真さんのお姉ちゃんにしたい、と言い出したんです」

菊池:「あらあら、とにかく押さえて。悠真のお姉ちゃんの事は悠真の両親と話し合おうかと考えているのよ。今は練習よ!」

菊池になだめられ洋美、愛美、幸美は練習を再開する。そして部活の終了後、葵奈四姉妹と佳那子、美千代、香織達はモノレールで帰宅し悠真は菊池と一緒に帰宅する。菊池が悠真の自宅で悠真の母親に挨拶する。

菊池:「お母様、しばらくです」

悠真の母親:「あら、由利ちゃん、いらっしゃい。悠真の調子はどうですか?」

菊池:「ぼちぼちでしょうか。ただ、お姉ちゃんの事で気落ちがすざましくて」

悠真の母親:「実は父さんと話し合ったんだけど、私達夫婦は養子縁組で養女を取ろうかと考えているのよ」

菊池:「養子縁組で養女をですか?」

悠真の母親:「26歳以上の女性を養女にして悠真の姉に、と考えているのよ。その事、由利ちゃんや咲ちゃんに相談するのも心苦しいくて・・・」

菊池:「そうですか、一応、咲には話してみようかと思います。他の教職員にも声はかけてみようかと思います」

悠真の母親:「ごめんね、由利ちゃん。悠真の事で苦労をかけて」

母親と話し合った後、菊池は帰宅していく。帰宅の徒につきながら菊池は思案にくれた。

(私と咲では荷が重いから池澤先輩、高畠先輩にも声をかけてみようかしら)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その日の夜、葵奈姉妹の部屋では友美、洋美、愛美、幸美が悠真の事で話し合っていた。

友美:「愛美、幸美、悠真さんのお姉ちゃんになれって、どういうつもり?」

愛美:「悠真さん、産まれる前にお姉ちゃんを交通事故で亡くしたから、お姉ちゃんが欲しいと言ってるのよ」

幸美:「悠真さん、お姉ちゃんが三、四人もいる幸美達がうらやましい、と言っているのよ」

洋美:「それで私と友美姉ちゃんに悠真さんのお姉ちゃんになれ、と言う事か?」

愛美と幸美:「そう言いたい」

友美:「交通事故で亡くした、という事に関しては同情に値するものはあるけど、はっきり言って酷だよ。15歳と14歳の姉に25歳の妹の組み合わせは違和感ありすぎる」

幸美:「それじゃあ、悠真さんから年齢を12歳ほど頂いて友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんで分け取りしたら良いじゃん。そうしたら友美姉ちゃんは21歳、洋美姉ちゃんは20歳、悠真さんは13歳になるから違和感無くなるじゃん」

洋美:「あ・の・な・・・」

友美:「そんな事出来ると思うか!?」

愛美:「それじゃあ勝幸を佳那子ではなく悠真さんと結婚させる?もしくは佳那子の弟の勇神くん、龍神くんのいずれかと結婚させる?」

幸美:「とにかく幸美は明日でも悠真さんにそれ言ってみるから」

洋美:「そんな事、佳那子は納得できると思う?」

友美:「とにかく明日、佳那子に聞いてみようか」

四姉妹は消灯し就寝する、が愛美と幸美は目を覚ましてトイレへと足を運ぶ。用便を済ませると幸美は愛美にささやく。

幸美:「愛美お姉ちゃん・・・・」

愛美:「幸美、どうしたの?」

幸美:「幸美、悠真さんのお姉ちゃんが死んだ事を知った時、大好きな愛美お姉ちゃんと一緒に居られる事の有り難さが解る気がする」

愛美:「愛美だって唯一無二の大好きな妹である幸美と一緒でいられる有り難さが悲しいほど解る気がしたよ」

幸美:「悠真さんのお姉ちゃんの件、旭中の由美子姉ちゃんや麗美奈姉ちゃん達、県立逆茂木高校の真木地さんはどう思うかなぁ?」

そこへ部屋から洋美が出てきた。

洋美:「愛美、幸美、お前らいつも話し合っているな。何を話してた?」

愛美:「洋美姉ちゃん、旭中の由美子姉ちゃん達、それと県立逆茂木高校の真木地さんに悠真さんのお姉ちゃんの事、どう思うかなぁ?」

洋美:「由美子と真木地さんに悠真さんのお姉ちゃんの事か・・・悲しむだろうな。由美子、近いうちにお姉ちゃんになるようだからな」

幸美:「幸美だって気になる。悠真さんの誘拐監禁事件の事だって犯人に対して怒りを禁じ得ないようだから」

洋美:「だろうな、明日もあるから早く戻って寝ろ。例によって起きれなかったら平手打ちだぞ」

洋美にうなされ愛美と幸美は再び就寝する。お互いに抱き合い見つめ合いながら。

そして明けて6月5日木曜日、愛美と幸美は1番早く目を覚ました。

愛美:「幸美、おはよう」

幸美:「おはよう。幸美の大好きな愛美お姉ちゃん」

愛美:「ねぇ幸美、友美姉ちゃんと洋美姉ちゃん、まだ寝てるから真木地さんにメールしてみようかと思うんだけど」

幸美:「良いじゃん、幸美は、悠お兄ちゃんにメールする」

愛美は真木地に、幸美は悠斗にメールをいれる。メールを入れ終えると愛美は幸美と見つめ合う。

愛美:「幸美、気持ち良い事しようか」

幸美:「うん、愛美お姉ちゃん、もしかして平手打ち?」

愛美:「そうよ、と言いたいけど」

幸美:「良いよ、愛美お姉ちゃん。幸美、大好きな愛美お姉ちゃんの平手打ちを楽しみにしているから」

愛美:「じゃいくよ幸美、痛いけど我慢してね」

愛美は幸美の左頬に平手打ちを食らわす。

パーン!

愛美:「幸美、痛かった?」

幸美:「いや、気持ち良かったよ、大好きな愛美お姉ちゃんの平手打ちだから、菊池先生のと同じぐらい気持ち良いから」

その時、友美と洋美が目を覚ました。

友美:「なっ、なんだ、今の音は!?」

洋美:「誰かが平手打ちされるような音みたいだけと」

愛美:「愛美、幸美を平手打ちで起したの」

幸美:「幸美、大好きな愛美お姉ちゃんの平手打ちで起こしてもらったのよ。あまりにも気持ち良いから、もっと叩かれたかったのになぁ」

友美:「それだったら菊池先生に叩いてもらえ」

洋美:「それか私の担任の大水先生はどう?それか池澤先生か」

愛美:「そっ、それは・・・」

幸美:「何と言えば」

友美:「今日も学校だから着替えて」

四姉妹は着替えと朝食、歯磨きを済ませ準備を整え家を出て駅へと歩く。モノレールに乗ると車内には香織、美千代が乗っていた。やや離れた所にも首女中や首女高、首女大の生徒が幾人ほど乗っている。葵奈四姉妹が乗車すると香織と美千代は挨拶を交わす。次の駅で佳那子が乗って来ると友美は声をかける。

友美:「おはよう佳那子」

佳那子:「おはようございます、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、美千代姉ちゃん、香織姉ちゃん。おはよう愛美、幸美」

友美:「佳那子、悠真さんとウチの弟、勝幸の事だけど」

佳那子:「もしかして悠真さんを勝幸君と結婚させようと考えているのですか?」

友美:「それは悠真さんが結婚に対して積極的だったらの話なのよ。消極的だったら話は別になるわ。悠真さん、お姉ちゃんが欲しいと言っているのだから」

洋美:「悠真さん、お姉ちゃんが三、四人もいる愛美と幸美がうらやましい、と言っているし」

愛美:「愛美は三人」

幸美:「幸美は愛美お姉ちゃんを入れて四人」

佳那子:「でも悠真さんの年齢は今、24で今月の30日で25になるんじゃありません?勝幸君は10歳ですから年齢差が・・・」

友美:「そおよね、佳那子の弟の勇神くん、龍神くんとなれば尚更だからね」

佳那子:「悠真さんの心情を確かめた方がいいですね、先ずは」

話し合っているうちにモノレールは終点着駅『首女大付属校前』に到着し首女中と首女高の生徒達は下車していく。そして校門をくぐると駐車場から大水が歩いて来て葵奈四姉妹に挨拶をしてきた。

大水:「おはよう、友美ちゃん、洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん」

友美:「おはようございます、大水先生」

洋美:「おはようございます、大水先生」

愛美:「おはようございます、大水先生」

幸美:「おはようございます、大水先生。悠真さん、お姉ちゃんが欲しいと言ってるようですよ、最近」

大水:「そおよね、悠真は実のお姉ちゃんが欲しいと言ってるのよ。結婚はしたくないと言ってるからね」

友美:「そおですか」

大水:「ところで愛美ちゃん、幸美ちゃん、朝はちゃんと起きてる?」

愛美:「今朝は起きれました。でも起きれずに友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんに平手打ちで起こされる事が多いです」

幸美:「平手打ちで起こされるのなら菊池先生の方が気持ち良いですよ」

大水:「由利に叩かれる方が気持ち良いの?」

愛美:「はい、死ぬまで叩かれていたいぐらい気持ち良いです」

幸美:「幸美も同じです。死ぬのなら気持ちよく死にたいです」

大水:「あはははっ、愛美ちゃん、幸美ちゃん、朝から笑わせてくれるわね。由利は憎めないぐらい好かれてるのね。私じゃ駄目かしらね・・・・」

軽く挨拶と会話すませ葵奈姉妹は各々の教室へ移動し大水は教職員用の更衣室へ移動した。そして昼休み、佳那子は毎日の日課であるバク転の特訓を葵奈姉妹から受ける。

愛美:「佳那子、だいぶ感覚は掴めてきたんじゃない?」

佳那子:「そおね」

幸美:「それなら補助無しでやってみてよ、佳那子」

友美:「今の佳那子なら出来る。やってみろ!」

洋美:「いけ!佳那子!」

佳那子はバク転に挑戦した。成功したのを見て葵奈姉妹は佳那子を労う。

友美:「佳那子、やったじゃん」

洋美:「今度の日曜日、小学校時代の同級生に披露できるじゃん」

佳那子:「やっと出来ました。でも友達にはバク転の事は話していないんです。話しているのは飛込み競技とグラドルの写真集の事だけなんです」

愛美:「そおなんだ、次はロンバク転&バク宙、その次々は前宙でいこうよ」

幸美:「今よりも瞬発力を高めようよ、佳那子」

佳那子:「そうですね、菊池先生か浦木先生に体育館のマットの上で練習させてもらおうかと」

その時、悠真と菊池、大水が通りかかった。悠真は佳那子に話しかける。

悠真:「佳那子、頑張っているね、調子はいかが?」

佳那子:「やっとバク転が、といった所です。でも、これからです」

大水:「これから、と言う事は、これからが正念場よね」

佳那子:「本当は体育館のマットの上で練習出来れば良いんですけどね」

洋美:「瞬発力を高めたいのなら縄跳びはどう?」

佳那子:「自宅の分譲マンションの公園で帰ったらやろうかなと思います」

菊池:「それなら、また寝泊まり特訓はどう?明日の金曜日の晩から明後日の土曜日の朝にかけての泊まり込みで」

佳那子:「はい、出来れば体育館のマットでバク宙と前宙の特訓といけたら有難いです」

菊池:「出来れば愛美ちゃんと幸美ちゃんもどうかしら?」

愛美:「喜んで」

幸美:「幸美も同感、起きるのは菊池先生の平手打ち確実だから」

友美:「明日の晩、愛美と幸美、佳那子は菊池先生と寝泊まりか、菊池先生の気持ち良い平手打ちを味あえるから良いじゃん」

洋美:「悠真さんは泊まり込みは考える方じゃないですね」

悠真:「泊まり込みね、それだってら愛美、幸美、佳那子と一緒よりも、由利、咲、池澤先輩、高畠先輩と一緒の泊まり込みの方が良いなあと思うわよ」

佳那子:「悠真さんらしいですね。もしそれだったら泊まり込みで何をしたいと思っているのですか?」

悠真:「由利、咲と一緒に池澤先輩の英語の補習授業と高畠先輩の数学の補習と言った所かしら」

友美:「ところで悠真さん、お姉ちゃんが欲しいと仰っておられましたけど、ご結婚は、お考えですか?」

悠真:「いいえ、考えない。考える気にはなれないわ、お嫁には行きたくないわ」

菊池:「義理のお姉ちゃんよりも実のお姉ちゃんを悠真は望んでいるのよ。悠真の両親、養子縁組を考えているのよ。私と咲と同年以上の女性を養女にね」

洋美:「私達と同年代は駄目でしょうね」

菊池:「駄目と言わざるをえないわ」

その時、昼休み終了の予鈴が鳴り響いた。菊池が葵奈姉妹と佳那子に厳しく叱咤して促す。

「これから五時間目よ。次の授業に備えなさい!」

葵奈姉妹と佳那子は各々の教室へと戻っていく。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

県立逆茂木高校のある教室では真木地が愛美からのメールに目を通していた。

『真木地さん、おはようございます。愛美です。実は悠真さんにはお姉ちゃんがいたんですけど悠真さんが産まれる前に交通事故で亡くなったんです。お姉ちゃんが欲しいと呟く事が多いです。ちなみに今月の30日は悠真さんの誕生日です』

この文面に真木地は涙無しではいられない気分になった。

(牟田内さん・・・・お姉ちゃんがいたんだけと死んでいたんだ・・・・可哀想に)

そんな真木地に肩をたたき声をかける者がいる。

「おい真木地、何を悲しそうなツラしてるんだ」

声の主は逆高三人衆であった。

逆高生A:「葵奈姉妹とメールか?」

真木地:「そうなんだ。悠真さん、お姉ちゃんがいたけど産まれる前に交通事故で亡くなったんだ」

逆高生B:「はぁ?」

真木地:「嘘じゃないんだ。お姉ちゃんが欲しいって泣くことがあるんだ」

逆高生C:「悠真に姉貴がいたんか・・・・」

真木地:「今月の30日で悠真さん、25歳になるみたい」

逆高生A:「と言う事は・・・」

真木地:「25歳の中学一年生になってしまう」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、三矢悠斗も幸美からのメールに驚愕していた。悠真に姉がいたけど交通事故で亡くなった事であった。悠斗は出勤の準備を整え母と暮らす公団のマンションである自宅を出た。

(牟田内さん、お姉さんがいたんだ)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

部活を終えモノレールに乗って下校して帰宅中、洋美のスマホに電話の着信音が鳴り出した。

(誰からかしら?あっ由美子からだわ)

