表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

S博士の研究所

正しい携帯電話の使い方

作者: 会津遊一

 「これは、今世紀最大の大発明だな」


S博士はそう呟いた。


その声を、空き巣の様に聞きつけた隣の住人が小走りで駆けつけてきた。


どうせ妻にでも怒られ、家の外に叩き出されていたのだろう。


 「やぁやぁ、S博士、こんにちは。今日は、どんな発明が出来たんですか?」


 「君か。これを、見てくれ」


S博士は小さくて細い箱を握りしめていた。


 「……これは携帯電話ですか?」


 「ああ、そうだ。ただし、普通の電話ではないぞ」


 「と、言いますと?」


 「携帯電話の中に入れる携帯電話なのだ。まさに究極の発明だとは思わないか?」


興奮するS博士をよそに、隣人は冷めた顔で言う。


 「それで、具体的に何が出来るんですか?」


 「具体的に?」


 「ええ、そうです。車や飛行機は人を運び、テレビは娯楽を産む。非生産性の発明なんて、本当に世紀の大発明なんて言ってもいいんですかね? 私は、それじゃあ価値はないと思いますよ」


 「う、うーむ、なるほど。携帯電話に入る。この仕組みを思いついた時は大発明だと思ったんだが、言われてみれば何も出来ないかもしれない」


S博士は落胆し、携帯電話をゴミ箱に捨てようとした。


それを隣人が奪い取った。


 「まあ、待ってくださいよ。世紀の発明では無いかもしれませんが、これはこれで面白いですよ。2.3日、私に貸してくれませんか」


 「それは、かまいませんが、何をするつもりなのです?」


 「ふふ、それは妻の悲鳴を聞いてからのお楽しみって所で」




それから、数日経っても隣人は現れなかった。


このまま何の音沙汰もないのは不気味だったので、S博士は表で遊んでいた隣人の子供に話しかけた。


 「お父さんは、何処に行ったか知らないかい?」


 「家にいるよ。でも、今は出られないんだって」


 「出られない?」


 「うん、ママがね、携帯電話の電源を切っちゃってるの」

 

 

ご感想などありましたら、お気軽に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 隣人さんに全員黙祷!科学の力は時として犠牲者を出してしまうのは世の常ですね……まぁ、隣人さんが悪いんでしょうけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