ネアンと私
真っ暗な闇の中、そこには「ネアン」がいた。
ここはなんなのだろうか。今の自分自身の姿はどうなっているのだろうか。そんな疑問を抱えながらも、頭と身体がふわふわしていて言葉が上手く話せない。
「こんにちは。本田幸子さん。俺はこのゲームの中のヘイロタイ。アンネだよ。ネアンというのは君らプレイヤーが付けた名でしょ。」
白髪の青年は、笑顔を浮かべてはいるが、目が笑っていない。
「…アンネ?どう…して…私…」
回らない舌で必死に話そうとするが、アンネには私の言葉を遮った。
「ははっ。無理に喋らなくていいよ。今俺は、君の頭の中に直接干渉してるんだ。だから君が何を聞きたいのか、話したいのかは手に取るように解るよ。」
アンネはそう言って、私の頬に手を当てた。冷たい手だった。触れたアンネの手から、とてつもない情報が流れ込んでくる。
「ねぇ。君が要らないって言って捨てたキャラになるのはどんな気持ち?」
私の顔を覗き込み尋ねるアンネの顔を見て、私はゾッとした。瞳には光がなく、その無表情さからは何も感じられない。…あぁ。そうか。彼は、私がゲームに慣れ始めた頃、ガチャで出たキャラで要らないと言って捨てた子の一人だ。
通り名を『役立たずのネアン』
「俺はね、いずれメガイラという存在になる。この世界の敵だよ。そして君みたいにレア度の高いキャラだけ使うようなプレイヤーは完全に潰す。…拒否権はない。君の現実世界の精神は、完全に僕のものだからね。毎日神に祈った甲斐があったよ。」
現実世界の私…?私とアンネが入れ替わっているって事?
「…そういうことになるね。だから君がもし、『メガイラ』になる事を拒めば、俺は君の姿で大量殺人も犯せるし、君自身を殺して、元の姿に戻ることも出来るってこと。…それが嫌なら精々頑張って。」
ちょっと…何これ。何故こんな事が可能なの?
「……お話はここまで。あまり長くお寝んねしてたらアルが心配するでしょ。…あぁ、それと。アルに正体バラしてもダメだからね…。じゃぁ…そろそろ『おはよう』の時間だ。またね。俺。」