洋美:「もしもし由美子、久しぶり」

由美子:「洋美、久しぶり。洋美と話したくなった」

洋美:「そおなんだ、足の調子はどう?」

由美子:「まだまだなの」

洋美:「練習中に痛めたの?」

由美子:「マットじゃない所で前宙をやって着地に失敗し、くるぶしを強打したのよ」

洋美:「あ〜それは痛いね、どうしてマットの上でやらなかったの?」

由美子:「愛美ちゃんと幸美ちゃんに負けたくなかったのよ。二人は双子の一年生、私は二年生だから・・・・」

洋美:「由美子、無理は禁物よ」

由美子:「うん、何だか愛美ちゃんと幸美ちゃんから前宙の指南、ますます受けたくなってきた・・・・」

洋美:「そぉなのね、先ずは足を回復させるのが一番よ」

由美子:「それもそうだけど友美姉さんから飛込みの特訓をも受けたくなりそう」

洋美:「そんなに友美姉ちゃんから特訓を受けたいのね、解ったわ、友美姉ちゃん、由美子が」

友美:「解ったわ。もしもし高牧さん、お久しぶり、友美です」

由美子:「久しぶりです、友美姉さん」

友美:「私から飛込みの特訓を受けたいと思っているんですね」

由美子:「はい、受けたいです。洋美と愛美ちゃん、幸美ちゃんは友美姉さんから特訓を受けて飛込みが出来るようになったんですよね?」

友美:「そう見えますか?」

由美子:「はい、平手打ちが飛ぶぐらい恐くて厳しいとなれば、そういう風に見えてしまいます」

友美:「実は違うんですよ。飛込みに関しては洋美、愛美、幸美の方がキャリアが長いんですよ。愛美と幸美は年少組から、洋美は年中組から、私と佳那子は中一から始めたんですよ」

由美子:「え〜っ!そおなんですか?」

友美:「そうなんですよ、飛込みの特訓なら洋美、愛美、幸美から受けた方が良いですよ。私じゃ往復平手打ちの嵐になって顔じゅうアザだらけになってしまいますよ」

由美子:「そっ〜そおなん・・・ですか、想定外です。私は友美姉さんから平手打ちされてでも受けたいと思っていたんです。本当は」

友美:「あら、そおなの?もしがっかりだったらごめんなさい。それにしても高牧さんって面白いですね」

由美子:「そおですか?現実は飛込みの練習は旭中や自宅じゃ出来るわけがないですし、自宅にプールがある家なんてないでしょうから」

友美:「私の同級生には自宅に飛込みプールがある人が二人いるんですよ。そのうちの一人が私のクラスメートなんですよ」

由美子:「えっ!そおなんですか?信じられないです」

友美:「その同級生は家の自家用送迎車で毎日登下校しているんです。二人とも」

由美子:「もしかして資産家のお嬢様ですか!?」

友美:「そういう事になりますね」

由美子:「どういうプールなのか気になります。泳がせてもらえたら有難いですけど。どころで話かえて申し訳ありませんが、こないだの日曜日に首女中の先生達と一緒に来られてた悠真さんという女性、元気にしてますか?麗美奈、真由、雅、若菜達も気にしているんです。それに旭中の先生達も悠真さんの誘拐監禁事件を対岸の火事だと思ってはいけない、と言ってます」

友美:「悠真さんの事、気にかけて下さっているんですね、ありがとうございます。実は悠真さんにお姉ちゃんがいたんですよ。けど悠真さんが産まれる前に交通事故で亡くなったんですよ」

由美子:「えっ!そおなんですか?私、お姉ちゃんになるかもしれないんですよ」

友美:「縁起の悪い話でごめんなさい。産み月は解りませんか?」

由美子:「はっきりした事は聞かされてないんです。ただ母がよく産婦人科に行くと言って出かける事が多いので」

友美:「そおですか、最近、悠真さん、お姉ちゃんが欲しいと言う事が多いですよ。しかも泣きそびれた口調で」

由美子:「そおなんですか、何かこっちまで悲しくなりそうです。とにかく母に聞いてみます」

友美:「解りました。じゃあ洋美にかわります」

洋美:「もしもし由美子どうだった?」

由美子:「友美姉さんと?楽しかったわ。飛込みのキャリアは洋美と愛美ちゃん、幸美ちゃんが長いだね、想定外だったわ。洋美が飛込み競技を始めたきっかけは何なの?」

洋美:「小さい時に通っていた体操教室の遠足で飛込み競技の見学したのがきっかけなのよ。その時は愛美と幸美も一緒だったのよ」

由美子:「やっぱり愛美ちゃんと幸美ちゃん、小さい時から体操教室に通っていたんだね。私が体操競技をやりだしたのは中一の時だからキャリアの面でも葵奈姉妹には及ばないわ。上級生には愛美ちゃんと幸美ちゃんに指南してもらえ、となじられる始末なのよ。毎日それなの」

洋美:「そおなんだ、でもくじけずにね。足を大事にね」

由美子:「うん、ありがとう洋美」

由美子との会話を終え洋美は友美、愛美、幸美に向き直る。

愛美:「由美子姉ちゃん、前宙で足を痛めたんだ」

幸美:「幸美と愛美お姉ちゃんに負けたくないと思ったんだ」

友美:「高牧さん、飛込み競技やりたがっているんだ。とにかく家に帰ろう」

葵奈四姉妹は自宅へと帰る。

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友美、洋美との会話を終えた由美子は両親と食事を共にしていた。

由美子:「ママ、最近産婦人科に行く事が多いけど、妊娠しているの?」

由美子の母親:「そおよ、由美子。あんた、お姉ちゃんになるのよ」

由美子の父親:「由美子には、お姉ちゃんとして、しっかりしてもらえたらうれしいんだけどな」

由美子:「産まれて来るのは男の子かな?女の子かな?」

由美子の母親:「まだ二ヶ月だから早くても再来月にならないと解らないわ。出産予定日は八ヶ月先だから来年の4月ね」

由美子:「それまでは死なずに生きなくては」

由美子の父親:「おいおい、なに縁起でもない事を言うんだ?」

由美子:「愛美ちゃんと幸美ちゃん、佳那子ちゃんのクラスメートで産まれる前に、お姉ちゃんを交通事故で亡くした人がいるのよ」

由美子の父親:「本当に!?」

由美子の母親:「あら、嫌だわ。可哀想に・・・・」

由美子:「しかも、その人、首女中に入学して短時日のうちに誘拐され12年の間、監禁生活を余儀なくされたのよ」

由美子の母親:「あら〜可哀想に。ニュースでやってた少女誘拐監禁事件よね?」

由美子:「そうなのよ。その人は今24歳で12、3歳のクラスメートと一緒に同じ学級で勉強しているのよ。今月の30日で25歳になるの」

由美子の母親:「そうなんだね」

由美子の父親:「間違っても対岸の火事と思ったらいけないな」

由美子:「佳那子ちゃんは今月の16日、愛美ちゃんと幸美ちゃんは今年の9月9日で13歳になるのよ」

由美子の父親:「そおなんだ」

由美子:「友美姉さんは先月の十五日で15歳になったし、洋美は来月の7日で14歳になるのよ」

由美子の母親:「由美子、まだ足痛いのは収まらない?」

由美子:「収まらない。それどころか葵奈姉妹に弟子入りして水泳の飛込み競技をやりたい気分になってきちゃった」

由美子の母親:「それって10メートルの台から飛び込むんじゃないの?」

由美子:「それもそうだけど他に1メートル、3メートル、5メートル、7.5メートルの台からもあるの。友美姉さんと洋美、愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんの話によると」

由美子の父親:「そおなんだ、やりたいのなら、やったら良いじゃん。やるからには産まれてくる弟もしくは妹にお姉ちゃんとしてカッコいい所を見せてあげられるように頑張らないと駄目だぞ」

由美子:「うん、私、頑張りたい」

由美子の母親:「それも良いかも知れないけど交通事故で死んだクラスメートのお姉ちゃんの二の舞を踏まないように気をつけないとね」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の6月6日金曜日の朝、葵奈四姉妹はモノレールに乗車し佳那子と会って挨拶をする。

葵奈四姉妹:「おはよう、佳那子」

佳那子:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、おはようございます。愛美、幸美、おはよう」

愛美:「今夜は菊池先生と首女中で寝泊まりよね」

佳那子:「そうよね、菊池先生とは二回目、愛美、幸美と一緒に首女中での寝泊まりは初めてだわ」

幸美:「幸美も楽しみ」

洋美:「愛美、幸美、佳那子、お前ら楽しそうだな。私も由美子と一緒に首女中で菊池先生の寝泊まり特訓を受けたいなぁ」

佳那子:「旭中の由美子さんとですね。私から見れば由美子さん、グラドルとしても通用しそうな風貌だと思いますよ。シンクロナイズドダイビングだって洋美姉ちゃんは私とペアを組むよりも由美子さんと組む方がピッタリじゃないかなと思いますよ。私、洋美姉ちゃんの足を引っ張る事ばっかりですから」

友美:「洋美は高牧さんの事となると周りが盲目になってしまうんだから」

洋美:「そう言われると由美子とペアを組みたくなるわ。でもそうなったとしたら佳那子はどうなるのかな?ソロ?間違っても悠真さんと組むわけにはいかないわ」

佳那子:「悠真さんは水中ウォーキングでリハビリ中だけど真美奈姉ちゃんと美幸姉ちゃんから飛込み競技の特訓を受けたいと言ってたみたいですけど」

愛美:「えっ!それじゃあ悠真さん、水泳部の飛込み競技部門に入部してくれるのかなぁ?」

幸美:「そおだと幸美、嬉しい」

話し合っているうちにモノレールは終着駅『首女大付属高前』に到着する。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

市立旭中では由美子は笹村由利と話し合っていた。由美子の足を引きずるようなぎこちなさを気にするように笹村は由美子に話しかける。

笹村:「由美子、まだ足痛いの?」

由美子:「少しづつではあるけど、収まりつつは」

笹村:「首女中の葵奈姉妹を意識しだしたのね」

由美子:「愛美ちゃんと幸美ちゃんの連続抱え前宙が頭から消えなくて」

笹村:「よせば良いのに、マットじゃない硬い地面でやろうとしたから足を痛めたんだから」

由美子:「着地するのが地面じゃなくて飛込みプールだったら足の怪我は心配ないかしら?」

笹村:「そう感じるんだね」

由美子:「うん、私、葵奈姉妹に弟子入りをしたいと思っているのよ」

笹村:「由美子が葵奈姉妹に弟子入り!?条件厳しいじゃん」

由美子:「予想としては10メートル高飛込み、ロンバク転、バク宙、前宙が出来る事かなぁ?」

笹村:「そうかも。メールで弟子入り希望を伝えたらどう?」

由美子:「愛美ちゃんと幸美ちゃんのクラスメートの佳那子ちゃん、友美姉さんにスカウトされて葵奈姉妹のメンバーになったから洋美を通じて友美姉さんに伝えてみようかな」

笹村:「伝えたら良いじゃん」

由美子は洋美に弟子入り希望のメールを送信する。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

首女中の昼休みの昼食後、洋美は由美子からのメール着信に気がついた。開けて内容を確認すると

『洋美、私、高牧由美子は葵奈姉妹に弟子入りを希望したいのよ。友美姉さんに伝えてくれたら嬉しいけど条件はどうなのかしら?』

であった。洋美は

『友美姉ちゃんに聞いてみるわ』

と返信し、友美、愛美、幸美と一緒に佳那子のバク転特訓に精をだす。佳那子はバク転が出来るようになっていた。

友美:「佳那子、出来るようになったじゃん、次は連続でやってみなよ」

佳那子:「はい!」

佳那子は連続バク転に挑戦し成功させた。

友美:「やったじゃん」

洋美:「次はバク宙だね」

愛美:「それもそうだけど友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、マットじゃない所で出来るようになってよ」

幸美:「佳那子に追い越されるよ」

佳那子:「今夜の寝泊まり特訓が楽しみです」

そして六時間目の終了後、教室を出た愛美、幸美、佳那子に菊池が声をかける。

菊池:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、小湊さん、今夜は寝泊まり特訓だから今日の部活は教員用の宿泊部屋よ。今から案内するからそこで着替えなさい。私もそこで着替えるつもりだから」

愛美と幸美:「はーい」

佳那子:「はーい。菊池先生と一緒に着替えとなるとドキドキします。何故か」

菊池に連れられて愛美と幸美、佳那子は教員用の宿泊部屋へ歩きだした。宿泊部屋に入ると四人は水着に着替え、その上に体操服を着てプールへと歩きだす。プールに着くと普段どおり飛込み競技の練習に精をだす。愛美と幸美は109Cを完璧にすべく練習し、佳那子は前宙が出来るように洋美から特訓を受けるように練習をする。その様子を50メートル競泳プールで水中ウォーキングに励んでいた悠真は視線を向けた。

(愛美、幸美、佳那子、飛込み頑張っている。見慣れたとはいえ見入ってしまうわ)

そこへ競泳部門の部員が悠真に叱責の声をあげる。

競泳部門部員A:「悠真さん!もう、さっきから余所見ばっかりで」

競泳部門部員B:「飛込みプールの方ばっかし見て、菊池先生に叱られますよ」

悠真:「ごめんなさい・・・・・」

悠真は目に涙を浮かべながら嗚咽する。そこへ菊池が何事か、といった顔つきで問い詰める。

菊池:「どうしたの?」

競泳部門部員A:「菊池先生、悠真さん、飛込みプールの方ばっかし余所見するんですよ」

競泳部門部員B:「どうして余所見ばっかしするのか」

菊池:「悠真、飛込み台の方が気になるの?」

悠真:「うん。溺れ死んだらお姉ちゃんに会えるかな?」

菊池:「そんな事を言っても会えるはずはないわよ!」

競泳部門部員B:「縁起でもない事を言わないで下さいよ!」

競泳部門部員A:「やっぱり悠真さん、お姉ちゃんが恋しいんだ」

菊池:「悠真、しっかり気を取り直して水中ウォーキングを頑張ろう」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

旭中の体操部では由美子が上級生の部員と話し合っていた。

体操部の上級生A:「高牧、葵奈姉妹に弟子入りしたいのか?」

由美子:「はい、飛込み競技とグラドルに興味が・・・」

体操部の上級生B:「へぇ〜そぉなんだ」

由美子:「でも、この辺では飛込み競技の練習が出来るプールはないですから、毎日練習するとしてら首女中に転校する以外は」

体操部の上級生A:「ないという事になるね。市立旭中学(このがっこう)のプールじゃ浅すぎて危ないし」

由美子:「私、お姉ちゃんになる事になったんですよ。来年の四月に弟か妹の何れかが産まれるのです」

体操部の上級生B:「お母さん、二人目を妊娠したんだ」

由美子:「まだ2ヶ月目だそうで」

由美子は二人の上級生と共に下級生の練習を眺める。

(洋美と一緒に体操出来たら良いけどね・・・)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

首女中で放課後の部活が終わると菊池は愛美と幸美、佳那子を呼んだ。

菊池:「これから宿泊部屋に戻って着替えて食堂で食事といくわよ」

愛美と幸美:「はーい」

佳那子:「今夜は体育館ですよね」

菊池:「そおよ、小湊さんをバク宙と前宙の特訓だから」

四人は宿泊部屋に戻ると水着から制服に着替え食堂へと足を運ぶ。食堂では礼子を始めとする校舎寮で生活する生徒達が談笑をしながら食事を楽しんでいる。食券用の自動販売機の前で菊池は口を開く。

