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第十話 “四つの灯”


――〈ルオゥグ村〉。


 村の中央には破壊の跡が広がっている。家は崩れ、炎が燃え盛る。

 この破壊の跡を作ったのは二人の男。片方は錆びた剣を地面に突き刺して直立している、もう片方はその身を竜に変え――胴体を真っ二つにされていた。


 竜を見下ろし、騎士団長サーウルスは呟く。


「今まで戦ったどのドラゴンよりも強かった。

――魔物風情にしては、中々だったな」


 サーウルスの元に一人の騎士が駆け寄る。


()()の遺体はそこのドラゴンを除いて全て火葬致しました」

「ご苦労。オメスはまだか?」

「それがオメス様に(つか)わした伝令が戻ってこず――」


 サーウルスは先ほど、遠くの樹海で巻き起こった大爆発を思い出す。


「――オメス……まさかとは思うが……」


 その時、

 ひゅー……と柔い風がサーウルスの背中を押した。

 サーウルスは風の中に微かな魔力を感じ、慌てて剣を地面から引き抜くが間に合わない。


「“白銀の旋風(ヴァトル・スレブロ)”」

「なっ――――」


 剛鉄のカミソリが混じった銀色の風がサーウルス諸共騎士たちを彼方へ吹き飛ばす。

 サーウルスは魔力で皮膚を強化しダメージは無効化するが、部下たちは銀色の風によって肢体を分解された。


 旋風を巻き起こしたボロボロのシャツを着た男はサーウルスに目もくれず、倒れているドラゴン(親友)の方へ歩いて行く。



「――ヴァンス……」



 その体を撫で、そして手元に銀色の剣を作成し、ドラゴンの肉を削ぎ落した。


――捕食。


 生臭く、堅い肉質。普通の人間ならかみ砕けない硬度。

 しかし“魔物喰らい(イビルイーター)”の歯と顎の力を持ってすれば容易(たやす)く分解することができる。シャツの男――アドルは親友の肉を貪り、竜の力を己の内に取り込んだ。


 スライム。

 メタルコンダクター。

 シルフ。

 ドラゴン。


 四つの灯がアドルの体に揃う。



「ようやく、適合したようだな……」



 天から声が聞こえ、アドルが上空を見上げると無数の光の矢がアドルに向かって降下していた。

 アドルはその全てを躱し、光の矢に乗って天より舞い降りる騎士を睨む。


 騎士は地面に着地した後、錆びた剣をゆったりと構えた。


「一体、どんな魔物と適合した? 今の攻撃は今まで味わったことの無いものだったぞ」

「甘えんな。自分で考えやがれ」

「ふん、随分口が悪くなったな……まぁいいさ」


 斬。

 ほんのコンマ一秒でアドルの体は胴体から両断された。

 ぽとん。と胴体が地面に落ちる音を聞いてサーウルスは溜息をつく。


「貴様に聞かずとも、この剣が教えてくれるさ」


 〈万物を殺す剣(クラウ・ソラス)〉。

 錆びた剣の状態で斬り殺した魔物の情報を取り込み、その魔物を殺すのに最適な形を学習することができる剣。


「この錆びた剣はこの状態で殺した魔物の情報をインプットし、その魔物に対する特効を持った形を覚える。さぁ……〈万物を殺す剣(クラウ・ソラス)〉よ。その形を変えたまえ――」


 サーウルスは掲げた剣、その刃に付いた赤色じゃない液体を見て眉をひそめた。


「緑色の液体……」


 ぺちゃ。と音を立てて彼は再生する。

 サーウルスは背後を振り向き、彼の異形な姿を見て数年ぶりに武者震いした。


「成程。その武器の性能は大体(だいたい)わかった」


 アドルは体を液状化し、自ら分離したのだ。

 スライムと化した体は魔力さえあれば容易に分離・結合できる。物理無効の肉体。


 サーウルスは(ふところ)から一枚の長方形の札を取り出し、剣を持った手と逆、左手の指で挟んだ。


「23番、〈魔封鏡(アイギス)〉。

――()()


 札が円形の片手盾に変化する。

 サーウルスは盾を装備し、片手剣・片手盾を持ってアドルと対峙する。


 サーウルスの表情には悦びが映っていた。


「よもや、本当に存在するとは思わなかったぞ……〈万物を喰らう者(ラスト・イーター)〉」

「全力で来い、サーウルス。お前の経験(これまで)の全て喰いつくしてやる……」

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主人公アドルフォスが出てくる『退屈嫌いの封印術師』もよろしくお願いします。
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