菊池:「私はカレーにするけど」

愛美:「愛美はカレーうどんとおにぎり二つ」

幸美:「幸美も愛美お姉ちゃんと同じカレーうどんとおにぎり二つ」

佳那子:「私もカレーうどんとおにぎり二つにしますわ」

菊池:「あなた達、ピッタリ行が合うのね」

四人は食券を購入し食べ物と引き換えるとテーブルに着き食事をする。そこへ礼子が食事を乗せたトレイを手に通りかかり話しかける。

礼子:「あら愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃん、今夜は菊池先生の特別特別なの?」

佳那子:「はい、そうです。礼子姉ちゃんは校舎寮の部屋で両親と電話ですよね?」

礼子:「スマホで通話だから寝る前でも構わないけどね、よほど大事な事でない限りは」

菊池:「津軽さんも、一緒に食事はどう?この後、体育館で小湊さんのバク宙と前宙の補助を愛美ちゃんと幸美ちゃんにやってもらうのだけど」

礼子:「はい、喜んで」

礼子はテーブル席に着く。

礼子:「良かったら私も補助出来れば良いのですけど」

菊池:「それじゃ食事の後、体操着に着替えて体育館に来てちょうだい。私達も体操着に着替えて体育館に移動するから」

そして食事の後、菊池、愛美、幸美、礼子は体育館で佳那子のバク宙と前宙の特訓に入っていく。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

葵奈姉妹のカメラマンである長野明子(おさの あきこ)は自身の写真集販売会社でスタッフ達と打ち合わせをしていた。打ち合わせの内容は幾つかのスポーツ用品メーカーから葵奈姉妹のモデル依頼である。中にはスイミングスクールからモデルとして指定水着の着用依頼もあるのであった。

長野:「最近、急に多くなったわ。葵奈姉妹へのモデル依頼が」

スタッフA:「写真集の売れ行きが影響しているんですね」

長野:「そうかもね、スポーツウェア業界もスイミングスクール業界も葵奈姉妹に注目する所があるみたいだわ」

スタッフB:「スポーツ用品のモデル撮影はメーカーのスタジオでやることになるでょうね。スイミングスクールの場合はそれぞれのスクールでやるんでしょうか」

長野:「そおね、指定の水着に着替えた上でのプールサイドで撮影になりそうだわ」

スタッフC:「忙しくなりますね」

長野:「友美ちゃんからのメールでは葵奈姉妹に弟子入り希望者がいるみたい。どんな人かしら?」

スタッフA:「写メールで送ってくれるといいですね」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、友美、洋美は帰宅すべくモノレールに乗車して香織、美千代と談笑を楽しんでいた。

香織:「今晩は愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんは首女中で菊池先生の寝泊まり特訓なのね」

友美:「そおよ、今夜は洋美と二人きりなのよ」

美千代:「プチ合宿みたいね」

洋美:「そういえば去年の夏休みは首女中で合宿だったね」

香織:「他の女子校の水泳部との合同合宿で他流競技会、他流練習だからね」

美千代:「今年もそうなるのでしょうか」

話し合っている内にモノレールは『榊台』に到着し友美と洋美は香織と美千代に別れを告げ下車する。改札口を通過して自宅へと歩きだす。友美が懐かしむような口調で口を開く。

友美:「こうやって洋美と二人きりで歩くと・・・・」

洋美:「去年だよね。私が一年生で友美姉ちゃんが二年生、愛美と幸美が小六、勝幸が小四だったね」

友美:「お姉ちゃんが16歳で依沙美が1歳、佳那子が小六、弟の勇神くんが小三、龍神くんが年長組だったわ」

洋美:「勝幸、佳那子の弟の勇神くんと龍神くんを弟のようにしたってるようだし」

友美:「そおね、勝幸は佳那子と結婚させるべきだわ。間違っても悠真さんとは」

洋美:「そおね悠真さん結婚の意思はないようだし誘拐監禁事件で男性に対してトラウマを抱えていそうだわ」

友美:「ところで洋美、最近お前、背が伸びたんじゃないか?」

洋美:「そうね、中一の時に比べたら伸びたと思うわ。その時の身長は今の愛美、幸美と同じだったわ。来年は友美姉ちゃんと同じ背丈になると思うわ」

友美:「そうかしら?洋美が入学したのがついこないたのように感じるわ」

洋美:「でも私は、かなり前のような感じよ。愛美と幸美が首女中に入学してから『ゆうにい』と出会ったし、悠真さんの救出に遭遇したし、遊園地で由美子を始めとする旭中の友達と出会ったし色々あったからね。二年生になってからがあわただしいように感じるわ」

友美:「旭中の高牧さんとは愛美と幸美が何よりのきっかけだったね。その高牧さん、葵奈姉妹に弟子入り希望なんだ」

洋美:「そうなのよ、弟子入り条件は何か気にしているらしいのよ」

友美:「条件をか、電話で話し合ってみた方が良いかな?」

洋美:「由美子は水泳の高飛込み10メートルから飛込みが出来る事とマットでない床でロンバク宙が出来る事かなと思っているみたいだけど友美姉ちゃん話してみる?」

友美:「話してみるわ」

友美は自身のスマホで由美子のスマホに電話をかけるが応答がない。

友美:「今は応答がない。私の着信履歴がついたからしばらく待った方がいいかも」

洋美:「そおね、そのうちかかってくると思うから歩こう。家へ」

友美と洋美は再び家へと歩きだすが洋美が口を開く。

「友美姉ちゃん、榊台小、見て行かない?」

榊台小とは葵奈姉妹が通っていた市立榊台小学校の事である。少し離れた所に榊台中学校がある。

「ああ、少しならいいよ」

二人は榊台小に着くとグランドを見渡す。下校時刻を過ぎているためか児童や教職員の姿はない。

友美:「この小学校、私とお姉ちゃん、洋美、愛美、幸美、加代が通って卒業したね。今は勝幸が通っているけど」

洋美:「歩美姉ちゃんも卒業したけど中学は首女中じゃなくて榊台中だったよね」

友美:「お姉ちゃん、その学校の保健室で依沙美を産んだんだから他の生徒達はどう思ったのかしら?」

洋美:「どうだろうね、伝説として残っているかしら?」

二人は感傷に浸りながら話し合っていたが、それを打ち破るように友美のスマホが電話の着信メロディ響かせた。相手は由美子である。友美は出て応答する。

友美:「もしもし高牧さん」

由美子:「友美姉さん、電話してくれたそうですね」

友美:「はい、弟子入り希望の事ですよね?」

由美子:「ええ、条件、厳しいんじゃないかと」

友美:「そおですね、私達には専属カメラマンがいるんですよ。その人がどう判断するかなんですよ」

由美子:「そうなんですか、私の写メールの写真、そのカメラマンに送って頂けたら有り難いです」

友美:「わかりましたわ喜んで送らせてもらいますわ。佳那子は高牧さんはグラドルとして通用しそうな顔をしていると思うと言ってますから」

由美子:「佳那子ちゃんがですね。彼女はどうやってグラドルに?」

友美:「実は佳那子には最初、内緒でカメラマンに写メールで佳那子の写真を送っていたんですよ。それで佳那子をスカウトしてみようかという話が出て佳那子を見学という名目で誘ったんですよ」

由美子:「そうだったんですか、佳那子ちゃん、さぞかし驚いてビックリしたでしょうね。ところでカメラマンはどんな人ですか?」

友美:「女性なんです。私達が通っている首女中、首女高、首女大の出身なんです」

由美子:「カメラマンが男性でなく女性なら気分は良いと思います。何だかワクワクしそうです。ところで洋美と愛美ちゃん、幸美ちゃんは今いてますか?」

友美:「洋美はいますけど愛美と幸美は今夜、佳那子と一緒に首女中での寝泊まり特訓でいないんです」

由美子:「そうなんですか」

友美:「そうなんですよ、じゃあ洋美に代わりますわ」

洋美:「もしもし由美子、どう足の痛みは?」

由美子:「葵奈姉妹と話し合っていたら完治が早くなりそう」

洋美:「そおなんだ、私だって由美子と話し合っていると友美姉ちゃんの平手打ちの痛さが払拭されそうな気分になるわ」

由美子:「友美姉さん、怖い?」

洋美:「怖くて逆らえないよ、怒るとすぐ平手打ちだから。愛美と幸美は泣いてばっかしなのよ」

由美子:「そおなんだね。さっき友美姉さんの話したとおり弟子入りがかなうかどうかはカメラマン次第なのね」

洋美:「そうだとしか言いようがないわ」

由美子:「そうかしら。ところで最近の練習はどう?飛込みの」

洋美:「この頃、他の学校の女子水泳部との他流練習や他流競技会が多くなっているのよ。首女中のプールは50メートル競泳用、飛込み競技用があるから。夏休みの合宿は首女中、首女高でやる事が多いのよ。他校との合同合宿形式で。去年の夏休み、首女中に寝泊まり合宿だったから」

由美子:「へぇ〜そおなんだね。合宿は楽しい?」

洋美:「練習はメチャメチャ厳しいけど他校の水泳部と一緒に食堂で食事したり、購買部で買い物を楽しんだり、プラネタリウムを観賞したり、校舎の屋上から夜景を見たりとの交流があるから」

由美子:「日数はどれくらいなの?」

洋美:「去年は3泊4日、一昨年もそうだったから今年も恐らく3泊4日かしら?実際はどうなるのか解らないけど」

由美子:「そおなんだ、何だかますますワクワクするわ」

洋美:「そう言われると私、由美子が首女中に転校してくれたら良いのになぁと思ってしまうわ。同じ学級になったら嬉しいけど」

由美子:「私だって洋美にそう言われると首女中に転校して飛込み競技とグラドルをやりたくなりそう。洋美は何年何組なの?」

洋美:「中等部二年B組だから中2Bになるわ。アルファベットで表記するとM2Bになるわ。ちなみに高等部二年B組だとH2Bになるのよ」

由美子:「Mが中等部、Hが高等部なんだね」

洋美:「愛美、幸美、佳那子、悠真さんは四人とも同じ一年A組なのよ」

由美子:「それじゃM1Aなんだね。友美姉さんは?」

洋美:「友美姉ちゃんは三年A組だからM3Aなのよ」

由美子:「そおなんだ、長々話してごめんなさい」

洋美:「いえ、じゃあ友美姉ちゃんにかわるわ」

友美:「もしもし高牧さん楽しく会話してましたね」

由美子:「ええ、何だか飛込み競技とグラドル、ますますやりたくなってきました」

友美:「そうですか、グラドルの事はカメラマン、飛込みの事は私の同級生と話し合っておきます」

由美子:「ありがとうございます、長々と話してごめんなさい。それじゃお休みなさい」

友美:「ええ、お休みなさい。また」

友美と洋美は由美子との会話を終え帰宅の徒につくべく歩きだす。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

首女中の体育館で佳那子は菊池からバク宙と前宙の練習に励んでいた。愛美と幸美、礼子の補助を受けながら。五人とも紺ブルの体操着といったいでたちである。

菊池:「小湊さん、良い感じね」

佳那子:「ええ、ぼちぼちじゃないかと」

菊池:「日々のぼちぼちが大事よ」

礼子:「こうやって佳那子ちゃんが頑張っているのを見ると私も菊池先生から特訓を受けたくなりそう」

愛美:「愛美だって菊池先生の厳しい特訓、楽しい」

幸美:「幸美も同じ。菊池先生の平手打ちが入ったらやる気と気持ちにスイッチが入る」

菊池:「あら、そおなの?あなた達をしごいての特訓だと何だか楽しいわ」

佳那子:「これに悠真さんがいてくれたら・・・・駄目ですか・・・・」

菊池:「悠真は今の状態では無理があるわ。小湊さん、バク宙は良くなってきたわ。前宙に挑戦してみたら」

佳那子:「前宙は板飛込みの抱え型で感覚がつかめそうな気がします」

愛美:「佳那子、前宙やってみてよ」

幸美:「幸美達が補助するから」

佳那子は愛美と幸美の補助を受けながら前宙の練習に励む。

菊池:「良い感じよ、もっと高い位置で回転出来るように」

佳那子:「はい」

菊池:「声が小さい!もっと大きい声を出しなさい!」

菊池は佳那子を厳しく叱り飛ばす。こうして菊池の特訓が続き、終わったのは午後8時半を廻った後だった。礼子は校舎寮へ上がり、愛美、幸美、佳那子、菊池は宿泊部屋に戻って制服に着替えた。

菊池:「ちょっと校舎の屋上で夜景を見てみない?」

愛美:「はーい」

幸美:「はーい」

佳那子:「は〜い」

四人は宿泊部屋を出て校舎に入りエレベーターで屋上へ上がる。屋上に出ると、何人かの生徒が夜景を眺めながら談笑を楽しんでいるのだった。頭上をみあげると漆黒の夜空がひろがっている。佳那子は菊池に寄り添って夜景を眺め、愛美と幸美はお互いに寄り添って夜景を眺める。

菊池:「小湊さん、今日は頑張ったね、練習はキツかったけど」

佳那子:「はい、菊池先生の特訓なら、どれくらい厳しくても楽しいです」

菊池:「そおなの?」

佳那子:「はい、菊池先生のスク水姿、紺ブル体操着姿、制服姿、痺れます。平手打ち以上に」

菊池:「もう小湊さんたら」

そこへ礼子が制服姿で声をかけてきた。

礼子:「あら、佳那子ちゃん、菊池先生と一緒ね」

佳那子:「礼子姉ちゃん」

菊池:「津軽さんも夜景を見にきたのね」

礼子:「はい。愛美ちゃんと幸美ちゃんは、いつも一緒なんだ」

愛美:「はい、礼子姉ちゃん。幸美は愛美にとって唯一無二の妹なの。幸美の目はネイビークリスタルのような美しさだから」

幸美:「幸美だって愛美お姉ちゃんの目はネイビークリスタルそのものようだもん」

礼子:「首女中水泳部にはネイビークリスタルが8個あるという事じゃん」

菊池:「葵奈四姉妹だからよね」

礼子:「佳那子ちゃんの目はブラッククリスタルかブラックオニキスのような美しさがあるわ」

佳那子:「そおですか?ブラックオニキスって確かRPGだったんじゃ・・・」

礼子:「愛美ちゃんと幸美ちゃんは誰似かな?」

愛美:「お母さん似です」

幸美:「弟もお母さん似です」

五人はしばらく談笑を続け礼子は校舎寮の部屋へ、愛美、幸美、佳那子、菊池は宿泊部屋へ戻って畳の上に布団を敷いて消灯して就寝する。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

葵奈姉妹の自宅部屋で友美はカメラマンの長野明子とメールのやり取りをしていた。長野に由美子の写真を送ったのだった。やがて長野からメールが来て友美は内容を見る。

友美:「洋美、今月の15日のグラドル撮影、長野さんが高牧さんを誘ってはどうかと言って来てるよ」

洋美:「へぇ、そおなんだ、でも由美子の家、遠いじゃん」

友美:「前日の14日の晩、ウチに泊まりに来てもらったらどう?」

洋美:「そおね、私、由美子にメールするわ」

洋美は由美子にグラドル撮影の件でメールする。やや間があって由美子から返信のメールが来る。由美子からのメールは

『洋美、メールみたよ。今月の15日の日曜日、首女中で撮影なんだね。私、来て良いの?前日の14日の土曜日に洋美の家に泊まりに行けば良いのかな?ところで今日、学校の授業で何を習ったのかな?』

である。洋美は友美に問いかけた。

洋美:「友美姉ちゃん、14日の土曜日、由美子に来てもらう?それともママに車を出してもらって迎えに行く?」

友美:「そおね、明日の朝、ママに言ってみるか?」

洋美:「言ってみよう」

洋美は由美子へメールを返信し、メールのやり取りをする。それらが終わると友美と洋美は消灯してベッドで寝る。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

首女中の宿泊部屋で就寝していた愛美と幸美は用便のため目を覚ました。

愛美:「幸美、目を覚ましたのね」

幸美:「愛美お姉ちゃん、トイレに行きたくなっちゃった」

愛美:「トイレは宿泊部屋にあるよね」

幸美:「うん行こう」

二人はトイレで用便を済ませるが幸美が愛美にしがみついて抱きつく。

愛美:「ゆっ、幸美どうしたの?抱きついて」

幸美:「愛美お姉ちゃん、幸美、愛美お姉ちゃんに抱きついている時が幸せ」

そこへ佳那子と菊池が目を覚ましてトイレにやってきた。

菊池:「あら、二人とも何しているの?」

佳那子:「トイレで話し合っているのね」

愛美:「幸美と抱き合っているんです」

幸美:「愛美お姉ちゃんと一緒が幸せなので」

菊池:「そうやって毎晩、話し合っているから朝起きれずに平手打ちで叩き起こされているのね」

佳那子:「愛美、幸美って二人で愛し合っている時が一番幸せみたいね」

菊池:「私も小湊さんもトイレのために目を覚ましたから」

菊池と佳那子は用便のためトイレに行き、愛美と幸美は布団に戻って再び就寝する。そして翌日の6月7日土曜日の午前5時、宿泊部屋の目覚まし時計のアラームが鳴り響き、菊池と佳那子、愛美、幸美は目を覚ます。

菊池:「さっ、起きたね。愛美ちゃん、幸美ちゃん、小湊さん、これから朝の特訓だから着替えるのよ。先ずは水着を着てその上に体操着を着るのよ。最初はバク宙と前宙の特訓、その後はプールで飛込みの練習よ」

四人は着替えを済ませると体育館へ歩きバク宙と前宙の特訓に精をだす。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

葵奈姉妹の部屋では友美と洋美が同じタイミングで目を覚ます。時計を見ると午前6時を過ぎたところだった。友美は自身のスマホを手に取る。スマホにはメールの着信を知らせるランプが点灯していた。メールの主は長野からで内容は6月15日の撮影でスポーツウェアメーカーのモデル撮影も行うとの事である。洋美が友美にたずねる。

洋美:「友美姉ちゃん、メールの内容はなあに?」

友美:「15日の撮影の事なのよ。スポーツウェアメーカーのモデル撮影も首女中でやるそうよ。状況次第では高牧さんもモデルとして撮影するかもしれないわ。それに、ゆくゆくは色んなスイミングスクール、スイミングクラブからも指定水着のモデル撮影依頼もあるらしいわ」

洋美:「そおなの?由美子に言った方が良いかな?」

友美:「そおね、言った方が良いじゃん」

洋美:「そおね、メールするわ」

洋美が由美子にメールすると二人は当校のために着替え台所へと移動すべく階段を降りる。台所では育美が朝食のハムエッグを料理していた。友美と洋美が席に着くと育美が口を開いた。

育美:「今朝は愛美と幸美、学校の食堂で朝食よね。夕べから寝泊まり特訓で」

友美:「そうなの。ところで今度の15日の撮影に新しく友達が撮影に加わる見通しなのよ」

育美:「へぇ、そおなの。で、どんな子なの?」

友美:「洋美の同い年の友達が一人。前日の14日にウチに泊まりたいと言っているの」

育美:「へぇ、どんな子なの?」

洋美:「名前は高牧由美子、実家はタカマキパンというパン屋さんなの」

育美:「タカマキパン・・・何か聞いた事あるような無いような名前だわ。その子は首女中?」

洋美:「違うのよ。市立旭中学に通う二年生なのよ。遊園地に遊びに行った時に知り合ったのよ」

友美:「出来たら迎えに行きたいなあと思うんだけとママ、車を出す事は出来ない?」

育美:「そおね、出してあげたいのはやまやまだけど夕食の準備が忙しいから厳しいわ」

友美:「じゃあ高牧さんに来てもらうか、私と洋美が電車で迎えにいくかするわ」

洋美:「由美子に一人で来れるかどうかメールしてみるわ」

こうして友美と洋美は朝食を終えると支度を整え首女中に登校すべく自宅を出てモノレール駅である榊台駅へと歩き出す。モノレールに乗車すると車内には香織、美千代の姿があり友美と洋美は挨拶を交わす。

香織:「友美、洋美ちゃん、おはよう」

美千代:「おはよう洋美。おはようございます友美先輩」

友美:「おはよう、香織、工藤」

洋美:「おはようございます宇都先輩」

香織:「15日の日曜日は首女中で写真集の撮影だよね」

友美:「そうなのよ。実は他校の生徒が一人、葵奈姉妹に加入する見通しなのよ」

美千代:「えっ、そおですか?で、どんな人ですか?」

洋美:「市立旭中学に通っていて私と同じ学年なの。部活は体操部なのよ」

談笑しているうちにモノレールは終点の『首女大付属校前』に到着した。首女中の校門をくぐり校舎に入ると愛美、幸美、佳那子の姿があった。愛美と幸美はすっきりした顔つきであったが佳那子は目に涙を浮かべている。

友美:「おはよう佳那子。特訓はどうだった?厳しかった?」

佳那子:「厳しかったです。涙が出るほど」

洋美:「そおなんだ」

そして放課後の部活が始まると佳那子は抱え型の飛込みの練習に励む。練習終了後の帰宅時、愛美と幸美はお互いに見つめ合う。

愛美:「幸美、今日も1日、気持ち良い練習だったね」

幸美:「うん愛美お姉ちゃん。菊池先生の平手打ち、飛込みの入水時の衝撃は気持ちいいね」

愛美:「明日は悠お兄ちゃんとスイーツバイキングね」

幸美:「そおだったよね。佳那子は小学校時代の同級生と約束だし、悠真さんは真美奈姉ちゃんと一緒に美幸姉ちゃんの家に泊まりに行くようだから」

話し合っている二人に洋美が声をかける。

「愛美、幸美、帰るわよ。早くしろ」

洋美に促され葵奈姉妹は帰宅の徒につくべくモノレールに乗る。

洋美:「佳那子、明日は小学校時代の同級生と会うのが楽しみね。しっかり楽しんできてね」

友美:「同級生にバク転、バク宙、前宙みせてあげてね」

佳那子:「はい、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美も三矢さんと楽しんできてね」

佳那子は自宅の最寄り駅でモノレールを降り帰宅していく。榊台駅で葵奈姉妹は香織と美千代に別れをつげ下車して帰宅の徒につく。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の6月8日の日曜日友美は洋美、愛美、幸美を叩き起こす。

洋美:「友美姉ちゃんの平手打ち、やっぱいたーい」

愛美:「愛美だって」

幸美:「幸美も」

友美:「痛いとか言ってる場合じゃないだろ!今日は悠斗さんと約束事だろ」

こうして四姉妹は朝食と支度を済ませ自宅を出てモノレールにのるべく榊台駅へ歩く。モノレールは首女中とは反対の終着駅行きに葵奈四姉妹は乗車する。終着駅の改札口には悠斗が待っていた。

友美:「悠斗さん、おはよう」

洋美:「悠にい、おはよう」

愛美と幸美:「悠お兄ちゃん、おはよう」

悠斗:「おはよう、友美、洋美、愛美、幸美」

友美:「悠斗さん、今日は、たっぷり御世話にならせて頂くわ」

悠斗:「承知したよ。さっレンタカーで車を借りる手続きをしよう」

悠斗と葵奈姉妹の五人はレンタカー屋へ移動した。悠斗が予約していた為か手続きは手早く済んだ。五人はレンタルしたワンボックスカーにのり出発する。車内の備え付けの時計は午前10時過ぎを表示していた。悠斗は車をスイーツバイキングの店へと走らせる。その助手席に友美が座っている。まん中の列に洋美、最後尾の列に愛美と幸美が座っているのだった。

友美:「悠斗さん、手続き手早いね」

悠斗:「ああ、会員登録した上で予約したからね」

友美:「予約するには、どうしたら良いのかしら」

悠斗:「運転免許証が必要なんだ」

友美:「やっぱりそうね」

洋美:「悠にいと再びスイーツバイキング、久しぶりだなぁ。私は2回目、友美姉ちゃんは今回が初めてじゃない?」

友美:「そうよ」

悠斗:「友美、部活はどう?」

友美:「部活?頑張っているわ、私達、葵奈姉妹は勿論の事、佳那子も頑張っているし、部員じゃないけど悠真さんだって水中ウォーキング頑張っているわ」

愛美:「愛美だって幸美との飛込みは楽しいよ」

幸美:「幸美だって愛美お姉ちゃんと一緒は楽しいよ」

悠斗:「愛美と幸美は大の仲良し姉妹だなぁ。僕が見た限りでは愛美と幸美が一番の仲良し姉妹だと思うよ」

やがて車はスイーツバイキングの店に到着する。店は4月27日に入ったのと同じ店である。悠斗は駐車場に車を停め五人は下車をすると店に入っていく。店に入り五人は円形のテーブル席についてスイーツバイキングを注文する。早速、愛美と幸美は喜びいさんでスイーツを取る。

洋美:「愛美、幸美、行儀よくするのよ!」

悠斗:「じゃあ僕達も取っていこうか」

友美:「そおね」

友美、洋美、悠斗も小皿を取りスイーツやケーキを取っていく。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

時間は前日の6月7日の夕方にさかのぼる。牟田内悠真は井之上真美奈と共に遠藤美幸の自宅に泊まるべく訪問した。

悠真:「これが遠藤さんの御自宅ね。井之上さんの御自宅に匹敵する御屋敷ですね」

美幸:「そうですか?」

悠真:「ええ、プールがあるから、そう思ってしまいますわ」

真美奈:「私の自宅と美幸の御屋敷、比べてしまうから何故かライバル視してしまう癖がついてしまうのよね」

悠真:「同い年のライバルって何かうらやましい感じだわ」

美幸:「悠真さん、真美奈、私の部屋に入りましょう」

三人は遠藤家の玄関から入る。使用人が三人を迎える。

使用人:「お帰りなさいませ、美幸お嬢様。ようこそ悠真お嬢様、真美奈お嬢様」

美幸:「ただいま、戻りましたわ」

悠真:「お邪魔します」

真美奈:「お邪魔致します」

美幸:「とりあえず私の部屋に行きましょう」

美幸は自分の部屋に悠真と真美奈を案内する。部屋の中を悠真は見回す。入って目の前にベランダに出る硝子戸があった。ベッドはツインベッド並みの大きさである。

悠真:「遠藤さん、ベッド大きいですね、一人で寝ているのですか?」

美幸:「ええ、普段は大の字になって寝ます」

悠真:「遠藤さん、真空管を使ったアンプがありますね」

美幸:「はい、悠真さんは真空管を使った音響製品に興味がありますね」

悠真:「ええ、赤々と光る真空管を眺めていると心が洗われるような気がしますので」

真美奈:「悠真さん真空管が好きなんですね」

美幸:「悠真さん、真美奈、先ずは入浴。その後に夕食といきましょう」

真美奈、美幸、悠真の三人は地下室にある風呂場へと移動し入浴する。湯船に浸かりながら三人は談笑する。

悠真:「遠藤さんの風呂、広くて大きいですね」

美幸:「そうですか」

悠真:「由利、咲、池澤先輩、高畠先輩と一緒に入浴できたらもっと良いのになぁ」

美幸:「菊池先生、大水先生、池澤先生、高畠先生と一緒だったらですよね」

真美奈:「悠真さん菊池先生、大水先生と同級生なんですね」

悠真:「今にして思えば誘拐監禁事件があったからこそ井之上さんと遠藤さんに出会う事ができたのかと思うわ」

美幸:「もしなかったとしたら・・・・・」

真美奈:「何て言えば・・・・・・」

悠真:「出会えてなかったかも」

美幸:「友美に香織、洋美ちゃん、礼子ちゃん、美千代ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃん達にも出会えてなかったかもね」

悠真:「とても気持ちいい湯船ですわ。毎日入りたいぐらいに」

美幸:「悠真さん、寝ないで下さい。風邪引きますよ」

悠真:「それ、井之上さんの家の風呂でも井之上さんに言われましたわ」

そして風呂からあがり三人は夕食を取りピアノが置いてある部屋へ移動した。ピアノが置かれている部屋は風呂場と同じ地下階にあり部屋の広さは学校の教室より少し小さめであった。

悠真:「遠藤さんの家のピアノの部屋は地下なんですね」

美幸:「地下の方が騒音公害の心配は少ないですからね。悠真さん私ピアノを弾きますわ」

美幸はピアノを演奏を初めた。風呂上がりの為であるのか、その音色に悠真はうたた寝をしてしまう。はっと目を覚ました時は美幸がピアノ演奏を終えた直後だった。

真美奈:「悠真さん、気持ちよさそうにねてましたね」

悠真:「余りにも音色が良いから寝てしまいました」

美幸:「それじゃ私の部屋に戻りましょうか」

三人はピアノの部屋を出て美幸の部屋にもどる。部屋にもどると三人は談笑を楽しむ。

悠真:「何だか私、井之上さんと遠藤さんから飛込み競技とピアノを習いたくなってきそうですわ」

美幸:「そうですか、明日の朝、起きたら朝の飛込みをやるつもりですから一緒にやりましょうよ」

悠真:「喜んで」

真美奈:「悠真さん飛込みとピアノにも興味が沸いてきましたね」

しばらく三人は談笑したあと消灯して就寝する。そして翌朝の6月8日、美幸の目覚まし時計のアラームが鳴り響き三人は起床する。時計を見ると午前5時を指している。美幸が悠真に話しかける。

美幸:「おはよう悠真さん」

悠真:「おはよう井之上さん。毎日この時間に起きているのですか?」

美幸:「そうですよ、起きたら朝の飛込みをやっているんですから」

悠真:「そうなんですか」

美幸:「さっ悠真さんも水着に着替えましょ、私も着替えますから」

真美奈:「私も着替えますわ」

三人は水着に着替えると庭に出てプールに移動する。遠藤家のプールは直径7.5メートル、深さ5メートルの円形プールで高さが異なる三つの飛込み台がある。それぞれ高さは1メートル、3メートル、5メートルであろうか。

美幸:「さあ、悠真さんに真美奈、練習を始めましょ」

真美奈:「うん。悠真さん私達が手ほどきして差し上げますわ、厳しくなるかもしれませんが」

悠真:「はい、井之上さんと遠藤さんにだったら少し厳しくても頑張れそうな気がしますわ」

三人は飛込みの練習に精を出す。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

また一方、佳那子は自宅の分譲マンションに小学校時代の同級生三人を招いて写真集を見せていた。

同級生A:「これが佳那子のグラドルデビューの写真集なんだね」

同級生B:「葵奈姉妹なんだね」

同級生C:「あれ、巻末にBlu-ray Discの袋が付いているね」

佳那子:「これは初回特典限定版なのよ」

同級生A:「そうなんだ」

佳那子:「後で見てみる?」

同級生B:「そおね、写真集を見終わった後で」

同級生C:「場所は古めかしい学校みたいだね」

佳那子:「廃校になった中学校で撮影したから」

同級生A:「ところでタイトルの葵奈姉妹なんだけど」

佳那子:「私が通っている首女中の部活の先輩とクラスメートなのよ」

同級生B:「部活の先輩とクラスメート?」

佳那子:「四姉妹の内、三年生と二年生が1人づつで一年生が二人。二人いる一年生は双子で同じクラスなのよ」

同級生C:「そおなんだ。四人とも顔が似ているね」

佳那子:「四人ともお母ちゃん似の姉妹みたいだからね」

同級生A:「名前は三年生が葵奈友美、二年生が洋美、一年生が愛美と幸美になっているんだ」

同級生B:「確か部活は水泳部飛込み競技部門だったよね、部活の練習は厳しい?」

佳那子:「厳しいよ。特に三年生の友美姉ちゃんは怒ると平手打ちを食らわすのよ。私、何回も叩かれたわ」

同級生C:「え〜っ、こわ〜。背筋が寒くなるわ、痛くないの?」

佳那子:「最初は痛くて涙を流して泣いたけど、今はメチャクチャ気持ちいいわ」

同級生A:「信じられないわ、とにかく写真集を見てみよう」

同級生B:「校舎の中では廊下や教室でも撮影したんだ」

同級生C:「校舎古いんだ」

佳那子:「老朽化による統廃合で廃校となったからね」

同級生A:「あーっ、制服脱ぐ様子の写真がある」

佳那子:「制服の下に体操着を着こんでいたのよ」

同級生B:「写真集に写っている体操着、足丸出しじゃん」

同級生C:「私達の学校のモノとは違うわ」

佳那子:「ひと昔の紺ブル体操着だから」

同級生A:「へぇ!そういうのを着て撮影なんだ」

同級生B:「小学校時代とは全然ちがうね」

同級生C:「体育館でも撮影したんだ」

佳那子:「プールはもっと老朽化が酷かったよ」

同級生A:「グランドでも撮影したんだ」

同級生B:「準備体操しているのもあればランニングしているのもあるわ」

同級生C:「あーっ、バク転にバク宙、前宙しているのがあるわ」

佳那子:「やっているのは双子の一年生だよ」

同級生A:「そろそろ初回特典のBlu-ray Disc見てみようよ」

佳那子:「うん、わかったわ」

佳那子は初回特典限定版のBlu-ray DiscをBlu-ray Discプレーヤーにセットして再生させる。テレビ画面に再生画像が写し出される。最初に出てきたのは廃校になった中学校を背に葵奈姉妹と佳那子である。そして一人一人の自己紹介画面が流れた後、五人で写真集に載っているの写真と似たような動画が流れていく。

同級生A:「まずは校舎の前で撮影は風でスカートがめくれ上がる様子だね」

佳那子:「この時は紺ブル体操着の上に制服を着用した上での撮影だったのよ」

同級生B:「うわぁ恥ずかしそう」

同級生C:「ねぇ佳那子、恥ずかしくなかったの?」

佳那子:「いや楽しかったわ、マリリン・モンローになりきった感覚だったから」

同級生A:「あっ制服を脱ぐシーンも映っている。下に体操着を着こんでるんだ」

同級生B:「グランドではドローンを使って撮影したんだ」

同級生C:「そうなんだ」

動画を見終わるとトップ画面になり色んなシーンの選択が可能になった。

同級生A:「なんか特別映像があるわ」

同級生B:「なんの映像かな」

佳那子:「私のスタントシーンなのよ」

同級生C:「スタントシーン?見てみようよ」

同級生A:「ああっ、佳那子、叩かれているじゃん」

同級生B:「張り倒されて泣き出したじゃん」

同級生C:「痛そう。痛くなかった?」

佳那子:「叩かれた時は痛かったけど今は達成感と充実感を感じているわ」

同級生A:「そおなんだ。売れ行きは書籍版、電子書籍版合わせて一万数千強なんだね」

同級生B:「次の写真集の撮影はいつなの?」

佳那子:「来週の日曜日の6月15日、首女中でやるのよ」

同級生C:「誕生日の前日じゃん。その時は何をやる様子を撮影するのかな?」

佳那子:「当日になってからのお楽しみみたいだわ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

スイーツバイキングの店で悠斗と友美、洋美、愛美、幸美の五人はスイーツの飲食を楽しんでいた。

愛美:「やっぱりスイーツは良いよね、幸美」

幸美:「うん愛美お姉ちゃん、スイーツはやっぱりバイキングで食べるのが一番よね」

愛美:「大好きな妹である幸美と一緒に食べるスイーツは美味しいね」

幸美:「幸美だって愛美お姉ちゃんと一緒に食べるスイーツは美味しい。愛美お姉ちゃんのお乳と同じ位美味しい」

愛美:「幸美ったら、そんなにお姉ちゃんのお乳美味しい?」

幸美:「美味しい。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんのよりも」

洋美:「こらぁ愛美、幸美、店の中でそんな事言うな!全く行儀が悪いんだから」

悠斗:「葵奈姉妹はにぎやかだなぁ」

友美:「確か悠斗さん、兄弟姉妹は」

悠斗:「いないよ、一人っ子だから」

やがてバイキングの終了時刻が近づいてきたので五人は店を出る準備を整えた。時刻は正午を過ぎていた。勘定を済ませ店を出た後、レンタカーに乗り悠斗はハンドルを握り車を走らせる。車は廃校になった中学校の前で停車する。

友美:「ここは写真集の撮影を行った所だわ」

洋美:「この後に悠真さんの救出現場へ移動したんだよね」

愛美:「なんか懐かしい気分になっちゃうよね」

幸美:「本当、通っていないけど何故か懐かしいんだよね」

悠斗:「写真集の撮影が思い出になった為かな」

数分間、感傷に浸った後、悠斗は車を走らせる。次に停車した所は悠真の救出現場であった。五人は車から降り辺りを見回す。住宅は少なく人通りも無く地方の農村のような雰囲気である。

悠斗:「相変わらず地方みたいだなぁ」

友美:「洋美、愛美、幸美、悠真さんが監禁されていた家はどれなの?」

洋美:「確かあれだったわ」

洋美が指差す方向には二、三軒の家がある。五人は歩いて近づいていく。やがて黄色い規制線のテープ状のロープが張られている家に出くわした。規制線の向こう側で数人の警察関係者とおぼしき人物が家宅捜査を続行しているのだった。五人は諦めて来た道を引き返し車へと戻る。

悠斗:「あれから一ヶ月余りなんだね」

友美:「まだまだ家宅捜査は続くんだね」

洋美:「近所の人達はどう思ったのかしら?」

悠斗:「おそらく犯人は近所づきあいはしない方じゃないかな」

友美:「だとしたら、近所の人達はビックリしただろうね」

愛美:「ねぇ、次は何処へ行く?」

幸美:「この辺りは、めぼいモノはないみたいだから」

悠斗:「とにかく車を走らせよう」

五人はレンタカーに乗り悠斗は車を走らせる。やがて車はとあるショッピングセンターに到着する。やや離れた所にはスポーツセンターらしき大きめの建物もある。駐車場に車を止め、五人は降車して歩く。そのスポーツセンターの建物を見た愛美と幸美は思わず声をあげる。

愛美:「あーっ、ここ来たことある」

幸美:「幸美も来た事ある。愛美お姉ちゃんと一緒に」

悠斗:「えっ!そおなの?」

スポーツセンターの建物には『ピリカスポーツ』という看板が掲げられているのだった。

愛美:「ここ確か、まりなちゃんが習っている体操教室があるじゃん」

幸美:「そうそう、チアリーディングのチームの子達が通っているチアリーディング教室もあるわ」

洋美:「えっ、ここなの?」

友美:「そうだったの?」

悠斗:「愛美と幸美、交遊関係が豊富なんだ。とりあえずショッピングセンターでも回ってみようか」

五人はショッピングセンターの中に入ろうとエントランスに近づく。その時、愛美と幸美に声をかける者達がいた。

「愛美!幸美!」

「愛美ちゃん!幸美ちゃん!」

五人が振り返った先の声の主は十数人の女子の集団であった。彼女達はピリカスポーツのチアリーディング教室の生徒でありチアリーディングチームのメンバーである。メンバー達は声をかける。

メンバーA:「愛美、幸美、久しぶり」

メンバーB:「今日はどうしたの?」

メンバーC:「誰と一緒なの?」

愛美:「お姉ちゃん達と一緒なの」

幸美:「それと、お姉ちゃんの彼氏とも一緒なのよ」

メンバーD:「そおなんだ」

メンバーE:「それで何を楽しんでいたの?」

愛美:「御兄ちゃんと一緒にスイーツバイキングに行って来たのよ」

幸美:「幸美もよ。みんなは?」

メンバーF:「チアリーディング教室が終わって皆と談笑してたのよ」

そこへ洋美が割り込んでチームのメンバーに声をかける。

「みんなごめんね、私は愛美と幸美の三姉、洋美なの。先を急ぎたいので連絡先の交換ですませてくれませんか?」

チームのメンバーは洋美、愛美、幸美と連絡先を交換をする。交換し終えると葵奈姉妹は悠斗と共にショッピングセンター内を歩き始めた。最初に目に入ってきたのはスイムウェアーの店だった。悠斗と葵奈姉妹は陳列されている水着を見る。そんな五人を冷やかな目付きで眺める人影がいた。それは逆茂木高校三人衆である。彼らは休日のレジャーのつもりでショッピングセンターに来ているのであった。

逆高生A:「おい、あれ見ろよ」

逆高生B:「あれって、葵奈姉妹の愛美と幸美じゃん」

逆高生C:「本当だ。でも他に女二人、男一人の計、五人だぜ」

逆高生A:「とりあえず様子を見ようぜ」

逆高生B:「うかつに手を出して騒がれたら面倒だな」

逆高生C:「そうなったらサツに通報されかねないからね」

三人は悠斗と葵奈姉妹に気付かれないように様子を見る。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

朝の飛込みの練習後、朝食をとった真美奈、美幸、悠真は地下のピアノ部屋へ移動した。悠真は真美奈と美幸から手ほどきを受けながらピアノの練習に励んだ。

悠真:「井之上さんと遠藤さんから習うのは楽しいわ。飛込み競技にピアノも」

真美奈:「そう言って下さると教えがいがありますわ」

美幸:「同感ですわ」

悠真:「やっぱり井之上さんは『真美奈姉ちゃん』と呼ぶべきではないですわ。井之上さんから私、習わなくてはならない事が多そうだし」

美幸:「さすがは悠真さん。その気持ちがあれば上達は早いと思いますわ」

悠真:「最近、逆茂木高校の三人組と鉢合わせがないから気持ちは落ち着くわ」

真美奈:「私が車で送り迎えをしているからですわ」

悠真:「図々しいけど毎日送り迎えして下さると助かりますわ。私の家は逆茂木高校からさほど遠くないですから」

真美奈:「辛い地理的だそうですね」

美幸:「その三人組ってどこに生活圏をもっているのか些か気になりますわ」

悠真:「最初に接触があったのは自宅からの最寄り駅の駐輪場だったわ。その時の目付き、獲物に飢えた狼のようで怖かったわ。今でも鳥肌が立つわ、思い出す度に」

真美奈:「その三人組、最近は愛美ちゃんと幸美ちゃんに目をつけるようになったみたいですね」

悠真:「愛美と幸美、休み時間には二人で口付けを交わしているわ」

美幸:「愛美ちゃんと幸美ちゃんにとって二人で行動する事はデートなのかしらね。さっ、悠真さん、練習を続けましょ」

悠真:「はい」

悠真は真美奈と美幸からピアノの練習に勤しむ。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

自宅の分譲マンションの台所で佳那子と小学校時代の同級生三人は昼食を楽しんでいた。メニューは両親が宅配で注文したピザである。

同級生A:「何だか佳那子、最近変わったような気がする」

佳那子:「変わったて何が?」

同級生B:「顔つきかしら」

同級生C:「そうそう顔つきに精悍さが入ったような感じ。気のせいかしら」

佳那子:「そうかしら?ところで昼食終わったら外に出て散歩しない?」

同級生A:「散歩って?」

同級生B:「近くの運動公園?」

佳那子:「そおよ」

同級生C:「そこで何をするつもり?」

佳那子:「着いてからの楽しみよ」

食事を終えると佳那子と同級生三人は自宅を出てエレベーターに乗る。エレベーターが一階に着くと四人はマンションのエントランスホールから外に出て運動公園へと歩きだす。運動公園は佳那子が住んでる分譲マンションの側にある。

同級生A:「着いたけど」

同級生B:「何をするつもり?」

佳那子:「これなのよ」

佳那子は同級生三人の眼前でバク転を披露した。

同級生A:「え〜っ佳那子」

同級生B:「どうしたの!?」

同級生C:「出来るようになったの?」

佳那子:「クラスメート、そのお姉ちゃん達に特訓されて出来るようになったの」

同級生A:「小学校時代は出来なかったのに」

佳那子:「今度はこれよ」

佳那子はバク宙を披露した。三人の同級生は佳那子の運動神経ぶりに舌を巻いた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ショッピングセンターで色んな店を見回った友美、洋美、愛美、幸美、悠斗はレンタカーに乗りショッピングセンターを後にする。時間は午後4時になろうとしていた。

悠斗:「車の返却予定時刻まで後、3時間だな」

洋美:「悠にいがレンタカーではなくマイカーを持っていたら、もっと長く楽しめるかも」

愛美:「それならナイトドライブで夜景を楽しめるかも」

幸美:「幸美も一緒。愛美お姉ちゃんと一緒に見る夜景は最高」

友美:「そういうわけにはいかないわよ。明日があるわよ。夜景を楽しみたいのなら首女中に寝泊まりして校舎の屋上から眺めたら良いじゃん」

悠斗は車を走らせる。その走りぶりを愛美と幸美は予想を立てた。

愛美:「このまま走ったら由美子姉ちゃんのパン屋さんじゃん」

幸美:「何となく方向が似てる」

悠斗:「実は、美味しいパン屋があるから、そこでパンを買って帰ろうかと思うんだ」

悠斗はハンドルを握り車を走らせ、あるパン屋の前でハザードランプを点灯させ車を停める。

友美:「あれ!ここ高牧さんのパン屋じゃん」

洋美:「由美子のパン屋、タカマキパンじゃん」

愛美:「由美子姉ちゃんのパン屋じゃん」

幸美:「悠お兄ちゃんもタカマキパン知っていたの?」

悠斗:「うん、僕らの近所や職場でも噂のパン屋なんだ」

五人は車を降りてパン屋に入る。店に入ると由美子が出迎える。

由美子:「いらっしゃいませ。あっ、友美姉さんに洋美、愛美ちゃん、幸美ちゃん、三矢さんも!」

洋美:「由美子、今日は家の手伝いなんだ」

由美子:「そうなの。葵奈姉妹が三矢さんと一緒だなんてビックリだわ」

友美:「悠斗さんとは愛美と幸美が最初なのよ」

由美子:「えっ、そおなんですか?」

友美:「洋美、愛美、幸美ったら悠斗さんの妹になりたいとうるさいのよ」

由美子:「それじゃ三矢さんは・・・友美姉さんの彼氏です・・・か?」

愛美:「友美姉ちゃん、赤面してる!」

幸美:「本当、友美姉ちゃんには嫌でも悠義兄ちゃんと結婚してもらうんだもん」

友美:「こらぁ!余計な事いうな!」

由美子:「やっぱり姉妹は活気があって良いなぁ」

友美:「高牧さんだってお姉ちゃんになるんじゃありません?」

由美子:「そうですけど私の場合は年がかなり離れる事になるので」

葵奈姉妹は由美子との会話を楽しんだ後、パンの購入をすませる。悠斗もパンの購入を済ませ車を発進させる準備をする。

洋美:「由美子、来週は撮影よ」

由美子:「うん楽しみだわ」

友美:「じゃあね高牧さん」

愛美と幸美:「由美子姉ちゃん、またね」

悠斗:「おじゃましました。また御縁がありましたら」

葵奈姉妹は車に乗り悠斗は帰路に着くべくレンタカー店へと進路を取りハンドルを握る。レンタカー店の近くのガソリンスタンドで悠斗は返却前の給油を済ませレンタカー店へと戻る。五人は下車し悠斗は返却の手続きをする。それらが終わるころには時刻は午後6時を回っていた。

友美:「悠斗さん、今日はありがとうございました」

洋美:「悠にい、今日はありがとう」

愛美と幸美:「悠お兄ちゃん、今日はありがとう」

悠斗:「どういたしまして。来週は首女中で次の写真集の撮影だよね」

友美:「そうですよ。私達、楽しみなのです」

悠斗:「僕だって次の写真集、楽しみだよ」

友美:「ねぇ悠斗さん、時間に余裕ある?」

悠斗:「そこそこあるよ。ただ車は返却したから遠くは行けないよ。周辺なら」

友美:「もう少し一緒に一緒にいれたらと思うけど」

悠斗:「じゃあ家までついて行っても良い?」

友美:「じゃあついてきて」

悠斗は葵奈姉妹と一緒にモノレールに乗る事にした。車中で会話を再開する。

友美:「悠斗さんと一緒にモノレールに乗るのは初めてだわ」

悠斗:「そうだね、洋美、愛美、幸美と四人で乗った事はあるけど友美とは初めてだよ」

洋美:「そうね、私が愛美、幸美と一緒に友美姉ちゃんには内緒で悠にいに会っていたからね。でも友美姉ちゃんに見つかってバレて物凄く怒られた上に平手打ちされたわ」

愛美:「あの時の友美姉ちゃんの平手打ち痛かった」

幸美:「幸美だって」

友美:「アイドルは異性交際、厳禁ものよ。ファンがヤキモチ焼くから」

悠斗:「やっぱりアイドルにスキャンダルは致命的だよね。でもそれを逆手に取って知名度、人気度を上げようとする事もあり得そうだなぁ」

友美:「それは事務所が企ててるケースがほとんどだと聞いた事あるわ」

洋美:「アイドル同士の恋愛って憧れや嫉妬に発展する事が多いみたい」

話し合っているうちにモノレールは『榊台』に到着し五人は下車をして改札を通りロータリーに出る。

悠斗:「この駅のロータリー久々だなぁ」

友美:「悠斗さん、ウチまで送ってくれる?」

悠斗:「喜んで」

洋美:「悠にいが住んでる家は・・・」

悠斗:「市営住宅だよ。オフクロと二人で暮らしているんだ」

愛美:「悠お兄ちゃん、母子家庭なんだ」

幸美:「母子家庭って香織姉ちゃんと同じだぁ」

悠斗:「その人は一体?」

友美:「香織は私の同級生で同じ部活なのよ」

悠斗:「同じ部活?」

友美:「フルネームは宇都香織、クラスは違うけど部活は同じ水泳部飛込み競技部門なのよ」

悠斗:「宇都さんだね。どこで話かわるけど今日寄ったパン屋さんの女の子と知り合いなんだね。ビックリしたよ」

洋美:「悠にい、もしかして由美子と知り合いなの?」

悠斗:「いや時々、パンを予約して買う事が何度もあったんだ。別に恋愛感情を抱くつもりは毛頭無いよ」

話し合っているうちに五人は葵奈家の自宅に到着した。

悠斗:「友美、洋美、愛美、幸美、俺は此にて失礼するよ」

友美:「悠斗さん送ってくれてありがとう」

洋美:「悠にい、気をつけてね」

愛美と幸美:「悠お兄ちゃん、気をつけてね。今日はありがとう」

悠斗:「いえ、こちらこそ。来週の撮影、頑張ってね」

悠斗はモノレールの駅『榊台』へと歩き出す。四姉妹は、その後ろ姿を見送り続けた。悠斗の姿が見えなくなるのをまって友美は三人の妹を促した。

「洋美、愛美、幸美、家に入るぞ」

四姉妹は家に入る。その日の晩、入浴中に愛美と幸美は話し合う。愛美は小声で幸美に話しかける。

愛美:「幸美との入浴は楽しいわ」

幸美:「幸美だって大好きな愛美お姉ちゃんとの入浴は楽しい」

愛美:「入浴となると、妹ちゃんのおっぱい、見れるから」

幸美:「幸美だって大好きな愛美お姉ちゃんのおっぱい見れるだもん」

愛美:「体操着姿もスク水姿も良いけど、おっぱい丸出しのスッポンポンも魅力的だわ」

幸美:「幸美、愛美お姉ちゃんとお揃いが一番幸せよ。愛美お姉ちゃんの目、宝石のように美しい。ああ愛美お姉ちゃん、キレイ素敵」

愛美:「幸美の目だって宝石のように美しいわよ。幸美と一卵性双生児の双子でよかったわ」

幸美:「幸美、愛美お姉ちゃんと結婚したい」

愛美:「愛美お姉ちゃんだって将来は幸美と二人暮らしして人生を送りたいわ。幸美との結婚、熱望したい」

愛美は幸美に口付けを交わす。

幸美:「愛美お姉ちゃんのキス、気持ちいい」

愛美:「幸美の唇にキスしたら気持ちよくて美味しいわ」

幸美:「キスも良いし、平手打ちも気持ちいい」

愛美:「やだぁ、菊池先生には及ばないわよ。でも大好きな妹ちゃんにキスと平手打ちできるなんて幸せだわ」

幸美:「あははっ、それでこそ愛美お姉ちゃんだわ。それなら両手首、両足首をロープで縛られて愛美お姉ちゃんに叩かれたくなりそう」

愛美:「あははっ、幸美ったら。でも・・・それじゃ一方的に幸美が叩かれぱなしになっちゃうから可哀想よ。なんだったらお互いに頬を叩き合う方が気持ちいいような・・・・」

幸美:「えっ!それじゃ幸美が大好きな愛美お姉ちゃんを叩かないといけないじゃん」

愛美:「それだったらグラドルでの動画撮影でBlu-ray Disc及びDVDの特別映像コーナーで見れるようにしてもらうのはどうかな?」

幸美:「良いじゃん。カメラマンの長野明子(おさの あきこ)さんに進言してみたら良いかも」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遠藤家で過ごした悠真と真美奈は美幸に別れをつげ井之上家の自家用送迎車で帰宅の徒についた。その車内で悠真は真美奈に例を述べた。

悠真:「井之上さん、今回はありがとうございました」

真美奈:「いえ、どういたしまして。悠真さん、美幸の家はどうでしたか?」

悠真:「井之上さんの家、遠藤さんの家、どちらも御屋敷のように威厳がありますね。それに比べると私の家は貧弱というか貧乏というか、お世辞にも」

真美奈:「そんな事はないですよ」

話し合っているうちに車は悠真の自宅に到着し悠真は下車して真美奈と運転手に別れを告げる。

悠真:「井之上さんありがとうございました。運転手さんもお気をつけて」

真美奈:「おやすみなさい。また明日」

運転手:「ありがとうございます。おやすみなさい、悠真お嬢様」

井之上家の自家用送迎車は反転し井之上家へと帰っていく。そのテールランプが見えなくなると悠真は家へと入っていく。

悠真:「ただいま」

悠真の母:「お帰り」

悠真の父:「お帰り、どうだった?井之上さん、遠藤さんの家は」

悠真:「両者とも立派な御屋敷だったわ」

悠真の母:「井之上さんも遠藤さんも、いいとこのお嬢ちゃんだよね」

悠真の父:「車もかなりの高級車だったな」

悠真の母:「家が高級だと車も高級になる傾向があるのね」

悠真の父:「よく車と家、女は分相応というらしいけどまさにそのとおりかもね」

悠真の母:「さっ食事にしましょう」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

佳那子は小学校時代の同級生三人と別れたあと自宅の分譲マンションにもどり夕食と入浴を済ませ自室の勉強机で予習をしていた。スマホのメール着信音がなり響く。すかさず見て見るとメールの送り主は洋美からである。

(洋美姉ちゃんからだわ、内容は・・・・)

『佳那子、今日は同級生と会ってどうだった?私は友美姉ちゃん、愛美、幸美と一緒に悠にいとスイーツバイキングに行ってきたよ。愛美と幸美が行儀わるくて恥ずかしかったわ』

佳那子は返信のメールを入れる。

『今日、同級生にバク転見せたよ。ビックリしてた。また明日、モノレールで会いましょう』

佳那子は予習を終えると消灯して就寝する。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ショッピングセンターで葵奈姉妹を見かけた逆校三人衆は帰宅途中の電車の車内で話し合っていた。

逆校生A:「今日は葵奈姉妹を見かけるとは想定外だったな」

逆校生B:「本当、思ってもいなかったわ」

逆校生C:「たまたま来ていたのか、よく来てるのか謎だな」

逆校生A:「愛美と幸美の二人、人間関係が豊富だな」

逆校生B:「ツレが多いのかな」

逆校生C:「そうだとしてら俺達のツレは世辞にもならないな」

逆校生A:「今日の出来事、真木地に言ってみるか」

逆校生B:「ああ、それ良いなぁ」

逆校生C:「どんな顔するだろうな」

三人は談笑を続けた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

6月9日月曜日、モノレールにて葵奈姉妹は佳那子と会う。

友美:「おはよう佳那子」

洋美:「おはよう佳那子。メール見てくれたのね」

佳那子:「おはようございます友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん。今日から夏服ですね。私も今日から夏服で白地に緑の夏服のセーラー服です」

友美:「私は勿論の事、洋美、愛美、幸美は半袖のカッターシャツよ」

愛美と幸美:「おはよう佳那子」

佳那子:「おはよう愛美、幸美」

洋美:「昨日は小学校時代の同級生と楽しんできた?」

佳那子:「はい。小学校時代に出来たら、と思うのがありましたけどね」

そこへ香織と美千代も話しかけてきた。香織の夏服の制服はパステルピンクのカッターシャツ(女性用)でスカートは赤のチェック柄のスカートであり、美千代の制服は白地に赤の夏服のセーラー服でスカートも赤であった。

香織:「おはよう」

美千代:「おはよう」

やがてモノレールは終点に到着し葵奈姉妹をはじめとする首女中と首女高の生徒達は下車して校門へと歩いていく。同時に悠真も、真美奈も、香織も、菊池も到着し校内へと入っていく。中等部1年A組では悠真を囲んで愛美、幸美、佳那子が談笑を楽しんでいた。

愛美:「一昨日から昨日は悠真さん、真美奈姉ちゃんと一緒に美幸姉ちゃんの家に泊まってたけど楽しかった?」

悠真:「ええ、機会があれば、また泊まりたいぐらいだわ」

佳那子:「私は真美奈姉ちゃんの家は泊まった事ありますが美幸姉ちゃんの家は、まだ一度も泊まった事はないです」

幸美:「幸美は小学校時代、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美お姉ちゃんと一緒に泊まった事ある」

佳那子:「機会があれば泊まりたいわ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

中等部二年B組では洋美が美千代、礼子と一緒に談笑していた。

美千代:「へぇ、そおなんだ。『由美子』という旭中の子、グラドル&飛込み競技に興味を抱いているんだね」

洋美:「そおなのよ」

礼子:「もし仮に首女中に転校となったら通学が問題だよね。私みたいに校舎寮で生活でないと厳しいかも」

洋美:「由美子の家から首女中までは片道、一時間から一時間半以上はかかるみたいだわ」

美千代:「それなら遅くても6時半までに出ないと間に合わないわ」

洋美:「今度の日曜に首女中で写真集の撮影だから全日の土曜日の晩は葵奈家(うち)に泊まりに来てもらう予定なのよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、旭中では由美子が麗美奈と会話をしていた。旭中でも衣替えの準備期間で夏服を着用している者がいる。

麗美奈:「今度の土曜日の晩、洋美の家に泊まりに行くのね」

由美子:「そおよ、電車とモノレールに乗っていくつもりよ。洋美に友美姉さん、愛美ちゃん、幸美ちゃんと会えるから何だかワクワクするわ」

麗美奈:「楽しみなんだね」

由美子:「どんな所に家があるのかも楽しみだわ」

麗美奈:「ウチの学校では衣替えの準備期間だけど首女中もそうかな?」

由美子:「首女中も衣替えの準備期間に入っているわ」

麗美奈:「首女中は色んな型の制服があるみたいだけど夏服もそうかね」

由美子:「写メールで送ってもらおうかな」

麗美奈:「由美子、葵奈姉妹に加入を考えているの?」

由美子:「そうよ」

麗美奈:「条件、厳しいんじゃ」

由美子:「何としてでもクリアしてみるつもりよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

県立逆茂木高校では逆校三人衆が真木地に話しかけていた。

逆校生A:「おい真木地、昨日、葵奈姉妹を見かけたぞ」

真木地:「えっ、そおなの?」

逆校生B:「ああ、そうだ」

真木地:「どこで?」

逆校生C:「ショッピングセンターでな」

真木地:「ショッピングセンターで!?」

逆校生A:「ああ、そうだ。なんだったら二千でこっそり撮影した写真、お前のスマホに送信してやってもいいぞ」

真木地:「いっ、いらないよ」

真木地は三人を振り切って逃げていく。

逆校生B:「あ〜っ逃げちまった」

逆校生C:「他の奴に売ってみるか」

逆校生A:「二千円なら俺達三人での喫茶での飲み代としていけるからな」

三人は、嘯くような顔つきに変貌していく。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

一時間目終了後の休み時間、教室で愛美と幸美は各々のスマホに着信されたメールのチェックをしていた。そのほとんどはチアリーディングチームのメンバーからであったが愛美のスマホに驚くべきメールが一通入っていたのだった。送信主は真木地からのものである。

(えっ!まさか・・・・)

愛美は驚きの表情を露にする。それを幸美が問いかける。

「愛美お姉ちゃん、どうしたの?」

「幸美、昨日の悠お兄ちゃんとのデートの様子、逆校三人衆に撮影されていたらしいのよ」

「えっ!まじで!?愛美お姉ちゃん」

「そうなのよ幸美。真木地さん、逆校三人衆から愛美達の写真を二千円から買わないかと打診されたらしいのよ」

「どうする?愛美お姉ちゃん」

「そおね、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、菊池先生に相談しようかしら」

「そうしようよ。悠真さんじゃ荷が重いし」

その時、少し離れた所で談笑していた悠真と佳那子が話しかけてきた。

悠真:「愛美、幸美どうしたの?」

佳那子:「二人とも顔色が良くないようだけど、何かあったの?」

愛美:「悠真さん、実は愛美達、逆校三人衆に盗撮されていたらしいんです」

悠真:「盗撮されていた?」

愛美:「そうですよ、逆校に通う写真集のお客さんからのメールで明らかになったのよ。そのお客さんは逆校三人衆から二千円で愛美達の写真を買わないかと言われたらしいんです」

悠真:「愛美、幸美の写真を二千円で?」

愛美:「はい、そのお客さんは要らないと言って断ったみたいですけど、他に買わされた人いるらしくて」

悠真:「昼休みに由利と咲に言おうかしら」

佳那子:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんにも言った方が良いじゃん」

そして二時間目終了後の休み時間、愛美、幸美、佳那子、悠真の四人は話し合う事になった。悠真の顔つきは沈痛の表情である。

悠真:「本当だったら逆校三人衆の件は私だけのものであるはずなのに愛美と幸美を巻き込む形になってしまうなんて。下手すると佳那子にも影響が及ぶかも知れないわ」

佳那子:「まあ悠真さん、気落ちしないで下さい。私が住んでいる所は逆校から離れているんですから」

愛美:「そう言えば悠真さんの家、逆校の近くだわ」

幸美:「逆校三人衆の氏名、住所はどうなんだろうね」

悠真:「県立逆茂木高校だから、通っている生徒は遠くない所に住んでいるのがほとんどだと思うわ。私立だったら遠い所から通っているケースも多いわ」

佳那子:「悠真さん詳しいんですね」

愛美:「さすがに氏名は知る事は無理だなぁ」

幸美:「かと言って首女中から逆校にスパイを送り込むなんても出来るわけがないし」

悠真:「とりあえず由利と咲に相談としかないわ」

そして昼休み、愛美と幸美、佳那子は友美と洋美に逆校三人衆の盗撮の事実を告げる。悠真は菊池と大水に会っているため姿はない。

友美:「そおか、私達、盗撮されていたのか」

洋美:「となると、どんな感じで写っているのか気になるわ」

愛美:「全く気がつかなかったから恐らく後ろ姿じゃないかな」

幸美:「場所がショッピングセンターだから品定めに夢中になっていた時かな」

友美:「逆校三人衆の写真は幸美がおさえたから人物像はつかめているから」

洋美:「ショッピングセンターで廻った店はけっこうあったからどの店で写されたのか気になるわ」

愛美:「部活がおわって下校時に真木地さんにTELしてみようかな」

幸美:「それ良いと思うよ」

一方、悠真は菊池、大水と会話をしていた。

菊池:「あら、そおなの」

大水:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、撮られていたの?」

悠真:「そうみたいだけど、どんな感じで写っているのかは不明だわ」

菊池:「まるで神出鬼没みたいな行動だわ」

悠真:「私は逆校三人衆からは遠ざかっているけど愛美と幸美が目を付けられてるみたい」

菊池:「一応、警戒した方が良いよね」

悠真:「ところで今度の日曜は首女中(ここ)で葵奈姉妹の写真集の撮影をやるよね」

菊池:「ええ、葵奈姉妹の専属カメラマンが私と咲、悠真の二つ上の先輩だから。私が顧問の水泳部にエキストラ要請が来てるのよ。一応は任意出席だけどね」

大水:「私の陸上部も一応任意でエキストラだから」

悠真:「カメラマンの先輩って?」

菊池:「長野明子(おさの あきこ)さんよ」

悠真:「私が誘拐された時の事、覚えてるかも」

大水:「覚えていると思うわ。悠真が行方不明になった時、全校生徒が大騒ぎだったから」

菊池:「高等部の卒業式の時、私と咲、ヤマキの三人で記念写真をとったわ。成人式も、そのメンバーだったから」

悠真:「ヤマキ・・・・・」

そして放課後の部活時、葵奈姉妹をはじめとする水泳部員達は練習に励む。悠真は水中ウォーキングから飛込みへと練習メニューを変えていった。練習が終わって下校時、首女中と首女高の生徒達はモノレールに乗車していく。その車内で友美は香織と、洋美は美千代と、愛美と幸美は佳那子と談笑を楽しんでいた。やがてモノレールが走りだし車内の生徒達は窓外の景色を眺める。窓外の空は西日が空と建物等を山吹色に染めていた。海面も西日を反射して山吹色に輝いている。佳那子が下車する駅に近づいて来ると愛美と幸美は佳那子に言い出す。

愛美:「佳那子、愛美も降りる」

幸美:「幸美も。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、佳那子の家に寄っていくわ。先に帰っていて」

友美:「わかった」

洋美:「遅くなるなよ」

愛美と幸美は佳那子と一緒にモノレールを下車する。改札口を通り抜けると佳那子が住んでいる分譲マンションへと三人は歩きだす。

佳那子:「愛美、幸美、私のマンションは久々よね」

愛美:「もう少し佳那子としゃべりたかったから」

幸美:「佳那子のマンションの側には大きな公園があるから。葵奈家(うち)の近所には小さい公園しかないので」

佳那子:「確かにそうよね。愛美と幸美の周辺は一戸建ての家ばっかりよね」

愛美:「そう言えばタカマキパンの由美子姉ちゃんの周辺も一戸建てが多かったわ」

幸美:「佳那子のマンション、駅から割りと近いんだねえ」

佳那子:「ねぇ愛美、幸美、私の家に寄って行く?」

愛美:「いや、いいよ。愛美は公園で幸美と一緒に二人きりで話し合うつもりなのよ」

幸美:「幸美は大好きな愛美お姉ちゃんと一緒に見つめ合いながら話すのが好きなの」

佳那子:「その様子、見てみたくなったわ」

三人は佳那子のマンションの側の公園に入る。

愛美:「愛美、幸美は三角座りしてお互いにスカートの中と顔を見つめ合いながら話し合うのよ」

佳那子:「スカートの中を!?」

幸美:「そおなのよ。幸美と愛美お姉ちゃんはスカートの中は紺ブルだから。佳那子も一緒に話さない?三角座りでスカートの中が見えるように」

佳那子:「そうだね、そうしようか」

愛美:「佳那子もスカートの中は紺ブルなんだ」

幸美:「入学したてはミドパンだったのにね」

佳那子:「最初は私、緑色のショートパンツだったけど友美姉ちゃんにグラドル活動に誘われてからは紺ブルに切り替えたわ」

愛美:「紺ブルでなくてもミドブル(緑色のブルマ)でも良かったんじゃ」

佳那子:「ミドブルよりも紺ブルの方がセクシーだと思うわ。最初、履いていた緑パンは悠真さんに貸したままだけど別に返してもらわなくてもいいと思っているわ」

幸美:「そう言えば悠真さんが体育の授業て履いているミドパンは元々、佳那子のものだったよね」

佳那子:「愛美、幸美、お互いにスカートの中を覗き合って、どう思うの?」

愛美:「ドキドキするし、むら〜っとくるわ」

幸美:「幸美も同じ。愛美お姉ちゃんのスカートの中を覗いているとメロメロだもん」

佳那子:「あははっ、愛美に幸美、愛し合う仲なんだ」

一方、友美と洋美は『榊台』で下車して改札口を通り抜けると家へと歩きはじめた。

友美:「ふぁ〜っ、何だか肩の荷が軽くなった気分だわ」

幸美:「愛美と幸美がいないからなの?」

友美:「そおかも。あいつらの世話はイライラするし、腹立つこともあるからね」

洋美:「友美姉ちゃんにとって妹の世話は、しんどいものだよね」

友美:「そおよ、三人の下級生との共同生活は疲れやすいわ」

洋美:「私だって怖い上級生と手が焼ける二人の下級生との共同生活は疲れるわ」

友美:「怖い上級生ってどう言うことよ?洋美」

洋美:「だって友美姉ちゃん、怒るとすぐ往復ビンタじゃん」

友美:「イラつくと手が出てしまうのよね」

洋美:「友美姉ちゃんのビンタは痛いわよ。菊池先生の方が気持ちいいわ」

友美:「愛美、幸美と同じゃん。そんなに気持ちいい?」

洋美:「うん、痛いのは叩かれた瞬間だけだけとね。友美姉ちゃんのはいつまでも痛さが続くから」

友美:「そおか?あっ、あっと言うまに家に着いたわ」

気がつくと二人は自宅に辿り着いていた。玄関の扉を開けて中に入る。

「ただいま」

友美と洋美は自室である姉妹の部屋に入った。

友美:「やっと帰り着いたわ」

洋美:「あとは愛美と幸美が帰ってくるだけだわ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

佳那子と別れ帰路に着いた愛美と幸美はモノレールを乗り『榊台』で下車して自宅へと歩きはじめた。

愛美:「こうやって幸美と一緒に二人きりが一番、幸せのように感じるわ」

幸美:「幸美も愛美お姉ちゃんと二人きりが一番幸せよ」

愛美:「幸美と同じクラスで良かったわ」

幸美:「愛美お姉ちゃん、気持ちいい事をしてくれたら嬉しいわ」

愛美:「気持ちいい事?」

幸美:「抱きしめ合ってキスする事かな」

愛美:「他はなにがある?」

幸美:「そおね、愛美お姉ちゃんの平手打ちかな」

愛美:「愛美に叩かれるのが気持ちいい?」

幸美:「うん、気持ちいい。両手首を背中で縛られた上で」

愛美:「ちょっと幸美、それじゃ一方的に叩かれぱなしになってしまうじゃん。悲しくなっちゃうよ」

幸美:「そうなの?」

愛美:「それだったら叩きあいっこでいきたいわよ。愛美が幸美を平手打ちしたら幸美が愛美を平手打ちをする感じでいきたいわよ」

幸美:「幸美が愛美お姉ちゃんを平手打ちしないといけないじゃん。良いの?」

愛美:「大好きな幸美なら我慢するつもりよ。何発でも何十発でも」

幸美:「良かったわ。幸美の大好きな愛美お姉ちゃん、さすがだわ」

愛美:「愛美嬉しいわ。あっ、早く帰ろうよ。遅くなると友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんが怖いから」

幸美:「そおね、友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんの平手打ちはメチャメチャ痛いからね」

愛美:「あっ、そうだ、真木地さんにTELしてみようかな?」

幸美:「昨日のショッピングセンターでの出来事で?」

愛美:「そうよ、TELしてみるわ」

愛美は真木地のスマホにTELをかける。しかし留守番設定になっているためか応答がない。

愛美:「只今、電話には出られないようだわ」

幸美:「もしかして真木地さん、バイトしてるのかなぁ?」

愛美:「わからない。聞いたこともないし。でも、やっている可能性はあると思うわ」

幸美:「一応、メール入れておいたらどう?」

愛美:「そうだね、入れておこうか」

愛美は真木地にメールを打ち二人はいそいそと帰宅する。

「ただいま」

そして姉妹の部屋に入ると友美と洋美が迎える。

「お帰り」

食事、入浴を済ませた後、愛美は再び真木地にTELをかける。しかし、またもや留守番設定であった。

愛美:「また留守番だわ」

幸美:「真木地さん忙しいんだ」

洋美:「バイトしてるのかな?」

友美:「バイトとなると飲食店関係が多いようなイメージだわ。とりあえずスマホを充電して待つことにしたら良いじゃん」

四姉妹は各々のスマホの充電を行いながら学校の勉強を進める。しばらくすると愛美のスマホがTELの着信音が鳴り響きだした。愛美はすかさず画面で送信相手を確認する。相手は真木地優太郎である。愛美は出て応答する。

愛美:「もしもし真木地さんですね」

真木地:「はい、電話してくれたようですね。親戚が経営する飲食店でバイトをしていたんです。出れなくてごめん」

愛美:「ご苦労様です。TELした目的ですけど実は逆高三人衆の事なんです」

真木地:「昨日の日曜日、盗撮されていたらしいですね」

愛美:「ええ、ビックリです。ただ、どんな感じで写っているのが気になっているんですよ」

真木地:「僕だって見ていないので何とも言えないんです。気がつかなかった事を考えたら写っているのは後ろ姿がほとんどじゃないかと」

愛美:「買わされた人はいないでしょうか?」

真木地:「わからないです」

愛美:「そうですか、あっ友美姉ちゃんがかわりたいと言ってます」

友美:「もしもし真木地さん、かわりました。友美です」

真木地:「友美さんですね。しばらくです」

友美:「ええ、こちらこそ。最近の逆校三人衆の様子はどうでしょうか?」

真木地:「相変わらずじゃないでしょうか。全く何を考えているのかわからない雰囲気です。かなりのトラブルメーカみたいで」

友美:「そうですか、妹たちは勿論の事、同じ部活の部員達にも注意を促したいと思います」

真木地:「そうですね、逆校近くに住んでいる人には特に注意した方が良いと思います」

友美:「そうですね。じゃあ愛美にかわります」

愛美:「真木地さん、どうもありがとう」

真木地:「いえいえ、ところで次の写真集の撮影及び出版はどうなるのでしょうか?」

愛美:「今度の日曜日に首女中で行う予定です。学校の敷地内で行う事になると思います」

真木地:「そうですか、どんな感じの写真集になるのか楽しみにしています」

愛美:「ありがとう真木地さん」

真木地:「おやすみなさい」

それから就寝中、葵奈姉妹は眠りについていた。愛美は夢の世界にいた。いつの間にか愛美は一人の男子高校生と二人で歩いていた。男子高校生の正体は真木地優太郎であった。二人がいるのはショッピングセンターの中であり、一緒にアイスクリームを頬張っているのだった。

真木地:「愛美ちゃんはアイスクリーム好きなんだ」

愛美:「そうですよ。双子の妹、幸美も好きなんです」

真木地:「そうなんだ。スイーツが好きなんだね」

愛美:「ケーキバイキング、スイーツバイキングが好きなんです」

真木地:「それにしても幸美ちゃん今日はどうしてるのかな?」

愛美:「幸美は他の中学の男子と一緒にいるんです」

アイスクリームを食べ終わると二人はショッピングセンターを出て歩きだした。センターの駐車場を出てある程度歩いた時、三人の男子高校生が二人の行く手を遮った。三人は真木地と同じ県立逆茂木高校の生徒で逆校三人衆である。

逆校生A:「おい真木地、今日は葵奈姉妹の片割れと一緒じゃん」

逆校生B:「もしかして愛美かな?」

逆校生C:「そうだぞ」

愛美:「いっ、いやぁ〜!」

愛美は真木地にしがみつくように隠れるが逆校三人衆は真木地と愛美に襲いかかってきた。三人衆の暴行で真木地と愛美はメッタうちにされる。その衝撃で愛美は目を覚ましてしまう。目を開けて視界に飛び込んできたのは友美だった。友美は愛娘に平手打ちを何発も食らわしていたのだった。

友美:「愛娘!いい加減に起きろ!」

幸美:「もう愛美お姉ちゃん、真木地さんって寝言がうるさかったわよ」

愛美:「えっ!そぉだったの!?」

洋美:「相当うなされてたじゃん」

日付は6月10日火曜日であった。四姉妹は普段どおり登校する。首女中で葵奈姉妹は他の生徒や教師達に挨拶を交わしていく。悠真も菊池と大水に挨拶を交わす。

悠真:「おはよう由利、咲」

菊池:「おはよう悠真」

大水:「おはよう悠真」

悠真:「由利、私、水泳部に入部しようかと思ったの」

大水:「ついに決心ついたのね」

悠真:「飛込み競技部門にするわ」

菊池:「ねえ悠真、競泳部門は考えなかったのね」

悠真:「競泳じゃタイムにシビアだし、持久力とスタミナには自信がないから。飛込み競技部門だったら葵奈姉妹、佳那子、井之上さん、遠藤さんがいて優しくしてくれるから。最近は休み時間に佳那子と談笑する機会が多くなってきたからね」

菊池:「そおなんだね。それから話かわるけど私、この学校内で生活を考えてみようかと思っているのよ」

悠真:「首女中で生活?」

菊池:「そうなのよ。一番いいのは水泳部専用の宿泊寮があれぱ良いのだけどね」

大水:「それを考えてるなら私、由利と一緒に二人きりでプールで泳ぎたいものだわ」

菊池:「咲、私と一緒にだったらスク水で泳がない?」

悠真:「ねえ由利、どうして首女中で生活なの?」

菊池:「夜のプールで飛込みの練習をやりたいのよ」

その時、悠真に声をかける者がいる。愛美と幸美、佳那子である。

「悠真さぁ〜ん」

悠真:「じゃあ私、いくわ。クラスメートが呼んでいるので」

悠真は菊池と大水に別れを告げ愛美と幸美、佳那子の元へ急いで歩いていった。その後ろ姿を見た菊池と大水はお互いに顔を見合わせあう。

大水:「悠真、現役の生徒と上手くいくようになっていくみたいだわ」

菊池:「愛美ちゃん、幸美ちゃんとは救出劇での出来事が最初だったからね。それを思うと池澤先輩のクラスに編入させて正解だったと思うわ」

大水:「それは言えてると思うわ」

菊池:「でも県立逆茂木高校との一件もあったから、この先はね」

大水:「ああ、逆校の男子三人組だったよね」

菊池:「そうよ、聞くところによるとトラブルメーカらしいところがあるとの事だわ」

大水:「そうかしら?あっもうすぐチャイムが鳴るわ。更衣室へ急ごう」

菊池と大水は教職員専用の更衣室へ急ぎ、首女校の制服(夏服)に着替える。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

放課後、中学1年A組では愛美と幸美、佳那子が部活に向かおうとしていた。そこへ悠真が声をかける。

悠真:「愛美、幸美、佳那子、一緒にプールへ行こう」

愛美と幸美:「悠真さん・・・」

佳那子:「は、はい悠真さん」

悠真:「私、飛込み競技部門に入部する事にさせてもらうのよ」

佳那子:「えっ、そおなんですか?」

愛美:「悠真さんが入部してくれたら中学1年の部員は四人だわ」

幸美:「悠真さんには、今まで以上にもっと優しくしないとダメよね」

悠真:「そおなのよ、宜しく」

四人はプールへと向かう。練習を開始する時、菊池が悠真を新入部員として全部員に紹介する。練習は洋美と佳那子が悠真に手ほどきを行う。それを遠目で見ていた競泳部門の部員達は見守る気持ちだった。

競泳部門部員A:「悠真さん、飛込み競技部門に入部を決めたんだ」

競泳部門部員B:「どうして競泳部門にしなかったのかな?」

競泳部門部員C:「スタミナかしら、でも25㍍は泳げるようになったのかな?」

競泳部門部員A:「見守るしかないわ」

部活が終わって下校時、悠真は佳那子、洋美と談笑しながら校門へと歩く。門を出ると大水の軽自動車がハザードランプを点滅させて停車していて側に大水が立っていた。

大水:「悠真、ちょっと由利と一緒に晩御飯食べに行こうよ」

悠真:「うん、もう少ししたら由利がくると思うわ。あっそうだ井之上さん、ママには知らせておかなくては」

佳那子:「じゃあ悠真さん、また明日」

悠真:「ありがとう佳那子、明日も手ほどき、お願いするわ。これからも宜しくお願いするわ」

悠真と別れた洋美と佳那子は友美、愛美、幸美の元へ急ぐ。

友美:「これで1年部員は四名になったなぁ」

洋美:「その半数が妹だから。部員数は奇数よりも偶数が一番よね」

友美:「それを思うと二年は三名、もう後、一名欲しいなぁ」

洋美:「由美子が入ってくれたら良いのになぁ」

友美:「洋美、お前解ってるのか?高牧さんは旭中で他校生だろ!」

洋美:「解ってるわよ。あ〜あ、ゆ・み・こ〜」

友美:「あ〜あ、また始まったわ。問題は工藤、津軽と仲良くやれるかだよな」

愛美:「悠真さん、佳那子と意気投合しそう」

幸美:「そうだとしたら幸美、佳那子、愛美お姉ちゃん、悠真さんの四人でリクレーションを考えたい」

洋美:「リクレーションって何をするつもりなの?」

幸美:「真美奈姉ちゃんか美幸姉ちゃんの家に泊まって飛込みの練習、もしくは公園を散歩はどうかと思うの」

愛美:「それも良いけどケーキバイキングか、スイーツバイキングもどうかな?」

友美:「全くケーキバイキング、スイーツバイキングが出るなあ。悠真さん自身はどう思うかだわ。真美奈と美幸の話では真空管の光が一番好きみたいだわ」

佳那子:「そう言えば真美奈姉ちゃんの部屋には真空管を使ったアンプがありました。赤々と光る真空管を眺めてのクラッシック音楽の観賞は格別でしょうね」

やがて菊池がやってきて悠真と一緒に大水の軽自動車に乗り込む。軽自動車は大水の運転で菊池と悠真を乗せ走り出した。そのテールランプの赤い光が見えなくなると葵奈四姉妹と佳那子はモノレールの駅へと歩く。いつの間にか側には香織と美千代がいた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

大水の軽自動車の車内では菊池が悠真に話かけていた。

菊池:「悠真、何処へ行きたい?」

悠真:「そおね、私の家の近くの拉麺店はどうかと思うのがあるわ」

大水:「拉麺か、良いね、たまには」

悠真:「出来る事なら本当は真空管の赤い光を眺めながらレモンティーを飲むのが一番最高なの」

菊池:「真空管ときたか」

悠真:「井之上さんと遠藤さんの家に真空管アンプのオーディオ機器があったからね」

大水:「確かに真空管の赤々と光る光景は心が和みそうだわ」

菊池:「そうかしら?」

大水:「真空管の赤々とした光にはモーツァルト、クラッシック、バッハ、ジャズが似合うと思うわ」

菊池:「咲は音楽担当だから、そう思うのね」

悠真:「井之上さん、遠藤さん、自分専用の真空管アンプのオーディオを持っているからね」

菊池と悠真を乗せた大水が運転する軽自動車は悠真の自宅からは遠くない所にある拉麺店に入っていく。拉麺店で好みのラーメンを啜った後、三人は勘定を済ませ帰宅の徒につく。その軽自動車の中で再び会話が始まる。

大水:「ねぇ由利、首女中で生活と言ってた事なんだけど」

菊池:「そおね、校長先生と教頭先生と話合わないと厳しいわ」

大水:「とりあえず、たまに教員用宿泊部屋で寝泊まりでいったらどう?」

菊池:「そおね、飛込み競技の大会に挑戦したくなってきそうだから」

悠真:「由利、飛込み競技の選手として活躍したいんだ」

菊池:「部員の生徒達が一生懸命に練習してるのを見ると私だって頑張ってみたくなるわ」

大水:「そう聞くと私、由利と二人きりでプールで泳ぎたくなりそうになるわ。泳力は由利に及ばないけど」

悠真:「私だって、そう聞くと由利、咲と三人で寝泊まりしたくなりそうよ」

菊池:「それなら悠真と咲の三人で寝泊まり考えてみようかな?」

大水:「そうよね、首女中での生活の事は保留で良いじゃん」

悠真:「それで寝泊まりはいつするのかしら?」

菊池:「そおよね・・・・明日の夜から明後日の朝にかけてはどう?」

大水:「良いね」

悠真:「いいわ」

大水:「それで宿泊部屋でちょっとした空腹満たしに御菓子類買い込んでおいた方が良いかも」

菊池:「そうね、でも酒類はNGかな?」

大水:「寝る直前で少量なら良いじゃん」

悠真:「私は生徒だからパス」

菊池:「ああ、そうだよね。悠真、酒類に関してはトラウマのきょうじを抱えているのね」

悠真:「誘拐監禁で飲まされたからよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

6月11日水曜日の朝、校門で葵奈姉妹、佳那子は悠真と会う。

友美と洋美:「悠真さん、おはようございます」

悠真:「おはよう友美、洋美」

愛美と幸美:「悠真さん、おはよう」

悠真:「おはよう愛美、幸美。二人とも仲いいね」

佳那子:「悠真さん、おはよう。今日も飛込みの練習、頑張りましょうね」

悠真:「うん、手ほどきお願いするわ。今夜は私、由利、咲と三人で首女中に寝泊まりするのよ」

佳那子:「菊池先生、大水先生と一緒に寝泊まりですか?悠真さん楽しそうな顔をしてますね」

悠真:「そうなのよ」

佳那子:「そう聞くと私、悠真さんと寝泊まりしたくなりそうです」

悠真:「そう?出来れば佳那子の家に泊まってみたくなりそうだわ」

佳那子:「私の家は10階建ての分譲マンションの10階です」

悠真:「そこからの景色は首女中の校舎の屋上からの景色と良い勝負かも」

佳那子:「そおですね、私のマンションの10階と首女校の校舎の屋上の景色、どちらも甲乙つけがたいですよ」

そして放課後、悠真は佳那子と洋美の手ほどきを受けながら飛込み競技の練習に勤しむ。その光景を菊池は見守る。

(悠真、楽しそうだわ。池澤先輩に担任をお願いした甲斐があったわ)

部活が終了すると菊池は悠真に声をかける。

菊池:「悠真、この後、咲と一緒に食堂へ行こう」

悠真:「うん、着替えはどうする?」

菊池:「食事の後、飛込みの練習するから水着の上に体操着を着るわ」

悠真:「じゃあ私もそうするわ」

そこへ大水と数人のチアリーディング部員を連れた池澤がやってきた。

菊池:「咲来てくれたね、あれ?池澤先輩、どうしたのですか?」

池澤:「由利ちゃん、悪いけど咲ちゃん、悠真ちゃんと食堂に行っている間だけでも良いからチアリーディング部にプールで泳がせてあげてくれない?」

菊池:「泳がせてあげて欲しい?」

池澤:「練習で汗だくだからプールに飛び込んでさっぱりしたいと言っているからなのよ。お願い」

菊池:「わかりましたわ、競泳プール、飛込みプール、好きな方でいいですよ」

こうして菊池、大水、悠真の三人は食事の為に食堂へ行き池澤はプールサイドでチアリーディング部員達を監視する。食事を終えてプールに戻った菊池と悠真はプールで泳ぐチアリーディング部員達を見つめた大水はプールで泳ぐ為、水着に着替える。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

チアリーディング部員達が下校し池澤も帰宅していった後、悠真と大水は菊池の飛込みを観賞した。

大水は悠真に話かける。

大水:「悠真、飛込みの練習はどう?」

悠真:「愛美と幸美は勿論の事、佳那子や洋美、井之上さん達が優しく接してくれる。入部して正解だったわ。咲には悪いけど陸上部よりかは良いと思うわ」

大水:「そんな事、気にしなくて良いわよ。私だって悠真は水泳部にして良かったと思うわ」

話し合っている二人に飛込みプールから上がった菊池が声をかける。

「悠真も、咲も、泳いだら」

大水と悠真もプールで泳ぐ。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

葵奈四姉妹も帰宅後、食事の後入浴タイムになり最初に愛美と幸美が入浴する。

愛美:「もうすぐ佳那子の誕生日だよね」

幸美:「そうだよね愛美お姉ちゃん、その後は悠真さんの誕生日だよね」

愛美:「愛美達は9月9日、何が良いと思う?」

幸美:「幸美は大好きな愛美お姉ちゃんと結婚したいなぁ」

愛美:「愛美も幸美と結婚したい」

幸美:「毎日、愛美お姉ちゃんとキスしてると結婚したくなっちゃう」

愛美:「毎日が婚約を交わす日々の繰り返しだよね」

幸美:「幸美には、お姉ちゃんが四人いるけど歩美姉ちゃん、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんよりも愛美お姉ちゃんが一番優しいから好き。キスが気持ちいい」

愛美:「愛美だって幸美とのキスは美味しくて気持ちいい」

幸美:「幸美、愛美お姉ちゃんは気持ちいい要素がいっぱい」

二人は湯船に浸かってみつめあう。


☆☆☆☆☆☆第六組曲、交流、終わり☆☆☆☆☆☆

to be continue第七組曲、体験



























































































































































































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